インボイス制度と免税事業者|登録すべきか否かの判断基準を解説

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  • 免税事業者からの仕入れの経過措置を最新化(2026年10月1日から80%→70%、以後50%→30%、2031年9月30日で終了)。適用上限が10億円→1億円に引き下げられた点、割合は「課税仕入れを行った日」で判定する点を追記(国税庁 インボイスQ&A 問113・問113-3、令和8年度税制改正特集)。3割特例を「予定」から確定情報に差し替え(個人事業者のみ・2027年分/2028年分・売上税額の7割控除・事前届出不要。Q&A 問114-2)。2割特例の届出不要の扱いを追記(Q&A 問114)。2割特例・3割特例の翌課税期間は簡易課税の届出が確定申告期限までで間に合う移行特例を追記(Q&A 問117、国税庁 D1-22)。新セクション「登録をやめたいとき:取消届出書の期限と2年縛り」を追加(国税庁 D1-70・記載要領、Q&A 問13・問13-2、D1-5、公表サイト、登録取消リーフレット)。FAQを2件追加し FAQPage 構造化データも更新。日本語・英語・中国語・韓国語の4言語に反映。

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は2023年10月に始まり、売上1,000万円以下の免税事業者にとって「登録するかどうか」が悩みどころになりました。判断のカギは取引先が課税事業者か一般消費者か。2026年10月1日からは、免税事業者からの仕入れで控除できる割合が80%から70%へ下がります。登録した人の負担を抑える2割特例も2026年9月30日を含む課税期間で終わり、個人事業主には2027年分・2028年分の3割特例が新しく設けられました。この記事では、判断基準・消費税の計算・経過措置の最新スケジュール・登録をやめる手続きを、具体例つきで整理します。

個人事業主・フリーランス

インボイス制度の要点

消費税の納税額は「売上で預かった消費税 − 仕入れで支払った消費税(仕入税額控除)」で計算します。2023年10月以降、この仕入税額控除を受けるには、原則として適格請求書(インボイス)の保存が必要になりました。インボイスを発行できるのは、税務署に登録した適格請求書発行事業者だけです[国税庁 インボイス概要]。

免税事業者は「登録すると課税事業者になる」

売上1,000万円以下で消費税の納税義務がない免税事業者は、そのままではインボイスを発行できません。発行するには登録が必要で、登録すると消費税の申告・納税義務が生じます。ここが最大の判断ポイントです。

未登録だと相手はどうなる?(2026年10月に80%→70%)

「免税事業者から仕入れると相手はまったく控除できない」と誤解されがちですが、実際は経過措置があり、段階的に縮小していきます。2026年度の税制改正でこの経過措置は適用期限が2年延長され、控除できる割合も7割・5割・3割に組み替えられました[国税庁 令和8年度税制改正特集]。

課税仕入れを行った日免税事業者等からの仕入れの控除
2023年10月〜2026年9月支払った消費税相当額の80%
2026年10月〜2028年9月支払った消費税相当額の70%
2028年10月〜2030年9月支払った消費税相当額の50%
2030年10月〜2031年9月支払った消費税相当額の30%
2031年10月〜控除できない(全額が相手の負担増)

出典:国税庁 適格請求書等保存方式に関するQ&A(令和8年4月改訂)[国税庁 Q&A 問113]

つまり発注側の負担増は当面は一部にとどまり、年々大きくなっていきます。これが「登録してほしい」という交渉圧力の背景です。

80%か70%かは「支払った日」ではなく「課税仕入れを行った日」で決まる

割合は、適用しようとする課税仕入れの時期で判定します。役務の提供を受けた場合は、原則としてその役務の全部が完了した日が課税仕入れを行った日です。たとえば9月21日から受けていた作業が10月20日に完了し、代金を10月31日に支払ったなら、割合は70%になります[国税庁 Q&A 問113-3]。発注側は帳簿に書いている「80%控除対象」という記載も、10月以降の仕入れから「70%控除対象」へ書き替えることになります。

経過措置が使えなくなる上限が10億円から1億円へ

同じ相手1者からの課税仕入れの合計額(税込)が、その年または事業年度で1億円を超えると、超えた部分には経過措置を使えません。改正前の10億円から引き下げられ、2026年10月1日以後に開始する課税期間から適用されます[国税庁 令和8年度税制改正特集]。小規模な外注が中心なら影響はありませんが、免税事業者への支払が大きい会社は相手ごとの集計が必要です。

取引先の一方的な値下げ・取引停止は問題になり得る

免税事業者であることを理由にした一方的な代金の引き下げや取引停止は、独占禁止法(優越的地位の濫用)や下請法上の問題となるおそれがあります。公正取引委員会が考え方を示しています[公正取引委員会]。登録はあくまで任意であり、強制されるものではありません。

登録すべきか・しなくてよいか

登録を検討した方がよい

  • 取引先がほぼ課税事業者(BtoB主体)
  • 大手企業・官公庁との取引がある
  • 売上が1,000万円に近い/超えそう
  • 登録の有無で受注に差が出る業種

登録しなくてよいことが多い

  • 取引先が主に一般消費者(BtoC主体)
  • 取引先も免税事業者・簡易課税
  • 未登録のまま取引継続で合意できている
BtoC中心なら影響は小さい

美容室・料理教室・ハンドメイド販売・士業の対個人サービスなど、一般消費者が相手ならインボイスを求められないため、未登録のままでも実害は小さいことが多いです。

登録した場合の消費税の計算(3つの方法)

課税事業者になると、消費税の計算方法は次の3つから選べます(要件あり)。

  • 原則課税:売上消費税 − 実際の仕入消費税。仕入れが多い業種で有利だが、帳簿・インボイス管理が必要。
  • 簡易課税:売上消費税 ×(1 − みなし仕入率)。基準期間の課税売上5,000万円以下で、事前届出が必要。
  • 2割特例:売上消費税 × 20%。免税から登録した人の負担軽減措置(後述・期限あり)。

簡易課税のみなし仕入率(業種別)

卸売業(第一種)

90%

小売業(第二種)

80%

製造業等(第三種)

70%

飲食店等(第四種)

60%

サービス業等(第五種)

50%

不動産業(第六種)

40%

計算例:フリーランス(第五種)・課税売上の消費税が年10万円
原則課税(仕入消費税3万円なら):10万円 − 3万円 = 7万円
簡易課税(みなし50%):10万円 ×(1 − 50%)= 5万円
2割特例:10万円 × 20% = 2万円
免税から登録した人は2割特例が最も軽いことが多い

経過措置のスケジュール(2割特例・3割特例・少額特例)

2割特例:2026年9月30日を含む課税期間で終了[国税庁 2割特例]

免税事業者からインボイス登録した小規模事業者は、売上の消費税額の8割を特別控除税額として差し引けるので、納税額は売上の消費税額の2割になります。適用できるのは2023年10月1日から2026年9月30日までの日を含む各課税期間で、個人事業主は2026年分(2027年に行う申告)が最後です。事前の届出は不要で、申告書に適用を受ける旨を付記するだけで使えます[国税庁 Q&A 問114]。

3割特例:個人事業主だけの後継措置(2027年分・2028年分)

2026年度の税制改正で新しく設けられました。対象は個人事業主だけで、法人は使えません。2027年・2028年の課税期間について、売上の消費税額の7割を特別控除税額として差し引けるので、納税額は売上の消費税額の3割になります。2割特例と同じく事前の届出は不要で、申告書に適用を受ける旨を付記します[国税庁 Q&A 問114-2]。基準期間(2027年分なら2025年、2028年分なら2026年)の課税売上高が1,000万円以下であることなどが条件です[国税庁 令和8年度税制改正特集]。なお2028年4月1日以後は、計算の対象となる金額から特定少額資産の譲渡の対価の額が除かれます[国税庁 Q&A 問114-2]。

少額特例:1万円未満の仕入れはインボイス不要

税込1万円未満の課税仕入れは、インボイスの保存がなくても帳簿の保存だけで仕入税額控除ができます。期間は2023年10月1日〜2029年9月30日。対象は基準期間の課税売上1億円以下(または特定期間5,000万円以下)の事業者です。

2割特例が終わったらどうする?

選択肢は簡易課税か原則課税です。個人事業主は2027年分・2028年分にかぎり3割特例も使えます。サービス業など仕入れの少ない業種は、簡易課税(第五種なら実質50%控除)が有利なことが多いです[国税庁 No.6505]。簡易課税は基準期間の課税売上高が5,000万円以下の課税期間だけで使え、選んだら原則2年間は続けることになります。

2割特例・3割特例の翌課税期間なら、届出は確定申告期限までで間に合う

簡易課税は原則として、適用したい課税期間が始まる日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を出す必要があります。ただし2割特例・3割特例を使った課税期間の翌課税期間から簡易課税に移るときは、その課税期間の確定申告期限までに出せば間に合います[国税庁 Q&A 問117]。たとえば2026年分まで2割特例で申告した個人事業主が2027年分から簡易課税にしたい場合、2027年分の消費税の確定申告期限(2028年3月31日)までに「2027年分から適用を受ける」と記載した届出書を出せばよい、ということです。消費税の個人事業主の申告期限は所得税の3月15日ではなく3月31日です[国税庁 D1-22]。

登録をやめたいとき:取消届出書の期限と2年縛り

インボイスの登録は「適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を出せばやめられます。ただし登録の効力を失う日は提出した日で決まり、期限を1日過ぎると失効が1年先に延びます。

期限は「翌課税期間の初日から起算して15日前の日」まで

この日までに出せば、翌課税期間の初日に登録の効力が失われます。過ぎると、失効するのは翌々課税期間の初日です[国税庁 D1-70]。

提出する人提出した時期登録の効力を失う日
個人事業主(課税期間=暦年)12月17日まで翌年1月1日
個人事業主(同上)12月18日以降翌々年1月1日
3月決算の法人3月17日まで同年4月1日
3月決算の法人(同上)3月18日〜3月31日翌年4月1日

出典:国税庁 適格請求書等保存方式に関するQ&A 問13・登録取消届出書の記載要領[国税庁 記載要領]

12月17日が土日祝でも期限は延びない

「15日前の日」が日曜・祝日・土曜や12月29日から31日にあたっても、翌日に繰り延べられません[国税庁 Q&A 問13]。年末の休みに入る前に出しておくのが安全です。提出先は納税地を管轄する業務センターで、e-Taxソフトからも提出できます[国税庁 D1-70]。

登録をやめても2年間は免税事業者に戻れないことがある

免税事業者が「登録に係る経過措置」を使って登録した場合(2023年10月1日を含む課税期間に登録した人を除く)、登録をやめても登録日から2年を経過する日を含む課税期間までは、基準期間の課税売上高にかかわらず免税事業者になれません[国税庁 Q&A 問13]。たとえば2024年4月1日に登録し、2025年12月1日に取消届出書を出して2026年1月1日に登録をやめた個人事業主は、2026年分も課税事業者として消費税の申告が必要です[国税庁 Q&A 問13-2]。

課税事業者選択届出書を出している人は、取消届出書だけでは免税に戻れない

以前に「消費税課税事業者選択届出書」を出して課税事業者になった人は、登録の効力が失われた後も課税事業者のままです。免税事業者に戻るには、戻りたい課税期間の初日の前日までに「消費税課税事業者選択不適用届出書」を別に出す必要があります[国税庁 Q&A 問13]。この届出書は、課税事業者になった課税期間の初日から2年を経過する日を含む課税期間の初日以後でなければ提出できません[国税庁 D1-5]。

廃業した場合や個人事業主が亡くなった場合、法人が合併で消滅した場合は、取消届出書ではなく「事業廃止届出書」などの提出で足ります[国税庁 リーフレット]。取り消した後に登録し直すこともできますが、登録申請書に登録希望日を書いてその日から起算して15日前までに出す必要があり、再登録の日からまた2年間は免税事業者に戻れません[国税庁 Q&A 問13-2]。

登録番号と取消しの年月日は公表サイトで確認できる

国税庁のインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトでは、登録番号のうち先頭のローマ字を除いた13桁の数字で検索すると、氏名・名称や登録年月日のほか、登録取消年月日・登録失効年月日まで表示されます[国税庁 公表サイト]。取引先の登録が続いているかを確かめたいときは、ここで検索します。

よくある質問

取引先が個人だけなら登録は不要?

一般消費者はインボイスを必要としないため、BtoC中心なら未登録でも影響は小さいことが多いです。取引先に課税事業者が含まれるかで判断します。

登録すると必ず消費税を納める?

はい。登録すると課税事業者になり、消費税の申告・納税義務が生じます。納税額は原則課税・簡易課税・2割特例(期限あり)から選べます。

2割特例はいつまで?終わったら?

2026年9月30日を含む課税期間まで(個人事業主は2026年分の申告まで)です。その後、個人事業主は2027年分・2028年分について3割特例(納税額は売上の消費税額の3割・届出不要)が使えます。法人は簡易課税か原則課税に移ります。

2026年10月から免税事業者への支払はどう変わる?

免税事業者等からの仕入れで控除できる割合が80%から70%に下がります。割合は支払った日ではなく課税仕入れを行った日で決まり、帳簿の「80%控除対象」の記載も10月以降は「70%控除対象」に直します。

インボイス登録をやめるには?期限はいつ?

「登録の取消しを求める旨の届出書」を、やめたい課税期間の初日から起算して15日前の日までに出します。個人事業主は12月17日まで(土日祝でも延びません)で、翌年1月1日に失効します。過ぎると失効は翌々年1月1日です。

未登録を理由に値下げを求められたら?

一方的な代金引き下げや取引停止は、独占禁止法・下請法上の問題となるおそれがあります。公正取引委員会の考え方を確認し、必要に応じて相談窓口の利用も検討しましょう。登録はあくまで任意です。

まとめ

判断の軸取引先が課税事業者中心なら登録検討、一般消費者中心なら影響小
相手の負担80%→70%(2026年10月)→50%→30%→0%(2031年10月)と段階縮小
登録後の計算原則課税/簡易課税/2割特例から選択
2割特例2026年9月30日を含む課税期間で終了(個人は2026年分まで)
その後個人は2027・2028年分の3割特例。以降は簡易課税・原則課税へ
やめるとき取消届出書は翌課税期間の初日の15日前まで(個人は12月17日)。2年縛りに注意

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最終更新:2026年09月22日 / 公開日:2026年05月27日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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