不動産所得の事業的規模5棟10室|青色65万円と個人事業税5%で手取りはこう変わる

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  • 公開。国税庁 タックスアンサー No.1373・No.2070、所得税基本通達26-9/27-2、国税庁 質疑応答事例、東京都主税局「個人事業税」をもとに作成

アパートの部屋数がおおむね10室、または戸建ての貸家がおおむね5棟あると、不動産の貸付けは「事業として行われている」と扱われます[国税庁 No.1373]。越えると青色申告特別控除が最高10万円から最高65万円になり、家族への給与や取壊し損失・貸倒れも経費にできます。いっぽう東京都では個人事業税(5%)の対象です。控除が55万円増える効果は所得税・住民税で年16万5,000円ほど(税率20%の人・本サイトの試算)。ただし通達は「おおむね」「準ずる事情」「特に反証がない限り」と書き、絶対の線ではありません。

結論:事業的規模で変わるのは5点

項目事業的規模でない事業的規模(おおむね10室・5棟)
青色申告特別控除最高10万円最高65万円(令和8年分・電子帳簿保存またはe-Tax)
家族への給与専従者給与・専従者控除とも使えない使える(届出書に書いた範囲内の適正額)
取壊し・除却の損失損失を引く前の不動産所得が限度全額を必要経費に算入
家賃の貸倒れ収入に計上した年分までさかのぼって計算し直す回収不能になった年分の必要経費
個人事業税認定基準未満ならかからない不動産貸付業として5%(事業主控除290万円の後)

出典:国税庁 No.1373(令和8年4月1日現在法令等)/東京都主税局「個人事業税」

大きいのは1行目です。真ん中の3つは損が出たときの話で、ふだんは効きません。最後の1行だけがマイナスです。

通達の原文:10室・5棟は絶対の線ではない

判定のもとは所得税基本通達26-9です[国税庁 所基通26-9]。

所得税基本通達26-9(抜粋)

建物の貸付けが不動産所得を生ずべき事業として行われているかどうかは、社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行っているかどうかにより判定すべきであるが、次のいずれかに該当する場合又は賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況等からみてこれらの場合に準ずる事情があると認められる場合には、特に反証がない限り、事業として行われているものとする。

(1)貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。(2)独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。

本筋は「社会通念上、事業と言える規模か」という実質判断で、10室・5棟は目印です。届かなくても「準ずる事情」にあたれば認められる余地があり、満たしても「特に反証がない限り」という条件が付きます。9室で青色65万円を狙うなら、説明できる材料を先に用意しておきたいところです。

青色申告特別控除:令和9年分から書面は10万円に下がる

No.1373は、事業的規模なら令和8年分まで最高55万円、電子帳簿保存またはe-Taxなら65万円、「それ以外の場合の控除額は最高10万円」としています[国税庁 No.1373]。令和8年度の改正で上限は令和9年分(2027年分)から75万円に上がり、同時に書面申告は10万円へ下がります。

年分書面e-Taxまたは電子帳簿保存さらに優良な電子帳簿等
令和8年分(2026年分)まで55万円65万円—
令和9年分(2027年分)以後10万円65万円75万円

出典:国税庁「青色申告特別控除の見直し」[国税庁]/同「電子帳簿等保存制度を活用して…(令和8年6月)」[国税庁]。いずれも事業的規模の場合です。

75万円には届出書がいりますが、「既に優良な電子帳簿で65万円の適用を受けている場合は、改めて提出しなくても75万円の適用が受けられます」[国税庁]。詳しくは青色申告特別控除75万円で整理しています。

紙で申告している大家さんは、令和9年分から55万円が10万円へ。10室あっても申告方法だけで45万円分の控除を失います。切替は今年のうちに。

家族への給与と、損が出たときの扱い

青色事業専従者給与

事業的規模なら、生計を一にする配偶者や親族への給与を経費にできます。要件は15歳以上で専ら従事し、事前に出した届出書の金額の範囲内の適正な額であることです[国税庁 No.2070]。専従者は同一生計配偶者や扶養親族になれないので、配偶者控除との差引きで考えます。

家賃の貸倒れ

事業的規模なら、回収不能になった年の必要経費にするだけ。そうでなければ収入に計上した年分までさかのぼって計算し直しますが、この救済には落とし穴があります。

国税庁の質疑応答事例:赤字の年は救済されない

事業に至らない規模で未収家賃50万円が回収不能になった事例です。国税庁は、不動産所得が赤字なら、なかったものとみなされる金額は生じないため更正の請求はできないと回答しています[国税庁 質疑応答事例]。

家賃を取りはぐれた年が赤字だと払い損になった家賃の税金は戻りません。事業的規模なら経費に落ちます。取壊し損失も、事業的規模なら全額、そうでなければその年の不動産所得が限度です[国税庁 No.1373]。建て替えを考えているなら判定を先に確かめてください。

数え方の実務:どこまでが1室か

通達にあるのは「貸与することができる独立した室数」と「独立家屋」の棟数だけで、換算表はありません。

公表物から言えること

  • 数えるのは「貸すことができる」室数。区分所有マンションを1室ずつ持つなら、それぞれ1室として数えるのが素直な読み方
  • 駐車場の所得区分は別の通達。自己の責任で他人の物を保管するなら事業所得か雑所得、そうでなければ不動産所得[国税庁 所基通27-2]
  • 10室・5棟に足りなくても「準ずる事情」で認められる余地はある

国税庁に根拠が見当たらないこと

  • 「駐車場5台=1室」という換算。目安として語られますが、通達26-9に駐車場の記述はなく、国税庁の公表物に根拠は見当たりません
  • 共有物件を所得税でどう数えるか(持分か物件全体か)。明文は確認できませんでした
  • 空室の扱いを所得税について定めた明文

根拠がない論点は事前に税務署か税理士へ。駐車場を足して10室に届かせる組み立ては、崩れると青色65万円が10万円になります。記帳と申告の手順は家賃収入の確定申告にまとめています。

もう一つの顔:個人事業税は別の基準で見る

不動産貸付業は個人事業税の第1種事業で税率は5%。所得税の5棟10室とは別の制度・別の基準です。東京都は認定基準を公表しています[東京都主税局 個人事業税]。

種類・用途認定される規模(空室なども含む)
住宅・一戸建棟数が10以上
住宅・一戸建以外(アパート等)室数が10以上
住宅以外・独立家屋棟数が5以上
住宅以外・独立家屋以外室数が10以上
土地契約件数が10以上(住宅用は貸付総面積2,000㎡以上でも可)
上記に届かない場合の総合判定貸付用建物の総床面積600㎡以上、かつ賃貸料収入が年1,000万円以上など
駐車場(寄託を受けて保管する・建築物や機械式)駐車可能台数が1台以上
駐車場(上記以外)駐車可能台数が10台以上

出典:東京都主税局「個人事業税」8 不動産貸付業と駐車場業の認定基準。基準は都道府県ごとにあります。

見落としやすいのは3点。機械式・寄託型の駐車場は1台でも事業です。独立的に区画された2以上の室がある建物は、一棟貸しでも室数で認定されます。共有物件は持分にかかわりなく全体で認定し、税額は持分で按分されるので、夫婦で半分ずつ持つ10室のアパートは二人とも対象です[東京都主税局]。

税額は青色申告特別控除を所得に足し戻し、事業主控除290万円を引いて5%を掛けます。納期は原則8月と11月。しくみ全体は個人事業税で解説しています。

試算:10室になると手取りはいくら変わるか

不動産所得(青色申告特別控除を引く前)500万円・所得税率20%・住民税10%・東京都の場合(本サイトの試算)
事業的規模でない事業的規模(10室・e-Tax)
青色申告特別控除10万円65万円
所得税・住民税の減り—16万5,000円(55万円×30%)
個人事業税0円10万5,000円((500万円−290万円)×5%)
差引—約6万円の減税

※本サイトの試算で、国税庁・東京都が示す計算例ではありません。復興特別所得税、事業税を翌年の必要経費に入れる効果、国民健康保険料への影響は含みません。

青色65万円の効果は大きいのですが、個人事業税でその6割ほどが戻るのが実像です。所得が事業主控除290万円に収まるなら事業税はゼロで、そこまでははっきり有利。所得が増えるほど法人化の検討に入ります。判断材料は不動産投資の税金にまとめています。

今からできること

  1. いま何室・何棟あるかを数え直す。数えるのは「貸すことができる室数」。用途別に書き出します。
  2. 個人事業税の基準は別に数える。駐車場や土地の貸付けがあると結果が変わります。機械式・寄託型は1台から対象です。
  3. 申告を電子に切り替える。令和9年分から書面の上限は10万円。ここだけで年45万円分の控除が動きます。
  4. 境界線上なら事前に確認する。8〜9室や駐車場を足す組み立ては、公表されていない部分に依存します。税務署か税理士にご確認を。

よくある質問

区分マンション9室に駐車場5台を足せば10室になりますか。

その換算を認めた国税庁の公表物は見つかりませんでした。通達26-9に駐車場の記述はなく、実務の目安として語られているだけです。青色65万円を前提にするなら事前に税務署か税理士にご確認ください。なお東京都の個人事業税では、駐車場は寄託型・機械式なら1台以上、それ以外は10台以上が基準です。

9室でも事業的規模と認められることはありますか。

あり得ます。通達は社会通念上事業と称するに至る程度の規模で判定するとしており、10室・5棟は目印です。賃貸料の収入や管理の状況から準ずる事情があると認められれば事業として扱われます。逆に10室あっても特に反証がない限りという条件が付きます。

夫婦で半分ずつ持つ10室のアパートは、二人とも事業的規模ですか。

東京都の個人事業税では、共有物件は持分にかかわりなく全体で認定し、税額を持分で按分すると明記されています。いっぽう所得税の判定で共有をどう扱うかを示した国税庁の明文は確認できませんでした。所得税の扱いは税務署か税理士にご確認ください。

事業的規模でないと、家賃を取りはぐれたとき救済されますか。

さかのぼって計算し直せますが限度があります。国税庁の質疑応答事例は、不動産所得が赤字なら、なかったものとみなされる金額が生じないため更正の請求はできないと回答しています。事業的規模なら、同じ状況でも回収不能の年の必要経費です。

参考リンク(出典)

※試算は本サイトが上記の基準を当てはめたものです。個別の判断は税務署・税理士にご確認ください。

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公開日:2026年09月22日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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本記事は税制・各種制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。記載内容は公開時点の情報に基づき正確性に努めていますが、制度は改正される場合があります。実際のお手続き・個別のご判断は、国税庁・お住まいの税務署・税理士等の専門家にご確認ください。運営者情報・免責事項