この記事の更新情報
- 公開。地方税法320条・321条の3〜321条の7、東京都主税局・武蔵野市・横浜市・大阪市・さいたま市・那珂川市、国税庁 No.2665 をもとに作成
転職先で住民税の天引きは、自動では再開しません。続けるには「給与所得者異動届出書」を前の会社から転職先へ回してもらい、給与が止まった月の翌月10日までに申し出ます。天引きが再開するのは、自治体の変更通知が届いた月の翌月からです。残額は「通知の翌月から翌年5月まで」の月数で割るので、遅れるほど1回の額が増えます。未徴収16万円なら10月から8回で月2万円、12月から6回だと月およそ26,670円です。
結論:再開のしかたは3通り、何もしないと再開しない
転職したあとの住民税は、次の3つのどれかに落ち着きます。選べるのは、6月1日から12月31日までの間に前の会社を辞めた場合です。
| ルート | 誰が何をするか | 期限 | 天引きが再開する時期 | 1回あたり |
|---|---|---|---|---|
| ①前の会社で一括徴収 | 最後の給与や退職手当から残額をまとめて引く | 退職の前に会社へ申し出る | 再開しない(翌年5月まで引かれない) | 残額を1回で |
| ②普通徴収(納付書) | 届いた納付書で自分で払う | ― | 再開しない | 残額 ÷ これから来る納期の回数 |
| ③転職先で継続 | 前の会社が異動届出書に転職先を書いて送り、転職先が自治体へ出す | 給与が止まった月の翌月10日 | 変更通知が届いた月の翌月から翌年5月まで | 残額 ÷ 通知の翌月から翌年5月までの月数 |
出典:地方税法321条の4第5項(申出と期限)、321条の5(残額の割り方・一括徴収)、321条の7(普通徴収への繰入れ)[地方税法]
天引きが自動で続かないのは、法律の決め方によります。特別徴収の対象は「前年中に給与を受け、かつその年度の4月1日に給与を受けている人」です[地方税法321条の3第1項]。年度の途中で入社した人は、この条件をそのままでは満たしません。だから続けたいときは、本人と会社から申し出る必要があります。
申出の期限は「給与が止まった月の翌月10日」
継続の手続きには、はっきりした期限があります。前の会社から給与を受けなくなった日の属する月の翌月10日まで。この期限内に転職先を通じて申し出れば、自治体は転職先を特別徴収義務者に指定します[地方税法321条の4第5項]。9月30日に辞めたなら10月10日まで、4月中に辞めた場合だけは4月30日までです。
- 辞める前に、前の会社へ「転職先で継続したい」と伝える。大阪市は事前に転職先の経理担当へ連絡したうえで、届出書に転職先の所在地・名称・連絡先を書くよう案内しています[大阪市]。
- 前の会社が「給与所得者異動届出書」を書いて転職先へ送る。年税額と何月分まで徴収済みかを記入し、未徴収分の徴収欄は「特別徴収継続」と書きます[さいたま市]。
- 転職先が開始月などを書き加え、自治体へ提出する。横浜市は「異動事由が発生した日の属する月の翌月10日まで」に届くよう求めています[横浜市]。
- 変更通知が届き、その翌月の給与から天引きが再開する。間を空けずに引き継げれば、月割額は前の会社のときと同じままです。
横浜市は2026年8月時点で、書類の受領から通知の発送まで通常より時間がかかると告知しています。10日までに届いた書類でも、翌月初旬の通知に間に合わない場合があるという内容です[横浜市]。前倒しで動くほど、次の増額を避けられます。
1か月遅れると1回あたりは約1.3倍になる
残額の割り方は法律が決めています。通知が5月31日までに届く通常の年は、年税額の12分の1を6月から翌年5月まで。通知がそれより後になった場合は、その通知があった月の翌月から翌年5月までの月数で割ると定められています[地方税法321条の5第1項]。遅れるほど残りの月数が減るので、1回の負担は自動的に重くなります。
- 月割額 24万円 ÷ 12 = 2万円。6月から9月までの4回で8万円を徴収済み
- 残りは 16万円(10月分から翌年5月分までの8か月分)
- ①一括徴収:9月の給与から16万円。9月分と合わせて18万円が引かれる
- ②普通徴収:以後に来る納期は10月期と翌1月期の2回。16万円 ÷ 2 = 1回8万円
- ③継続が10月に間に合った:10月から翌年5月まで8回 × 2万円
- ③通知が11月にずれた:12月から6回。16万円 ÷ 6 = 1回およそ26,670円
※地方税法321条の5第1項の割り方を本サイトが当てはめた試算です。端数の寄せ方には自治体差があるため、実際の額は届いた変更通知に従ってください。
手続きが1か月ずれると、1回あたりは2万円からおよそ26,670円へ増えます。期限内に納めれば年間の総額は変わりません。それでも手取りが減る月が集中するので、家計には効きます。
転職先で引かれていない6つの理由と打ち手
給与明細に住民税の行が無いときは、次のどれかに当てはまります。原因で打ち手が変わるので、まず切り分けてください。
| 理由 | どうなっているか | 打ち手 |
|---|---|---|
| 異動届出書が出ていない | 前の会社が届け出ていない/転職先を書いていない | 前の会社に提出の有無を確認する |
| 継続を申し出なかった | 残額が普通徴収に回り、納付書が自宅へ届く | 納付書を持って転職先に切替を頼む |
| 申出が翌月10日を過ぎた | その年度は指定されず、普通徴収のまま | 切替申請書で途中から戻す |
| 自治体の処理が間に合わない | 書類は届いているが通知がまだ出ていない | 翌月以降の明細を待つ |
| 年度の途中で入社した | 4月1日に給与を受けておらず対象外 | 自治体に切替の可否を確認する |
| そもそも課税されていない | 前年の所得がない、または非課税の範囲 | 手続きは不要 |
出典:地方税法321条の3第1項・321条の4第5項・321条の7/横浜市「個人の市民税特別徴収に関する異動届・切替依頼書の提出」[横浜市]
新卒1年目に引かれないのは、最後の理由です。住民税は前年の所得にかかるため、働き始めた年には課税する所得がありません。2年目の6月から始まるしくみは新卒2年目の住民税へ。会社の判断で普通徴収にできる例外の範囲は特別徴収と普通徴収の違いで整理しています。
納付書が届いたら、払う前に転職先へ見せる
普通徴収に回った場合の納期は、6月・8月・10月・1月の年4回です[地方税法320条]。あとから天引きに戻すには、転職先から「特別徴収への切替申請書」を出してもらいます。武蔵野市は開始月を「原則として切替申請書を提出する翌々月以降」と案内しています[武蔵野市]。10月に頼めば12月の給与からで、その間の納期分は自分で払うことになります。
やっておくと間に合うこと
- 届いた納付書は、払う前に転職先の給与担当へ見せる
- 切替を頼むときは、納期限内の納付書を申請書に添える
- すでに払った分があれば領収書の写しも渡す
- 切替が効くまでの納期分は、期限内に自分で納める
やってはいけないこと
- 納期限を過ぎてから切替を頼む(過ぎた分は戻せない)
- 会社に言わずに全額払う(切替の対象が残らない)
- 「そのうち会社が引いてくれる」と放置する
- 転職先にだけ伝えて、前の会社に伝えない
納期限が過ぎた分と過年度分は、特別徴収に切り替えられません。東京都主税局も武蔵野市も同じ内容を明記しています[東京都主税局]。武蔵野市は二重納付を防ぐため、切替を待つ間は納付しないよう本人へ説明することを会社側に求めています[武蔵野市]。
年末調整と、翌年6月に来る2度目の請求
年内に転職して年末まで在籍していれば、所得税の精算は転職先の年末調整で行われます[国税庁 No.2665]。前の会社から届く源泉徴収票を転職先へ出してください。間に合わないときの対処は転職した年の年末調整にまとめてあります。
もうひとつ、翌年6月から始まる新年度分があります。転職した年の所得に対する住民税は、翌年6月から転職先の給与で12回に分けて引かれます。一括徴収を選んだ人ほど、翌年6月の手取りが急に下がったように感じます。退職月で残額の扱いがどう変わるかは会社を辞めた月で住民税の請求額が変わるで早見表にしています。
健康保険や年金の切り替えを含めた退職から転職までの手続き全体は、転職・退職時の税金と手続きにまとめています。
よくある質問(転職と住民税)
転職先の給与から住民税が引かれていません。放っておいて大丈夫ですか。
大丈夫ではありません。引かれていない分は普通徴収に回り、納付書で自分が払うことになります。納期限を過ぎると延滞金が付き、その分は天引きに戻せません。まず前の会社に異動届出書の提出を確認してください。
継続の申出が期限に間に合いませんでした。もう天引きには戻せませんか。
戻せます。転職先から「特別徴収への切替申請書」を出してもらえば、納期限がまだ来ていない分を天引きに切り替えられます。ただし開始は原則として申請の翌々月以降で、納期限が過ぎた分は対象外です。
手続きが遅れると、払う総額は増えますか。
期限内に納めていれば総額は変わりません。増えるのは1回あたりの額です。残額を通知の翌月から翌年5月までの月数で割るため、再開が遅いほど1回が重くなります。延滞金が付いた場合だけは総額も増えます。
自宅に納付書が届きました。すぐ払ってもよいですか。
払う前に転職先の給与担当へ見せてください。切替の申請には納期限内の納付書を添える扱いが一般的で、先に払うと二重納付のおそれがあります。転職先が切替をしないなら、期限内に納めれば問題ありません。
参考リンク(出典)
- 地方税法(昭和25年法律第226号)法令検索——320条・321条の3・321条の4第5項・321条の5・321条の7
- 東京都主税局 特別徴収にかかる手続きについて——納期限が過ぎた分は切替不可
- 武蔵野市 普通徴収から特別徴収への切替手続き——開始は原則として申請の翌々月以降
- 横浜市 個人の市民税特別徴収に関する異動届・切替依頼書の提出——継続の提出期限、処理の遅れ
- 大阪市 退職・転勤などがあった場合(給与所得者異動届出書の提出)——事前連絡と転職先の記入
- さいたま市 再就職し、新勤務先で特別徴収を継続する手続——届出書の記載事項
- 那珂川市 市税などの延滞金の割合——令和8年の年2.8%と年9.1%
- 大阪市 市税の延滞金——延滞金特例基準割合の推移
- 国税庁 No.2665 年末調整の対象となる人——年の中途で就職した人
※本記事の計算例は、地方税法の割り方と自治体の案内を本サイトが当てはめた試算です。端数処理には自治体差があるため、実際の額は届いた通知書・納付書でご確認ください。
コメントみんなの意見
コメントの閲覧・投稿は会員限定です(無料・Googleアカウントでログイン)。
コメントは会員限定です。ログインすると読む・書くができます。
無料・Googleアカウントだけで登録できます
コメントを読み込んでいます…









