外国人の確定申告はここが違う——居住者判定・国外扶養・租税条約の3つの関門
外国人従業員を雇う会社の経理担当者、留学生を支援する学校職員、そして日本で働く外国人本人。「確定申告や年末調整は日本人と同じでいいのか」という質問は、この3者から必ず出てきます。答えは「基本は同じ。ただし3つの論点だけ特別ルールがある」です。①居住者か非居住者かの判定、②国外に住む家族を扶養に入れるときの厳しい書類要件、③留学生などに適用される租税条約の免税。この3つを順に整理し、よくあるつまずきと確認先をまとめます。
・日本に1年以上住んで働く外国人は「居住者」=税金のルールは日本人と同じ。国籍は関係ない。
・国外に住む家族の扶養控除は書類がすべて。30〜69歳の親族は原則、年38万円以上の送金証明が必要。
・留学生のアルバイトは租税条約で免税になる国がある(中国など)。ただし事前の届出が条件。
・帰国する年は納税管理人か出国前の申告を忘れずに。
関門①:居住者か、非居住者か——国籍ではなく「住まい」で決まる
日本の所得税は国籍で区別しません。判定基準は「住所(生活の本拠)が日本にあるか、1年以上の居所があるか」です[国税庁 No.2012]。
| 区分 | 典型例 | 課税される所得 |
|---|---|---|
| 居住者(非永住者以外) | 日本に長く住み働く外国人 | 全世界の所得 |
| 非永住者(居住者のうち日本国籍がなく、過去10年で日本住所が5年以下) | 来日5年以内の駐在員・技術者など | 国内源泉所得+国外所得のうち日本に送金された分など |
| 非居住者 | 短期出張者・日本を離れた後 | 国内源泉所得のみ(給与は原則20.42%源泉分離) |
会社勤めの居住者なら、年末調整・確定申告の要否は日本人とまったく同じです。給与1か所で年収2,000万円以下なら年末調整で完結し、副業20万円超・医療費控除・ふるさと納税(ワンストップ特例を除く)などがあれば確定申告します。基本の流れは確定申告チェックリストを参照してください。国外の資産・相続に関わる場合は外国人と相続税もあわせてどうぞ。
関門②:国外に住む家族の扶養控除——「送金証明」がすべて
母国の家族に仕送りをしている人が扶養控除を使う場合、国外居住親族の特別ルールが適用されます。口頭や申告書への記載だけでは認められず、次の書類が必須です[国税庁 国外居住親族]。
- 親族関係書類——戸籍・出生証明書・パスポートの写しなど(外国語なら日本語訳を添付)
- 送金関係書類——本人からその親族への送金を示す銀行の外国送金依頼書、家族カードの利用明細など。親族1人ごとに必要(まとめて世帯主に送金では全員分と認められない)
2023年からルールが厳格化され、30歳以上70歳未満の国外居住親族は、①留学生②障害者③その年の送金合計38万円以上のいずれかに当てはまらないと扶養控除の対象外になりました。「母国の両親(40〜60代)を扶養に入れる」典型ケースは、③の38万円以上送金+その証明書類が事実上の必須条件です。送金がクレジットカードの家族カード利用でもよいなど細部は国税庁のQ&Aで確認できます。
この書類は年末調整でも確定申告でも求められます。経理担当者は、回収漏れがあると後日の税務調査で控除否認→本人に追徴という流れになりやすいので、毎年の年末調整時にセットで案内するのが安全です。
関門③:留学生アルバイトの租税条約免税——「自動では効かない」
日本は多くの国と租税条約を結んでおり、一部の国の留学生は、生計・教育のためのアルバイト収入が所得税免税になります。代表例が中国からの留学生で、日中租税条約により生計・教育のための給付が免税とされます[国税庁 No.2884]。
- 免税を受けるには、雇用主を経由して「租税条約に関する届出書」を税務署へ提出しておく必要があります。届出をしないと通常どおり源泉徴収されます。
- 条約の内容は国ごとに違います。韓国・ベトナムなど免税の範囲や条件が異なる(または免税がない)国も多いため、「留学生=免税」と一般化しないことが大切です。
- 免税に当てはまらない留学生のアルバイトは日本人学生と同じ扱いで、2026年分からは勤労学生控除の対象が給与収入163万円以下に拡大されています。親の扶養との関係は学生バイトと扶養の記事で解説しています(国外の親の扶養に入る場合は前段の送金ルールが絡みます)。
帰国する年の手続き——出国前申告か納税管理人か
年の途中で日本を離れて非居住者になる場合、その年の所得の精算が必要です。方法は2つあります[国税庁 No.1923]。
- 出国前に申告を済ませる——会社員で他に所得がなければ、勤務先の「出国時年末調整」で完結することが多い。
- 納税管理人を届け出る——出国後に不動産収入が残る・翌年に住民税の納付が残るなどの場合、日本国内の代理人(納税管理人)を選んで税務署に届け出ておく。
住民税はその年の1月1日に日本に住所があれば、前年所得に対して1年分課税されます。1月2日以降に帰国しても、その年度の住民税は全額かかります。帰国スケジュールを組むときは、所得税だけでなく住民税の納付方法(一括徴収か納税管理人経由か)まで勤務先と確認しておくとトラブルになりません。
今日やること
- 自分(または従業員)が居住者・非永住者・非居住者のどれに当たるか、滞在期間と住所で確認する
- 国外の家族を扶養に入れている場合、今年の送金記録(親族1人ごと・38万円要件)が揃っているか確認する
- 留学生を雇っている場合、租税条約の届出書の提出状況を確認する
よくある質問
外国人でも日本人と同じように確定申告が必要ですか?
日本に住んで働く「居住者」なら、国籍に関係なく日本人と同じルールです。給与1か所で年末調整が済んでいれば申告不要な点も同じです。違いが出るのは、国外に住む家族の扶養控除、租税条約の免税、帰国する年の精算という3つの場面です。
母国の両親に仕送りしていれば扶養控除を使えますか?
30歳以上70歳未満の親族は、留学生・障害者の場合を除き、その年に合計38万円以上を送金し、親族関係書類と送金関係書類(親族1人ごと)を提出することが条件です。書類がないと年末調整・確定申告のどちらでも控除は認められません。
中国人留学生のアルバイトは税金がかからないと聞きました。本当ですか?
日中租税条約により、生計・教育のためのアルバイト収入は所得税が免税になります。ただし雇用主経由で租税条約に関する届出書を税務署に提出していることが条件で、届出がなければ通常どおり源泉徴収されます。免税の有無・範囲は国によって異なります。
参考リンク(出典)
本記事は次の国税庁の公表資料をもとに作成しています。個別の判定は状況で変わるため、申告前に最新情報をご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供であり、個別の税務助言ではありません。居住者判定・条約適用・扶養の可否は個々の事情で変わります。具体的な判断は税務署または税理士にご相談ください。英語での基本ガイドは外国人向けページにもまとめています。
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