外国人富裕層の日本移住と税金|非永住者の5年ルール・出国税・相続税の特例

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日本に移住する外国人の富裕層・投資家にとって、日本の税制は「最初の5年は意外と有利、長く住むほど本格化」という二段構えになっています。非永住者の5年ルール、1億円以上の資産に関わる国外転出時課税(出国税)、外国人向けの相続税の特例、そして2025年10月に厳格化された経営・管理ビザまで、移住前に知っておきたいポイントを公的資料をもとに整理しました。

最初の5年間:「非永住者」という優遇期間

日本の所得税は国籍ではなく居住実態で決まります。日本国籍がなく、過去10年以内の国内居住が合計5年以下の居住者は、税法上「非永住者」に区分され、課税範囲が限定されます(所得税法・国税庁タックスアンサーNo.2010)。

所得の種類非永住者の課税
日本国内で生じた所得(給与・国内不動産収入など)課税
国外源泉所得(海外の配当・利子・キャピタルゲイン等)で、日本に送金せず海外で受け取ったもの課税されない
国外源泉所得のうち、日本国内で支払われた・日本へ送金したもの課税(送金ベース)

つまり、母国に残した投資ポートフォリオの運用益は、日本へ送金しない限り最初の5年間は日本で課税されないのが原則です。ただし注意点が2つあります。

①「送金」は広く判定される:現金送金だけでなく、日本でのクレジットカード決済を海外口座から引き落とす行為なども送金扱いになり得ます。国外源泉所得がある年に日本へ資金を持ち込むと、その範囲で課税対象になります。

②5年は「通算」でカウント:出入国を繰り返しても、過去10年の在住期間は通算されます。5年を超えた瞬間から自動的に「永住者」(税法上)となり、全世界所得課税に切り替わります。

5年経過後:全世界課税と資産の「見える化」

通算5年を超えて居住すると、海外の配当・家賃・売却益もすべて日本で課税されます(外国で納めた税金は外国税額控除で調整)。同時に、富裕層には資産報告の義務が発生します。

制度対象内容
国外財産調書 12月31日時点で国外財産が5,000万円超の居住者(非永住者は対象外) 翌年6月30日までに税務署へ提出。提出漏れには加算税の加重措置、虚偽記載等には罰則
財産債務調書 所得2,000万円超かつ財産3億円以上(または国外転出特例対象財産1億円以上)等 財産の種類・金額の明細を提出
CRS(共通報告基準) 海外金融口座の保有者 100超の国・地域の税務当局が口座残高・利子等を自動的に情報交換。海外資産は日本の国税庁に把握される前提で考える

「海外の口座だから見えない」という時代は終わっています。5年経過後の申告漏れは重加算税の対象になり得るため、移住時から資産の棚卸しをしておくことが重要です。

出国税(国外転出時課税):1億円以上の資産家は要注意

日本を離れるときに問題になるのが国外転出時課税(いわゆる出国税)です。有価証券等の対象資産を1億円以上保有する人が国外転出する場合、保有資産の含み益に対して未実現でも所得税が課税されます。

対象になる人・ならない人

  • 対象:出国直前10年以内に日本に5年超住所・居所があった人で、対象資産1億円以上
  • ただし、在留資格が入管法「別表第一」(経営・管理、高度専門職、技術・人文知識・国際業務、教授、企業内転勤など就労系・短期滞在・留学等)の期間は「5年超」の判定から除外されます
  • 一方、永住者・日本人の配偶者等(別表第二)の在留期間はカウントされるため、永住権を取って長く住んだ富裕層が帰国・第三国へ移る際は対象になり得ます

実務上のポイント:就労系ビザのまま滞在している限り、株式等を10億円持っていても出国税の対象にはなりません。永住許可の取得は生活の安定と引き換えに、出国税の適用リスクを生む——この構造は移住設計の重要な分岐点です(適用の有無は個別事情によるため、必ず国際税務に強い税理士に確認してください)。

なお対象になる場合も、納税管理人の届出や担保提供により納税猶予(最長10年)の制度があります。

相続税・贈与税:外国人には大きな特例がある

日本の相続税は最高55%と世界的に高水準ですが、外国人には2021年改正で拡充された特例があります。

  • 亡くなった人が「外国人被相続人」(相続開始時に別表第一の在留資格で日本に居住)である場合、相続人が一時居住者・非居住者であれば、国外財産は日本の相続税の対象外になります
  • 「一時居住者」とは、別表第一の在留資格で、相続開始前15年以内の国内居住が合計10年以下の人を指します
  • 逆に、被相続人・相続人のどちらかが永住者(別表第二)として長く居住している場合や、日本人の場合は、原則どおり全世界の財産が課税対象です

つまり就労系の在留資格で日本に住む外国人経営者・駐在員の家族間相続では、母国の資産に日本の相続税はかかりません。制度の詳細と国籍・住所による課税範囲の整理は外国人と相続税で詳しく解説しています。贈与税も概ね同じ枠組みです。

日本での投資と税金:税率の全体像

投資対象税率備考
上場株式・投資信託の譲渡益・配当20.315%(申告分離)NISA口座なら非課税。居住者なら国籍問わず利用可
不動産の譲渡益短期39.63%/長期20.315%保有5年超で長期。取得時・保有時の税金は外国人の日本不動産と税金参照
暗号資産の売却益雑所得として総合課税(最大55.945%株式より大幅に重い。分離課税化は検討段階で、最新動向の確認を
給与・事業所得累進5〜45%+住民税10%課税所得4,000万円超は合計約56%

なお、タワーマンションを使った相続税の圧縮は、2024年1月から相続税評価額が市場価格の最低6割に引き上げられ、効果が大きく縮小しています。

起業・投資家向けの制度:ビザと支援策

経営・管理ビザは2025年10月に大幅厳格化

外国人が日本で会社を作って住むための「経営・管理」ビザは、2025年10月16日から要件が大幅に引き上げられました

項目改正前改正後(2025年10月16日〜)
資本金・出資総額500万円以上3,000万円以上
常勤職員不要(資本金で代替可)1名以上の雇用が必須(日本人・永住者等)
日本語能力要件なし経営者本人または常勤職員がB2相当(日本語能力試験N2)以上
出資金の出所送金記録等での透明性確認が厳格化

既にビザを持っている人には2028年10月16日までの経過措置があります。少額資本での「とりあえず起業移住」は実質的に閉じられ、まとまった資本を投じる本気の起業家に絞る制度へ転換しました。

高度専門職ポイント制と金融・資産運用特区

  • 高度専門職(ポイント制):年収・学歴・職歴等で70点以上なら優遇在留資格。80点以上なら最短1年で永住申請が可能で、富裕層・高年収人材の最短ルートです
  • 金融・資産運用特区:2024年6月に東京都・大阪府市・福岡県市・北海道札幌市の4地域が指定。資産運用業の登録・開業手続きの英語対応、スタートアップに投資する外国人投資家向けの在留優遇、銀行口座開設支援などが進んでいます(札幌は2026年2月に「GX/AI金融・資産運用特区」へ改称)

会社を作れば補助金の対象にもなる

日本の主要な中小企業向け補助金(ものづくり・IT導入・省力化投資・新事業進出など)は、経営者の国籍を問わず日本法人であれば申請できます。外資系・外国人経営の企業の採択例も多数あります。どの企業がどの補助金に採択されたかは補助金採択データベース(87万件超)で企業名から検索できます。このほかJETRO(日本貿易振興機構)の対日投資支援や、東京都など自治体の外国企業誘致補助も利用できます。日本の税金全体の入門は外国人のための税金ガイドにまとめています。

今日やること

  1. 過去10年の日本滞在期間を通算し、非永住者としての残り期間を把握する
  2. 国外財産が5,000万円を超えそうなら、国外財産調書の要否を確認する
  3. 永住許可の申請を予定しているなら、出国税との関係を事前に専門家へ相談する

ほかのアクションは手取りアップ・アクションリストへ。

よくある質問

Q. 移住1年目から海外の投資収益に日本の税金はかかりますか?

A. 日本国籍がなく過去10年の国内居住が5年以下なら「非永住者」となり、海外の配当・売却益などの国外源泉所得は、日本国内で支払われたり日本へ送金したりしない限り課税されません。日本国内の給与や不動産収入は1年目から課税されます。

Q. 出国税は外国人にも適用されますか?

A. 適用され得ますが、就労系など入管法別表第一の在留資格で滞在していた期間は「10年内5年超」の居住判定から除外されます。このため就労ビザの駐在員・経営者は通常対象外です。永住者・日本人の配偶者等(別表第二)として5年超住んだ人が対象資産1億円以上を持って出国する場合は対象になり得ます。

Q. 海外にある口座や資産は日本の税務署に把握されますか?

A. 把握される前提で考えるべきです。日本はCRS(共通報告基準)に参加しており、100を超える国・地域から金融口座情報が自動的に国税庁へ提供されます。また国外財産が5,000万円を超える居住者(非永住者を除く)には国外財産調書の提出義務があります。

Q. 日本の相続税は外国人の海外資産にもかかりますか?

A. 亡くなった人が就労系(別表第一)の在留資格で日本に住んでいた「外国人被相続人」の場合、相続人が一時居住者や非居住者であれば海外資産は課税対象外です。永住者として長く住んでいる場合や相続人が日本に10年超住んでいる場合は、全世界の財産が対象になります。

Q. 外国人が日本で起業する場合、補助金はもらえますか?

A. 日本で法人を設立すれば、経営者の国籍に関係なく、ものづくり補助金・IT導入補助金・省力化投資補助金などの主要な補助金に申請できます。ただし2025年10月から経営・管理ビザの要件が資本金3,000万円以上等に厳格化されているため、在留資格の設計とあわせた準備が必要です。

参考リンク(出典)

※ 本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務・在留資格の判断は税理士・行政書士・税務署等の専門家にご確認ください。制度・数値は今後の改正で変わる可能性があります。

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公開日:2026年07月23日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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本記事は税制・各種制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。記載内容は公開時点の情報に基づき正確性に努めていますが、制度は改正される場合があります。実際のお手続き・個別のご判断は、国税庁・お住まいの税務署・税理士等の専門家にご確認ください。運営者情報・免責事項