この記事の更新情報
- 公開。国税庁「所得税基本通達の制定について」の一部改正(令和4年10月7日・35-2)と意見公募の結果、タックスアンサー No.1500・No.2070 をもとに作成
2022年8月、国税庁が「副業収入300万円以下は原則として雑所得」とする通達案を出し、7,000件超の反対意見を受けて撤回・修正した——いわゆる副業300万円問題です。決着した内容は「取引を記録した帳簿書類を保存していれば、収入300万円以下でも原則として事業所得」。ただし2つの例外が残り、副業収入が例年300万円以下で本業の収入の10%未満なら「僅少」として雑所得、赤字が続いて改善の見込みがなければ「営利性なし」として雑所得です。年収600万円の会社員なら副業60万円が境目になります。事業所得なら青色申告特別控除と損益通算が使え、雑所得ならどちらも使えません。判定表、損得、開業届と青色申告の手順を国税庁の通達で整理します。
結論:判定表
| 帳簿の保存 | 副業の収入 | 本業に対する割合 | 判定 |
|---|---|---|---|
| あり(取引を記録した帳簿と請求書・領収書を保存) | 300万円超 | — | 事業所得(原則) |
| 300万円以下 | 10%以上 | 事業所得(原則) | |
| 10%未満(例年) | 雑所得(収入が僅少)。ただし営利性・反復性など事業と認められる事実があれば事業所得 | ||
| なし | 300万円超 | — | 雑所得。ただし事業所得と認められる事実があれば事業所得 |
| 300万円以下 | — | 雑所得 | |
| あり/なし | 例年赤字で改善の取組がない | — | 雑所得(営利性なし) |
出典:国税庁「所得税基本通達の制定について」(法令解釈通達)の一部改正(令和4年10月7日)35-2 業務に係る雑所得の例示[国税庁]、同改正案に対する意見公募の結果[e-Gov]
通達の本文は「その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」が原則で、「帳簿書類の保存がない場合には、業務に係る雑所得に該当する」(収入300万円超で事業所得と認められる事実がある場合を除く)と注記しています。意見公募の結果で示された「収入が僅少」の目安が、例年(概ね3年)300万円以下で、主たる収入に対する割合が10%未満です。
年収別の境目:本業の10%はいくらか
| 本業の年収(給与収入) | 10%の境目 | 副業収入がこれ未満(例年) | これ以上 |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 40万円 | 雑所得(僅少) | 帳簿があれば事業所得 |
| 500万円 | 50万円 | 雑所得(僅少) | 帳簿があれば事業所得 |
| 600万円 | 60万円 | 雑所得(僅少) | 帳簿があれば事業所得 |
| 800万円 | 80万円 | 雑所得(僅少) | 帳簿があれば事業所得 |
| 1,000万円 | 100万円 | 雑所得(僅少) | 帳簿があれば事業所得 |
「主たる収入」は給与の額面(収入金額)で、「例年」は概ね3年です。始めた年だけ少ないのは問題なく、3年続けて10%未満なら僅少と見られます。逆に本業が高収入の人ほど境目が上がるので、年収1,000万円の会社員は副業が100万円に届かないと、帳簿を付けていても雑所得の扱いになりやすいことになります。
10%未満でも「営利性、有償性、継続性、反復性があり、事業と認められる事実」を示せれば事業所得になり得ます。具体的には、取引先が複数あり、毎月継続して受注し、事業として広告や営業をしている、といった実態です。ただし税務署に説明する側の負担なので、境目付近では雑所得で申告する方が安全です。
事業所得と雑所得で何が違うか
| 事業所得 | 業務に係る雑所得 | |
|---|---|---|
| 青色申告特別控除 | 最大65万円(e-Tax・複式簿記。2027年分から75万円) | なし |
| 赤字の損益通算 | 給与所得と相殺できる(所得税・住民税が戻る) | できない(他の雑所得内でのみ相殺) |
| 赤字の繰越 | 青色なら3年 | なし |
| 家族への給与 | 青色事業専従者給与で経費に | 不可 |
| 30万円未満の資産の即時償却 | 青色なら可 | 不可 |
| 帳簿の義務 | あり(青色は複式簿記または簡易簿記) | 前々年の収入300万円超なら請求書等の保存義務、1,000万円超なら収支内訳書の添付 |
| 個人事業税 | 業種により3〜5%(290万円控除後) | なし |
年収600万円の会社員・副業収入120万円・経費40万円の場合
雑所得:所得80万円に税率20%(所得税10%+住民税10%)→ 税額 約16万円
事業所得(青色65万円控除):80万円−65万円=15万円 → 税額 約3万円
差 約13万円(帳簿を複式簿記で付けてe-Taxで申告する手間の対価)
300万円問題で反対意見が殺到した理由がこの差です。「雑所得」に寄せられると青色申告の恩恵が消え、副業で設備投資して赤字になった年も本業の給与と相殺できなくなります。逆に言えば、副業を事業所得にする最大の実利は青色申告特別控除で、控除は2027年分から75万円に上がります。青色の要件は青色申告と白色申告を参照してください。
開業届と青色申告:事業所得にするなら出す
- 開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を税務署へ。事業開始から1か月以内が期限ですが、遅れても罰則はありません。開業届を出したから事業所得になるわけではなく(判定は実態と帳簿)、出さなくても事業所得で申告できますが、青色申告の申請とセットで出すのが通例です。会社員が出しても会社に通知されることはありません。
- 青色申告承認申請書を、控除を受けたい年の3月15日まで(その年に開業した場合は開業から2か月以内)に。出さないと白色申告になり、65万円控除は受けられません。
- 帳簿を付ける。複式簿記(会計ソフトで自動化できる)で仕訳し、請求書・領収書を7年保存。これが「帳簿書類の保存」の中身で、事業所得の判定にも青色申告にも要ります。
- 会社の就業規則を確認する。開業届と税金は会社に伝わりませんが、住民税の通知で副業の所得が知られることはあります。住民税を普通徴収にする方法は副業の確定申告を参照してください。
副業の相手先が雇用契約(アルバイト)なら給与所得で、この話は関係ありません。給与所得の副業は社会保険が2か所になる問題の方を確認してください。またフリマやポイントの収入はポイ活とフリマの税金にまとめています。
雑所得で申告する人が押さえること
- 20万円ルールは所得税だけ。副業の所得(収入−経費)が20万円以下なら所得税の確定申告は不要ですが、住民税の申告は必要です。
- 雑所得でも経費は引ける。収入から必要経費を引いた額が所得です。帳簿の義務は前々年の収入300万円超からですが、経費を証明するために領収書は残してください。
- 赤字は切り捨て。雑所得の赤字は給与と相殺できず、翌年にも繰り越せません。初期投資が大きい副業(機材・仕入れ)は、事業所得の要件を満たしてから始める方が有利です。
- 途中で事業所得に切り替えられる。収入が10%を超え、帳簿を付け始めた年から事業所得で申告できます。青色申告の申請はその年の3月15日までです。
まとめ
- 帳簿書類を保存していれば、副業収入300万円以下でも原則として事業所得
- 例年300万円以下で本業の収入の10%未満なら「僅少」として雑所得。年収600万円なら60万円が境目
- 赤字が続き改善の取組がない場合も、営利性なしとして雑所得
- 事業所得なら青色申告特別控除と損益通算が使え、雑所得ではどちらも使えない
- 事業所得にするなら開業届と青色申告承認申請書を出し、複式簿記で帳簿を付ける
コメントみんなの意見
コメントの閲覧・投稿は会員限定です(無料・Googleアカウントでログイン)。
コメントは会員限定です。ログインすると読む・書くができます。
無料・Googleアカウントだけで登録できます
コメントを読み込んでいます…
この記事は役に立ちましたか?
「はい」が多い記事から、優先的に内容を更新・深掘りしていきます。
フィードバックありがとうございます
今後の改善の参考にさせていただきます。分かりにくかった点があれば、お問い合わせから教えていただけると嬉しいです。
参考リンク(出典)
本記事は次の資料をもとに作成しています。判定は個別の事実関係によるため、境目に近い場合は税務署・税理士にご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供です。税額の例は概算で、所得や控除で変わります。













