この記事の更新情報
- 公開。財務省「令和8年度 税制改正の解説」「令和8年度税制改正の大綱」、衆議院・参議院の議案情報、金融庁の政令公布、国税庁 No.1524・No.2260・No.1331・暗号資産の質疑応答集をもとに作成
暗号資産の利益に20.315%の申告分離課税が使えるのは、2028年1月1日からです。根拠の税法は2026年3月31日に成立していて、方針ではありません。ただし20.315%になるのは、日本の登録業者に売ったぶんだけです。海外の取引所や分散型取引所、個人間の売買は2028年以降も総合課税です。2027年12月31日までに売った利益は、いまと同じ最大55.945%で課税されます。課税所得500万円の会社員が300万円もうけるなら、差は約33.5万円です。確かめるのは、売る場所と含み益の大きさの2つです。
結論:20.315%が使えるのは2028年1月1日から
| 時点 | 何が起きるか |
|---|---|
| 2026年3月31日 | 所得税法等の改正法が成立・公布(令和8年法律第12号)。措法38条の2と38条の3が創設[財務省 改正の解説] |
| 2026年7月23日 | 金融商品取引法等の改正法が公布(令和8年法律第64号)[参議院] |
| 2027年4月1日〜7月22日 | この間に暗号資産の部分が施行。日付の政令は未公布 |
| 2027年12月31日まで | 雑所得の総合課税。最大55.945% |
| 2028年1月1日(令和10年分) | 申告分離20.315%・3年繰越・譲渡所得化が同時に始まる |
| 2029年分の取引 | 業者が「年間取引報告書」を税務署へ出す制度に |
出典:財務省『令和8年度 税制改正の解説』[財務省]。施行期日は法律案の附則第一条[衆議院]。
「2027年1月1日から20%」という説明は法律上あり得ません。税法の適用開始は「金商法等改正法の施行の日の属する年の翌年の1月1日」です[財務省 措法の改正 p.335]。その施行は2027年中にしか置けません。だから開始は2028年で動きません。
「方針」ではなく法律:措法38条の2はすでに創設済み
「大綱で方針が示された段階」という解説はもう古いです。創設されたのは措法38条の2(申告分離課税の特例)と38条の3(譲渡損失の繰越控除)です。どちらも令和8年法律第12号として公布されています[財務省 改正の解説 p.89]。
それでもまだ使えません。施行が金商法の改正とセットだからです。法令検索で今の租税特別措置法を引いても「特定暗号資産」は出てきません[法令検索 租税特別措置法]。金融庁が公布した政令も、20日後施行の罰則強化などの部分だけです[金融庁]。
- 決まっている:20.315%・3年繰越・譲渡所得化・開始は2028年1月1日
- 未確定:2027年の何月何日に施行するか(政令が未公布)
- 未確定:「特定暗号資産」に入る銘柄リスト(施行に合わせて定める予定)
- 未確定:ステーキングやレンディングの報酬の2028年以降の扱い
基本の計算と確定申告のやり方は暗号資産(仮想通貨)の税金にあります。この記事は「いつから・誰が・いくら変わるか」だけを扱います。
20.315%は「国内の登録業者に売ったぶん」だけ
特例の対象になる譲渡は、暗号資産取引業者への売委託か、その業者に対する譲渡に限られます[財務省 措法の改正 p.329]。売る相手が国内の登録業者でなければ、2028年以降も累進課税です。
20.315%になる売り方
- 登録簿に載った銘柄(特定暗号資産)を国内の登録業者に売る
- その業者に売委託して売る
- 施行日に暗号資産交換業者だった会社への譲渡(みなし業者として最長2年)
総合課税のまま(累進)
- 海外の取引所で売った利益
- 分散型取引所での交換
- 個人間の売買、商品を買ったとき
- 登録簿に載っていない銘柄
海外取引所に資産を置いている人は、税率が下がる前提で計画を立てないほうが安全です。銘柄リストも未公表で、手持ちの通貨が対象かは確認できません。
課税所得500万円の会社員なら、利益300万円で差は33.5万円
待つ価値を数字で見ます。前提は課税総所得金額500万円(利益を足す前)の会社員、住民税10%・復興特別所得税2.1%です。
| 利益 | 2027年分まで | 実効 | 2028年分から | 差 |
|---|---|---|---|---|
| 100万円 | 304,200円 | 30.42% | 203,150円 | 101,050円 |
| 300万円 | 944,761円 | 31.49% | 609,450円 | 335,311円 |
| 1,000万円 | 3,901,171円 | 39.01% | 2,031,500円 | 1,869,671円 |
- 所得税:195万円×20%=390,000円/105万円×23%=241,500円 計631,500円
- 復興特別所得税:631,500円×2.1%=13,261円
- 住民税:300万円×10%=300,000円 → 総合課税は944,761円
- 申告分離:300万円×20.315%=609,450円 差は335,311円
※本サイトの試算です。国税庁の速算表に当てはめたもので、公表された計算例ではありません[国税庁 No.2260]。均等割と調整控除は無視し、1円未満は切り捨てました。
累進なので、利益が大きい人ほど差が広がります。逆に課税所得が低く利益も小さい人は、総合課税のほうが軽いこともあります。課税方式の違いは総合課税と分離課税どちらが得かで整理しています。
2028年から譲渡所得へ。ただし特別控除も2分の1もない
2028年から、暗号資産の譲渡による所得は雑所得ではなく譲渡所得の新しい類型になります[財務省 改正の解説 p.108]。ただし譲渡所得の有利な部分は使えません。
| 項目 | 2027年分まで | 2028年分から |
|---|---|---|
| 所得区分 | 雑所得(収入300万円超+帳簿で事業所得) | 譲渡所得 |
| 課税方式 | 総合課税・累進 | 登録業者への譲渡だけ分離20.315% |
| 50万円の特別控除 | 雑所得なので関係なし | 使えない |
| 5年超保有の2分の1 | 同上 | 使えない |
| 給与などとの損益通算 | できない | できない |
| 損失の繰越 | できない | 暗号資産どうしで3年 |
| 扶養などの判定 | 合計所得金額に含む | 分離でも含む |
出典:財務省『税制改正の解説』p.108・p.329以下[財務省]。所得区分は国税庁の質疑応答集[国税庁]。
名前は譲渡所得でも、50万円の特別控除も5年超で半分にする扱いも外されています。税率が下がる代わりに優遇は付いてこない設計で、ここは不利な点です。
3年繰越には手続の縛りがあります。損が出た年から連続して確定申告書を出すこと、控除を受ける年に明細書を添付することが要件です。売買がなかった年も申告します。流れは上場株式と同じで、株とNISAの確定申告が参考になります。
落とし穴もあります。2027年分までの損失は繰り越せません。措法38条の3の対象は開始日以後の損失だけです。いま損切りしても2028年以降の利益とはぶつけられません。
復興1.1%+防衛1%に入れ替わっても20.315%は動かない
20.315%の中身は、所得税15%に復興特別所得税2.1%を乗せた15.315%+住民税5%です。2027年分から復興特別所得税は1.1%へ下がりますが、同時に防衛特別所得税1%が入ります[国税庁 No.2260]。
付加税の合計は2.1%のままで、国税庁も合計税率は変わらないと明記しています[国税庁 No.1331]。上場株式や先物取引と横並びの20.315%になる、という理解で問題ありません。
証拠金取引(デリバティブ)も2028年から分離です。こちらは措法38条の2ではなく、先物取引の特例の措法41条の14に追加されます[財務省 大綱]。対象は特定暗号資産にかかるものだけです。
2027年に売るか、2028年まで待つか——4つの判断軸
次の順で確かめると答えが出ます。税率だけを見て「待つのが正解」と決めない方がよい場面もあります。
- 売る場所はどこか。海外の取引所や分散型取引所しか使っていないなら、待っても税率は下がりません。国内の登録業者に移すかを先に決めます。
- 含み益はいくらか。課税所得500万円なら、利益100万円で約10万円、300万円で約33.5万円、1,000万円で約187万円の差です。数十万円なら価格変動のリスクのほうが大きくなります。
- 損失を抱えていないか。含み損は2027年中に確定させても繰り越せません。利益と損が同じ年なら、2027年でも雑所得の中で相殺できます。
- そもそも売るのか。持っているだけでは所得は生じません。売却・商品の購入・別の暗号資産との交換をした時点で課税されます[国税庁 質疑応答集 問1-1〜1-3]。
次にやることは1つです。国内の登録業者の口座と含み益の額を確かめ、2027年分と2028年分のどちらで利益を出すかを決めておくことです。日付が確定するのは政令が出たときなので、年に1度公表を見れば足ります。
まとめ
- 20.315%の申告分離課税が使えるのは2028年1月1日から。根拠の税法は2026年3月31日に成立済み
- 対象は日本の登録業者に売ったぶんだけ。海外取引所・分散型取引所・個人間の売買は総合課税のまま
- 2027年12月31日までの利益は最大55.945%。課税所得500万円の会社員が300万円もうけると差は約33.5万円
- 譲渡所得になっても50万円の特別控除と2分の1はない。2027年分までの損失は繰り越せない
- 確かめるのは売る場所と含み益の大きさの2つ
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今後の改善の参考にさせていただきます。分かりにくかった点があれば、お問い合わせから教えていただけると嬉しいです。
参考リンク(出典)
- 財務省 令和8年度 税制改正の解説(所得税法等の改正)——成立日・譲渡所得化
- 同(租税特別措置法等・所得税関係の改正)——対象となる譲渡と適用関係
- 財務省 令和8年度 税制改正の大綱——20%の内訳
- 衆議院 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律案——附則第一条の施行期日
- 参議院 議案情報——公布日
- 金融庁 政令の公布について——政令の範囲
- 法令検索 租税特別措置法——未施行の確認
- 国税庁 暗号資産等に関する税務上の取扱いについて——所得区分と課税の時期(問2-2、問1-1〜1-3)
- 国税庁 No.1524——現行の取扱いの入口
- 国税庁 No.2260 所得税の税率——速算表と付加税
- 国税庁 No.1331——合計税率は不変
※施行期日の政令、銘柄リスト、ステーキング報酬の2028年以降の扱いは未確定です。個別の判断は税理士・税務署にご確認ください。













