一人親方の労災保険料は経費にならない|社会保険料控除で取り戻す申告書の書き方と日額の選び方

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  • 公開。厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」、「特別加入保険料率表(令和6年11月1日〜)」、国税庁タックスアンサー No.1130 をもとに作成

建設業の一人親方が労災保険に特別加入して払う保険料は、事業の必要経費にはならず、確定申告の「社会保険料控除」に入れます。国税庁のタックスアンサーが社会保険料控除の対象として「労働者災害補償保険の特別加入者の規定により負担する保険料」を明記しているためです。一方、加入窓口になる一人親方団体の会費・入会金は必要経費です。この区別を間違えると、経費に入れた保険料を否認されるか、控除に入れ忘れて税金を払いすぎるかのどちらかになります。帳簿の勘定科目、申告書の第一表・第二表の書く場所、控除でいくら戻るか、そして給付基礎日額をいくらにすべきかを、厚生労働省のしおりと国税庁の資料で整理します。

結論:保険料は社会保険料控除、会費は経費

払ったもの扱い帳簿の勘定科目申告書の書く場所
労災保険の特別加入保険料社会保険料控除(経費ではない)事業主貸(事業用口座から払った場合)第一表「社会保険料控除」、第二表「社会保険料控除」の内訳に「労災保険(特別加入)」と金額
団体の年会費・入会金・事務手数料必要経費諸会費(または支払手数料)収支内訳書・青色申告決算書の経費欄
国民健康保険料・国民年金保険料社会保険料控除事業主貸第一表・第二表(労災と合算して記入)

出典:国税庁 タックスアンサー No.1130「社会保険料控除」(社会保険料の範囲)[国税庁]

特別加入の保険料が経費にならないのは、労災保険が「事業のための費用」ではなく「本人の生活を守る保険」で、健康保険や国民年金と同じ性格だからです。従業員を雇っている事業主が従業員分として払う労災保険料は経費ですが、自分自身の特別加入分は控除、と分けて考えてください。

いくら払い、控除でいくら戻るか

特別加入の保険料は「給付基礎日額 × 365日 × 保険料率」で決まります。建設業の一人親方の保険料率は1000分の17(令和6年4月から。令和8年度も据え置き)です[厚生労働省・特別加入保険料率表]。

給付基礎日額年間保険料(建設業・17/1000)社会保険料控除で戻る税金(税率20%の人・目安)休業補償(1日・8割)
3,500円2万1,709円約4,300円2,800円
5,000円3万1,025円約6,200円4,000円
8,000円4万9,640円約9,900円6,400円
1万円6万2,050円約1万2,400円8,000円
1万4,000円8万6,870円約1万7,400円1万1,200円
2万円12万4,100円約2万4,800円1万6,000円
2万5,000円15万5,125円約3万1,000円2万円

出典:厚生労働省「特別加入制度のしおり(一人親方その他の自営業者用)」表4 給付基礎日額・保険料一覧表[厚生労働省]。「戻る税金」は所得税10%+住民税10%の人の概算

ここで見落としやすいのが、社会保険料控除は所得税・住民税には効くが、国民健康保険料には効かないことです。国保の所得割は「所得 − 基礎控除43万円」で計算され、社会保険料控除などの所得控除は引かれません。仮に保険料が経費として認められるなら事業所得そのものが減って国保料も下がりますが、控除扱いなのでそうなりません。年6万円の保険料なら、国保の所得割率10%前後の自治体で約6,000円の差です。国保料の仕組みは国民健康保険料の計算を参照してください。

帳簿と申告書の書き方

  1. 帳簿:事業用口座から払ったら「事業主貸」。仕訳は「事業主貸 62,050 / 普通預金 62,050」。個人の口座から払ったなら帳簿に載せなくてかまいません。会費は「諸会費 12,000 / 普通預金 12,000」のように経費で処理します。団体の請求書は保険料と会費が1枚にまとまっていることが多いので、内訳を分けて記帳してください。
  2. 第二表:「社会保険料控除」欄に種類と金額。「労災保険(特別加入)」「国民健康保険」「国民年金」とそれぞれの支払額を書き、合計を出します。国民年金は控除証明書の金額、国保は納付額の通知、労災は団体が発行する保険料の領収書または納付証明の金額です。
  3. 第一表:「社会保険料控除」に第二表の合計。作成コーナーで入力すれば自動で転記されます。
  4. 証明書の添付は不要だが保管する。国民年金の控除証明書は添付(またはe-Taxで省略)が必要ですが、労災の特別加入保険料には法定の控除証明書がなく、添付義務はありません。団体の領収書を5年間保管してください。

青色申告決算書や収支内訳書には保険料を書きません。経費欄に入れると事業所得が過少になり、税務調査で否認されます。「団体に払った額を丸ごと諸会費にしていた」は一人親方の申告でよくある誤りです。

給付基礎日額の選び方:安いほど得ではない

給付基礎日額は3,500円から2万5,000円の間で本人が申請し、労働局長が決定します。保険料が安くなる低い日額を選びがちですが、休業補償も障害・遺族の給付もすべてこの日額で決まります。厚労省のしおりも「低い場合は保険料が安くなるが、給付も少なくなるので適正な額を」と注意しています。

  • 休業補償は日額の8割(60%+特別支給金20%)。日額1万円なら休業4日目から1日8,000円。日額3,500円なら2,800円で、1か月休んでも8万4,000円にしかなりません。一人親方には健康保険の傷病手当金がないので、労災が働けないときの唯一の所得補償です。
  • 実際の1日の稼ぎに近い額にする。日当2万円で働いている人が日額5,000円で加入すると、ケガで休んだ月の補償は稼ぎの2割です。年間保険料の差(5,000円→2万円で約9万3,000円)を「所得補償保険の掛金」として比べてください。民間の所得補償保険より安いことがほとんどです。
  • 変更は年度単位。翌年度から変えるなら3月2日〜31日に変更申請、年度更新期間にも当年度の変更ができます。ただし災害が起きた後の変更はできません。
  • 年度途中の加入は月割。10月に加入すれば6か月分の保険料です。

労災の給付は非課税で、休業補償を受けても確定申告に含めません。労災の給付の中身は労災の休業補償と傷病手当金の違いにまとめています。

何が補償されるか:請負の現場作業と、通勤

一人親方の労災が出るのは「請負契約に直接必要な行為」「請負工事現場での作業とそれに直接附帯する行為」「請負契約に基づくことが明らかな自家内作業」「請負工事の機械や製品の運搬」などに限られます[厚生労働省・しおり]。通勤災害も対象です。逆に、営業活動や自宅での事務作業中のケガは業務災害になりません。

給付は療養(治療費全額)、休業(4日目から日額の8割)、障害(等級に応じた年金・一時金)、遺族(年金または日額1,000日分の一時金+特別支給金300万円)、葬祭、介護と、労働者の労災と同じです。元請から現場入場の条件として加入証明を求められるのは、この補償があるためです。

団体選びと、法人化した場合

  • 保険料はどの団体でも同じ。給付基礎日額と業種で決まる国の保険料なので、団体による差はありません。差が出るのは会費・入会金・事務手数料(年6,000円〜2万円台)と、加入証明書の発行の早さ、労災申請の手伝いです。「保険料が安い」をうたう団体は、給付基礎日額を低く設定している可能性があるので確認してください。
  • 会費は経費、保険料は控除。請求書の内訳を見て、記帳を分けます。
  • 法人化して自分が社長になったら、一人親方の特別加入ではなく「中小事業主等の特別加入」に切り替えます(労働保険事務組合経由)。保険料の税務上の扱いは、法人が負担すれば法人の損金です。個人事業から法人にする判断はマイクロ法人と社会保険料を参照してください。

よくある質問

去年まで保険料を経費に入れて申告していました。どうすればよいですか?

正しくは社会保険料控除です。経費から外して控除に入れ直しても、所得税・住民税の額はほぼ同じになることが多いですが、国保料の計算では事業所得が増えるので国保料が上がる方向に動きます。過去分を直すなら修正申告(税額が増える場合)または更正の請求(減る場合)で、迷う場合は税務署に相談してください。今年分から正しく分ければ、過去分を必ず直さなければならないわけではありません。

妻や子の分の労災保険料を私が払っています。私の控除にできますか?

生計を一にする配偶者や親族の社会保険料を本人が払った場合は、払った人の社会保険料控除にできます。家族が同じ現場で働く一人親方として特別加入している場合、その保険料を世帯主が払っていれば世帯主の控除です。

インボイス登録した一人親方です。労災の保険料に消費税はかかりますか?

かかりません。労災保険料は非課税取引で、消費税の仕入税額控除の対象にもなりません。団体の会費も対価性がなければ不課税ですが、事務手数料など役務の対価に当たる部分は課税仕入れになることがあります。団体の請求書の区分を確認してください。

まとめ

  • 一人親方の労災保険の特別加入保険料は必要経費ではなく、確定申告の社会保険料控除に入れる
  • 一人親方団体の年会費・入会金・事務手数料は必要経費。請求書の内訳を分けて記帳
  • 建設業の保険料率は1000分の17。給付基礎日額1万円なら年間保険料6万2,050円
  • 社会保険料控除は所得税・住民税には効くが、国民健康保険料には効かない
  • 給付基礎日額は休業補償など給付の基準。安さより実際の1日の稼ぎに近い額を選ぶ

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参考リンク(出典)

本記事は次の資料をもとに作成しています。保険料率は改定されることがあるため、加入・更新時に最新の料率表をご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供です。申告の個別判断は税務署・税理士に、労災の給付は労働基準監督署にご確認ください。

公開日:2026年10月29日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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