屋号の決め方と届出|開業届の期限は2027年3月15日へ、「株式会社」は使えない

直近4人が訪問しました

この記事の更新情報

  • 公開。国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」・開業届の様式と書き方・インボイス制度に関するQ&A(公表等/記載事項)・国税庁リーフレット「請求書やレシートに『屋号』を記載している個人事業者の皆さまへ」・法令検索(会社法7条・商法11条・所得税法229条)・法務局・東京都主税局の資料をもとに作成

個人事業主の屋号は、付けても付けなくてもかまいません。付けるときも登記は不要で、開業届の「屋号」欄に書くだけです。ただし「株式会社」「合同会社」など、会社と誤認されるおそれのある文字は使えません(会社法7条)[法令検索 会社法7条]。名前を登記して残すこともできますが、個人の商号登記は任意です(商法11条2項)[法令検索 商法11条]。そしてもう一つ——開業届の期限は「開業から1か月以内」ではなくなりました。令和8年(2026年)1月1日からは「その年分の確定申告期限まで」で、2026年開業なら2027年3月15日までです[国税庁 A1-5]。決め方・書く場所・変更手続を原文で整理します。

結論:屋号まわりで「やること」と「やらなくていいこと」

やること義務か任意か窓口・書類
屋号を決める任意。氏名だけでもよい—
開業届の「屋号」欄に書く様式に欄があるだけ。書かなくても届出はできる納税地の税務署(開業・廃業等届出書)
開業届そのものを出す義務(所得税法229条)同上。その年分の確定申告期限まで
屋号を商号として登記する任意(商法11条2項)法務局。登録免許税がかかる
インボイスの公表サイトに屋号を出す任意「適格請求書発行事業者の公表事項の公表(変更)申出書」
屋号付きの口座をつくる任意各金融機関。国の共通要件はない

出典:国税庁「A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続」[国税庁]、会社法7条・商法11条[法令検索]。屋号欄を「任意記載」と書いた国税庁の明文は見つかりませんでした。届出の記載事項は所得税法229条と施行規則で決まっており、屋号が無くても届出は成り立ちます。

屋号は、税務署に「この名前で商売しています」と伝える呼び名です。法的な独占権は生まれません。名前を守るのは商号登記や商標で、別の制度です。

屋号を書く場所は3つだけ

  1. 開業届の「屋号」欄。様式にフリガナ付きの屋号欄があります[国税庁 様式]。提出先は納税地の所轄税務署長。e-Tax でも書面でも出せます。
  2. 決算書・収支内訳書。青色申告決算書のヘッダーに「業種名/屋号」欄があります[国税庁 様式]。
  3. 請求書・領収書。インボイスの名義にも使えます(後述)。
開業届の期限は変わっている(要注意)

以前は「事業の開始等の事実があった日から1月以内」でした。令和7年度改正で所得税法229条が改められ、令和8年1月1日から「その事実があった日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに」に変わりました[法令検索 所得税法229条]。2026年中の開業なら2027年3月15日までです。

ただし青色申告の承認申請は別の期限で、1月16日以後の開業なら開業から2か月以内、1月15日までの開業ならその年の3月15日です[国税庁 書き方]。届出の全体像は個人事業主の開業ガイドにまとめています。

使えない名前:会社だと思われる文字は入れられない

会社法7条は、こう定めています。「会社でない者は、その名称又は商号中に、会社であると誤認されるおそれのある文字を用いてはならない。」[法令検索 会社法7条]

会社の側は、種類に応じて「株式会社」「合名会社」「合資会社」「合同会社」の文字を商号に入れる義務があります(会社法6条2項)[法令検索 会社法6条]。裏返せば、個人がこの文字を屋号に使うことは認められません。

使える屋号の例

  • 〇〇工房、〇〇商店、〇〇工務店
  • 〇〇デザイン事務所、〇〇企画
  • 氏名をそのまま使う(屋号なしでもよい)

避けるべき屋号

  • 株式会社〇〇/〇〇株式会社
  • 〇〇合同会社/〇〇合名会社/〇〇合資会社
  • 会社と誤認されるおそれのある文字
  • 銀行・保険など業法で守られている語

もう一つは商標です。屋号を開業届に書いても、その名前を使う権利が保証されるわけではありません。よく知られた商品名と同じ屋号なら商標権などの問題になり得ます。同じ名前が既に使われていないかは事前に調べておくほうが安全です。

「屋号」と「商号」は別物——名前を残したいなら登記

商法11条は、会社を除く商人について「商人は、その商号の登記をすることができる」と定めます[法令検索 商法11条2項]。「することができる」=任意です。会社は設立登記で必ず商号が登記されますが、個人にその義務はありません。

屋号(税務上の届出)商号(登記)
手続開業届の欄に書く法務局へ申請
費用届出書の提出のみ登録免許税がかかる
名前の保護生じない同一住所・同一商号の登記を防げる

出典:法務局「商業・法人登記」[法務局]。登録免許税の額と必要書類は法務局の案内で確認してください。同じ商号の登記は法務省の「オンライン登記情報検索サービス」で調べられます[法務省]。

ほとんどの個人事業主は登記をしなくても困りません。看板を長く使う、同業に似た名前がある、といったときに検討する手続です。法人なら商号は設立登記に載ります。費用は会社設立の費用で比べてください。

屋号を変えたいとき:出すものは3系統

屋号の変更だけを届け出る専用の手続は、国税庁の案内にありません。開業届の対象は「事業の開始」「事務所・事業所の新設・増設・移転・廃止」「事業の廃止」で、屋号の変更は挙げられていないからです[国税庁 A1-5]。実務では次の3つです。

相手やること期限
税務署(所得税)確定申告書・決算書の屋号欄に新しい屋号を書く。印字済みの用紙が届く人は訂正その年分の確定申告まで
税務署(インボイス)公表サイトに屋号を出す/直すなら「公表事項の公表(変更)申出書」定めなし(変えたいとき)
都道府県(個人事業税)「事業開始(廃止)等申告書」。東京都は変更の日から10日以内(開始15日以内)自治体ごとに定めがある

出典:国税庁「確定申告書の手引き」(印字の訂正)[国税庁]、東京都主税局「個人事業税」[東京都主税局]。個人事業税は都道府県税で、期限や様式は自治体で違います。

あわせて取引先・請求書のひな型・口座名義・名刺も直します。手続は軽いのに周りの直しが重い。「屋号は最初に決めるほうが楽」と言われる理由です。

インボイスの公表サイトに屋号を載せられる

登録を受けると、氏名または名称・登録番号・登録年月日が国税庁の公表サイトに載ります[国税庁 公表サイト]。個人事業主は法定の公表事項が「氏名」までで、屋号は入りません。申出で追加できるのが「主たる屋号」と「主たる事務所の所在地等」です[国税庁 インボイスQ&A 問19]。

国税庁のリーフレットも「公表事項の公表(変更)申出書」の提出で屋号を公表できますと案内しています[国税庁 リーフレット]。公表していないと、取引先が登録番号で検索しても氏名しか出ません。請求書の店名と一致せず発行元か分かりにくいので、屋号名義で請求書を出すなら出すほうが親切です。

請求書・領収書に屋号だけ書いてよいか

結論は「よい」です。インボイスの記載事項は6つあり、その1つ目が「適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号」です[国税庁 インボイスQ&A]。氏名でも名称(屋号)でも満たせます。

インボイスの記載事項(6項目)
  • ① 発行する事業者の氏名又は名称および登録番号
  • ② 取引年月日 ③ 内容(軽減税率の対象ならその旨)
  • ④ 税率ごとに区分した合計金額と適用税率
  • ⑤ 税率ごとの消費税額等 ⑥ 交付を受ける事業者の氏名又は名称

相手が本人を特定するのは登録番号です。屋号は名乗り、番号が身分証。屋号だけを書くなら、公表サイトに屋号を載せておくと照合が通りやすくなります。書き方はインボイスの書き方6項目、源泉徴収がある仕事の請求書はフリーランスの請求書の書き方で解説しています。

屋号付き口座:国の共通ルールは無い

「屋号名義の口座には開業届の控えが必要」という話をよく見かけます。ただし屋号付き口座の開設要件を定めた国税庁・自治体の資料はありません。条件は各金融機関が決めるもので、必要書類も違います。作る予定があるなら金融機関に直接確認を。開業届の控え(書面なら複写、e-Tax なら受信通知)は取っておくと安心です。

なお、名義が屋号かどうかより事業専用の口座を1本持つことのほうが実益があります。

決め方の実務:迷ったら3点だけ確認する

  1. 読み方が一つに決まるか。屋号は電話で伝え、振込の名義になります。読みが割れる名前は毎回説明が要ります。
  2. 何の商売か分かるか。「〇〇工務店」のように業種が入ると名刺でも検索でも伝わります。開業届の「職業」欄も「洋菓子小売」のように具体的に書くよう案内されています[国税庁 青色申告承認申請書]。屋号も同じ発想でよいでしょう。
  3. 先に使われていないか。会社と誤認される文字が無いか確かめ、同じ商号の登記を法務省のオンライン登記情報検索サービスで調べます[法務省]。

3点を通れば十分です。屋号は事業の中身を保証しません。届出を出して記帳を続けるほうが手取りに効きます。

よくある質問

屋号を決めていません。開業届の屋号欄は空欄でいいですか。

空欄でも届出はできます。記載事項は所得税法229条と施行規則で決まっており、屋号が無くても要件を欠きません。あとで使い始めたら、確定申告書や決算書の屋号欄に書けば足ります。

開業届を出すのが遅れました。もう間に合いませんか。

令和8年1月1日からの期限は「その事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」です。2026年開業なら2027年3月15日までなので、まだ期限内の可能性が高いです。ただし青色申告の承認申請は別の期限(1月16日以後の開業なら2か月以内)です。

屋号に「〇〇カンパニー」は使えますか。

会社法7条が禁じるのは「会社であると誤認されるおそれのある文字」です。「株式会社」「合同会社」などの種類名は使えません。それ以外の語は個別の判断なので、迷うときは法務局や税務署に確認してください。

屋号を変えたら、税務署に変更届を出す必要がありますか。

専用の手続はありません。確定申告書・決算書の屋号欄を新しい屋号にすれば足ります。インボイスの公表サイトに屋号を出しているなら「公表事項の公表(変更)申出書」、個人事業税の届出があるなら都道府県税事務所への届出も必要です。

参考リンク(出典)

※屋号付き口座の開設要件を定めた一次情報は確認できませんでした(各金融機関が定めるため)。屋号欄を「任意記載」と明記した国税庁の文言も無いため、本記事は「書かなくても届出はできる」にとどめています。

コメントみんなの意見

コメントの閲覧・投稿は会員限定です(無料・Googleアカウントでログイン)。

コメントを読み込んでいます…

この記事にコメントする

0 / 200

投稿された内容はこのページで公開されます。URL・メールアドレス・電話番号を含む投稿、誹謗中傷や差別的な表現は自動的に受け付けません。個別の税務相談にはお答えできません(税務署または税理士へご相談ください)。削除のご依頼はお問い合わせから承ります。取り扱いはプライバシーポリシーをご覧ください。

この記事は役に立ちましたか?

「はい」が多い記事から、優先的に内容を更新・深掘りしていきます。

公開日:2026年09月22日 / 執筆:みんなの税金 編集部

この記事は、出典の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュースメディア・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載いただけます(事前連絡は不要)。詳しくは転載・引用についてをご覧ください。

本記事は税制・各種制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。記載内容は公開時点の情報に基づき正確性に努めていますが、制度は改正される場合があります。実際のお手続き・個別のご判断は、国税庁・お住まいの税務署・税理士等の専門家にご確認ください。運営者情報・免責事項