会社を廃業するときの税金|解散・清算の申告期限と期限切れ欠損金

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最終更新:2026年9月5日/本記事は国税庁の各手続き案内・法令解釈通達、東京商工リサーチの休廃業・解散動向調査をもとに作成しています。廃業の進め方は債務の状況や会社の形態によって大きく変わります。債務超過や返済不能が見込まれる場合は、自己判断で進める前に弁護士・税理士へご相談ください。

先に結論から。会社をたたむ手続きで、いちばん見落とされるのが最後の申告期限です。法人税も消費税も、通常は事業年度終了から2か月以内。しかし残余財産が確定したときの申告だけは「確定の日の翌日から1か月以内」で、しかも期限延長の特例が使えません。もうひとつ、赤字続きでたたむ会社には期限切れ欠損金という救済があります。10年を過ぎて切り捨てられたはずの赤字を、清算のときだけ使える制度です。この記事では、会社(株式会社)の廃業を「解散から清算結了まで」の順に、税務の期限を軸に整理します。

廃業は増えている。しかも「潰れた」とは限らない

67,210件2025年の休廃業・解散(過去最多)
3年連続過去最多の更新
71.5歳廃業時の経営者の平均年齢
52.8%廃業企業のうち黒字だった割合

東京商工リサーチの調査によると、2025年の休廃業・解散は6万7,210件で過去最多。3年連続で最多を更新しました。廃業時の経営者の平均年齢は71.5歳で、5年連続の70代です。

ここで注目したいのが黒字率52.8%という数字です。廃業した会社の半数以上は、最後の決算が黒字でした。倒産と廃業は別物です。倒産は債務を払えなくなって事業が続かなくなること、廃業は経営者の意思で事業をやめることを指します。後継者がいない、体力の限界、事業に区切りをつけたい——黒字のまま自分で幕を引くケースが、いま増えています。

だからこそ税務の手続きが問題になります。倒産(破産)なら裁判所と破産管財人が動きますが、自分でたたむ場合は解散から清算結了まで自社で申告と登記を進めることになります。期限を落とすと、加算税や延滞税がついて最後の最後で手取りが減ります。

会社をたたむ流れ:解散から清算結了まで

株式会社を任意にたたむ場合の流れです。ポイントは「解散したら終わり」ではないこと。解散は会社の営業をやめる決議にすぎず、そこから財産を換価して債務を払い、残りを株主に分ける清算が始まります。会社が消えるのは清算結了のときです。

  1. 株主総会の特別決議で解散を決める同時に清算人を選びます。多くの中小企業では、それまでの代表取締役がそのまま清算人になります。
  2. 解散登記・清算人選任登記解散の日から2週間以内(法務局)登記されると、会社の登記事項に「解散」が記録されます。
  3. 税務署・都道府県・市町村へ異動届出書解散した旨を届け出ます。年金事務所・労働基準監督署・ハローワークへの手続きも別途必要で、社会保険や労働保険には数日単位の短い期限があるものがあります。従業員がいる場合はここが最優先です。
  4. 官報公告と債権者への個別催告2か月以上の申出期間が必要債権者を保護する手続きで、この期間が終わるまで残余財産の分配はできません。清算に最低でも2か月以上かかる理由がこれです。
  5. 解散事業年度の確定申告解散の日から2か月以内が原則事業年度の開始日から解散の日までが、ひとつの事業年度になります。
  6. 清算事業年度の確定申告各事業年度終了から2か月以内解散の日の翌日から1年ごとが清算中の事業年度です。清算が1年で終われば、この申告は発生しないこともあります。
  7. 残余財産の確定と最後の申告確定の日の翌日から1か月以内・延長不可ここが最大の落とし穴です(後述)。
  8. 残余財産の分配株主に分配します。出資額を超える部分はみなし配当として株主側で課税されます。
  9. 清算結了登記ここで会社が登記簿から消えます。

最大の落とし穴:最後の申告は「1か月以内」で延長できない

法人税の確定申告は、通常は事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。定款で株主総会の時期が決まっている場合などは、申請により期限を延長する特例も使えます。

ところが清算の最後だけは扱いが違います。国税庁は次のように整理しています。

清算中の事業年度は、解散の日の翌日から1年ごとの期間となる。残余財産が確定する日の属する事業年度の確定申告書の提出期限は、その確定した日の翌日から1月以内となり、期限延長の特例の適用はない。

国税庁の法令解釈・質疑応答より要約。消費税についても、清算中の法人で残余財産が確定した場合は、確定の日の属する課税期間終了の日の翌日から1か月以内に申告・納付が必要とされています。

申告の種類期限延長の特例
通常の事業年度終了の日の翌日から2か月以内使える場合がある
解散事業年度解散の日の翌日から2か月以内使える場合がある
清算事業年度各事業年度終了の日の翌日から2か月以内使える場合がある
残余財産確定事業年度確定の日の翌日から1か月以内使えない

「1か月」は思っているより短いです。残余財産が確定してから、決算を組み、申告書を作り、納税まで済ませる必要があります。しかも分配を先にしてしまうと納税資金が会社に残っていない、という事故が起こります。残余財産を確定させる日を決める段階で、申告と納税の段取りを先に組んでおくのが実務上の要点です。

赤字でたたむ会社の救済:期限切れ欠損金

法人税の青色欠損金は繰越期間が決まっていて、期間を過ぎた赤字は使えなくなります。この使えなくなった赤字を期限切れ欠損金と呼びます。

ところが清算のときだけ、これを損金に算入できる制度があります(法人税法59条4項)。理由は単純で、清算では含み益のある資産を売って利益が出やすいからです。長年赤字だった会社が、最後に土地や建物を売った年だけ大きな黒字になり、消えるはずの会社に多額の法人税がかかる——それを避けるための仕組みです。

項目内容
使える場面法人が解散した場合で、残余財産がないと見込まれるとき
「残余財産がないと見込まれる」とはその事業年度終了の時において債務超過の状態にあるとき
確認の方法一般的には実態貸借対照表(資産・負債を時価で評価した貸借対照表)で確認する
判定の時期清算中に終了する各事業年度終了の時の現況で判定する
控除の限度青色欠損金等を控除した後の所得の金額が限度

国税庁の質疑応答事例(法人税法59条4項の「残余財産がないと見込まれるとき」の判定)より整理。

ポイントは「事業年度ごとに判定する」ことです。解散したときに債務超過でも、資産を売って債務を返した結果その年度末に債務超過が解消していれば、その年度は使えません。逆もあります。実態貸借対照表を作らないと判定できないので、清算に入る前に時価ベースで資産と負債を洗い出しておく必要があります。ここは税理士の関与が実質的に必須になる部分です。

残った財産を株主に配ると「みなし配当」になる

債務をすべて払って財産が残れば、株主に分配します。このとき、資本金等の額を超える部分は配当とみなされて株主側で課税されます。これがみなし配当です。

ひとり会社で経営者=株主というケースでは、会社を清算して手元に戻ってきたお金に配当所得として所得税・住民税がかかる、という形になります。「会社に残ったお金がそのまま自分のものになる」わけではない点は、たたむ前に押さえておくべきところです。

この負担を踏まえ、実務では清算に入る前に役員退職金を適正額の範囲で支給し、退職所得として受け取る方法が検討されます。退職所得は退職所得控除があり、さらに2分の1課税という優遇があるためです。ただし不相当に高額な部分は損金にならないため、金額の妥当性の検討が必要です。

小規模企業共済に加入している経営者は、廃業が受け取り事由になります。共済金は原則として退職所得として扱われ、税負担が抑えられます。制度の使い方は小規模企業共済の節税効果で解説しています。

個人事業をやめる場合は届出が中心

個人事業の廃業は、法人と比べるとずっと簡単です。登記も清算手続きもなく、税務署への届出が中心になります。

手続き期限
個人事業の開業・廃業等届出書廃業した日の属する年分の確定申告期限まで
所得税の青色申告の取りやめ届出書取りやめようとする年分の確定申告期限まで
事業廃止届出書(消費税)事由が生じた場合に速やかに
給与支払事務所等の廃止届出書従業員に給与を払っていた場合に提出
予定納税額の減額申請廃業で所得が減る見込みのとき

廃業届の期限は変わっています。従来は「廃業した日から1か月以内」でしたが、2026年1月1日以降は「その事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」になりました。まだ「1か月以内」と書いている解説が多く残っているので、いま調べる方は注意してください。最新の記載は国税庁の案内で確認できます。

もうひとつ知っておきたいのが事業を廃止した場合の必要経費の特例(所得税法63条)です。廃業した後になって出ていく費用——たとえば事務所の原状回復費や、廃業後に確定した経費——は、原則として廃業した年分などの必要経費に算入できます。廃業したから経費にできない、とあきらめる必要はありません。

個人事業をやめて会社員に戻る場合の手続きと税金は、個人事業主から会社員に戻るガイドで詳しく扱っています。

たたむ前に検討したいこと

廃業は最後の選択肢のひとつで、それ以外の道もあります。

選択肢向いているケース
第三者への事業承継・売却黒字で、取引先や従業員、許認可に価値があるとき
休眠(登記だけ残す)再開の可能性があるとき。ただし均等割が課される自治体もあり、申告義務も残る
清算(本記事)後継者がおらず、事業を終える意思が固まっているとき
法的整理(破産等)債務を返しきれないとき。この場合は弁護士へ

特に黒字で廃業する会社が半数を超えているという統計を踏まえると、たたむ前に承継先を探す価値はあります。国が設置している事業承継・引継ぎ支援センターは全国にあり、相談は無料です。事業承継に関する税制は事業承継税制で整理しています。

債務超過や返済のめどが立たない場合は、この記事の手順で進めないでください。通常の清算は債務をすべて弁済できることが前提です。返しきれない場合は特別清算や破産といった法的整理になり、弁護士に相談するのが先になります。判断を先延ばしにするほど選べる手段が減ります。

今日やること

  1. 直近の決算書をもとに、資産と負債を時価で並べてみる。債務超過かどうかで、期限切れ欠損金が使えるか・そもそも通常の清算ができるかが変わります。ここが出発点です。
  2. 従業員がいる場合は、社会保険・労働保険の手続き期限を先に確認する。税務より期限が短いものがあり、遅れると従業員の手続きに影響します。
  3. 残余財産を確定させる時期を、申告と納税から逆算して決める。最後の申告は1か月以内で延長できません。分配より先に納税資金を確保します。

よくある質問

解散したら、その時点で会社はなくなりますか。

なくなりません。解散は営業をやめる決議で、そこから財産を換価し債務を弁済して残りを株主に分配する「清算」が始まります。会社が登記簿から消えるのは清算結了のときです。債権者保護のための官報公告に2か月以上の申出期間が必要なため、解散から清算結了までは最低でも2か月以上かかります。

清算中の申告で、いちばん注意すべき期限はどれですか。

残余財産が確定した事業年度の確定申告です。期限は残余財産の確定の日の翌日から1か月以内で、通常の申告で使える期限延長の特例が適用できません。消費税も同様に1か月以内です。残余財産を確定させる日を決める段階で、決算・申告・納税の段取りまで組んでおく必要があります。

10年以上前の赤字は、清算のときに使えますか。

条件を満たせば使えます。繰越期間を過ぎた「期限切れ欠損金」は、解散した法人で「残余財産がないと見込まれるとき」に損金算入できます(法人税法59条4項)。その事業年度終了の時に債務超過の状態であればこれに該当し、判定は一般に実態貸借対照表(時価ベースの貸借対照表)で行います。判定は清算中の各事業年度末の現況によるため、年度ごとに使える・使えないが変わります。

会社に残ったお金は、そのまま受け取れますか。

そのままではありません。株主への分配のうち資本金等の額を超える部分は「みなし配当」として、株主側で配当所得として課税されます。経営者が株主を兼ねているひとり会社でも同じです。実務では清算前に適正額の役員退職金を支給し、退職所得として受け取る方法が検討されますが、不相当に高額な部分は損金になりません。

個人事業の廃業届は、いつまでに出せばよいですか。

2026年1月1日以降は「その事実があった日の属する年分の所得税に係る確定申告期限まで」です。従来は廃業した日から1か月以内でしたが変更されました。「1か月以内」と説明している情報がまだ多く残っているため、提出時期を判断するときは国税庁の最新の案内で確認してください。青色申告の取りやめ届出書も、取りやめようとする年分の確定申告期限までです。

債務を返しきれない場合も同じ手順ですか。

異なります。通常の清算は債務をすべて弁済できることが前提です。返しきれない見込みであれば特別清算や破産といった法的整理の検討になり、まず弁護士に相談する必要があります。判断を先延ばしにすると選べる手段が減っていくため、早い段階での相談が結果的に損失を小さくします。

参考リンク(出典)

本記事は税金・会社の手続きに関する一般的な情報提供を目的としたもので、個別の判断を行うものではありません。廃業の進め方は債務の状況・株主構成・許認可の有無で大きく変わります。実際の手続きは税務署・法務局・年金事務所等の公式案内でご確認のうえ、税理士・弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。債務の返済が困難な場合は、清算ではなく法的整理の検討が必要です。

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公開日:2026年09月05日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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