インボイス8割控除が10月から7割へ|発注側の負担増と1億円の新上限

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  • 公開。国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(令和8年4月・同5月改訂)と令和8年度税制改正特集をもとに作成

最終更新:2026年9月19日/国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」(令和8年4月・同5月改訂)および国税庁インボイス制度特設サイトの令和8年度税制改正特集をもとに作成しています。改正法は成立済みで、2026年10月1日から適用されます。

2026年10月1日から

免税事業者に支払ったぶんの消費税は、8割ではなく7割しか引けなくなります。当初の予定(いきなり5割)よりは緩和されましたが、負担が増えるのは事実です。しかも同時に、同じ相手への支払が年1億円を超えると、その超えた部分はこの経過措置をまったく使えないという上限が新設されました(改正前は10億円)。影響を受けるのは、免税事業者やインボイス未登録の相手に発注している側です。

何が変わるのか——8割控除が7割控除に

インボイス制度では、適格請求書発行事業者以外(免税事業者・未登録の事業者・個人など)からの仕入れは、原則として仕入税額控除ができません。ただし激変緩和のため、支払った消費税相当額の一定割合を控除できる経過措置が置かれています。制度開始から2026年9月30日までは「8割控除」でした。

令和8年度税制改正で、この経過措置は適用期限が2年延長されたうえで、割合が7割・5割・3割の3段階に組み替えられました。改正前は2026年10月にいきなり5割へ下がり、2029年9月で終了する予定でしたから、下げ幅はなだらかになり、終了は2年先送りになった形です。

80% 70% 50% 30% 0% 2023年10月 2026年10月 2028年10月 2030年10月 2031年10月 ここが今回の改正 免税事業者からの仕入れで控除できる割合
控除割合の推移(国税庁「インボイス制度に関する令和8年度税制改正について」をもとに作成)
期間控除できる割合
2023年10月1日〜2026年9月30日仕入税額相当額の80%
2026年10月1日〜2028年9月30日仕入税額相当額の70%
2028年10月1日〜2030年9月30日仕入税額相当額の50%
2030年10月1日〜2031年9月30日仕入税額相当額の30%
2031年10月1日〜控除できない

区切りは「仕入れを行った日」です。課税期間の途中で割合が変わるため、12月決算の法人や個人事業者は、同じ年の中に8割控除と7割控除が混在します。9月30日までの取引は80%、10月1日以後の取引は70%で計算します。請求書の日付ではなく、課税仕入れを行った日で判定してください。

いくら負担が増えるのか

影響を受けるのは、免税事業者やインボイス未登録の相手に支払っている側です。支払額そのものは変わりませんが、納める消費税が増えます。

試算① 免税事業者のフリーランスに月11万円(税込)を外注している場合

年間の支払 132万円(税込)→ 消費税相当額 12万円
これまで(80%):控除できる額 9万6,000円
10月以後(70%):控除できる額 8万4,000円

差額 年1万2,000円の納税増(10月以後の取引が1年分続いた場合)

試算② 一人親方・個人の大家など、免税事業者への支払が年3,300万円(税込)ある会社

消費税相当額 300万円
80%控除 → 240万円/70%控除 → 210万円

差額 年30万円の納税増

1万円税込110万円の支払につき
増える納税額(8割→7割)
1億円同じ相手への年間支払で
経過措置が切れる新しい上限
2031年9月経過措置そのものの
終了時期(2年延長後)

税込1万円未満の支払には、そもそも「少額特例」があります。基準期間の課税売上高が1億円以下(または特定期間の課税売上高が5,000万円以下)の事業者は、税込1万円未満の課税仕入れなら、インボイスがなくても帳簿の保存だけで全額を控除できます。判定は商品ごとではなく1回の取引の金額で行います。こちらは2029年9月30日までの措置で、今回の7割への引き下げとは無関係です。細かい経費の支払が中心の小規模事業者は、実は影響が限定的です。

新設された「1億円の上限」——ここが見落とされやすい

今回の改正でもう一つ入ったのが、控除限度額の見直しです。

一の適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れの額の合計額が、その年またはその事業年度で1億円を超える場合、超えた部分の課税仕入れには経過措置を適用できません。改正前の基準は10億円でしたから、線が10分の1に引き下げられたことになります。適用は2026年10月1日以後に開始する課税期間からです(個人事業者なら2027年分から、3月決算法人なら2027年4月開始の事業年度から)。

ポイントは「一の」、つまり取引先ごとに1億円で判定するところです。免税事業者に少しずつ払っている会社ではまず当たりませんが、次のようなケースは現実に届きます。

  • 個人の大家に事務所・店舗・倉庫の家賃を払っている。年1億円規模の賃料になるのは大型物件ですが、複数拠点を同じオーナーから借りていると合算されます。
  • 特定の一人親方・個人事業者に大口の外注を集中させている。建設・運送・システム開発などで、1社(1人)への発注が年1億円を超える形はあり得ます。
  • インボイス未登録の法人からの大口仕入れ。経過措置は「適格請求書発行事業者以外の者」が対象なので、免税事業者に限りません。

期中に1億円を超えたら、超えた部分だけが経過措置の対象外になります。年度の途中で取引先別の累計を把握しておかないと、決算でまとめて計算し直すことになります。

経理の実務——帳簿の書き方が変わる

経過措置の適用を受けるには、帳簿にその旨を記載し、区分記載請求書等と同様の事項が書かれた請求書等を保存する必要があります。これまで「80%控除対象」と記載してきた欄は、10月1日以後の取引について「70%控除対象」に変わります。

1会計ソフトの税区分を確認する

主要な会計ソフトは「課税仕入(8割控除)」といった専用の税区分を持っています。10月1日以後の日付で自動的に7割の区分へ切り替わるか、提供元の案内を確認してください。自動で切り替わらない設定のまま入力を続けると、控除しすぎの状態で申告することになります。

2取引先の登録状況を棚卸しする

国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で登録番号を検索できます。支払先のうち未登録の相手を洗い出し、年間支払額の大きい順に並べておくと、負担増の見積りと1億円上限の確認が同時にできます。

39月末をまたぐ請求を分けて処理する

月末締めの請求書には9月分と10月分が混ざることがあります。仕入れを行った日で80%と70%に分けて計上してください。

免税事業者の側は——値引きを求められたら

発注側の負担が増えるぶん、免税事業者に対して「消費税分を下げてほしい」という交渉が起きやすくなります。ここには明確なルールがあります。

取引上の地位が優越している側が、免税事業者に対して一方的に取引価格の引き下げを通告することは、独占禁止法上問題となるおそれがあります(公正取引委員会「免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A」)。さらに2026年1月1日からは、下請法が「中小受託取引適正化法」に改正・改称され、価格協議の求めに応じずに一方的に代金を決定することそのものが違反行為になりました。協議を明示的に拒む場合だけでなく、求めを無視する・繰り返し先延ばしにするなど、協議を困難にさせた場合も含まれます。

つまり、「7割になったから一律で値下げ」と通告する形は通りません。発注側は協議の場を用意する必要があり、受注側は協議を求める権利があります。実務的には、負担増は税込110万円あたり1万円(約0.9%)ですから、その範囲を超える値下げ要求には根拠がありません。免税事業者として交渉に臨むときの前提知識はインボイス制度と免税事業者にまとめています。

なお、登録する側に回るかどうかの損得は別の問題です。個人事業者は2027年分・2028年分について新しく3割特例が使えます(2割特例は2026年分で終了)。この比較はインボイス2割特例の終了と3割特例・簡易課税の選び方で扱っています。

今日やること

  1. 直近1年の支払先リストから、インボイス未登録の相手を抜き出して年間支払額を集計する。国税庁の公表サイトで登録番号を照合できます。
  2. その合計の消費税相当額に10%を掛ける。それが10月以降1年で増えるおおよその納税額です(8割→7割の差=消費税相当額の1割)。
  3. 1社あたりの年間支払が1億円に近い相手がいないかを確認する。いれば、2026年10月1日以後に始まる課税期間から上限の管理が必要です。
  4. 会計ソフトの提供元に、7割控除の税区分がいつ・どう切り替わるかを確認する。

手取りを増やす具体策は手取りアップ・アクションリストにまとめています。

よくある質問

簡易課税や2割特例で申告している場合も関係がありますか。

関係ありません。簡易課税・2割特例・3割特例は売上から機械的に仕入税額を計算する仕組みなので、実際に誰からいくら仕入れたかは影響しません。今回の7割控除が効くのは、本則課税(一般課税)で申告している事業者だけです。

9月30日までに前払いすれば8割控除を取れますか。

仕入税額控除の時期は、原則として課税仕入れを行った日(物の引渡しや役務の提供を受けた日)で判定します。単に代金を先に払っただけでは、その日の仕入れにはなりません。前倒しで役務の提供を受ける実態がないのに書類だけ9月に寄せるのは避けてください。

1億円の上限は、免税事業者ぜんぶを合計して判定するのですか。

いいえ、「一の適格請求書発行事業者以外の者」ごと、つまり支払先ごとに判定します。複数の免税事業者への支払を合計するわけではありません。1社あたりの年間(事業年度)の課税仕入れの合計額が1億円を超えた場合に、その超えた部分について経過措置が使えなくなります。適用は2026年10月1日以後に開始する課税期間からです。

経過措置はいつまで続きますか。延長される可能性はありますか。

現行の規定では2031年9月30日までで、2031年10月1日以後は控除できません。今回の改正でも当初予定から2年延長されているため、今後さらに見直される可能性は否定できませんが、現時点で決まっているのはこのスケジュールです。設備や外注体制の計画は、この期限を前提に立ててください。

参考リンク(出典)

本記事は2026年9月19日時点の公表資料に基づく一般的な情報提供です。個別の判定・申告の取扱いは、税務署または税理士にご確認ください。

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公開日:2026年09月19日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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