別居の親を扶養に入れる条件|仕送りの証拠・扶養控除48万円と健康保険の違い

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実家を離れて暮らしながら、親に生活費を仕送りしている人は少なくありません。実はその仕送り、別居のままでも「扶養控除」の対象になり、70歳以上の親なら所得税で48万円の控除(同居なら58万円)が受けられます。しかも2025年(令和7年分)の税制改正で親の所得要件が48万円から58万円以下に緩和され、年金収入168万円以下(65歳以上)の親まで対象が広がりました。一方で「手渡しでもいいのか」「いくら送ればいいのか」「兄弟で分担していたら誰の扶養か」など、つまずき所も多い制度です。税金と健康保険で要件がまったく違う点も含め、一次情報にもとづいて整理します。

まず全体像:「税の扶養」と「健康保険の扶養」は別の制度

「親を扶養に入れる」と一言でいっても、税法上の扶養(扶養控除)健康保険の扶養(被扶養者)は、根拠も要件も申請先も別物です。片方だけ使うこともできます。

項目税の扶養(扶養控除)健康保険の扶養(被扶養者)
効果あなたの所得税・住民税が安くなる親の健康保険料が0円になる
親の収入基準合計所得58万円以下(年金収入なら65歳以上168万円以下・65歳未満118万円以下)年収130万円未満(60歳以上は180万円未満)
別居の場合の追加条件「生計を一にする」=生活費等の送金が常に行われていること親の収入が仕送り額より少ないこと
年齢の上限なし(75歳以上でも可)75歳以上は不可(後期高齢者医療制度へ移行)
申請先年末調整または確定申告勤務先経由で健康保険組合・協会けんぽ等

この記事は別居のケースに絞って解説します。同居も含めた損得の全体像(介護保険料や高額療養費への影響)は親を扶養に入れる損得を、控除の制度全体は扶養控除の完全ガイドをどうぞ。

税の扶養①:「生計を一にする」は同居のことではない

扶養控除の要件のひとつが「生計を一にする」ことです。国税庁の定義では、必ずしも同居は要件ではありません。勤務や修学、療養などの都合で別居している親族でも、次のいずれかに当てはまれば「生計を一にする」ものとして扱われます。

  • 生活費・学資金・療養費などの送金が常に行われている場合
  • 休暇のときには親のもとで一緒に過ごすことを常としている場合

つまり、別居の親でも継続的に生活費を仕送りしていれば要件を満たし得ます。ポイントは「常に」です。年に1回まとめて渡すお小遣いや、帰省時の手土産程度では「日常の生活の資を共にしている」とは言いにくく、毎月または定期的な送金の実態が求められます。

手渡しはNGなのか?

税法上「振込でなければならない」という規定はありません。ただし国税庁のQ&Aでも、別居の親族の扶養控除には送金の事実がわかる書類(振込明細や通帳の記録など)の確認が挙げられており、税務署から尋ねられたときに手渡しは証明のしようがないのが実務上の問題です。後述の健康保険では添付書類として振込記録等が必須になるため、仕送りは銀行振込に一本化して記録を残すのが確実です。

税の扶養②:控除額はいくらか(70歳以上は増額)

扶養控除の額は、親の年齢(その年の12月31日時点)と同居の有無で変わります。

区分所得税の控除額住民税の控除額
一般の扶養親族(70歳未満の親)38万円33万円
老人扶養親族(70歳以上・別居48万円38万円
老人扶養親族(70歳以上・同居の父母等=同居老親等)58万円45万円

たとえば所得税率10%の会社員(年収500〜600万円程度)が、別居の72歳の母を扶養に入れると、所得税約4.9万円+住民税3.8万円=年間およそ8.7万円の税負担減が目安です(復興特別所得税込みの概算)。税率20%の人なら年13万円前後になります。親が障害者手帳を持っているなどの場合は、障害者控除(27万円〜75万円)を上乗せできることもあります。

親の側の要件は合計所得金額58万円以下です。2025年(令和7年分)の税制改正で48万円から引き上げられ、収入が公的年金だけなら「65歳以上で年金収入168万円以下」「65歳未満で118万円以下」まで対象になりました。国民年金と少額の厚生年金だけで暮らす親なら、該当するケースはかなり多いはずです。自分の場合の判定は扶養の壁シミュレーターでも確認できます。用語の基礎は用語集:扶養控除へ。

つまずき所:いくら送る?兄弟で分担している場合は?

仕送り額に「最低ライン」はあるのか

税法には「月◯万円以上」という金額基準はありません。ただし「生計を一にする」=親の生活費をあなたの送金が支えている実態が前提です。親が年金だけで生活が成り立っていて、形だけ月数千円を送るようなケースは、送金があっても生計を一にしているとは認められないおそれがあります。目安として、親の生活費の不足分を継続的に補う水準(実務では月数万円程度からが多い)を、毎月決まって送るのが安全です。

兄弟で仕送りを分担している場合:扶養控除は「1人だけ」

兄と妹がそれぞれ仕送りしていても、同じ親を2人以上の扶養親族として重複して申告することはできません。国税庁のQ&Aでも、複数の納税者が同一人を扶養している場合、扶養控除を受けられるのはいずれか1人と明確にされています。誰が控除を受けるかは兄弟間の合意で決められるので、所得税率がいちばん高い人が受けるのが世帯全体では有利です。年末調整の時期の前に、誰が申告するかを話し合っておきましょう(両方が申告してしまうと、後から税務署の照会でどちらかが修正になります)。

こんな場合は対象外
  • 親の年金収入が168万円(65歳以上)を超える、または不動産収入・給与などで合計所得58万円を超える
  • 仕送りの実態がない(口約束だけ・記録がない・単発のみ)
  • 親が誰かほかの人(父の扶養に母が入るなど配偶者控除・扶養控除)ですでに申告されている

健康保険の扶養:ハードルは「仕送り額>親の収入」

あなたが会社員(健康保険の被保険者)なら、親を被扶養者にすると親の保険料負担が0円になります。父母は同居していなくても対象にできますが、別居の場合の要件は税より厳しめです。

要件内容
親の年間収入130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)。年金(遺族年金・障害年金も含む)、給与、失業給付なども収入に数える
別居の場合の追加要件親の収入があなたからの仕送り(援助)額より少ないこと
仕送りの証明振込なら預金通帳の写しや振込明細書、現金書留なら控えの写しを添付。手渡しは証明書類が出せないため原則認められない
年齢の上限75歳以上は不可(全員が後期高齢者医療制度に加入するため)

注意したいのは「仕送り額より少ない」の意味です。たとえば親の年金が年150万円(月12.5万円)なら、60歳以上の収入基準180万円未満はクリアしても、月12.5万円を超える仕送りを続けていなければ別居の被扶養者にはできません。税の扶養よりずっと高いハードルです。逆に親の年金が月6万円程度なら、月7〜8万円の仕送りで要件を満たす余地があります。

健康保険の扶養に入れる前に確認したい注意点

  • 親の医療費の自己負担限度額(高額療養費)があなたの所得で判定されるようになり、あなたが高所得だと親に大きな医療費がかかったとき不利になることがあります。詳しくは高額療養費制度親を扶養に入れる損得
  • 健康保険組合によっては、独自に「仕送りは毎月・手渡し不可」「基準となる仕送り額」を定めています。必ず加入先の基準を確認してください
  • 国民健康保険(自営業など)には「扶養」の仕組み自体がありません。被扶養者にできるのは会社の健康保険・協会けんぽ等の加入者だけです。健保の扶養の仕組み全体は健康保険の扶養で解説しています

手続き:年末調整・確定申告・さかのぼり適用

  1. 年末調整で申告する(会社員):勤務先に出す「扶養控除等(異動)申告書」に、親の氏名・マイナンバー・生年月日・別居の住所・所得の見積額を記入します。国内に住む親なら送金関係書類の添付は不要ですが、照会に備えて振込記録は保管しておきます。書き方の全体は年末調整ガイド
  2. 確定申告で申告する(自営業・年末調整に間に合わなかった人):申告書第二表の「配偶者や親族に関する事項」に親の情報を記入し、第一表の扶養控除欄に控除額を書きます
  3. 過去の分をさかのぼる:これまで要件を満たしていたのに申告していなかった場合、確定申告をしていない会社員なら還付申告として翌年1月1日から5年間さかのぼれます。すでに確定申告をした年分は更正の請求(原則、法定申告期限から5年以内)で取り戻せます。老人扶養親族なら1年あたり8万円前後、5年分で40万円規模になることもあります

なお、住民税は所得税の申告内容が市区町村に連携されるため、別途の手続きは基本的に不要です(翌年度分から反映)。

今日やること

今日やること

  1. 親の年金額を確認する(年金振込通知書や電話で。65歳以上なら年168万円以下かどうかが税の扶養の分かれ目)
  2. 仕送りを手渡し・不定期にしている人は、今月から毎月の銀行振込に切り替えて記録を残す
  3. 兄弟がいる人は、誰の扶養として申告するかを年末調整前に決める(所得税率が高い人が有利)。過去5年の申告漏れがないかも確認する

よくある質問

Q. 仕送りは手渡しでもいいですか?

A. 税法上は手段の規定はありませんが、税務署から確認されたときに手渡しは送金の事実を証明できません。健康保険の被扶養者手続きでは振込明細や現金書留の控えなどの添付が求められ、手渡しは原則認められません。銀行振込で毎月送金し、記録を残すのが確実です。

Q. いくら仕送りすれば扶養に入れられますか?

A. 税の扶養に金額の最低基準はありませんが、親の生活費を継続的に支えている実態(毎月の定期送金)が必要です。健康保険の扶養は明確で、別居の場合は仕送り額が親の年金などの収入を上回っていること、かつ親の年収が130万円未満(60歳以上は180万円未満)であることが必要です。

Q. 兄弟2人で親に仕送りしています。2人とも扶養控除を受けられますか?

A. 受けられません。同じ親を扶養親族として申告できるのは、複数の納税者のうちいずれか1人だけです。兄弟間の話し合いで決められるので、所得税率が高い人が申告すると世帯全体の節税額は大きくなります。

Q. 過去の分の扶養控除をさかのぼって受けられますか?

A. 受けられます。確定申告をしていない会社員は還付申告として翌年1月1日から5年間、すでに申告済みの年分は更正の請求(原則5年以内)でさかのぼれます。各年分について仕送りの記録など要件を満たしていたことが前提です。

Q. 78歳の親も扶養に入れられますか?

A. 税の扶養(扶養控除)は年齢の上限がなく、75歳以上でも所得要件を満たせば対象です。一方、健康保険の扶養は75歳以上になると全員が後期高齢者医療制度に加入するため入れられません。

参考リンク(出典)

※ 本記事は2026年8月時点の制度にもとづく一般的な情報提供です。控除額・収入基準は改正されることがあります。健康保険の被扶養者の細かな基準は加入先(健康保険組合・協会けんぽ等)で異なるため、個別の判断は税務署・加入先・税理士等の専門家にご確認ください。

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公開日:2026年08月08日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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本記事は税制・各種制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。記載内容は公開時点の情報に基づき正確性に努めていますが、制度は改正される場合があります。実際のお手続き・個別のご判断は、国税庁・お住まいの税務署・税理士等の専門家にご確認ください。運営者情報・免責事項