総務省は、国内でアパートや駐車場を貸している海外在住の人にも個人事業税をかける方向で検討に入ったと、日本経済新聞が10月31日に報じました。2027年度(令和9年度)の税制改正大綱に盛り込むことをめざしています。いまは国内に事務所や住所が無い人には、都道府県が課税できません。[日本経済新聞 2026年10月31日]
対象かどうかは国籍ではなく住所で決まり、海外赴任中の日本人も含まれます。かかるのは、アパート10室・駐車場10台などの基準に届く規模の大家だけです。税額は所得から290万円を引いた残りの5%で、いまの基準のままなら、自宅マンション1室を貸している海外赴任者は対象になりません。
いま海外在住の大家が払っている税金と、払っていない税金
同じ規模で同じ家賃を受け取っていても、国内に住む大家と海外に住む大家では、かかる税金の数が違います。
| 税金 | 国内に住む大家 | 海外に住む大家 |
|---|---|---|
| 所得税(家賃の所得) | 確定申告で払う | 確定申告で払う(納税管理人を通じて)。借り手が家賃から20.42%を差し引いて納める場合もある |
| 固定資産税・都市計画税 | 払う | 払う(物件のある市町村が課税) |
| 住民税(所得割) | 払う(1月1日の住所地) | かからない(国内に住所が無い) |
| 個人事業税 | 一定の規模なら払う | かからない → 今回の検討の対象 |
個人事業税は、事業を行う事務所や事業所がある都道府県が課す税金です。国内に主な事務所が無い個人には、支店のような「恒久的施設」が国内にある場合に限って課税できる、と総務省の通知は定めています。事務所を構えずに行う事業は住所や居所を事務所とみなしますが、海外在住の人にはその住所も国内にありません。[総務省「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」第3章 第3節 1の4]
調べていて意外だったのは、所得税のほうはすでに、借り手が家賃から20.42%を差し引いて国に納める仕組みがあることでした。法人や事業者が借りる場合が対象で、個人が自分や親族の住まいとして借りる場合は差し引きません。[国税庁 No.2880]所得税は取りこぼしにくい形になっている一方で、地方税の住民税と個人事業税はかからないまま、という差があります。
「外国人オーナーは税負担が軽い」と受け止められがちですが、差がつく理由は国籍ではなく住所です。海外赴任中に国内のマンションを貸している日本人も、扱いは同じです。所得税の申告のしかたは外国人・非居住者の日本不動産の税金で整理しています。
対象になるのはアパート10室・駐車場10台から
個人事業税は、不動産の貸付けがすべて対象になるわけではありません。都道府県が「不動産貸付業」「駐車場業」と認める規模に届いた場合だけです。総務省の通知が示す基準は次のとおりです。
- アパート・貸間など:10室以上
- 一戸建ての貸家:10棟以上
- 駐車場(屋根や建物の無い青空駐車場):10台以上。建物の駐車場は台数に関係なく対象
都道府県はこれに独自の基準を足しています。たとえば大阪府は、倉庫などの独立家屋を5棟、土地の貸付けを契約10件とし、部屋数が足りなくても貸付面積600平方メートル以上かつ家賃収入1,000万円以上なら対象にしています。空室も数に入ります。[大阪府 認定基準]
所得税の「5棟10室」とは別の基準なので、一戸建てなら所得税は5棟、個人事業税は10棟が目安です。違いは不動産所得の事業的規模(5棟10室)にまとめています。
税額の試算:10室・所得500万円なら年10万5,000円
個人事業税は、前年の不動産所得から事業主控除の290万円を引き、残りに標準税率5%を掛けて計算します。所得は青色申告特別控除を引く前の金額です。[東京都主税局 個人事業税]
| 貸している物件 | 不動産所得 | 個人事業税(年) |
|---|---|---|
| 海外赴任中に自宅マンション1室 | 120万円 | 0円(不動産貸付業に当たらない) |
| 青空駐車場20台 | 300万円 | 5,000円 |
| アパート1棟10室 | 500万円 | 10万5,000円 |
| アパート2棟20室 | 1,000万円 | 35万5,000円 |
※(不動産所得−290万円)×5%で計算。事業を始めた年など、1年に満たない場合は290万円を月割りにする。納めた個人事業税は、納めた年の所得税で必要経費になる。
アパート10室を持つ国内の大家は、いまも同じ10万5,000円を払っています。検討されているのは新しい税金をつくることではなく、住所が海外にあるというだけで外れていた人を、国内の大家と同じ計算に入れることです。個人事業税の計算や、かからない業種は個人事業税とはで詳しく扱っています。
いつから払うのか:決まるのは12月の大綱、納付は早くても2028年8月ごろ
- 2026年12月:与党が2027年度税制改正大綱をまとめる。ここに入るかどうかがまず決まる
- 2027年春:大綱に入れば、地方税法の改正案が国会に出る
- 適用:個人事業税は前年の所得にかかり、納期は8月と11月。2027年の所得から対象にするなら、最初の納付は2028年8月ごろになる
報道の段階では、どの都道府県が課税するのか(物件の所在地か)、申告と納付を納税管理人が受け持つのかは、まだわかりません。外国法人も国内に恒久的施設が無ければ法人事業税がかからない同じ仕組みですが、今回の報道は個人の大家を対象にしています。大綱が出たら、この記事に追記します。
海外から国内の物件を貸している人が、いま確かめておくこと
- 部屋数と台数を数える:空室も含めて、アパート10室・駐車場10台などの基準に届くか。届かなければ、いまの基準のままなら対象外
- 所得税の確定申告を出しているか:個人事業税は所得税の申告をもとに都道府県が計算する。海外に住んでいても、家賃の所得は納税管理人を通じて申告が必要[国税庁 No.1926]
- 不動産所得が290万円を超えるか:青色申告特別控除を引く前の金額で見る
まとめ
- 総務省が、海外在住の大家にも個人事業税をかける方向で検討し、2027年度税制改正大綱への反映をめざしている(日本経済新聞)
- いまは国内に事務所や住所が無い人には課税できず、住民税(所得割)もかかっていない。所得税は払っている
- 対象は国籍ではなく住所で決まり、海外赴任中の日本人も含む
- かかるのはアパート10室・駐車場10台などの規模からで、税額は(所得−290万円)×5%。10室・所得500万円なら年10万5,000円
- 大綱は12月。2027年の所得から対象にすると、最初の納付は2028年8月ごろ
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参考リンク(出典)
- 日本経済新聞「海外居住者の国内不動産、賃貸業所得に課税 公平性確保へ総務省検討」(2026年10月31日)
- 総務省「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)」(東京都主税局掲載)
- e-Gov法令検索「地方税法」第24条・第72条の2・第72条の49の11〜第72条の51
- 東京都主税局「個人事業税」
- 大阪府「個人事業税における不動産貸付業・駐車場業の認定基準」
- 国税庁 No.1926「海外勤務中に不動産所得などがある場合」
- 国税庁 No.2880「非居住者等に不動産の賃借料を支払ったとき」
本記事は2026年11月1日時点の報道と現行の法令にもとづく一般的な情報提供です。報道は検討段階のもので、対象・時期・課税の方法は税制改正大綱で決まります。特定の国籍や個人を指すものではありません。個別の判断は都道府県税事務所・税務署・税理士にご確認ください。













