飲食料品の消費税1%は事業者に還付が出る|届出の期限と7つの特例

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  • 公開。2026年9月15日閣議決定の大綱と、同日公開の国税庁リーフレット・Q&A(令和8年9月)をもとに作成

最終更新:2026年9月16日/2026年9月15日に閣議決定された「飲食料品消費税率の臨時的な引下げ及び就業者負担軽減支援金の導入に関する大綱」と、同日に国税庁が公開したリーフレット・Q&A(令和8年9月)をもとに作成しています。内容は法案が国会で可決・成立した場合のもので、臨時国会での審議はこれからです。

事業者向け

2027年4月1日から2年間、飲食料品の消費税が1%になります。買う側は値段が下がるだけですが、売る側は「何もしない」と損をする可能性があります。売上が1%・経費が10%という逆転が起きるため、本則課税なら消費税が還付されるケースが出てくるからです。免税事業者と簡易課税事業者はこの還付を受けられません。大綱では、切り替えを判断しやすくするための7つの特例が用意されました。

なぜ「還付」が出るのか——売上1%・経費10%の逆転

消費税は「預かった税額 − 払った税額」を納める仕組みです。ふだんは売上にかかる税率のほうが高いので納税になりますが、飲食料品だけが1%に下がると、売上で預かる税額が急に小さくなります。一方で、肥料・包装資材・水道光熱費・家賃・運送費・設備といった経費は10%のままです。

1%飲食料品の売上にかかる税率
(国0.78%+地方0.22%)
10%資材・光熱費・家賃など
経費側の税率
2年2027年4月1日〜
2029年3月31日

試算① 農産物を売る個人事業者(本則課税の場合)

売上 700万円(米・野菜=飲食料品)→ 預かる消費税 7万円(1%)
課税仕入 400万円(肥料・農薬・燃料・資材・修理=10%)→ 払った消費税 40万円

7万円 − 40万円 = 33万円の還付

試算② パンを卸す小規模製造業(本則課税の場合)

売上 1,200万円(パンの卸=飲食料品)→ 預かる消費税 12万円(1%)
原材料 400万円(小麦粉・バター=飲食料品1%)→ 4万円
包装資材・水道光熱費・家賃・外注 300万円(10%)→ 30万円

12万円 −(4万円+30万円)= 22万円の還付

金額はあくまで前提を置いた試算ですが、10%で買う経費の比率が高い事業ほど還付が出やすいという関係は変わりません。農業、食品製造、飲食料品の卸・小売、とくにこの2年間に設備投資を予定している事業者は効きます。

ただし、免税事業者と簡易課税事業者は還付を受けられません。免税事業者は納税義務がない代わりに仕入税額の控除もできません。簡易課税は売上から機械的に仕入税額を計算する仕組みなので、実際にいくら払ったかは関係なく、還付は生じません(国税庁Q&A 問3-1)。還付を取りたいなら課税事業者かつ本則課税に切り替える必要があります。

あなたはどれ? 3つの立場と打ち手

まず自分がどの立場かを確認してください。やるべきことが変わります。

A免税事業者(基準期間の課税売上高1,000万円以下)

還付は受けられません。受けたいなら「消費税課税事業者選択届出書」を出して課税事業者になります。通常は適用したい課税期間の前日までに出す必要がありますが、今回は特例で、2027年4月1日の属する課税期間中(個人事業者なら2027年末まで)に出せば、その課税期間のはじめにさかのぼって課税事業者になれます。

ただし個人事業者の場合、2027年1月1日から課税事業者となるため、1〜3月の飲食料品の販売には8%が適用されます。また2027年・2028年の2年間は免税に戻れません。

B簡易課税事業者

還付は受けられません。本則課税に戻すには「簡易課税制度選択不適用届出書」を出します。こちらも2027年4月1日の属する課税期間中に出せば、その課税期間から本則課税で申告できます。

さらに重要なのは、簡易課税の「2年縛り」(2年間は継続適用しなければならない要件)が、2027年4月1日の属する課税期間については適用されないことです。去年簡易課税を選んだばかりでも抜けられます。

抜けずに簡易課税のまま続ける選択肢もあります。その場合は下の特例⑤(計算方法の特例)が自動的に効き、納税額が下がります。

Cすでに課税事業者かつ本則課税

届出は不要です。そのまま申告すれば還付が受けられます。やるべきはレジ・会計システムの税率設定と、区分経理・インボイスの記載の確認です。

還付を早く受け取りたい場合は、課税期間を3か月ごと・1か月ごとに短縮する方法があります(消費税課税期間特例選択届出書)。年1回の確定申告を待たずに還付を請求できますが、申告の手間が3倍・12倍になり、2年間はやめられません。資金繰りとの見合いで判断してください。

用意された7つの特例

国税庁のリーフレット(令和8年9月)にまとまっている内容を、事業者目線で整理します。

#特例中身
①対象品目と税率飲食料品は1%(国0.78%+地方0.22%)、新聞の定期購読は8%、その他は10%。飲食料品の範囲は2027年3月31日以前に8%だったものと同じ
②税率変更の経過的な取扱い4月1日以後の販売でも、一定の定期供給契約や通信販売に基づくものは8%のまま(1%を前提に契約していることが確認できる場合・契約が変更された場合を除く)
③免税→課税の届出の特例2027年4月1日の属する課税期間中(個人なら2027年末まで)に課税事業者選択届出書を出せば、その課税期間から課税事業者に
④簡易課税→本則の届出の特例同じく課税期間中に不適用届出書を出せばその課税期間から本則課税。2年縛りは適用されない
⑤簡易課税の計算の特例業種区分にかかわらず、飲食料品の売上税額と同額の仕入税額を計上できる。2割特例・3割特例でも同じ
⑥中間申告の特例直前課税期間の飲食料品の売上・仕入に1%が適用されたものとして計算した中間申告税額で、仮決算による中間申告ができる(税額ゼロでも可)
⑦総額表示義務の特例2027年2月1日〜5月31日は、誤認させない掲示を条件に8%または1%での総額表示でよい。新旧の混在も可

⑤の簡易課税の特例は、実質的な減税です。国税庁のリーフレットの計算例で確認します。飲食料品の小売2,000万円(税20万円)と雑貨の小売300万円(税30万円)、どちらも第2種(みなし仕入率80%)の場合——

売上税額50万円に対し、控除できる仕入税額は飲食料品分20万円(売上税額と同額)+雑貨分24万円(30万円×80%)=44万円。納付税額は6万円です。特例がなければ50万円×80%=40万円の控除で納付10万円ですから、4万円分軽くなります。届出は要りません。

⑦の総額表示の特例は「値札が間に合わない」ための救済です。「困難な事情」として国税庁が挙げているのは、夜間の値札の貼り替え作業に対応できない、カタログや商品パッケージ自体に価格が印字されているといったケース。2029年に8%へ戻すときも、2029年2月1日〜5月31日に同じ特例が設けられます。

届出の期限を逆算する

個人事業者(暦年が課税期間)を例に並べます。法人は事業年度に読み替えてください。

時期やること
2026年12月31日まで原則どおりのルート。課税事業者選択届出書を出せば2027年1月1日から課税事業者。特例を使うなら急ぐ必要はない
2027年2月1日〜5月31日総額表示の特例期間。値札・カタログの貼り替えをこの間に
2027年3月17日までインボイス登録の経過措置を使う場合の申請期限(登録希望日2027年4月1日の15日前)。この方法なら期の途中の4月1日から課税事業者になれる
2027年3月31日まで課税期間を短縮して早期還付を狙う場合の届出期限(短縮後の課税期間の初日の前日まで)
2027年4月1日飲食料品が1%に。レジ・受発注・会計システムを切り替え
2027年12月31日まで特例の本命。課税事業者選択届出書/簡易課税制度選択不適用届出書をこの日までに出せば、2027年1月1日にさかのぼって適用される
2028年中2029年から免税に戻るなら、課税事業者選択不適用届出書をこの年内に
2029年4月1日8%に戻る。2029年2月1日〜5月31日は総額表示の特例期間

1年待ってから決められる、というのが今回いちばん大きい点です。通常、消費税の届出は「その年が始まる前」に出さなければならず、儲かるか損するか分からないうちに決める必要がありました。今回の特例では2027年の実績をほぼ見てから、年末までに出すかどうかを決められます。慌てて2026年中に動く必要はありません。

切り替える前に確認したい3つの落とし穴

  • 2年間は戻れない。課税事業者選択届出書を出すと、個人事業者なら2027年・2028年の2年間は免税に戻れません。2029年4月に8%へ戻れば還付の源はなくなるので、「減税期間だけ課税事業者」という都合のいい使い方は基本的にできないと考えてください。2028年中に不適用届出書を出して2029年から免税に戻す、という段取りまでセットで決めておきます。
  • インボイス登録には交付義務がつく。登録の経過措置を使えば期の途中(2027年4月1日)から課税事業者になれますが、インボイスの交付義務が生じます。売り先が一般消費者だけならメリットは薄く、事務だけが増えます。取引先が課税事業者中心かどうかで判断してください。
  • 飲食料品以外の売上にも納税義務が生じる。課税事業者になると、雑貨や外食など10%の売上についても消費税を納めることになります。飲食料品の比率が低い事業では、還付より納税が上回ることもあります。切り替えの判断は事業全体の数字でしてください。

迷ったら計算してから決めてください。飲食料品の売上比率、10%で買う経費の比率、この2年間の設備投資の有無——この3つで答えが変わります。判断材料がそろわないうちに届出を出すと、2年間その結果を引き受けることになります。簡易課税と本則課税の考え方は簡易課税と本則課税の選び方、課税事業者になる境目は消費税の課税事業者になる1,000万円の判定にまとめています。

今日やること

  1. 直近1年の帳簿から、飲食料品の売上と10%で払っている課税仕入をそれぞれ集計する。この2つが判断のすべてです。
  2. 自分が免税・簡易課税・本則課税のどれかを確認する(前々年の課税売上高が1,000万円以下なら原則は免税)。
  3. 2027年内に設備投資や大きな修繕の予定があるかを洗い出す。あるなら本則課税に切り替える価値が大きくなります。
  4. レジ・受発注・会計ソフトの提供元に、1%対応の予定時期を確認する。

手取りを増やす具体策は手取りアップ・アクションリストにまとめています。

よくある質問

飲食料品を売っていますが、何もしなくても大丈夫ですか。

すでに課税事業者で本則課税なら、届出は不要で還付が受けられます。必要なのはレジ・会計システムの税率設定と区分経理の確認だけです。一方、免税事業者や簡易課税事業者のままだと、売上が1%・経費が10%という逆転が起きても還付は受けられません。切り替えるかどうかを判断する必要があります。

免税事業者が課税事業者になる届出は、いつまでに出せばよいですか。

今回の特例により、2027年4月1日の属する課税期間中に出せば足ります。個人事業者なら2027年12月31日までです。通常は課税期間が始まる前日までに出す必要がありますが、特例でその課税期間のはじめにさかのぼって適用されます。ただし個人事業者は2027年1月1日から課税事業者となるため、1月から3月までの飲食料品の販売には8%が適用されます。

簡易課税をやめたいのですが、2年縛りがあるのでは。

今回は適用されません。飲食料品の販売を行う簡易課税事業者については、2027年4月1日の属する課税期間について、簡易課税を2年間継続しなければならない要件が適用されないこととされました。簡易課税制度選択不適用届出書をその課税期間中に提出すれば、その課税期間から本則課税で申告できます。

簡易課税のまま続けると損をしますか。

簡易課税のままでも、計算方法の特例が自動的に効きます。業種区分にかかわらず、飲食料品の販売に係る売上税額と同額の仕入税額を計上できるため、実質的に飲食料品部分の納税がなくなります。届出も不要です。ただし還付は生じないため、10%で買う経費や設備投資が多い事業者は本則課税のほうが有利になる可能性があります。

還付を早く受け取る方法はありますか。

課税期間を3か月ごとまたは1か月ごとに短縮する「課税期間の特例」があります。消費税課税期間特例選択届出書を、短縮後の課税期間の初日の前日までに提出します。年1回の確定申告を待たずに還付を請求できますが、申告回数が増えて事務負担が重くなるうえ、事業を廃止した場合を除き2年間はやめられません。

値札の貼り替えが4月1日に間に合いません。

2027年2月1日から5月31日までの間は、総額表示義務の特例があります。夜間の値札の貼り替え作業に対応できない、カタログや商品パッケージ自体に価格が印字されているといった困難な事情がある場合、実際の支払額と誤認させない掲示等をしていることを条件に、8%または1%での総額表示をしておくことが認められます。新旧税率の混在した表示も認められます。

参考リンク(出典)

本記事は2026年9月16日時点の公表資料に基づく一般的な情報提供です。記載の内容は法案が国会で可決・成立した場合のものであり、審議の結果変わる可能性があります。個別の届出の要否・有利不利の判断は、税務署または税理士にご相談ください。

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公開日:2026年09月16日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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