業種別の経費率の目安|個人事業主は売上の84%が経費、建設80%・飲食89%・小売93%・専門サービス67%

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  • 公開。総務省統計局「2025年 個人企業経済調査」(結果の概要・第1表・第2表・用語の解説)、中小企業庁「中小企業実態基本調査 令和7年確報」、日本政策金融公庫「小企業の経営指標調査」、財務省「法人企業統計調査 令和7年度」、国税庁 タックスアンサー No.1350・No.2210・No.1810、質疑応答事例「社会保険診療報酬の所得計算の特例」をもとに作成

「売上に対して経費は何%くらいが普通なのか」は、公的統計で答えが出ます。総務省の個人企業経済調査(2025年調査・2024年の実績・約4万の個人事業者が対象)では、個人事業主の売上は1企業あたり平均1,399万円、経費率は84.4%、営業利益率は15.6%です。業種で大きく違い、卸売・小売は93%、宿泊・飲食は89%、建設は80%、専門サービスは67%が経費です[総務省 個人企業経済調査 2025年調査 結果の概要(PDF)]。

ただし税法に「業種別の概算経費率」はありません。必要経費は実際に払った額で計算するのが原則で、例外は家内労働者等の特例(令和8年分から69万円)と医師の社会保険診療の概算経費の2つだけです。統計の経費率は「自分の申告が同業と比べてどこにいるか」を確かめる物差しとして使います。

結論:個人事業主の経費率は業種で69%〜93%。全産業の平均は84%

業種(大分類)1企業の年間売上売上原価給料賃金営業経費経費率営業利益率専従者給与を引いた後
全産業1,399万円42.9%9.3%32.2%84.4%15.6%11.2%
建設業1,474万円33.3%7.8%39.3%80.4%19.6%13.9%
製造業1,096万円29.0%11.3%38.2%78.5%21.5%13.3%
卸売業・小売業2,825万円66.8%6.3%20.2%93.3%6.7%3.9%
宿泊業・飲食サービス業1,103万円41.5%11.3%36.6%89.4%10.6%4.7%
生活関連サービス業・娯楽業530万円15.9%11.7%45.7%73.3%26.7%19.5%
サービス業(上記以外)1,033万円8.2%14.2%47.0%69.4%30.6%25.6%

※総務省「2025年 個人企業経済調査」第1表(1企業あたり・税込み・平均値)から本サイトが計算[e-Stat 第1表 産業大分類別営業状況]。経費率=(売上原価+営業費)÷売上高。営業利益=売上高−売上原価−営業費で、事業主本人の取り分と専従者給与を含む(青色申告特別控除を引く前)。農林漁業・病院・診療所・バー・家事サービス業は調査対象外。

営業利益率15.6%は「売上の15.6%が事業主の手元に残る」という意味ではありません。そこから専従者給与(平均で売上の4.4%)、青色申告特別控除、社会保険料、税金が引かれます。平均値なので、売上の大きい事業者に引っ張られる点にも注意してください(中央値は公表されていません)。

もう少し細かく——職別工事78%・飲食料品小売95%・専門サービス67%・運輸73%

同じ大分類でも、仕入れの有無と人件費の重さで差が出ます。中分類の主なものを並べます。

業種(中分類)1企業の年間売上経費率営業利益率
総合工事業1,754万円84.4%15.6%
職別工事業(大工・左官・内装など)1,294万円78.0%22.0%
設備工事業(電気・管工事など)1,444万円77.4%22.6%
食料品製造業1,508万円86.1%13.9%
金属製品製造業1,250万円75.9%24.1%
機械器具製造業1,224万円73.8%26.2%
卸売業3,373万円91.8%8.2%
飲食料品小売業4,816万円95.2%4.8%
衣料品・その他の小売業1,549万円90.3%9.7%
宿泊業850万円92.7%7.3%
飲食サービス業1,127万円89.2%10.8%
生活関連サービス業(理美容・クリーニングなど)497万円71.6%28.5%
運輸業878万円72.6%27.4%
不動産取引業・賃貸業・管理業802万円63.1%36.9%
専門サービス業(士業・デザイン・経営コンサルなど)2,238万円66.9%33.1%
技術サービス業(設計・測量など)1,233万円69.1%30.9%
学校教育以外の教育・学習支援業(塾・教室)389万円80.2%19.8%
医療業(病院・診療所を除く。整体・鍼灸など)658万円68.9%31.1%
自動車整備業1,303万円84.1%15.9%

※同調査 第2表(産業中分類別)から本サイトが計算[e-Stat 第2表 産業中分類別営業状況]。

自分の経費率がこの数字より10ポイント以上高い、または低いときは、理由を言葉にできるようにしておきます。多い理由の例は、外注が多い(建設)、家賃の高い立地(飲食)、設備を買った年(減価償却)、自宅兼事務所で按分した(サービス業)などです。按分の根拠の作り方は家事按分の割合は何%が妥当かにあります。

経費の中身——全産業では原価43%・給料9%・営業経費32%。業種ごとに重い費目が違う

経費率の内訳を見ると、業種の性格が分かります。全産業の営業経費32.2%の内訳は、減価償却費3.2%、地代家賃2.9%、外注工賃2.9%、租税公課2.3%、損害保険料0.9%、福利厚生費0.6%、利子割引料0.3%、残りが水道光熱費・通信費・消耗品費・旅費交通費などです。

業種外注工賃地代家賃減価償却費給料賃金特徴
建設業15.1%0.6%2.4%7.8%外注が経費の中心。人を雇うより外注で回す
製造業5.7%2.2%3.4%11.3%原価29%+給料11%。材料より人
卸売・小売業0.7%1.3%1.2%6.3%原価67%が大半。それ以外は薄い
宿泊・飲食サービス業0.3%5.8%3.8%11.3%家賃と人件費が重く、利益率10%台
生活関連サービス・娯楽業1.0%8.3%4.6%11.7%店舗の家賃が最大の固定費
サービス業(上記以外)4.2%4.2%7.1%14.2%設備・車両の減価償却が大きい

※売上を100としたときの割合(同調査 第1表)。

法人と比べると——法人の営業利益率は3.7%、個人の16.3%と違うのは役員報酬が経費に入るから

中小企業庁の中小企業実態基本調査(令和7年確報・令和6年度決算・母集団309万社)では、法人の売上高営業利益率は3.7%、個人企業は16.3%です。法人は社長の役員報酬が人件費として経費に入り、個人は事業主の取り分が利益に残るためで、儲かり方が違うわけではありません[e-Stat 中小企業実態基本調査 令和7年確報 売上高及び営業費用(産業別・従業者規模別)]。

業種個人企業:売上原価率個人企業:販管費率個人企業:利益率法人(5人以下):経常利益率法人(全体):経常利益率
全体45.8%37.9%16.3%4.1%4.4%
建設業45.5%34.2%20.4%4.4%5.7%
製造業33.8%42.8%23.5%3.0%5.0%
情報通信業16.5%53.6%29.9%4.1%6.3%
卸売業73.7%17.5%8.7%2.0%2.7%
小売業64.9%27.5%7.6%1.9%2.6%
宿泊業・飲食サービス業38.9%45.4%15.7%1.5%4.3%
学術研究・専門技術サービス業6.6%59.5%33.9%16.2%13.0%
不動産業・物品賃貸業8.1%55.8%36.0%9.4%9.0%

※集計値を売上高で割って本サイトが計算。個人企業の利益率は専従者給与を引く前。法人の経常利益率は役員報酬を引いた後。

この差が「法人化で手取りがどう変わるか」の出発点です。役員報酬をいくらにするかで会社の利益率は動くので、法人の統計は低く見えます。境目の考え方は個人事業主が法人化するタイミングで整理しています。日本政策金融公庫の「小企業の経営指標調査」(融資先の法人・従業者50人未満)でも、黒字企業の経常利益率は建設4.8%・製造5.7%・卸小売3.5%・飲食宿泊5.3%・サービス7.7%で、融資審査で見られる水準はこのあたりです[日本政策金融公庫 小企業の経営指標調査]。

税法に「業種別の概算経費率」はない——例外は家内労働者等の69万円と医師の社会保険診療だけ

「うちの業種は経費率○%で申告すればいい」という話を聞くことがありますが、国税庁が業種別の概算経費率を公表している事実はありません。事業所得は総収入金額から実際にかかった必要経費を引いて計算します[国税庁 No.1350 事業所得の課税のしくみ][国税庁 No.2210 やさしい必要経費の知識]。法律で概算が認められているのは次の2つです。

  • 家内労働者等の必要経費の特例:内職、外交員、集金人、検針員、特定の相手に継続して役務を提供する人は、実額が少なくても令和8年分から69万円(令和7年分65万円、令和2〜6年分55万円)を必要経費にできる。給与収入が69万円以上あると使えない[国税庁 No.1810 家内労働者等の必要経費の特例]。
  • 医師・歯科医師の社会保険診療報酬の概算経費:社会保険診療の収入が5,000万円以下(総収入7,000万円以下)なら、収入の区分に応じて72%・70%・62%・57%を経費にできる。業種別の概算経費率として法律にある唯一の例。医師の事業税は社会保険診療が非課税で試算しています。

給与所得控除や公的年金等控除も「概算の経費」ですが、業種ではなく所得の種類で決まるものです。副業の雑所得にも業種別の率はなく、実額です(副業の確定申告)。

一方で、税務署の側は同業者の経費率を使います。帳簿が無く所得を計算できない人には、同業者の原価率や所得率で所得を推計する「推計課税」が認められています(所得税法156条。青色申告者には適用できません)。調査先の選び方でも、同業と比べて経費率が突出している申告は目を引きやすいとされます。詳しくは税務調査が来る確率で説明しています。統計から離れていること自体は問題ではなく、離れている理由を領収書と按分の根拠で説明できるかが分かれ目です。

自分の経費率の出し方と、統計の使いどころ3つ

青色申告決算書なら1ページ目の「売上(収入)金額」と「経費計」、白色の収支内訳書なら「収入金額」と「経費計」で、経費計÷売上が自分の経費率です。欄の場所は収支内訳書と青色申告決算書の書き方にあります。統計と比べるときは、専従者給与と青色申告特別控除を経費に入れずに比べます(統計の営業利益はその前の数字です)。

  1. 申告前のチェック:自分の経費率が同業の中分類から10ポイント以上離れていたら、その費目を見直す。経費に入れてよいか迷うものは個人事業主の経費グレーなもの10選で判断する。
  2. 消費税の簡易課税の判断:簡易課税のみなし仕入率は卸売90%・小売80%・製造70%・飲食60%・サービス50%・不動産40%。統計の経費率のうち、給料賃金・租税公課・保険料・減価償却の一部は消費税のかからない経費なので、課税仕入れの割合は経費率より低くなります。例えば飲食は経費率89%でも、給料11%と家賃以外の非課税分を除くと課税仕入れは6割台が目安で、みなし60%との差は小さい。実額で比べる手順は消費税の簡易課税と本則課税の違いにあります。
  3. 融資・事業計画の根拠:日本政策金融公庫の創業計画書などで利益率を書くとき、統計の業種平均を根拠にすると説得力が出る。黒字企業の経常利益率は3〜8%(法人)、個人事業主の営業利益率は10〜30%(事業主の取り分を含む)が相場です。

まとめ

  • 総務省の個人企業経済調査(2024年実績)で、個人事業主の経費率は全産業84.4%。卸売・小売93.3%、宿泊・飲食89.4%、建設80.4%、製造78.5%、生活関連サービス73.3%、その他サービス69.4%
  • 営業利益率15.6%には事業主の取り分と専従者給与(4.4%)が含まれる。専従者給与を引いた後は11.2%
  • 法人の営業利益率は3.7%(中小企業実態基本調査)。役員報酬が経費に入るためで、個人の16.3%と単純には比べられない
  • 税法に業種別の概算経費率はなく、必要経費は実額。例外は家内労働者等の69万円(令和8年分〜)と医師の社会保険診療の72〜57%
  • 統計は「同業からの離れ方」を見る物差し。離れていたら費目を点検し、理由を領収書と按分の根拠で説明できるようにする

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公開日:2026年10月15日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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