個人事業主の決算のまとめ方|売上・経費の集計から決算書づくりまで
確定申告(e-Tax)に入力する「数字」の作り方を、ゼロから超詳しく。
確定申告の本体は、1年間の取引を集計して所得金額を確定させる「決算」です。本ページでは、売上の計上ルール、売上原価(棚卸)、経費の勘定科目を1つずつ、家事按分、青色申告特別控除まで、はじめての方が決算書を作り切れるように解説します。提出操作はe-Taxで確定申告するやり方を参照してください。
① 1年間の取引を帳簿に記帳 → ② 年末に決算(棚卸・減価償却・按分などの調整)→ ③ 決算書(青色申告決算書 or 収支内訳書)を作成 → ④ 確定申告書に所得を反映 → ⑤ e-Taxで送信。会計ソフトを使えば①〜④はほぼ自動で連動します。
提出する決算書は2種類(青色か白色か)
青色申告決算書(青色申告)
- 損益計算書+貸借対照表など4ページ
- 特別控除は令和8年分まで最大65万円、令和9年分から最高75万円・赤字の3年繰越・専従者給与
- 事前に青色申告承認申請が必要
収支内訳書(白色申告)
- 収入・経費を記載する簡易な様式
- 特別控除なし・繰越などの特典なし
- 申請不要(青色未承認の人)
青色と白色の詳しい違いは 青色申告と白色申告、開業時の手続きは 個人事業主の開業ガイド を参照。
| 控除額(令和8年分) | 主な要件 |
|---|---|
| 65万円 | 複式簿記+損益計算書・貸借対照表の添付+期限内申告+e-Taxで電子申告(または優良な電子帳簿の保存) |
| 55万円 | 複式簿記+貸借対照表+期限内申告(電子の要件なし。書面申告でも可) |
| 10万円 | 簡易な簿記(単式)でもOK |
令和9年分以後は、65万円の要件に加えて優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存を満たすと最高75万円になります。あらかじめ届出書の提出が必要です(すでに優良な電子帳簿で65万円の適用を受けている人は、改めて出さなくてもよい)[国税庁 電子帳簿等保存制度のパンフレット]。いっぽうで書面申告の上限は10万円に下がります(令和8年分の申告までは書面でも55万円)[国税庁 青色申告特別控除の見直し]。くわしくは青色申告特別控除が最大75万円にを参照してください。
複式簿記で記帳していれば、あとはe-Taxで申告するだけで控除が55万→65万円に。会計ソフト+e-Taxの組み合わせが、もっとも手間なく最大控除を取れる王道です。令和9年分からは書面申告の上限が10万円に下がるため、e-Taxで出す意味はさらに大きくなります。
① 売上(収入)のまとめ方
売上は発生主義(実現主義)で計上します。入金日ではなく、商品を引き渡した日・サービスを提供し終えた日に売上を立てるのが原則です。
12月に納品し翌年1月に入金される取引は、12月分(その年)の売上として計上します(年末の売掛金)。逆に、先にもらった代金で未提供のものは前受金として翌年の売上に。ここを間違えると所得がズレます。
- 売上:得意先ごと・月ごとに集計(請求書・通帳・決済明細と突合)。
- 雑収入:本業以外の収入(補助金、リベート、為替差益など)も計上。
- 家事消費:商品を自分や家族で消費した分も売上に含める(仕入額・通常売価の一定割合)。
※前々年分の事業所得+不動産所得が300万円以下の人は、届出により「現金主義」も選べます(入金・支払日ベース)。
② 売上原価(仕入・棚卸)
物販・製造など「仕入れて売る」事業は、売れた分だけが経費になります。年末に残った在庫は当年の経費にできないため、棚卸で在庫を数えます。
期末棚卸高(12/31に残っている在庫)は、原則「取得価額(仕入値)」で評価します。数量×単価で集計します。
③ 経費の勘定科目を1つずつ(超詳しく)
経費も発生主義(納品日・役務提供完了日)で計上します。青色申告決算書の科目に沿って整理すると、そのまま決算書になります。
| 勘定科目 | 主に含まれるもの | ポイント |
|---|---|---|
| 租税公課 | 事業税・固定資産税(事業分)・印紙税・自動車税(事業分)など | 所得税・住民税・国民年金/健康保険は経費にできない(後者は所得控除へ) |
| 荷造運賃 | 商品の梱包材・宅配便・送料 | 仕入れの送料は仕入に含めることも |
| 水道光熱費 | 電気・ガス・水道 | 自宅兼用は事業割合で按分 |
| 旅費交通費 | 電車・バス・タクシー・出張費・駐車場代 | 移動記録があると安心 |
| 通信費 | 電話・携帯・インターネット・切手・サーバー代 | プライベート兼用は按分 |
| 広告宣伝費 | 広告・チラシ・名刺・Web制作・サンプル | — |
| 接待交際費 | 取引先との飲食・手土産・慶弔費 | 事業関連が前提。私的な飲食はNG |
| 損害保険料 | 事業用の火災・賠償・自動車保険(事業分) | 生命保険は経費でなく生命保険料控除 |
| 修繕費 | 事業用資産の修理・原状回復 | 価値を高める大規模なものは資産計上(資本的支出) |
| 消耗品費 | 10万円未満の備品・文具・ソフト・消耗品 | 10万円以上は減価償却へ |
| 減価償却費 | 10万円以上の固定資産を耐用年数で配分 | 減価償却の基礎参照。青色は少額減価償却資産の特例あり(令和8年4月1日以後の取得は40万円未満) |
| 給料賃金 | 従業員への給与・賞与 | 家族へは原則これでなく専従者給与 |
| 外注工賃 | 外部への業務委託・加工費 | 支払調書・インボイスの確認を |
| 利子割引料 | 事業用借入金の支払利息 | 元本の返済は経費でない |
| 地代家賃 | 事務所・店舗・駐車場の賃料 | 自宅兼用は按分 |
| 専従者給与 | 青色事業専従者(生計を一にする家族)への給与 | 事前の届出が必要。金額は労務の対価として相当な範囲 |
| 貸倒金 | 回収不能が確定した売掛金など | 要件あり。安易な計上は不可 |
| 雑費 | 少額でどの科目にも当てはまらないもの | 多すぎると不自然。なるべく適切な科目へ |
生活費・自分への給料・所得税/住民税・国民年金/国民健康保険料(→社会保険料控除)・スーツや私的飲食など事業と関係ない支出・借入金の元本返済。
④ 家事按分(自宅兼用の費用)
自宅で働く場合、家賃・電気・通信などは「事業で使った割合」だけを経費にできます。合理的な基準で按分し、根拠(面積・時間・走行距離など)を記録しておきます。
| 費用 | 按分の基準(例) | 目安 |
|---|---|---|
| 家賃・地代 | 仕事に使う部屋の面積 ÷ 全体面積 | 1/4〜1/3 など |
| 電気代 | 使用時間・コンセント数 | 30〜50% など |
| 通信費 | 仕事の使用時間割合 | 50% など |
| 自動車関連 | 走行距離・使用日数 | 事業使用割合 |
※白色申告は「業務上必要な部分が明らか」な場合に限られるなど、青色よりやや厳格に扱われます。
⑤ 決算特有の調整(年末にやること)
- 棚卸:在庫を数えて期末棚卸高を確定(売上原価の計算)。
- 減価償却:固定資産の当年分の償却費を計上。青色申告者は少額減価償却資産の特例(令和8年4月1日以後に取得したものは40万円未満、令和8年3月31日までの取得は30万円未満。年間合計300万円まで、令和11年3月31日までの取得が対象)も使えます[国税庁 No.2100]。
- 家事按分:兼用費用を事業割合で按分。
- 未払・前払の整理:年内に発生した未払費用、来年分の前払費用を区分。
- 専従者給与:届出の範囲で家族給与を計上。
- 青色申告特別控除:要件に応じて10/55/65万円を差し引く。令和9年分からは75/65/10万円の3段階になり、書面申告の上限は10万円に下がります。
⑥ 決算書の各欄の順路(どこに何を書くか)
集計が終わったら、決まった欄に数字を移すだけです。青色申告決算書(一般用)は4ページ、収支内訳書(一般用)は2ページ。様式は「令和5年分以降用」で共通なので、毎年同じ順路で埋められます[国税庁 青色申告決算書(一般用)様式][国税庁 収支内訳書(一般用)様式]。
青色申告決算書(一般用)4ページの欄
| ページ | 並んでいる欄 |
|---|---|
| 1ページ目 損益計算書 | 売上(収入)金額(雑収入を含む)/期首商品(製品)棚卸高/仕入金額(製品製造原価)/小計/期末商品(製品)棚卸高/差引原価/差引金額/経費(租税公課・荷造運賃・水道光熱費・旅費交通費・通信費・広告宣伝費・接待交際費・損害保険料・修繕費・消耗品費・減価償却費・福利厚生費・給料賃金・外注工賃・利子割引料・地代家賃・貸倒金・雑費)/計/差引金額/繰戻額等(貸倒引当金の戻入)/繰入額等(専従者給与・貸倒引当金の繰入)/青色申告特別控除前の所得金額/青色申告特別控除額/所得金額 |
| 2ページ目 | 月別売上(収入)金額及び仕入金額(1月〜12月+家事消費等+雑収入+計+うち軽減税率対象)/給料賃金の内訳/専従者給与の内訳/地代家賃の内訳/貸倒引当金繰入額の計算/青色申告特別控除額の計算 |
| 3ページ目 | 売上(収入)金額の明細/仕入金額の明細(登録番号(法人番号)欄あり)/本年中における特殊事情/減価償却費の計算(割増(特別)償却費の欄あり)/利子割引料の内訳(金融機関を除く)/税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳 |
| 4ページ目 | 貸借対照表(資産負債調)=期首・期末の2列。現金/当座預金/定期預金/その他の預金/受取手形/売掛金/有価証券/棚卸資産/前払金/貸付金/建物/建物附属設備/機械装置/車両運搬具/工具器具備品/土地/事業主貸/支払手形/買掛金/借入金/未払金/前受金/預り金/貸倒引当金/事業主借/元入金/青色申告特別控除前の所得金額。あわせて製造原価の計算(原価計算をしていない人は記入不要) |
4ページ目の貸借対照表には「65万円又は55万円の青色申告特別控除を受ける人は必ず記入してください」と書かれています。複式簿記で記帳していれば会計ソフトが自動で作ってくれる部分です。また製造原価の計算の最後の欄(製品製造原価)は、1ページ目の仕入金額(製品製造原価)の欄へ移します[国税庁 青色申告決算書(一般用)様式]。
収支内訳書(一般用)2ページの欄
| ページ | 並んでいる欄 |
|---|---|
| 1ページ目 | 収入金額(売上(収入)金額・家事消費・その他の収入・計)/売上原価(期首商品(製品)棚卸高・仕入金額(製品製造原価)・小計・期末商品(製品)棚卸高・差引原価)/差引金額/経費(給料賃金・外注工賃・減価償却費・貸倒金・地代家賃・利子割引料)/その他の経費(租税公課・荷造運賃・水道光熱費・旅費交通費・通信費・広告宣伝費・接待交際費・損害保険料・修繕費・消耗品費・福利厚生費・雑費)/小計/経費計/専従者控除前の所得金額/専従者控除/所得金額。右側に給料賃金の内訳・税理士・弁護士等の報酬・料金の内訳・事業専従者の氏名等 |
| 2ページ目 | 売上(収入)金額の明細/仕入金額の明細(登録番号(法人番号)欄あり)/減価償却費の計算/利子割引料の内訳(金融機関を除く)/地代家賃の内訳/本年中における特殊事情 |
白色の収支内訳書には月別の売上欄がありません(月別売上は青色申告決算書の2ページ目だけ)。かわりに1ページ目の事業専従者控除の欄に「雑所得の金額の計算において、事業専従者控除を受けることはできません」という注記があります[国税庁 収支内訳書(一般用)様式]。欄ごとの細かい書き方は収支内訳書と青色申告決算書の書き方でまとめています。
収支内訳書(一般用)様式/令和7年分 収支内訳書(一般用)の書き方/所得税青色申告決算書(一般用)様式/令和7年分 青色申告決算書(一般用)の書き方/令和7年分 青色申告者のための貸借対照表作成の手引き
令和8年分の様式・書き方は2026年9月22日時点で未公表です。国税庁の「確定申告書等の様式・手引き等」は令和7年分が最新で、その令和7年分は前年の12月下旬には掲載されていました(令和7年12月24日付の正誤表あり)[国税庁 令和7年分の様式・手引き等]。同じ時期なら2026年12月〜2027年1月ごろの公開になりますが、これは過去の実績からの見込みで、国税庁が公表時期を明示しているわけではありません。
⑦ 決算書から確定申告書、そしてe-Taxへ
上の集計で事業所得が決まったら、確定申告書に反映し、さらに基礎控除・社会保険料控除・医療費控除などの所得控除を差し引いて税額を計算します。確定申告書等作成コーナーでは青色申告決算書・収支内訳書もそのまま作成・送信でき、会計ソフトの決算データを取り込むこともできます。提出手順は e-Taxで確定申告するやり方 を参照してください。
提出前の最終確認は 確定申告 必要書類チェックリスト、税額の概算は 計算ツール が便利です。
よくある質問
売上は入金日と請求日のどちらで計上する?
原則は発生主義で、商品を引き渡した日・サービスを提供し終えた日に計上します。年末に未入金でも、その年に引き渡していれば売掛金として当年の売上にします。
在庫があるのに全部経費にしていい?
いいえ。売れた分だけが売上原価(経費)です。年末に残った在庫は棚卸で数え、「期首+仕入−期末」で売上原価を計算します。
自宅兼事務所の家賃はどこまで経費?
事業に使う割合だけを家事按分して計上します。面積や使用時間など合理的な基準で計算し、その根拠を残しておきましょう。
65万円控除を受けるには何が必要?
複式簿記での記帳、損益計算書と貸借対照表の添付、期限内申告に加え、e-Taxでの電子申告(または優良な電子帳簿の保存)が必要です。令和9年分からは、これに優良な電子帳簿の保存またはデジタルシームレス保存と届出書の提出を加えると最高75万円になり、書面申告の上限は10万円に下がります。
国民年金や国民健康保険は経費になる?
事業の経費にはできませんが、確定申告で「社会保険料控除」として全額所得から差し引けます。経費と控除の入れる場所が違うだけで、税負担は軽くなります。
関連ページ
※法人の決算・申告は手続きが大きく異なります。法人税の確定申告ガイドを参照してください。
参考リンク(出典)
本ページは次の国税庁の公表資料をもとに作成しています(2026年9月時点)。制度は改正されるため、申告前に最新の内容をご確認ください。
- 国税庁 No.2070 青色申告制度
- 国税庁 No.2072 青色申告特別控除
- 国税庁 No.2210 必要経費の知識
- 国税庁 確定申告書等作成コーナー/決算書・収支内訳書の作成
- 国税庁 確定申告書等の様式・手引き等(令和7年分)(青色申告決算書(一般用)様式/収支内訳書(一般用)様式)
- 国税庁 No.2100 減価償却のあらまし(少額減価償却資産の特例40万円未満)
- 国税庁 電子帳簿等保存制度を活用して、デジタル化をさらに進めてみませんか?(令和8年6月)
- 国税庁 青色申告特別控除の見直し(令和9年分以後)
※本ページは一般的な情報提供であり、税務上の助言ではありません。個別のご判断は国税庁・税務署・税理士にご確認ください。



