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- 公開。IRAS(個人所得税率・勤労所得控除・GST・法人税・遺産税・追加印紙税)、CPF(拠出率・月額上限)、シンガポール財務省「Analysis of Revenue and Expenditure FY2026」、国税庁 No.2260・No.1199・No.1478・No.4138、協会けんぽ 令和8年度料率をもとに作成
年収1,000万円の会社員が払う所得税と住民税は、日本で約146万円です。同じ年収をシンガポールで受け取ると、所得税は約27万円で、住民税はありません。税金だけなら約5分の1です。
ところが手取りの差は、日本の約727万円に対してシンガポールは約773万円と、1割に届きません。シンガポールの市民と永住者は、給与の20%を自分名義の強制積立(CPF)に払うからです。この記事では、所得税・社会保険・消費税・法人税・相続税・株と不動産の税を一つずつ並べ、どこで差がつくのかを一次情報で確かめます。
結論:8つの税と負担を並べると
| 項目 | 日本 | シンガポール |
|---|---|---|
| 個人の所得税 | 5〜45%(+住民税10%) | 0〜24%(住民税なし) |
| 会社員の社会保険・積立 | 本人約13〜15%(年金・医療・雇用。標準報酬に上限あり) | 市民・永住者は本人20%+会社17%を自分の口座へ。外国人はなし |
| 消費税 | 10%(食料品8%。2027年4月から2年間1%の予定) | 9%(軽減税率なし) |
| 法人税 | 23.2%(中小法人の年800万円以下は15%)。地方税込みで約3割 | 17%(所得20万Sドルまで一部免除) |
| 相続税 | 10〜55%(基礎控除3,000万円+600万円×相続人の数) | なし(2008年2月15日以後の死亡) |
| 株の売却益・配当 | 20.315%(NISAは非課税) | 原則かからない |
| 不動産の保有 | 固定資産税1.4%・都市計画税0.3%(評価額に対して) | 想定年間賃料に0〜32%(自宅)・12〜36%(自宅以外) |
| 外国人が住宅を買うとき | 上乗せの税はない | 追加印紙税60% |
※シンガポールは内国歳入庁(IRAS)・中央積立基金(CPF)の公表、日本は国税庁・協会けんぽの公表による(2026年10月時点)。各項目の出典は本文と末尾に記載。
働く人の負担で大きく違うのは所得税と、資産にかかる税(相続・株・外国人の住宅購入)です。消費税は日本とほぼ同じで、法人税はシンガポールが低めです。
年収別の手取り——税金の差ほど手取りは開かない
同じ年収を円で受け取った場合の負担を計算しました。シンガポールは「市民・永住者(CPFあり)」と「日本人駐在員(外国人なのでCPFなし)」の2通りです。
| 年収 | 日本 | シンガポール 市民・永住者 | シンガポール 外国人(駐在員) |
|---|---|---|---|
| 500万円 | 税 33.3万円 社保 73.5万円 手取り 393万円 | 税 3.1万円 CPF 100万円 手取り 397万円 | 税 6.6万円 — 手取り 493万円 |
| 1,000万円 | 税 146万円 社保 127万円 手取り 727万円 | 税 27.5万円 CPF 200万円 手取り 773万円 | 税 41.6万円 — 手取り 958万円 |
| 3,000万円 | 税 1,054万円 社保 170万円 手取り 1,775万円 | 税 316万円 CPF 236万円 手取り 2,448万円 | 税 361万円 — 手取り 2,639万円 |
※本サイトの試算。1Sドル=123円(欧州中央銀行の参照レート、2026年10月16日は123.53円)で換算。単身・40歳未満・賞与なし・月給は年収÷12。日本は令和8年分の所得税(給与所得控除・基礎控除104万/62万/0円)と住民税10%、協会けんぽ東京の令和8年度料率(健康保険9.85%・子ども・子育て支援金0.23%・厚生年金18.3%を労使折半、雇用保険は本人0.5%)。シンガポールは2024年賦課年度以降の居住者税率、勤労所得控除1,000Sドル、CPF本人20%(月8,000Sドルが上限)。シンガポールの賦課年度2026年は個人の税額還付なし。
読み方のポイントは3つです。
- 年収1,000万円までは、手取りの差が小さい。シンガポールの市民・永住者は所得税が安いぶん、CPFに年収の20%を出します。日本の社会保険料(年収500万〜1,000万円で本人約13〜15%)より重いので、手取りはほぼ並びます。
- 年収3,000万円では大差がつく。日本は所得税40%・住民税10%の帯に入り、税だけで年収の35%です。シンガポールは19%前後の帯で、CPFも月8,000Sドルで頭打ちになるため、手取りは日本より約670万円多くなります。
- CPFは「払って消える」お金ではない。本人名義の口座に積み上がり、住宅購入・医療費・老後資金に使えます。日本の年金保険料が今の高齢者への仕送り(賦課方式)なのとは性格が違います。CPFの仕組みはシンガポールのCPFとiDeCoで詳しく比べています。
なお日本人駐在員でも、シンガポールの滞在が年183日に満たないと非居住者になり、給与には15%か居住者税率の高いほうがかかります[IRAS 個人所得税率]。表の「外国人」は、年183日以上住む居住者の場合です。外国人はCPFに入らない代わりに、医療は民間保険や会社の保険で備えることになります。
所得税が安くても国が回る理由——歳入の内訳
シンガポール財務省の2026年度予算見積もりでは、歳入は1,632億Sドルです。個人の所得税は218億Sドルで、全体の13%にとどまります[シンガポール財務省 Analysis of Revenue and Expenditure FY2026(PDF)]。
| 歳入の項目(2026年度見積もり) | 金額 | 割合 |
|---|---|---|
| 法人税 | 377.7億Sドル | 23% |
| 準備金の運用益(NIRC) | 284.8億Sドル | 17% |
| 消費税(GST) | 222.6億Sドル | 14% |
| 個人の所得税 | 218.0億Sドル | 13% |
| 車の保有権利料(COE) | 94.2億Sドル | 6% |
| 資産税(固定資産税など) | 73.2億Sドル | 4% |
| 印紙税 | 69.2億Sドル | 4% |
※シンガポール財務省「Analysis of Revenue and Expenditure FY2026」の見積もり。割合は本サイトが歳入合計(営業収入1,347.5億Sドル+NIRC 284.8億Sドル)で割った値。
特徴は2つあります。一つは、国の準備金を運用した収益(NIRC)を毎年の予算に入れていることで、財務省はこれが歳入の17.4%にあたるとしています。もう一つは、車の保有権利料・印紙税・固定資産税など、車や不動産を持つ人から多く取る仕組みです。働いて稼ぐことへの課税を軽くし、資産や消費の側で集める設計といえます。
日本は逆に、年金と医療を社会保険料(現役世代の負担)で支え、所得税と住民税も累進で重くかかります。年収が上がるほど手取りの伸びが鈍るのはこのためです。負担の大きさの国際比較は国民負担率の国際比較で見ています。
消費税:9%一本で、食料品も同じ
シンガポールの消費税(GST)は2024年1月1日から9%です。1994年に3%で始まり、2003年に4%、2004年に5%、2007年に7%、2023年に8%と上がってきました[IRAS GST税率]。食料品の軽減税率はなく、所得の低い世帯には税率を下げる代わりに現金(GSTバウチャー)を配って負担を戻しています。
日本は10%で、食料品は8%です。2027年4月から2年間、食料品を1%に下げる法案が国会で審議されています。下げたあとの給付をどう組み立てるかは新給付制度の平均3万円と年収375万円で整理しています。税率を一つにして給付で戻すシンガポールと、品目ごとに税率を変える日本は、同じ「低所得者の負担軽減」を別の道具でやっています。
資産の税:相続税と株の税金がない
資産を持つ人にとっての差は、所得税よりも大きくなります。
- 相続税:シンガポールは2008年2月15日以後に亡くなった人の遺産に相続税(遺産税)をかけていません[IRAS 遺産税]。日本は最高55%で、2024年分は亡くなった人の10.4%、東京都では5人に1人が課税されています。日本の課税の広がりは「3代続けば財産がなくなる」は本当かで計算しています。
- 株の売却益・配当:シンガポールは原則として課税しません。日本は20.315%で、非課税になるのはNISAの枠の中だけです。
- 不動産の保有:シンガポールの固定資産税は、評価額ではなく想定年間賃料(年間価値)に税率をかけます。自宅は0〜32%の累進、自宅以外(賃貸・別荘)は12〜36%で、高額物件ほど重くなります。
- 外国人の住宅購入:シンガポールでは外国人が住宅を買うと、通常の印紙税に加えて追加印紙税60%がかかります(2023年4月27日以後)。市民でも2軒目は20%、永住者は1軒目から5%です[IRAS 追加印紙税]。日本に外国人だけの上乗せはありません。
相続税をなくした国はほかにもあります。廃止の経緯と、評価の不公平という論点はオーストリアの相続税廃止、各国の税率は世界の相続税比較にまとめています。
日本人がシンガポールに移っても残る日本の税金
「シンガポールに住めば日本の税金がなくなる」とは限りません。移る前に確かめたいのは次の4つです。
| 日本の税金 | どうなるか |
|---|---|
| 所得税 | 日本の非居住者になれば、課税は日本で生じた所得だけ。出国の年は1月1日から出国日までの所得で確定申告(年末調整)をする |
| 住民税 | 1月1日に日本に住所がなければ、その年度はかからない。出国した年の前年分は払う |
| 出国税(国外転出時課税) | 株などを合計1億円以上持ち、直近10年で5年超日本に住んでいた人は、出国時に売ったとみなして含み益に課税 |
| 相続税 | 日本国籍の相続人が、亡くなった日の前10年以内に日本に住所があれば、国外の財産も日本の相続税の対象 |
※出国税は国税庁 No.1478[国税庁 No.1478]、相続税の納税義務者の区分は国税庁 No.4138[国税庁 No.4138]による(令和8年4月1日現在法令等)。
とくに相続税は、本人がシンガポールに移っても、日本国籍のまま10年たたないうちに相続が起きれば、日本の相続税がかかります。シンガポールに相続税がないことだけで判断すると、ここを見落とします。富裕層の移住と日本の税金の関係は外国人富裕層の日本移住と税金(逆方向の移住の記事)とモナコの所得税ゼロでも扱っています。
シンガポールへの駐在が決まった会社員なら、論点はもっと単純です。CPFに入らず、所得税も日本より低いので、日本の非居住者になる手続き(転出届・年末調整)と、帰国後の住民税の再開時期を押さえれば足ります。
まとめ
- 年収1,000万円の所得税・住民税は、日本約146万円に対しシンガポール約27万円。シンガポールに住民税はない
- ただし市民・永住者は給与の20%をCPFに積み立てるため、年収1,000万円の手取りは日本727万円、シンガポール773万円と差は小さい
- 差が大きいのは年収3,000万円の層(手取り約670万円差)と、CPFのない外国人駐在員
- シンガポールは相続税・株の売却益・配当に税がなく、外国人の住宅購入には追加印紙税60%がかかる
- 歳入は法人税23%、準備金の運用益17%、消費税14%、個人の所得税13%。日本国籍のまま移住しても、相続税の10年ルールと出国税は残る
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今後の改善の参考にさせていただきます。分かりにくかった点があれば、お問い合わせから教えていただけると嬉しいです。
参考リンク(出典)
- IRAS「Individual Income Tax rates」(2024年賦課年度以降の居住者税率0〜24%、非居住者の給与15%)
- IRAS「Earned Income Relief」(55歳未満1,000Sドル)
- CPF「How much CPF contributions to pay」(2026年1月からの拠出率)・「What is the Ordinary Wage ceiling」(月8,000Sドル)
- IRAS「Current GST rates」(9%と税率の推移)
- IRAS「Corporate Income Tax Rate, Rebates & Tax Exemption Schemes」(法人税17%・一部免除)
- IRAS「Estate Duty」(2008年2月15日以後の死亡は遺産税なし)
- IRAS「Additional Buyer's Stamp Duty」(2023年4月27日以後の税率)
- シンガポール財務省「Analysis of Revenue and Expenditure FY2026」(PDF)(歳入の内訳、NIRCは歳入の17.4%)
- 国税庁 No.2260 所得税の税率・No.1199 基礎控除
- 協会けんぽ 令和8年度 都道府県別保険料率
- 国税庁 No.1478 国外転出をする場合の譲渡所得等の特例・No.4138 相続税の納税義務者と課税財産の範囲
この記事は2026年10月時点の公表資料にもとづく一般的な情報提供です。手取りの試算は前提を置いた目安で、為替・家族構成・賞与・各種控除で変わります。特定の国の制度の優劣を示すものではありません。移住・駐在の個別の判断は、日本とシンガポールの税務の専門家にご確認ください。













