労災の休業補償は給料の8割・傷病手当金は3分の2|ケガや病気で休むときどちらになるか

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  • 公開。厚生労働省・都道府県労働局「休業(補償)等給付」の案内、全国健康保険協会「傷病手当金」、厚生労働省通達(昭和33年保険発第95号の2)をもとに作成

ケガや病気で仕事を休むとき、給料の代わりになる公的な給付は2つあります。仕事中・通勤中のケガや病気なら労災保険の「休業(補償)等給付」で、給付基礎日額の60%に休業特別支給金20%を足した約8割。それ以外(私傷病)なら健康保険の「傷病手当金」で、標準報酬日額の3分の2です。両方を同時に受け取ることはできず、労災に当たるなら労災が優先します。どちらになるかで月3万円以上の差が出るうえ、いつまでもらえるか、退職後はどうなるかも違います。月給30万円の人を例に、労働局・協会けんぽの資料で比べます。

結論:比較表(月給30万円の場合)

労災の休業(補償)等給付健康保険の傷病手当金
対象業務上のケガ・病気、通勤中のケガ業務外(私傷病)のケガ・病気
1日あたり給付基礎日額の60%+特別支給金20%=約8割
(月給30万円→日額約9,800円→約7,800円)
標準報酬日額の3分の2
(標準報酬月額30万円→日額1万円→約6,670円)
30日休んだ場合約23万5,000円約20万円
もらえない最初の日数待期3日。業務災害なら会社が平均賃金の60%を補償。通勤災害は補償なし連続3日の待期。補償なし
期間治るまで(症状固定まで)。1年6か月たっても治らず重い場合は傷病(補償)等年金に切替支給開始から通算1年6か月で終了
税金非課税非課税
社会保険料免除なし(休業中も発生)免除なし(休業中も発生)
退職後続く(会社との関係は問わない)被保険者期間1年以上で退職日に受給していれば続く
申請先労働基準監督署(様式第8号/通勤災害は第16号の6)協会けんぽ・健保組合
時効休んだ日ごとに2年休んだ日ごとに2年

出典:石川労働局「休業(補償)等給付」[石川労働局]、全国健康保険協会「傷病手当金」[協会けんぽ]

労災の給付基礎日額は「直前3か月の賃金総額 ÷ その期間の暦日数」で、月給30万円なら90万円 ÷ 92日 = 約9,783円です。傷病手当金の標準報酬日額は標準報酬月額 ÷ 30 で1万円。基礎になる日額は傷病手当金の方が少し高いのに、率の差(8割対3分の2)で労災が上回ります。

どちらになるかは「休んだ理由」で決まる——自分で選べない

傷病手当金は「業務外の病気やケガ」が支給要件なので、労災に当たるケガや病気には傷病手当金は出ません。逆に労災は業務や通勤が原因でなければ認められません。つまり、どちらを受け取るかは本人や会社が選ぶものではなく、原因で決まります。

ケースどちらかポイント
作業中に転倒して骨折労災(業務災害)待期3日は会社が平均賃金の60%を補償する義務あり
通勤途中の交通事故でケガ労災(通勤災害)待期3日の会社補償はない。初回の給付から一部負担金200円が引かれる。相手の自賠責と調整
寄り道の帰り道でケガ(日用品の買い物など)労災(通勤災害)になる場合あり日常生活に必要な行為の後に通勤経路へ戻れば通勤扱い。飲み会の帰りは対象外
長時間労働・パワハラでうつ病労災認定されれば労災。認定までは傷病手当金精神障害の認定は調査に半年〜1年かかる。先に傷病手当金を受け、認定後に精算するのが実務
休日のスポーツでケガ傷病手当金業務と関係がないので労災ではない
病院内でインフルエンザに感染した看護師労災になり得る業務との因果関係が認められる職種・状況なら業務災害

「労災を使うと会社の保険料が上がる」「労基署に目を付けられる」といった理由で、業務中のケガなのに健康保険で処理するよう求める会社があります。これは労災隠しで犯罪(労働安全衛生法違反)です。労災の請求は本人が労働基準監督署に直接できるので、会社が証明欄を書かなくても請求は受け付けられます。健康保険で受診してしまった場合も、後から労災に切り替えられます。

両方は受け取れない。労災が優先、差額だけ傷病手当金

同じケガで労災の休業補償と傷病手当金を両方受け取ることはできません。厚生労働省の通達では、労災の休業補償の額が傷病手当金の額より少ない場合に限り、その差額を傷病手当金として支給するとされています[厚生労働省・昭和33年通達]。労災の方が高い通常のケースでは、傷病手当金は出ません。

30日休んだときの受取額(月給30万円・標準報酬月額30万円)
労災傷病手当金 休業補償給付 60% 約17万6,000円 特別支給金 20% 計 約23万5,000円 傷病手当金 3分の2 約20万円 給付基礎日額は直前3か月の賃金÷暦日数、標準報酬日額は標準報酬月額÷30。待期3日分は含まない
出典:労働局・協会けんぽの案内をもとに概算。金額は賃金の内訳や賞与で変わる

労災を申請したのに不支給になった場合は、さかのぼって傷病手当金を請求できます。ただし傷病手当金の時効は休んだ日ごとに2年なので、労災の調査が長引くときは、先に傷病手当金を「労災の結果次第で返還する」前提で受けておくか、健保に時効の扱いを確認しておくことが大切です。

いつまでもらえるか:1年6か月で分かれる

  • 傷病手当金は支給開始から通算1年6か月で終了。途中で復職して再び休んだ場合、支給された日数を通算し、1年6か月分に達すると打ち切りです(2022年から「通算」に変更)。その後も働けなければ障害年金の請求を検討します。
  • 労災は治るまで続く。期限はありません。療養開始から1年6か月たっても治らず、傷病等級第1〜3級に当たる重い状態なら「傷病(補償)等年金」(給付基礎日額の313日分・277日分・245日分)に切り替わり、休業補償より手厚くなります。第3級に当たらない場合は休業補償が続きます。
  • 治療費の自己負担も違う。労災は療養(補償)等給付で治療費が全額出て、窓口負担はありません(労災指定病院なら現物給付)。傷病手当金の場合は通常の3割負担で、月の上限は高額療養費で決まります。

手続きと、休業中に引かれ続けるもの

  1. 労災:様式第8号(通勤災害は第16号の6)を労働基準監督署へ。医師の証明と会社の証明(賃金・休業日数)を受けて提出します。会社が協力しない場合はその旨を書いて本人が提出できます。1か月ごとにまとめて請求するのが一般的で、初回の振込までは1〜2か月かかります。
  2. 傷病手当金:協会けんぽ・健保組合へ。支給申請書に医師の意見と会社の証明を受けて提出。こちらも1か月単位が多く、初回は申請から2〜3週間で振込です。詳しい条件は傷病手当金の記事を参照してください。
  3. どちらも社会保険料は免除されない。休業中も健康保険・厚生年金の保険料は発生し、給与から引けないぶんを会社が立て替えて後で精算するか、本人が振り込みます。月給30万円なら本人負担は月4万5,000円前後です。住民税も前年の所得に基づいて続きます。
  4. 会社から給与が出ると調整される。労災は「賃金を受けない日」が対象なので、平均賃金の60%以上の給与が出た日は支給されません。傷病手当金も給与が出た分だけ減額されます。有給休暇を使った日はどちらも対象外です。

退職したらどうなるか

労災の休業補償は退職しても続きます。会社を辞めたことを理由に打ち切られることはなく、治るまで受け取れます。傷病手当金は「継続給付」の要件——退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あり、退職日に傷病手当金を受けている(または受けられる状態にある)こと——を満たせば、退職後も残りの期間を受け取れます。退職日に出勤して挨拶回りをすると「働ける状態」とみなされて継続給付が切れることがあるので、退職日は休んでください。

退職後に働ける状態になれば、失業給付(基本手当)に切り替えます。病気で辞めた人は特定理由離職者として給付制限なしで受けられ、働けない期間は受給期間の延長ができます。手順は失業保険の受け取り方を参照してください。

なお、フリーランスや一人親方には傷病手当金がなく、労災も特別加入していなければ出ません。一人親方の労災保険料を参照してください。

よくある質問

待期3日の間はまったく収入がないのですか?

業務災害なら、会社は労働基準法に基づいて待期3日分について平均賃金の60%を補償する義務があります。通勤災害と私傷病(傷病手当金)にはこの補償がなく、有給休暇を使うか無給になります。傷病手当金の待期は「連続3日」で、土日や有給を含めてよい点が労災と違います。

労災の休業補償を受けていると、有給休暇は使えませんか?

使えますが、有給を使った日は賃金を受けているので休業補償は出ません。8割の給付より10割の有給の方が手取りは多いので、有給を先に使い、なくなってから休業補償を受ける人が多いです。待期3日に有給を充てることもできます。

まとめ

  • 仕事中・通勤中なら労災の休業補償で約8割、業務外なら健康保険の傷病手当金で3分の2
  • どちらになるかは休んだ理由で決まり、選べない。両方は受け取れず、労災が優先
  • 月給30万円で30日休むと、労災は約23万5,000円、傷病手当金は約20万円
  • 傷病手当金は通算1年6か月で終了。労災は治るまで続き、退職しても打ち切られない
  • 業務中のケガを健康保険で処理させるのは労災隠し。労災は本人が労働基準監督署に直接請求できる

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参考リンク(出典)

本記事は次の資料をもとに作成しています。金額は概算で、賃金の内訳・賞与・加入する健保で変わります。

※本記事は一般的な情報提供です。労災の認定・給付の詳細は労働基準監督署、傷病手当金は加入する健康保険にご確認ください。

公開日:2026年10月22日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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