iPhone Duo 39万9800円は全額経費にできる?|40万円特例の条件と落とし穴

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  • 公開。国税庁タックスアンサー(No.2100・No.5408・No.3152)、財務省「令和8年度税制改正の大綱」、国税庁の消費税経理に関する通達、耐用年数表、東京都主税局の償却資産の案内、アップル公式の価格をもとに作成

アップルが10月23日に発売する折りたたみ型の iPhone Duo。512GBモデルの価格は39万9800円で、「40万円未満なら全額経費にできる」という2026年4月からの新ルールのちょうど200円下に置かれています。9月20日に配信された弁護士ドットコムニュースの記事には300件を超えるコメントが付き、「実質タダで買える」「そんなうまい話はない」と議論になりました。結論を先に言うと、青色申告の個人事業主と中小法人なら、256GBと512GBは買った年に全額経費にできます。ただし1TB以上は税抜で計算しても対象外で、白色申告の人と副業が雑所得の会社員は使えません。そして「経費にできる」と「タダになる」はまったく別の話です。国税庁と財務省の資料で、できる人・できない人・実際に戻る金額を整理します。

結論:対象は256GBと512GB。戻る税金は価格の15〜43%

40万円未満2026年4月1日以後の取得分から。青色申告の中小事業者が対象
256GB・512GB36万4800円と39万9800円。税込でも税抜でも対象
1TB・2TB46万9800円と57万4800円。税抜で計算しても40万円を超える
約6万〜17万円512GBを事業専用で使う場合に戻る所得税+住民税の目安(税率区分による)

「全額経費にできる」は、40万円の支出を、その年の所得から差し引けるという意味です。戻ってくるのはその金額に税率を掛けた分だけで、残りは自分のお金で払います。特例を使わない場合との違いは「10年かけて少しずつ引く」か「今年まとめて引く」かのタイミングの差で、経費にできる合計額は変わりません。

「40万円未満なら全額経費」の中身

本来、10万円以上の備品は買った年に全額を経費にできず、耐用年数に分けて少しずつ経費にします(減価償却)。ただし青色申告をしている中小企業者等には、一定額未満の資産を買った年に全額経費にできる「少額減価償却資産の特例」があります。この上限が、令和8年度税制改正で30万円未満から40万円未満に引き上げられました[財務省]。国税庁のタックスアンサーも、令和8年4月1日以後に取得したものは10万円以上40万円未満、期限は令和11年(2029年)3月31日までと更新されています[国税庁 No.2100]。

項目内容
使える人青色申告をしている個人事業主・資本金1億円以下の法人(常時使用する従業員400人以下)
対象の資産取得価額10万円以上40万円未満(2026年3月31日までの取得は30万円未満)
年間の上限合計300万円まで
いつまで2029年3月31日までに取得して事業に使い始めた資産
手続き個人は青色申告決算書の減価償却費の欄に記載(「措法28の2」)、法人は明細書(別表十六(七))を添付

改正の経緯と、すでに減価償却中の30〜40万円の資産の扱いは少額減価償却資産の特例が40万円に引き上げにまとめています。この記事では iPhone Duo を買う人が実際につまずく点に絞ります。

4モデルの判定:1TB以上は「税抜で見ても」対象外

アップル公式の価格は次のとおりです[アップル]。40万円未満かどうかは「取得価額」で判定しますが、この取得価額は消費税の経理方式によって税込か税抜かが変わります。国税庁の通達は、少額の減価償却資産の金額基準は「法人が適用する税抜経理方式または税込経理方式に応じて算定した価額により判定する」と定めています[国税庁 通達]。個人事業主も同じ考え方で、免税事業者は税込経理しかできないので税込の金額で判定します。

モデル税込価格税抜換算税込経理・免税事業者税抜経理
256GB36万4800円約33万1636円対象対象
512GB39万9800円約36万3455円対象(200円差)対象
1TB46万9800円約42万7091円対象外対象外
2TB57万4800円約52万2545円対象外対象外

「税抜経理なら1TBも入るのでは」と考える人がいますが、46万9800円を1.1で割っても約42万7000円で、40万円を超えます。1TBと2TBは経理方式にかかわらず通常の減価償却です。

取得価額の帯と iPhone Duo 4モデルの位置(税込)
消耗品費 一括償却または特例 特例で全額経費(青色申告) 通常の減価償却 10万円20万円40万円 060万円 256GB36万4800円 512GB 39万9800円(200円下) 1TB46万9800円 2TB57万4800円
出典:国税庁 No.2100、財務省 令和8年度税制改正の大綱、アップル公式サイトの価格(2026年9月時点)をもとに作成

落とし穴①:白色申告と「副業が雑所得」の会社員は使えない

この特例は青色申告者だけのものです[国税庁 No.2100]。白色申告の個人事業主は、39万9800円を耐用年数で分けて経費にします。iPhone のような端末の耐用年数は、耐用年数表の「電話設備その他の通信機器・その他のもの」にあたるとして10年とする見方が一般的で、パソコンに近い使い方なら4年とする見方もあります[国税庁 耐用年数表]。どちらにするかは使い方の実態で決め、迷ったら税務署か税理士に確認してください。

白色申告で10月23日に使い始めた場合(10年・定額法)

1年分の償却費:39万9800円 × 0.100 = 3万9980円
2026年分は10月から12月の3か月分:3万9980円 × 3/12 = 約1万円

4年で償却するなら1年分は9万9950円、2026年分は約2万5000円。全額の39万9800円を今年の経費にできるのは青色申告の特例だけです。

会社員の副業も同じ壁があります。副業の収入が雑所得なら青色申告そのものができないので、この特例は使えません。雑所得でも減価償却費を必要経費にすることはできますが、上の計算のとおり年間数万円ずつです。副業が事業所得か雑所得かの分かれ目は副業の確定申告で整理しています。

いま白色申告の人は「年明けに買って青色を申請」が選択肢

2026年分を青色で申告するための承認申請の期限は2026年3月16日で、すでに過ぎています。いま白色の人が今年 iPhone Duo を買っても特例は使えません。特例は2029年3月31日まで続くので、2027年に入ってから買い、2027年3月15日までに青色申告承認申請書を出すと、2027年分で全額を経費にできます。青色申告の手続きは青色申告と白色申告の違いを参照してください。

落とし穴②:私用で使う分は経費にならない

個人事業主のスマートフォンは、仕事と私用を1台で兼ねるのが普通です。この場合、経費にできるのは事業で使う割合の分だけです。国税庁は、家事上と業務上の両方にかかわる費用(家事関連費)について、業務の遂行上必要で、かつ必要な部分を明らかに区分できる場合に、その部分だけを必要経費にできると説明しています[国税庁 No.2210]。

ここで大事なのは、「40万円未満か」の判定は端末の取得価額そのもの(39万9800円)で行い、経費にする金額は事業割合を掛けた後の額になるという2段構えです。

512GBを事業7割・私用3割で使う場合

判定:取得価額39万9800円 < 40万円 → 特例の対象
経費:39万9800円 × 70% = 27万9860円(残り11万9940円は経費にならない)

事業割合は、通話・通信の記録や使用時間の実態から説明できる根拠を残しておく必要があります。「経費になるかグレーなもの」の考え方は個人事業主の経費になるかグレーなもの10選にまとめています。

落とし穴③:予約しただけでは経費にならない。使い始めた日で決まる

特例の要件は「取得して事業の用に供した」ことです。予約が始まる10月16日に注文しても、経費になるのは手元に届いて仕事で使い始めた年です。発売日は10月23日なので、通常は2026年分に入りますが、入荷待ちで届くのが年明けになれば2027年分の経費になります。

法人は事業年度で見ます。12月決算の会社なら12月31日までに使い始める必要があり、3月決算なら翌年3月末までに届けば当期の経費です。「今期は利益が出そうだから」と考えている会社は、決算日と納期の関係を確認してください。

分割払いで買っても、取得価額は本体の価格全額です(分割手数料は別に支払時の経費)。一方、携帯会社の「一定期間後に端末を返すと残額の支払いが不要になる」タイプの契約は、所有権の移り方が通常の購入と異なるため、経費の処理を税理士に確認したほうが安全です。

落とし穴④:所得税では全額経費でも、償却資産税の申告対象

この特例は所得税・法人税の制度で、固定資産税(償却資産)には効きません。東京都主税局は、中小企業者等の特例で即時償却した資産について「税務上は損金算入できますが、固定資産税(償却資産)においては適用されません」として申告対象に含めています。一方、20万円未満を3年で一括償却した資産と10万円未満の資産は申告不要です[東京都主税局]。

つまり iPhone Duo を特例で全額経費にすると、毎年1月31日までの償却資産の申告に載せることになります。ただし課税されるのは課税標準額の合計が150万円以上の場合で、税率は1.4%。端末1台だけなら150万円に届かないので税金はかからず、申告の手間が増えるだけです。ほかに機材や内装を持っている事業者は、合計で150万円を超えないかを確認してください。償却資産税のしくみは固定資産税の計算で解説しています。

落とし穴⑤:年300万円の枠。512GBなら7台まで

特例で全額経費にできるのは、1年(法人は1事業年度)で合計300万円までです[国税庁 No.5408]。39万9800円 × 7台 = 279万8600円は枠に収まりますが、8台目で319万8400円になり超えます。枠を超えた資産は通常の減価償却か、20万円未満なら一括償却資産で処理します。

枠は iPhone だけでなく、その年に特例を使ったパソコン・カメラ・机なども合算します。すでに今年ほかの備品で枠を使っている事業者は、残りを確かめてから買ってください。

「経費にできる」と「タダ」は別。実際に戻るのはいくらか

39万9800円を全額経費にしたとき、減る税金はその金額に自分の税率を掛けた分です。所得税の税率は課税所得に応じて5%から45%[国税庁 No.2260]、住民税は一律10%なので、事業専用で使う場合の目安は次のとおりです。

課税所得(経費を引く前)所得税+住民税減る税金の目安実質の自己負担
195万円以下15%約6万円約34万円
195万円超〜330万円20%約8万円約32万円
330万円超〜695万円30%約12万円約28万円
695万円超〜900万円33%約13万円約27万円
900万円超〜1,800万円43%約17万円約23万円

※事業使用100%・復興特別所得税は省略。経費を引くことで税率の区分が下がる場合は、減る税金はこれより少なくなります。個人事業主は国民健康保険料(所得割)と個人事業税も所得に応じて下がるため、実際の効果はやや大きくなります。

もっとも多い課税所得330万円〜695万円の層でも、戻るのは約12万円。28万円は自分で払います。しかも特例を使わなくても、10年かければ同じ39万9800円が経費になります。特例の値打ちは「税金が消える」ことではなく、利益が出た年に前倒しで引けることです。今年の所得が少ない人や赤字の人は、あえて特例を使わず通常の減価償却にして、翌年以降の経費に残すほうが得なこともあります。

特例が向く人

  • 今年の利益が大きく、税率の高い区分にいる
  • もともと仕事用の端末を買い替える予定だった
  • 青色申告で、事業割合を説明できる

向かない人

  • 今年の所得が少ない・赤字(引く相手がない)
  • 「経費にできるから」が買う理由の中心になっている
  • 白色申告、または副業が雑所得

法人で買うときの3つの確認

  1. 会社名義で買う。役員が個人のカードで買って会社で使っても、会社の資産にはなりません。会社の資産として計上するには会社が購入者になる必要があります。
  2. 資本金1億円以下・従業員400人以下・青色申告であることを確かめる。従業員数の要件は令和8年度改正で500人以下から400人以下に絞られました[財務省]。
  3. 申告書に明細書(別表十六(七))を添付する。添付がないと特例は認められません[国税庁 No.5408]。役員が私用にも使う端末なら、給与として課税される可能性があるため、業務用に限る社内ルールを残しておくと安全です。

仕訳は、購入時に「工具器具備品」で資産計上し、決算で全額を減価償却費に振り替える方法が一般的です。書き方は勘定科目と仕訳の基礎を参照してください。

買い替えで売ったときは「譲渡所得」

数年後に iPhone Duo を売った場合、個人事業主の売却益は事業所得ではなく総合課税の譲渡所得です。全額を経費にした端末の取得費はゼロに近いので売った金額のほぼ全部が譲渡益になりますが、総合課税の譲渡所得には年間50万円の特別控除があり、ほかに売った資産がなければ税金はかからないのが普通です[国税庁 No.3152]。法人の場合は売却額がそのまま益金になります。

今日やること

  1. 今年の申告が青色か白色かを確認する。白色なら今年は特例を使えないので、年明けの購入と2027年3月15日までの青色申請を検討する。
  2. 消費税の経理方式と、今年すでに特例で経費にした備品の合計額を確かめる。免税事業者は税込判定、300万円の枠の残りも見る。
  3. 事業割合の根拠を決めておく。仕事用の回線・時間・用途をメモに残し、買った後に「何割にするか」で迷わないようにする。

よくある質問

税抜経理をしていれば、1TBモデル(46万9800円)も40万円未満になりますか?

なりません。46万9800円を1.1で割ると約42万7091円で、税抜でも40万円を超えます。1TBと2TBは経理方式にかかわらず通常の減価償却(耐用年数10年または4年)です。40万円未満に入るのは256GBと512GBだけです。

携帯会社の分割払い(24回・36回など)で買っても、全額をその年の経費にできますか?

通常の分割払いなら、取得価額は本体の価格全額なので、青色申告の中小事業者は買った年に全額を経費にできます。支払いが終わっていなくても構いません。ただし、一定期間後に端末を返却すると残額が免除されるタイプの契約は、所有権の扱いが通常の購入と異なるため、税理士か税務署に確認してください。

会社員で副業をしています。副業用に買えば39万9800円を経費にできますか?

副業の所得が雑所得なら、青色申告ができないためこの特例は使えません。減価償却費として耐用年数で分けた額の事業割合分(10年なら年約4万円の事業割合分)を必要経費にするのが上限です。副業が事業所得として認められ、青色申告をしている場合は特例を使えます。

特例で全額経費にしたら、確定申告以外に手続きはありますか?

固定資産税(償却資産)の申告があります。特例で即時償却した資産は償却資産の申告対象で、毎年1月1日時点で持っている資産を1月31日までに市区町村(東京23区は都税事務所)に申告します。課税標準額の合計が150万円未満なら税金はかかりませんが、申告自体は求められるのが一般的です。

参考リンク(出典)

本記事は次の資料をもとに作成しています。制度は改正されるため、申告前に最新の内容をご確認ください。

※本記事は一般的な情報提供であり、税務アドバイスではありません。耐用年数の区分・事業割合・契約形態による取得価額の扱いは個別の事情で変わります。判断に迷う場合は税務署・税理士にご確認ください。

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公開日:2026年09月21日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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