年金を繰下げ待機中に一括受給したら税金は?各年分に課税・住民税3年・保険料2年

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  • 公開。国税庁 所得税基本通達36-14・タックスアンサー No.1600・No.1199・No.2260、日本年金機構「年金の繰下げ受給」「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました」「加給年金額と振替加算」、法令検索の国税通則法・地方税法・国民健康保険法・高齢者の医療の確保に関する法律・介護保険法をもとに作成

繰下げ待機中の年金をさかのぼって一括で受け取っても、税金は受け取った年にまとめてかかりません。所得税の計算では、本来の支給日が属する各年分の収入に振り分けられます。1,084万円を一度に受け取っても、所得税は5年分に散ってほぼ0円で済みます。ただしさかのぼれる年数は税目で違い、所得税5年・住民税3年・保険料2年です。71歳でさかのぼると増額率は50.4%ではなく8.4%なので、まず生まれ年と増額率を年金事務所で確かめてください。

結論:一括で振り込まれても所得税は受け取った年に集中しない

論点答え
一括で受け取った年金の所得税本来の各支給日が属する年分の収入になる[国税庁 通達36-14]
所得税をさかのぼれる期間5年(更正・決定の期間制限)
住民税をさかのぼれる期間3年(賦課決定の期間制限)
国民健康保険・後期高齢者医療・介護の保険料2年(同じ)
70歳到達後のさかのぼり請求請求の5年前に繰下げ申出したとみなす[日本年金機構]
そのときの増額率5年前の時点で決まる(71歳請求なら8.4%)
過年分の確定申告年金400万円以下+他の所得20万円以下なら原則不要[国税庁 No.1600]

65歳で請求しなかった人が、あとから本来の年金をさかのぼって請求することは可能です[日本年金機構]。1千万円超が一度に入っても所得税が跳ねないのは、本来の支給日ごとの年分に振り分けられるからです。繰下げ後の手取りは繰下げ後の手取りで扱っています。

71歳でまとめて請求すると、増えるのは50.4%ではなく8.4%

70歳到達後にさかのぼって本来の年金を受け取ると、請求の5年前の日に繰下げ申出したものとみなされます[日本年金機構]。増額後の5年分を一括で受け取れる「特例的な繰下げみなし増額制度」で、令和5年(2023年)4月に始まりました。

増額率が決まるのは請求時点ではなく5年前の時点です。71歳0か月で請求すると、みなし申出日は66歳0か月になります。増額率は0.7%×12か月=8.4%で、71歳まで待った分の50.4%にはなりません。

次のいずれかに当てはまると、みなし増額は使えません。

  • 昭和27年4月1日以前に生まれた人
  • 老齢年金の受給権を取得した日が平成29年4月1日より前の人
  • 80歳以降に請求する場合
  • 請求の5年前以前から障害年金や遺族年金を受け取る権利がある人
70歳より前のさかのぼりには増額が一切付かない

みなし増額は「70歳到達後」の請求が前提です。68歳でさかのぼり請求すると、増額率は0%のまま本来の年金3年分が出るだけです。

5年分の一括は1,084万円、以後は年216.8万円

65歳時点の本来の年金が200万円(老齢厚生120万円+老齢基礎80万円)の人で計算します。

71歳0か月でさかのぼり請求した場合(本サイトの試算)

200万円 × 1.084 = 年216.8万円

  • みなし申出日は66歳0か月。増額率0.7%×12か月=8.4%
  • 一括額は 216.8万円 × 5年 = 1,084万円
  • 71歳以後は年216.8万円(増額率は一生変わらない)

増額率の式と早見表は年金機構[日本年金機構 早見表]。当てはめは本サイトの試算です。

選択一括で受け取る額以後の年額増額率
68歳でさかのぼり請求600万円200万円0%
68歳で繰下げ請求0円250.4万円25.2%
71歳でさかのぼり請求1,084万円216.8万円8.4%
71歳で繰下げ請求0円300.8万円50.4%

71歳の2つを比べます。年額の差は84万円で、1,084万円を84万円で割ると12.9年。約83歳11か月で繰下げ請求が追いつきます。長生きするほど繰下げが有利です。

自分の年金額は繰上げ・繰下げシミュレーターで試せます。一括受給のモードはないので、増額後の年額に年数を掛けてください。

1年に乗れば所得税129万円、各年分に散ればほぼ0円

所得税基本通達36-14(1)ロの(注)が核心です。遅れてさかのぼって支払われる公的年金等は、計算の対象とされた期間に係る各々の支給日によると定めています[国税庁 通達36-14]。受け取った日ではなく、本来の支給日が属する年分の収入になります。

年金機構の実務も同じです。改定が遅れて1月に払われた分は、本来12月に払うべき金額なので前年の収入として扱われます[日本年金機構]。

1,084万円の所得税を2通りで計算(本サイトの試算・単身)

各年分に振り分けた場合(各年216.8万円)

  • 公的年金等控除110万円を引いて雑所得106.8万円
  • 令和8年分(2026年分)の基礎控除104万円で課税所得2.8万円
  • 社会保険料控除を引けばほぼ0円

仮に受け取った1年の収入とされた場合

  • 1,000万円以上なので雑所得は1,084万円−195.5万円=888.5万円
  • 基礎控除62万円を引いて課税所得826.5万円
  • 所得税は826.5万円×23%−63.6万円=約129万円(復興特別所得税込み)

出典:国税庁 No.1600[国税庁]・No.1199[国税庁]・No.2260[国税庁]。試算は本サイトによるもの。

差は約129万円です。通達の「各年分に帰属」という扱いのおかげで税金が跳ねません。課税ラインは年金だけで暮らす人の税金と保険料にまとめてあります。

さかのぼるのは所得税5年・住民税3年・保険料2年

5年分をまとめて受け取っても、役所が5年分を追いかけてくるわけではありません。さかのぼれる期間は税目ごとに法律で区切られています。

税・保険料期間根拠
所得税5年国税通則法70条1項[法令検索]
個人住民税3年地方税法17条の5第3項[法令検索]
国民健康保険料2年国民健康保険法110条の2[法令検索]
後期高齢者医療保険料2年高齢者の医療の確保に関する法律160条の2[法令検索]
介護保険料2年介護保険法200条の2[法令検索]

国民健康保険を「税」として徴収している自治体は地方税法が適用され、期間は3年です。納付書の名称で1年変わります。保険料の2年は賦課決定の期間制限で、納める権利の時効とは別物です。

年金機構も、過去分の一括受給が医療保険・介護保険の自己負担や保険料、税金に影響する場合があると注意を促しています[日本年金機構]。実際の扱いは市区町村に確認してください。

過年分の確定申告は原則不要、要るのはこの3つの場合

過去分の申告をやり直す必要は基本的にありません。その年の公的年金等が400万円以下で、他の所得が20万円以下なら確定申告は不要です[国税庁 No.1600]。各年216.8万円なら、どの年も余裕で下回ります。

  1. 年金以外の所得が20万円を超えていた年。給与、不動産、株の譲渡などが該当します。
  2. すでに確定申告をしていた年。あとから年金が加わるので修正申告になります。
  3. 医療費控除などで還付を受けたいとき。義務ではなく、自分から申告して取り戻す形です。

修正申告が要る場合の負担も軽めです。期限内申告をしていれば、法定申告期限から1年を過ぎた期間は延滞税から除かれます[法令検索 国税通則法61条]。調査の前に自分で出せば、過少申告加算税も10%ではなく5%です[法令検索 65条]。

過年分の源泉徴収票が何枚届くかは公表資料に明記がありません。一括受給の手続きのときに年金事務所で確かめておくと安心です。

さかのぼりが向く人、繰下げを続けたほうがいい人

有利不利は健康状態と手元のお金の必要度で変わります。71歳の例では約83歳11か月が境目です。

さかのぼって一括が向く人

  • まとまったお金がいま必要な人(住宅の修繕・介護費用)
  • 健康に不安があり、80代半ばまで受け取る自信がない人
  • 配偶者の加給年金を受けられる人。待機中は1円も出ない
  • 遺族厚生年金を残したい人。繰下げ加算額は反映されない

繰下げを続けたほうがいい人

  • 85歳以上まで生きる見込みで、増額率を一生効かせたい人
  • いま働いていて年金を使う必要がない人
  • 基礎年金だけを繰り下げ、厚生年金は早めに受け取りたい人
  • すでに80歳に近く、みなし増額の対象から外れる人

加給年金は配偶者分で年423,700円です(令和8年4月から)[日本年金機構]。厚生年金を5年待つと、この分を丸ごと受け取れません。

まとめ

  • さかのぼって一括で受け取った年金は、本来の支給日が属する各年分の収入に振り分けられる
  • 1,084万円を一度に受け取っても所得税は5年分に散ってほぼ0円。1年に乗れば約129万円
  • さかのぼれる年数は所得税5年・住民税3年・保険料2年。過年分の確定申告は原則不要
  • 71歳でさかのぼると増額率は50.4%ではなく8.4%。繰下げが追いつくのは約83歳11か月
  • まず生まれ年と増額率を年金事務所で確かめる

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参考リンク(出典)

※試算は年金機構の増額率と国税庁の速算表を本サイトが当てはめたものです。個別の判断は年金事務所・市区町村へ。

公開日:2026年11月02日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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