新給付制度は平均3万円・2,000万人|年収375万円の線はどこから来たか

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  • 公開。内閣官房・財務省「法律案の概要」(令和8年10月)、社会保障国民会議 参考資料(令和8年7月29日・23ページ)、大綱(令和8年9月15日閣議決定)、共同通信(10月17日・10月16日)、時事通信(10月10日・10月14日)の報道をもとに作成

新しい給付制度の「数字」が、10月17日に初めて出ました。政府が与野党に示した案では、先行して始まる2027・2028年度は約2,000万人に1人平均で年3万円程度を配ります[共同通信 2026年10月17日]。制度の正式名は就業者負担軽減支援金。10月9日に国会へ出た法案が、10月20日の衆院本会議で審議に入ります。

ただし政府はこの数字を「一つの参考」と呼んでいます。法律に金額は書かれず、政令で決める仕組みだからです。この記事では、法案で決まっていること・参考として示された数字・まだ白紙のことを分けて並べ、年収375万円という線がどこから出てきたのかを一次資料で確かめます。

結論:決まったこと・参考の数字・白紙のことを1枚に

項目いまの状態出どころ
名前・開始決定就業者負担軽減支援金。2027年4月から、毎年1回。2029年度だけ4月にも支給法案(10月9日閣議決定)
誰に決定個人単位。働いて得た所得があり、所得が上限以下で、税・社会保険料の負担が年金収入より多い人。配偶者の所得は2029年度から見る法案・大綱
受け取り方決定1月1日に住んでいた市区町村。公金受取口座を登録していれば申請不要。非課税・差押え禁止法案・大綱
2年間の総額決定食料品の消費税1%相当(年およそ6,000億円)の範囲大綱
対象者数参考約2,000万人=現役就業者の約3割。米英仏の類似制度で約3割が対象であることから首相答弁(10月14日)
1人の金額参考平均で年3万円程度(2027・2028年度)。手取りが徐々に増えるよう4段階で調整政府案(10月17日報道)
年収の上限参考財務相が目安として375万円を例示(10月16日)。9月末には300万円程度の案も報道国会答弁・報道
年収の下限白紙給与収入で約53万円超・74万円超・約106万円超の3案が並んだまま大綱の概要資料
金額の階段白紙定額の額、増え始める年収、頭打ちの額、減り始める年収、こども加算の額はすべて政令待ち法案(政令で定める)
2029年度以降白紙規模を広げる方向だが、恒久財源が決まっていない法案・首相答弁

※法案の概要は内閣官房・財務省の資料[内閣官房・財務省 法律案の概要(PDF)]、対象者数は時事通信[時事通信 2026年10月14日]、年収上限の例示は共同通信(2026年10月16日)による。

要件の中身や受け取りの手順は就業者負担軽減支援金のもらい方、年金だけの人や非課税世帯がどうなるかは対象外になる人の7類型で整理しています。この記事は10月に出た数字だけを扱います。

「平均3万円」は、6,000億円を2,000万人で割った数字

3万円の出どころは単純な割り算です。2027・2028年度に配れる総額は、食料品の消費税を1%に下げたあとに残る1%分、年およそ6,000億円と大綱で決まっています。首相が例示した2,000万人で割ると、1人3万円になります。つまり金額が先に決まったのではなく、財源と人数から逆算した平均値です。対象者を増やせば1人の額は減り、絞れば増えます。

比べる相手は、減税そのものの効果です。首相は10月9日、食料品の消費税を1%にすることで国民1人あたり年およそ3.6万円の負担が軽くなると述べました[時事通信 2026年10月10日]。この3.6万円は買い物をする全員に効きます。支援金の3万円は、そのうえで対象者だけに足されます。

2027・2028年度の軽減(年・1人あたり)対象になる人対象外の人
食料品の消費税 8%→1%約3.6万円約3.6万円
就業者負担軽減支援金(平均)約3万円0円
合計約6.6万円約3.6万円

※3.6万円は首相答弁(時事通信 10月10日)、3万円は政府案(共同通信 10月17日)の平均値。本サイトが足し合わせた目安で、個人の金額は年収・子どもの数で変わります。

対象者数の2,000万人も「参考」です。首相は10月14日の衆院予算委員会で、米国・英国・フランスの類似制度では現役就業者の約3割が対象になっていると述べ、日本の現役就業者約6,000万人の3割として2,000万人程度を挙げました[時事通信 2026年10月14日]。所得の上限は「純負担率の国際比較と恒久財源の確保を併せて検討する」としています。

年収375万円の線は、国民会議の国際比較から来ている

片山財務相が10月16日の参院予算委員会で目安として挙げた375万円には、元になった表があります。社会保障国民会議が7月29日に示した参考資料で、共働きで子ども2人の世帯の税・社会保険料の純負担(負担から児童手当などの給付を引いた額)を、米国・ドイツ・フランスの平均と比べたものです[内閣官房 社会保障国民会議 参考資料(PDF)23ページ]。

世帯の給与収入(2人分)日本の純負担額3か国平均との差(世帯)同・1人あたり
270万円▲72万円+10万円+2.4万円
325万円▲20万円+15万円+3.7万円
375万円28万円+27万円+6.9万円
430万円59万円+15万円+3.7万円
485万円79万円+6万円+1.4万円
540万円94万円▲6万円▲1.4万円

※夫婦35歳・共働き(収入は1対1)・子2人(5歳と2歳)の民間給与所得者のモデル。純負担額は所得税・住民税・社会保険料・消費税(推計)から児童手当などを引いた額。+は日本のほうが重い。出典は上記の参考資料。

表を見ると、日本の負担が3か国平均を最も上回るのが世帯収入375万円のときで、世帯で27万円、1人あたり6.9万円です。540万円で逆転し、日本のほうが軽くなります。首相が10月14日に「夫婦と子ども2人で世帯収入510万円以下なら日本の純負担率が高い」と述べたのも、この表の485万円と540万円の間の交点です。

ここから2つのことが読めます。第一に、375万円は「共働き世帯の2人分の収入」のモデル値であって、個人年収の上限として示されたのかは報道から確定できません。財務相自身も「一つの参考で、それ以上の目安はない」としています。第二に、375万円世帯の1人あたり6.9万円という「重さ」は、減税3.6万円と支援金平均3万円を足した約6.6万円でほぼ埋まります。政府案の金額は、この表の山を消す大きさで組まれていると読めます。

一方で同じ資料の単身者の表では、日本の純負担は年収215万円を除いて3か国平均より軽く、年収325万円では15万円軽い計算です。「負担が重い」という説明がよく当てはまるのは子育て世帯です。単身で働く人の線引きをどうするかは、この表からは読めません。国民負担率の見方そのものは国民負担率の国際比較で整理しています。

金額は「階段」で決まる——決まっているのは形だけ

報道の「4段階で調整」は、大綱が決めた支援額の形のことです。年収が低いところでは定額、住民税がかかり始める年収(単身で約119万円)から増えていき、中ほどで頭打ち、上限に向けて減ってゼロになります。これに16歳未満の子どもの数に応じたこども加算と、年収の壁に当たる人への上乗せが足されます。

法案はこれらの額を「税制及び社会保険制度の状況、就業の促進等の効果、純負担率の状況等を考慮して」政令で定めるとしています[内閣官房・財務省 法律案の概要(PDF)]。年収別にいくらになりうるかは、年収別シミュレーションと給付付き税額控除シミュレーターで、金額の仮置きを変えながら試せます。

金額が白紙のまま国会で審議される

法案は10月9日に閣議決定・提出され、10月20日に衆院本会議で審議入りします。与党は今国会での成立をめざしています。ただし、対象者と金額を白紙にしたまま給付法案を審議するのは異例だと時事通信は指摘しています[時事通信 2026年10月10日]。首相は13日の衆院予算委員会で「財源確保の状況などを踏まえて設定する。現段階で確たることが申し上げられない」と述べました[時事通信 2026年10月14日]。

働く側から見ると、気になる点は3つです。

  • 線の外側は減税だけ。年収の上限が375万円前後なら、それより上の現役世代は減税3.6万円のみ。2029年4月に食料品の消費税が8%へ戻ると、対象外の人は緩和なしで元の負担に戻ります。この経緯は2029年に8%へ戻すときの給付で追っています。
  • 財源は「歳出・歳入全般の見直し」。法案は特例公債に頼らないと書きますが、何を削るかは租特・補助金・基金の見直し会議でまだ出そろっていません。2029年度以降の恒久財源も未定です。
  • 金額は12月の予算編成で出る。政令で定める額は2027年度予算と一緒に固まる見込みです。財務相は「予算は毎年国会に出すので審議できる」と答えています。

国が毎年、所得に応じた給付を続ける仕組みを法律で作るのは初めてです。1回限りの定額給付より筋は通っています。ただ、読者が自分の金額を知れるのは年末以降です。

いま動くこと

  1. 公金受取口座の登録を確かめる。登録があれば申請不要で振り込まれます。手順はもらい方の記事にまとめています。
  2. 住民税がかからない人も確定申告をする。市区町村が所得を把握していないと、対象でも拾われません。
  3. 世帯収入が300万〜400万円台なら、12月の予算案を見る。上限の線がこの帯のどこに引かれるかで、対象かどうかが決まります。

まとめ

  • 政府案は2027・2028年度に約2,000万人へ1人平均年3万円。6,000億円を2,000万人で割った参考値で、法律には書かれない
  • 2,000万人は現役就業者約6,000万人の3割。米英仏の類似制度で約3割が対象であることが根拠
  • 財務相が例示した年収375万円は、国民会議の国際比較で共働き・子2人の世帯の負担が3か国平均を最も上回る世帯収入(1人あたり6.9万円)
  • 減税3.6万円+支援金3万円=約6.6万円で、その差はほぼ埋まる計算。対象外の人は減税3.6万円だけ
  • 下限(53万・74万・106万円)、階段の金額、2029年度以降の財源は白紙。法案は10月20日に審議入り、金額は12月の予算編成で

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参考リンク(出典)

財務相の「375万円」の例示は共同通信(2026年10月16日・参院予算委員会)の報道によります。この記事は2026年10月18日時点の法案・答弁・報道にもとづく一般的な情報提供です。対象者数・金額・年収の線はいずれも「参考」で、国会審議と2027年度の予算編成で変わります。個別の判断は市区町村・税務署・税理士にご確認ください。

公開日:2026年10月18日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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