世界の相続税を比較してみた|日本の55%は本当に世界一?ない国はどこ?

世界の相続税を比較してみた|日本の55%は世界一?

「日本の相続税は世界一高い」。よく聞く話ですが、本当でしょうか。答えは「最高税率55%は世界最高水準。しかも基礎控除が小さく“普通の家”にもかかる点で、世界的にかなり特異」です。一方、世界を見渡すと127か国中83か国には相続税自体がありません。アメリカは控除が約23億円あり事実上ほぼ無税。この記事では主要国を比較表で並べ、日本の立ち位置と「海外移住では逃れられない理由」まで解説します。

比較でわかる要点

① 日本の最高税率55%は世界最高水準。課税遺産が大きい領域では実負担も世界トップクラス[国際比較]
② アメリカの連邦遺産税は最高40%だが、基礎控除が1人1,500万ドル(約23億円・2026年から恒久化)あり、大多数のアメリカ人に相続税はかからない。
世界127か国中83か国は相続税なし(経済産業省調べ)。オーストラリア・カナダ・シンガポール・香港・スウェーデンなどは廃止した国。
④ 日本は基礎控除が小さく(3,600万円〜)、亡くなった人の約10人に1人が課税される「大衆課税」になっている点が特異。
⑤ ただし「海外に移住すれば逃れられる」は甘く、被相続人・相続人の双方が10年超国外に住まない限り、全世界の財産に日本の相続税がかかります。

相続・国際比較

主要国の比較表

最高税率非課税枠の目安特徴
日本55%3,600万円〜(3,000万+600万×法定相続人)控除が小さく課税対象が広い。配偶者は1.6億円(または法定相続分)まで非課税
韓国50%(大株主は割増で実質最大60%)一括控除5億ウォン(約5,500万円)等日本に次ぐ重さ。サムスン創業家の相続税約12兆ウォンが有名。税率引き下げ・課税方式の見直しを議論中[JETRO]
フランス45%(直系)子1人10万ユーロ(約1,700万円)配偶者は完全非課税。兄弟姉妹・他人への相続は更に高率
イギリス40%(一律)32.5万ポンド(約6,300万円)+自宅上乗せ17.5万ポンド配偶者は完全非課税。生前7年経過の贈与は非課税
アメリカ40%(連邦)1,500万ドル(約23億円)・夫婦で約46億円(2026年〜恒久化)遺産全体に課税する「遺産税」方式。事実上、超富裕層だけの税金。州独自の税がある州も
ドイツ30%(配偶者・子の場合)配偶者50万ユーロ・子40万ユーロ(約6,800万円)続柄で税率と控除が大きく変わる
相続税なし(83か国)オーストラリア(1979廃止)・カナダ(1972廃止)・NZ・シンガポール(2008廃止)・香港(2006廃止)・スウェーデン(2004廃止)・中国・インドなど

※円換算は2026年6月時点の概算。各国とも続柄・資産の種類による特例が多数あり、表は単純化した目安です。

比較から見える「日本の3つの特異点」

  • (1) 課税対象が広い(大衆課税):米英仏独は「非課税枠が大きい」か「配偶者完全非課税」のため、課税されるのは富裕層中心。日本は基礎控除が3,600万円〜と小さく、都市部の持ち家+預金で超えるため、亡くなった人の約10%が課税対象です(基礎控除の計算)。
  • (2) 最高税率の高さ:55%は現存する相続税の中で最高水準。韓国の50%(割増で60%)と並び、東アジア2か国が世界の最高税率を占めます。米国は税率40%でも控除23億円のため、「11億円を超えるあたりからは日本の実負担が世界トップ」という比較が知られています[国際比較]
  • (3) 配偶者の扱い:英仏は配偶者への相続が完全非課税ですが、日本は1.6億円(または法定相続分)まで。十分手厚いものの「完全非課税」ではなく、二次相続まで考えた設計が必要になります。

「相続税がない国」はなぜ廃止したのか

  • 富と人材の流出への危機感:スウェーデン(2004年廃止)はIKEA創業者らの国外流出が議論の引き金になりました。シンガポール・香港は資産誘致の国家戦略として廃止。隣の韓国でも、重い相続税が富裕層の国外移住を促しているとして、税率引き下げ(50%→40%案)や遺産取得課税方式への転換が議論されています[チェスターNEWS][JETRO ソウル]
  • ただし「タダ」ではない:カナダは相続税の代わりに、死亡時に全資産を時価で売ったとみなしてキャピタルゲイン課税(みなし譲渡)を行います。オーストラリアも相続人が売却する時に取得費を引き継いで課税。「相続税ゼロ=無税」ではなく、課税のタイミングと形が違うだけの国も多いのです。
  • 一方で、相続税は「資産格差の固定を防ぐ再分配装置」という積極的な役割もあり、廃止国でも再導入論が繰り返し出ています。どちらが正しいかは価値観の問題であり、本記事は事実の比較にとどめます。

「海外移住すれば日本の相続税はかからない」は本当か

ほぼ誤解です。日本の相続税は住所と国籍で課税範囲が決まり、次のハードルがあります。

  • 10年ルール:日本国籍がある場合、被相続人(亡くなる人)と相続人(もらう人)の双方が10年を超えて国外に居住していない限り、国外財産を含む全世界の財産に日本の相続税がかかります[国税庁 No.4138]。家族全員で10年超の本気の移住が必要です。
  • 出国時のコスト:1億円以上の有価証券等を持って出国する際は国外転出時課税(出国税)で含み益に所得税がかかります。
  • 日本国内にある不動産などは、誰がどこに住んでいても日本の相続税の対象です。

現実的な対策は移住ではなく、生前贈与控除と特例の正しい活用という国内の王道です(名義預金・タンス預金のような「隠す」方向は最も割に合いません)。

よくある質問

日本の相続税は本当に世界一高いのですか?

最高税率55%は現存する相続税の中で世界最高水準です。さらに基礎控除が小さく課税対象が広いため、「高額資産では実負担が世界トップ」「課税される人の割合も先進国で突出」という二つの意味で、世界的に最も重い部類といえます。

アメリカ人は相続税を払っていないのですか?

大多数は払っていません。連邦遺産税の基礎控除が1人1,500万ドル(約23億円・2026年から恒久化)あり、課税されるのは全死亡者の0.1%程度の超富裕層に限られます。ただし一部の州には州独自の遺産税・相続税があります。

相続税がない国に移住すれば日本の相続税を払わなくて済みますか?

簡単ではありません。日本国籍がある場合、亡くなる人ともらう人の双方が10年を超えて国外に住んでいなければ、全世界の財産に日本の相続税がかかります。さらに出国時には国外転出時課税(出国税)もあり、国内不動産は常に課税対象です。

相続税がない国では本当に税金ゼロで相続できるのですか?

国によります。カナダは相続税の代わりに死亡時のみなし譲渡でキャピタルゲイン課税があり、オーストラリアは相続人が売却する際に課税されます。「相続税なし=無税」ではなく、課税のタイミングが違うだけの国も多い点に注意が必要です。

データの出典

※海外税制は本記事執筆時点の概要であり、改正・特例が多数あります。国際相続の実務は必ず現地・日本双方の専門家にご確認ください。本記事は制度比較の情報提供であり、特定の税制への賛否や移住の推奨を目的としていません。