副業先でも社会保険に入ることになったら|二以上事業所勤務届と保険料の按分・手取りの計算

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  • 公開。日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」、同リーフレット「兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ」をもとに作成

副業のアルバイト先から「社会保険に入ってもらいます」と言われて戸惑う人が増えています。本業で厚生年金と健康保険に入っているのに、2か所目でも入るのか。答えは「両方の会社で加入要件を満たすなら、両方で加入する」です。そのとき本人が日本年金機構に出すのが「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」で、保険料は2社の給与を合算した標準報酬月額で決まり、それを各社の給与の比で按分します。何が変わり、いくら引かれ、年金はいくら増えるのか、そして本業の会社に副業が伝わる経路まで、年金機構の資料で整理します。

結論:2か所で入るのは「両方で加入要件を満たす人」だけ

副業の形副業先で社会保険に入るか二以上事業所勤務届
業務委託・フリーランス・個人事業(雇用契約でない)入らない(社会保険は雇用が前提)不要
アルバイト・パートで週20時間未満入らない不要
週20時間以上だが、勤務先が従業員50人以下で加入拡大の対象外原則入らない(正社員の4分の3以上の勤務なら入る)不要
週20時間以上・2か月超の雇用見込み・学生でないで、勤務先が従業員51人以上(または労使合意あり)入る必要(本人が10日以内)
2社で正社員(役員兼務・出向を含む)入る必要
本業が会社員で、自分の会社(法人)の代表として役員報酬を受ける入る(法人代表は勤務時間に関係なく加入)必要

出典:日本年金機構「複数の事業所に雇用されるようになったときの手続き」[日本年金機構]、リーフレット「兼業・副業等により2カ所以上の事業所で勤務する皆さまへ」[日本年金機構]

加入要件は勤務先ごとに判定し、2社の労働時間を足し合わせることはしません。本業で週40時間働いていても、副業先で週15時間なら副業先では加入しません。短時間労働者の要件のうち「月8万8,000円以上」という賃金要件は2026年10月に撤廃され、週20時間以上かどうかが軸になります。この改正で副業先の加入要件を満たす人が増えるので、今回の話が自分に関係する人は今後増えます。要件の全体は106万円と130万円の壁と2026年10月の賃金要件撤廃を参照してください。

届出は「本人が」「10日以内に」年金事務所へ

通常の社会保険の手続きは会社がしますが、二以上事業所勤務届は被保険者本人が提出する届出です。年金機構は「事実発生から10日以内」に、選択した事業所を管轄する年金事務所(協会けんぽの場合)へ提出するとしています[日本年金機構]。

  1. 副業先が資格取得届を出す。副業先が自社の被保険者としてあなたの資格取得届を年金事務所に出します(会社の手続き)。
  2. 本人が「所属選択・二以上事業所勤務届」を出す。どちらを「主たる事業所(選択事業所)」にするかを本人が決めて記入します。通常は給与の多い本業を選びます。健康保険組合に入っている会社を選ぶ場合は、その健保組合にも届出が要ります。
  3. 年金機構が合算した標準報酬月額を決定し、両社に通知する。各社にはその社の按分後の保険料が通知され、翌月以降の給与から控除されます。
  4. 健康保険の資格は選択事業所の保険者に一本化。マイナ保険証はそのまま使えますが、協会けんぽの被保険者整理番号は新しい番号に変わります。資格確認書が必要な人には協会けんぽから交付されます。

届出が遅れても加入日はさかのぼるので、保険料が後からまとめて引かれることになります。副業先で加入が決まったら、その月のうちに出すのが安全です。

保険料はいくら増える?——合算して、給与の比で按分

年金機構の計算例は、選択事業所のA社が月20万円、B社が月10万円の場合です。報酬月額を合算した30万円で標準報酬月額が決まり、厚生年金保険料(18.3%)の月5万4,900円を労使折半した本人負担2万7,450円を、給与の比(20万:10万)で按分します[日本年金機構]。

年金機構の例(厚生年金保険料・本人負担分)
合算した標準報酬月額 30万円 × 18.3% = 5万4,900円(労使合計)→ 本人負担 2万7,450円
A社(20万円)での控除:2万7,450円 × 20万円 ÷ 30万円 = 1万8,300円
B社(10万円)での控除:2万7,450円 × 10万円 ÷ 30万円 = 9,150円

ここで大事なのは、A社での控除額1万8,300円は、A社だけで加入していたときの金額(20万円 × 9.15% = 1万8,300円)と同じだということです。按分は給与の比で行うので、本業の給与明細の保険料はほぼ変わりません。変わるのは副業給与に対して新たに保険料がかかることで、その率は本業と同じ厚生年金9.15%+健康保険約5%(協会けんぽ・料率10%前後の支部の場合)=約15%です。40歳以上は介護保険料が約0.8%加わります。

副業の月給厚生年金(9.15%)健康保険(約5%)副業給与から新たに引かれる保険料副業の手取り(税引き前)
8万円約7,300円約4,000円約1万1,300円約6万8,700円
10万円約9,150円約5,000円約1万4,200円約8万5,800円
15万円約1万3,700円約7,500円約2万1,200円約12万8,800円
20万円約1万8,300円約1万円約2万8,300円約17万1,700円

標準報酬月額は等級制なので、合算後の等級の切り上がり方で数百円単位のずれが出ます。また合算した報酬が厚生年金の上限(標準報酬月額65万円)を超える高収入の人は、上限で頭打ちになるぶん副業側の保険料が比例より少なくなります。

副業先で加入すると、副業先の会社も同額の保険料を負担します。「副業先が加入させたがらない」背景はここにあります。ただし加入要件を満たす人を加入させないのは法律違反で、本人が選べるものではありません。

払うだけではない:年金と給付が合算ベースで増える

保険料が増えるぶん、将来の老齢厚生年金は合算した報酬で計算されます。報酬比例部分は「平均標準報酬額 × 5.481/1000 × 加入月数」なので、副業の月10万円を1年続けると年金は年約6,600円、10年続けると年約6万6,000円(終身)増えます。副業で払う厚生年金保険料は10年で約110万円なので、65歳から約17年(82歳)受け取れば元が取れる計算です。

健康保険の給付も合算後の標準報酬月額で決まります。病気で働けなくなったときの傷病手当金(標準報酬月額の3分の2)や出産手当金は、副業分を含めた金額が基準になります。副業を国民健康保険・国民年金でカバーしていた人(本業が個人事業の人など)は、厚生年金への切り替えで保障が厚くなります。

一方、雇用保険は2か所では入れません。雇用保険は主たる賃金を受ける1社だけで加入します(65歳以上で2社合計週20時間以上の場合の特例を除く)。副業先で雇用保険料が引かれていたら誤りなので、確認してください。

本業の会社に副業は伝わるか

伝わります。年金機構は合算した標準報酬月額を決定したうえで、両方の会社にそれぞれの按分後の保険料を通知します。本業の会社には「二以上事業所勤務者」として按分計算された保険料の決定通知が届くので、担当者が見れば他社で加入していることが分かります。また本業側では、あなたの標準報酬月額が本業の給与だけで決まる等級と一致しなくなります。

就業規則で副業が禁止・許可制の会社なら、社会保険に入る規模の副業を始める前に届け出ておくのが現実的です。副業の税金の面では、住民税の通知でも副業の所得は本業の会社に伝わり得ます。詳しくは副業の確定申告を参照してください。

自分の会社の代表を兼ねる場合と、60歳以降の副業

会社員が自分の法人を作って役員報酬を受け取る場合、法人の代表は勤務時間に関係なく社会保険の加入対象なので、役員報酬が発生すれば二以上事業所勤務届が必要です。よく言われる「マイクロ法人で社会保険料を下げる」手法は本業が個人事業の人向けで、会社員が兼ねると合算で保険料が上がる側に働きます。仕組みはマイクロ法人と社会保険料を参照してください。役員報酬を0円にすれば加入対象になりません。

60歳以降の再雇用で2社に勤める人は、合算した標準報酬月額が在職老齢年金の計算(総報酬月額相当額)にも使われます。2026年4月から基準額が65万円に上がったので、年金と2社の給与の合計がこれを超えると年金が一部止まります。

今日やること

  1. 副業先の勤務時間と会社規模を確認する。週20時間未満、または従業員50人以下の会社で正社員の4分の3未満の勤務なら、副業先で加入せず届出も不要。
  2. 加入するなら、資格取得日から10日以内に二以上事業所勤務届を出す。選択事業所は給与の多い本業。健保組合の会社なら健保組合にも。
  3. 翌月の両社の給与明細を照合する。本業の保険料が変わらず、副業給与の約15%が引かれていれば正しく按分されている。副業先で雇用保険料が引かれていたら申し出る。

よくある質問

届出をしないままだとどうなりますか?

副業先の資格取得届が出ている時点で年金機構は2か所勤務を把握できるため、いずれ届出を求められます。加入日はさかのぼるので、遅れたぶんの保険料が後からまとめて控除されます。また選択事業所が決まらないと健康保険の資格情報が整わず、受診時に不都合が出ることがあります。

副業先の給与から保険料が引かれると、確定申告は必要ですか?

社会保険料そのものが理由で申告義務は生じませんが、給与を2か所から受けている人は、副業の給与収入が20万円を超えると確定申告が必要です。副業先で引かれた社会保険料は副業先の源泉徴収票に記載され、確定申告で本業分と合わせて社会保険料控除に入れます。

まとめ

  • 副業先でも加入要件を満たすと両方で社会保険に入り、本人が10日以内に二以上事業所勤務届を出す
  • 加入要件は勤務先ごとの判定。週20時間未満や従業員50人以下の会社なら原則として副業先では入らない
  • 保険料は2社の給与を合算した標準報酬月額で決まり、給与の比で按分。本業の保険料はほぼ変わらない
  • 副業給与から約15%が新たに引かれる一方、将来の厚生年金や傷病手当金も合算ベースで増える
  • 両社に按分後の保険料が通知されるため、本業の会社にも副業は伝わる

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参考リンク(出典)

本記事は次の資料をもとに作成しています。健康保険料率は協会けんぽの都道府県支部や健康保険組合で異なるため、表の健康保険の金額は目安です。

※本記事は一般的な情報提供です。保険料の金額は概算で、等級や料率で変わります。個別の判断は年金事務所・勤務先にご確認ください。

公開日:2026年10月17日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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