防衛特別所得税はいくら増える?2027年開始の1%を実額で試算

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2027年1月開始

防衛特別所得税はいくら増えるのか——「10年で38万円」を検算する

2027年(令和9年)1月から、所得税額に1%を上乗せする防衛特別所得税が始まります。「年収700万円なら10年で38万5,000円の負担増」という試算が広がっていますが、この計算には掛ける相手が違うという問題があります。付加税は課税所得ではなく所得税額にかかるからです。この記事では正しい計算方法を示し、源泉徴収票1枚から自分の増加額を出せるようにします。そのうえで、実際に負担が増えるのはいつからで、どれくらいなのかを年表で整理します。

1%防衛特別所得税の税率(所得税額に対して)
2.1→1.1%復興特別所得税の税率引下げ
10年復興特別所得税の課税期間の延長
終期なし防衛特別所得税の課税期間

まず制度の中身を一次情報で確認する

国税庁のQ&Aは、改正の中身をこう書いています[国税庁]。

項目内容
創設される税防衛特別所得税。源泉徴収すべき所得税の額の1%相当額を、所得税と併せて徴収・納付する
復興特別所得税税率を2.1%から1.1%に引下げ。課税期間を令和29年(2047年)12月31日まで10年間延長(改正前は令和19年=2037年12月31日まで)
適用令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得に対する所得税から
合計税率改正前2.1%、改正後は防衛1%+復興1.1%で2.1%のまま。源泉徴収税額の計算方法にも変更なし
根拠法防衛財確法(令和5年法律第69号)・復興財確法(平成23年法律第117号)

財務省のパンフレットも「足下で家計負担が増加しないよう、復興特別所得税の税率を2.1%から1.1%に1%引き下げます。同時に、復興財源の総額を確実に確保するため、課税期間を10年間延長します」と説明しています[財務省]。つまりいま払う額は変えず、払う期間を10年延ばすという設計です。

防衛費の財源は所得税・法人税・たばこ税の3本柱で、法人税分(防衛特別法人税)は2026年4月にすでに始まっています。制度全体の見取り図は防衛増税のしくみと手取りへの影響にまとめてあります。この記事は、そのうち所得税分の金額を自分で計算するところに絞って掘り下げます。

「10年で38万5,000円」はどこが違うのか

広がっている試算は「課税所得350万円 × 1.1% × 10年 = 38万5,000円」という形です。掛け算そのものは合っていますが、1.1%を掛ける相手が違います。

付加税は「課税所得」ではなく「所得税額」にかかる
年収700万円▶課税所得350万円ほど▶所得税額25万〜30万円ほど▼ここに付加税がかかる防衛1% + 復興1.1% = 合計2.1%出回っている計算課税所得350万円 × 1.1% × 10年= 38万5,000円実際の計算所得税額28万円 × 2.1% × 10年= 約5万9,000円
出典:国税庁・財務省の公表資料をもとに作成。所得税額は年収700万円・単身の給与所得者を想定した概算

課税所得と所得税額はまったく違う数字です。課税所得350万円なら所得税額はおよそ28万円。10分の1以下です。ここに1.1%を掛けるべきところを課税所得に掛けると、10倍以上に膨らみます。

とはいえ「増税ではない」わけでもない

金額は違いますが、実質的な増税であること自体は正しい指摘です。財務省自身が「課税期間を10年間延長します」と書いており、本来2037年で終わるはずだった負担が2047年まで続きます。さらに防衛特別所得税のほうには終期の定めがありません(令和9年以後の当分の間)。数字を正しく直したうえで、増える構造は増える構造として見ておく必要があります。

本当の増え方は3つの時期に分かれる

「1.1%を10年」でもありません。改正がなかった場合と比べると、負担の差はこう動きます。

改正がなかった場合との負担の差(所得税額に対する上乗せ率)
2027〜2037年2038〜2047年2048年〜防衛1% + 復興1.1%改正前も2.1% →差はゼロ毎月の手取りは変わらない防衛1% + 復興1.1%改正前は0% →まるごと2.1%増復興税が終わるはずだった10年間防衛1%改正前は0% →1%が終期なく継続復興税は終了。防衛税だけが残る
出典:国税庁Q&A・財務省パンフレットの内容をもとに作成

ポイントは真ん中です。2038年から2047年までの10年間は、改正がなければ付加税はゼロだったはずのところに、防衛と復興を合わせた2.1%が丸ごと乗ります。広がっている試算が使っていた「1.1%」ではなく「2.1%」です。そして2048年以降も、防衛特別所得税の1%は終わりの定めがないまま続きます。

年収700万円・単身の給与所得者(所得税額を28万円と仮定)

2027〜2037年:増減なし(合計2.1%は改正前と同じ)
2038〜2047年:28万円 × 2.1% = 年5,880円 × 10年 = 約5万9,000円
2048年以降:28万円 × 1% = 年2,800円がずっと

→ 出回っている38万5,000円ではなく、10年間でおよそ6万円。ただし2048年以降も年2,800円が続くので、20年で見ればさらに5万6,000円が乗ります。

自分の数字で確かめる——源泉徴収票の使い方

仮定の話で終わらせないために、自分の源泉徴収票から計算してみてください。使うのは「源泉徴収税額」の欄ひとつだけです。

  1. 源泉徴収票の「源泉徴収税額」を見る。この金額には復興特別所得税(2.1%)が含まれている。
  2. 1.021で割る。これが本体の所得税額。たとえば28万6,000円なら28万円。
  3. その1%が防衛特別所得税の年額。28万円なら2,800円。
  4. 2038年から2047年までの増加分は、その2.1倍を10年分。28万円なら約5万9,000円。

源泉徴収票の読み方そのものは源泉徴収票の見方、手取りの計算は源泉徴収票から手取りを計算するで解説しています。

年間の所得税額防衛特別所得税(年額)2038〜2047年の増加分2048年以降(毎年)
5万円500円1万500円500円
10万円1,000円2万1,000円1,000円
20万円2,000円4万2,000円2,000円
30万円3,000円6万3,000円3,000円
50万円5,000円10万5,000円5,000円
100万円1万円21万円1万円
300万円3万円63万円3万円

付加税は所得税額に比例するので、累進課税の効果がそのまま乗ります。所得税額300万円の人は、所得税額30万円の人の10倍を負担します。「1%」という数字の印象より、実際の分布は上に偏る仕組みです。

投資している人:20.315%の内訳が変わるだけ

上場株式の配当や特定口座の譲渡益にかかる20.315%も、源泉徴収される所得税に付加税が乗った数字です。ここも内訳が変わるだけで、当面の税率は動きません。

時期内訳合計
2026年まで所得税15% + 復興0.315% + 住民税5%20.315%
2027〜2047年所得税15% + 防衛0.15% + 復興0.165% + 住民税5%20.315%
2048年〜所得税15% + 防衛0.15% + 住民税5%20.15%

改正がなければ2038年から20%に下がっていたはずなので、そこから10年は0.315%、2048年以降は0.15%だけ高い状態が続く、という見方になります。NISA口座の中は非課税なので、この話とは無関係です(新NISA活用ガイド)。

租税条約で所得税が免除される場合は付加税もかからない

国税庁のQ&Aは、租税条約の規定で限度税率が適用される場合や所得税が免除される場合には、防衛特別所得税および復興特別所得税は課されないとしています。非居住者への支払いを扱う経理担当者は、ここの取扱いが変わらないことを確認しておいてください。

会社員がやることは、基本的に何もない

制度としては大きな話ですが、給与所得者の手続きは変わりません。

  • 毎月の源泉徴収——源泉徴収税額表を使う点も、税額の計算方法も変わりません。合計税率が2.1%のままだからです。
  • 年末調整——所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税を併せて精算する形で、従業員側の書類は増えません。
  • 納付——源泉徴収した3つの税は、合計額を1枚の納付書で納めます。
  • 源泉徴収票——法定調書への記載方法は国税庁のQ&Aに示されています。実務側で確認が要るのはここくらいです。

今日やること

  1. 手元の源泉徴収票で「源泉徴収税額」を1.021で割る。それが自分の所得税額で、1%が2027年からの防衛特別所得税
  2. その額を2.1倍して10倍する。2038年から2047年に増える総額の目安になる
  3. 「10年で数十万円」という数字を見かけたら、課税所得に掛けていないかを確かめる

よくある質問

防衛特別所得税はいつから始まりますか。

令和9年(2027年)1月1日以後に生ずる所得に対する所得税から適用されます。給与であれば、2027年1月以後に支払日が到来するものが対象です。源泉徴収義務者が所得税を徴収する際に、その1%相当額を併せて徴収します。

2027年から手取りは減りますか。

減りません。同時に復興特別所得税が2.1%から1.1%へ引き下げられ、合計税率は2.1%のままだからです。国税庁も源泉徴収税額の計算方法に変更は生じないとしています。負担が増えるのは、本来2037年で終わるはずだった復興特別所得税の課税期間が2047年まで延長された結果、2038年以降も付加税が続くためです。

「年収700万円で10年38万5,000円の負担増」という試算は正しいですか。

計算に使う金額が違います。付加税は課税所得ではなく所得税額にかかるため、課税所得350万円に1.1%を掛けるのは誤りです。年収700万円・単身の給与所得者なら所得税額はおおむね25万〜30万円で、2038年から2047年の増加分は合計でおよそ6万円になります。ただし2048年以降も防衛特別所得税1%は終期なく続きます。

防衛特別所得税はいつ終わりますか。

終期は定められていません。令和9年以後の当分の間、課税されることとされています。復興特別所得税のほうは令和29年(2047年)12月31日までと期限が明示されているため、2048年以降は防衛特別所得税の1%だけが残る形になります。

株の配当や売却益の税率は上がりますか。

当面は上がりません。20.315%の内訳が、所得税15%+復興0.315%から、所得税15%+防衛0.15%+復興0.165%に変わるだけです。改正がなければ2038年から20%に下がるはずでしたが、2047年までは20.315%、2048年以降は20.15%が続きます。NISA口座内の運用益は非課税なので影響を受けません。

年末調整や確定申告の手続きは変わりますか。

給与所得者が出す書類は変わりません。源泉徴収した所得税・防衛特別所得税・復興特別所得税は、合計額を1枚の納付書で納付します。実務で確認が必要なのは、法定調書への記載方法など経理側の取扱いで、国税庁が公表しているQ&Aに示されています。

参考リンク(出典)

本記事は次の公表資料を確認して作成しています。制度の詳細は改正により変わる可能性があるため、実務では最新の公式情報をご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供であり、個別の税額を保証するものではありません。所得税額は控除の状況で変わるため、実際の金額はご自身の源泉徴収票や確定申告書でご確認ください。具体的な判断は税務署または税理士にご相談ください。

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公開日:2026年09月14日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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本記事は税制・各種制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。記載内容は公開時点の情報に基づき正確性に努めていますが、制度は改正される場合があります。実際のお手続き・個別のご判断は、国税庁・お住まいの税務署・税理士等の専門家にご確認ください。運営者情報・免責事項