資産管理会社は課税所得900万円から?仕組み・スキーム・損益分岐点

直近17人が訪問しました
カテゴリ:制度・ニュース

最終更新:2026年9月6日/本記事は国税庁のタックスアンサー・財産評価基本通達、財務省の税制改正資料、東京都主税局の税率資料をもとに作成しています。金額はすべて概算であり、実際の税額は他の所得・控除・自治体によって変わります。設立の判断は必ず税理士にご相談ください。

先に結論から。資産管理会社が効くのは、①個人の累進税率(最高55%)を法人の実効税率(おおむね21〜34%)に置き換える ②家族へ役員報酬を分けて低い税率帯を何度も使う ③現金を「非上場の出資持分」に変えて相続税評価を下げる——この3つです。ただし効き方は財産のタイプで大きく変わります。不動産と非上場のオーナー企業は相性が良く、上場株の運用だけを移すと、むしろ不利になるケースが多いのが実務の実感です。目安は、税率が並ぶのが課税所得900万円、年40万円前後の維持コストを吸収して手取りが増え始めるのが1,000万〜1,200万円あたり。この記事では、仕組み・3つのスキーム・損益分岐点の順に、数字で整理します。

資産管理会社とは「事業をする会社」ではなく「財産を持つ会社」

資産管理会社(プライベートカンパニー)とは、個人が持っている不動産・自社株・有価証券などの財産を保有・管理させるために設立する法人のことです。法律上の特別な会社形態があるわけではなく、中身は普通の株式会社・合同会社です。ラーメン屋を法人にするのと登記手続きは変わりません。

違うのは目的です。事業会社が「商品やサービスを売って稼ぐ」ために作るのに対し、資産管理会社は「すでにある財産から生まれる収入の受け皿」として作ります。だから、売上を伸ばす話ではなく、同じ収入を誰の名義でどう受け取るかの設計が本体になります。

実務では合同会社が選ばれることが多いのが特徴です。外部から出資を受けたり株式を公開したりする予定がないため、株式会社の看板を必要としないからです。設立コストの差は次のとおりです。

項目株式会社合同会社
定款認証手数料3万〜5万円(資本金による)不要
登録免許税15万円(資本金×0.7%との大きい方)6万円(同左)
定款の印紙代紙は4万円/電子定款なら0円
設立費用の目安約20万〜25万円約6万〜10万円
役員の任期最長10年(更新登記が必要)任期なし
決算公告義務あり義務なし

税制上の扱い(法人税率・経費の範囲・相続税評価)は株式会社でも合同会社でも同じです。合同会社の出資持分も、相続のときは財産評価基本通達194によって、取引相場のない株式に準じて評価されます。「合同会社なら評価が安い」ということはありません。会社形態の選び方は株式会社から合同会社への変更で詳しく整理しています。

なぜ税金が下がるのか——4つのエンジン

資産管理会社の節税効果は「なんとなく法人のほうが安い」ではありません。効いているエンジンは4つあり、どのエンジンが自分に効くかで、作るべきかどうかが決まります。

エンジン1

累進税率を、ほぼフラットな法人税率に置き換える

個人の所得税は累進課税で、課税所得4,000万円超の部分は45%。住民税10%を足すと55%です。対して法人は、資本金1,000万円以下の中小法人なら実効税率がおおむね次の水準にとどまります(東京23区・標準税率での概算)。

年間の所得個人(所得税+住民税の限界税率)法人(実効税率の目安)
〜195万円15%約21%
195万〜330万円20%
330万〜695万円30%約23%
695万〜900万円33%約34%
(所得800万円超の部分)
900万〜1,800万円43%
1,800万〜4,000万円50%
4,000万円超55%

個人は所得税(国税庁 No.2260)+住民税10%。復興特別所得税は含めていません。法人は法人税(同 No.5759)・地方法人税・法人住民税・法人事業税・特別法人事業税を合算した概算で、自治体・所得区分によって変わります。

色が変わるのは課税所得900万円のラインです。ここで個人の限界税率が43%になり、法人の34%を明確に上回ります。逆に言えば、課税所得が695万円以下の人にとって法人の税率は「安くない」——ここを取り違えると、コストだけ増えて終わります。

エンジン2

家族へ役員報酬を分け、低い税率帯と給与所得控除を何度も使う

これが実務上いちばん効くエンジンです。個人事業のままだと収入は1人に集中し、上のほうの高い税率帯を削られます。法人に受けて配偶者や親へ役員報酬を払うと、①一人ひとりが5%・10%の低い税率帯から使い直せる ②給与所得控除が人数分使える——という二重の効果が生まれます。給与所得控除は最低でも65万円、収入850万円超で上限195万円です(令和7年分以降)。

ただし「名前を貸すだけ」は通りません。実際に業務に従事していること、金額がその働きに見合うことが条件で、実態がなければ経費として否認されます。

エンジン3

赤字を10年持ち越し、退職金という出口を作れる

青色申告の個人事業では純損失の繰越控除は3年ですが、法人は10年です。中小法人なら控除限度額の制限もありません。大規模修繕や空室で赤字が出る年がある不動産では、この差は小さくありません。

もうひとつが役員退職金です。法人から適正額の退職金を出せば、法人側は損金、受け取る個人側は退職所得となり、勤続年数に応じた退職所得控除と「2分の1課税」が使えます。個人事業には存在しない出口です。

エンジン4

現金を「非上場の出資持分」に変え、相続税評価を止める

現金1億円は相続のとき1億円で評価されます。しかしその1億円を出資して会社を作り、会社が不動産や事業用資産を持てば、相続財産は非上場株式(または出資持分)に変わります。取引相場のない株式は類似業種比準方式・純資産価額方式などで評価され、多くの場合、中の財産をそのまま持つより評価が下がります。

さらに、設立時から子や孫を出資者に入れておけば、会社が今後生み出す利益は最初から次の世代の持分の中で増えることになり、親の財産としては増えません。これは「移す」のではなく「そもそも親に溜めない」対策です。この仕組みは富裕層の相続税対策でも扱っています。

スキームは3つの型に分かれる

「資産管理会社」とひとくくりに語られますが、何を持たせるかで設計も効き方もまったく違います。

型1:不動産型——いちばん相性が良い。ただし方式が3つある

賃貸不動産の収入を法人に移す型です。移し方に3つの方式があり、法人に移せる利益の量と、移すときのコストがトレードオフになっています。

方式やること法人に移る収入初期コスト
管理委託不動産は個人所有のまま、管理業務だけ法人に委託する家賃の5〜8%程度
(管理料)
ほぼゼロ
一括転貸
(サブリース)
法人が建物を丸ごと借り上げ、入居者へ転貸する家賃の10〜15%程度
(差額)
ほぼゼロ
所有建物(多くは建物のみ)を法人へ売却し、法人が家主になる家賃のほぼ全額登録免許税・不動産取得税・譲渡所得税

管理委託と一括転貸は始めやすい反面、移せる利益が小さいのが弱点です。しかも管理料が相場より高いと、同族会社の行為計算否認(法人税法132条・所得税法157条)で否認される争点になります。国税側は、同族関係のない管理会社に同規模の物件を委託した場合の管理料率と比べて適正額を算定してきます。実務では管理委託で8%程度、一括転貸で15%程度が上限の目安とされますが、数字そのものより「その業務量ならその報酬が妥当か」という説明が持つかどうかが本質です。

本気で取り組むなら所有方式です。家賃が丸ごと法人の売上になるので効果は桁違いですが、移転時のコストがかかります。建物の売買には登録免許税(原則2.0%)と不動産取得税(住宅・土地は特例で3%、住宅以外の家屋は4%)がかかり、個人側では譲渡所得が出れば課税されます。土地まで移すとコストが跳ね上がるため、実務では建物だけを法人に移し、土地は個人が所有したまま法人へ貸す形が多く使われます。なお土地の売買による所有権移転登記の登録免許税は、令和8年度税制改正で軽減税率1.5%の適用期限が令和11年3月31日まで延長されています。

型2:有価証券型——ここは「むしろ不利」になりやすい

上場株式や投資信託の運用を法人に移す型です。この型だけは慎重に判断してください。個人が上場株式を売買・配当受領する場合、税率は申告分離課税の20.315%で固定されています。一方、法人が受け取った譲渡益・配当は他の所得と合算されて法人税等の対象になり、実効税率は所得800万円超の部分でおおむね34%。単純に税率が上がります。

法人には受取配当等の益金不算入という制度がありますが、上場株式を少額だけ持つ「非支配目的株式等」(持株割合5%以下)では益金不算入は20%だけで、残り80%には課税されます。NISAのような非課税枠も法人にはありません。

さらに2023年10月1日以後に支払われる配当からは、個人株主の持分と、その人の同族会社が持つ持分を合算して3%以上になる場合、その個人の上場株式配当は総合課税(最高55%)になるという改正が入っています(令和4年度税制改正)。「資産管理会社に持たせて個人の持株比率を3%未満に下げる」という手法が封じられた形です。上場オーナー企業の株式を移す設計では、必ず確認が必要な論点です。

それでも有価証券型が選ばれるのは、損益通算の範囲が広い(不動産所得や他の事業所得と株式の損失を通算できる)、繰越が10年ある、相続税評価の圧縮が主目的——といった理由があるときです。「株の税金を安くしたい」という動機で作るなら、たいてい逆効果になります。

型3:持株会社型——事業オーナーの自社株対策

オーナー企業の株式を、新しく作った持株会社(ホールディングス)に保有させる型です。自社株を法人が買い取ることで、オーナー個人の財産は「自社株」から「売却代金+持株会社の株式」に変わり、その後の事業成長で膨らむ評価は持株会社側で受け止められます。事業承継の文脈でよく使われますが、株式の買取資金の調達、株価算定、金融機関との交渉が絡むため、単独で成立する話ではありません。

どのくらいからやるべきか——維持コストから逆算する

ここが本題です。判断の順番は「税率が並ぶライン」ではなく、「維持コストを税の削減額が上回るライン」で考えます。

7万円法人住民税の均等割(最低額・赤字でも発生)
20〜50万円税理士報酬(顧問+決算申告)の目安
年30〜60万円維持コストの合計目安
900万円個人と法人の税率が並ぶ課税所得

法人には赤字でも必ず出ていくお金があります。法人住民税の均等割は、資本金1,000万円以下・従業者50人以下なら東京23区で年7万円。所得がゼロでもかかります。加えて法人の決算・申告は個人の確定申告より複雑で、税理士に依頼するのが一般的です。ここを合わせると年30万〜60万円が固定費として乗ります。

つまり判断はこうなります。

課税所得(法人に移す予定の所得)判断
〜700万円税率がほぼ変わらず、維持コストの分だけ損になりやすい
700万〜900万円税率は並ぶが、削減額が維持コストに埋もれるグレーゾーン
900万〜1,200万円所得分散を組み合わせればプラスに転じるライン
1,200万円超効果がコストを明確に上回る。本格的な検討域

相続対策が主目的の場合は、この所得基準とは別に資産総額1億円あたりがひとつの目安とされます。相続税は基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた部分にかかるので、そもそも相続税が発生しない規模なら、評価圧縮のために法人を作る意味はありません。

シミュレーション:本業の給与があり、不動産所得600万円を持つ会社員大家

前提:本業の給与で課税所得が900万円を超えている(限界税率43%)。不動産所得は経費を引いた後で年600万円。配偶者は専業で、法人の実務を手伝う。建物のみを法人へ移す所有方式とし、移転コストは初年度のみ発生するため下の比較からは除いています。

【A】個人のまま
不動産所得600万円が給与所得の上に積み上がる
600万円 × 43%(所得税33%+住民税10%)= 約258万円

【B】資産管理会社に移す
・配偶者へ役員報酬 年120万円を支給 → 法人の所得は480万円
・法人税等:400万円までが約21%、超過80万円が約23% → 約103万円
・法人住民税の均等割 +7万円
・配偶者の税:給与120万円は給与所得控除65万円を引いて所得55万円。所得税は基礎控除の範囲でほぼゼロ、住民税が約2万円
・本人は役員報酬を取らない(本業で社会保険に加入済みのため、法人側の社会保険料は発生させない設計)
合計 約112万円

差額:年間およそ146万円。ここから維持コスト(年40万円と仮定)を引いて、手元に残るのは約106万円/年という計算になります。

概算です。実際は減価償却の引き継ぎ、消費税の課税事業者判定、配偶者控除の可否、健康保険の扶養判定、地代の設定(無償返還の届出)などが絡みます。とくに配偶者控除・扶養の所得要件は改正が続いているため、役員報酬の額を決める前に最新の要件を確認してください。

この例が成立しているポイントは「社会保険料を増やさない設計にしている」ところです。逆に、個人事業主が本業ごと法人化して自分に高額な役員報酬を払う設計にすると、健康保険・厚生年金の会社負担分と本人負担分が新たに発生し、税で減った分を社会保険料が食い返します。この論点はマイクロ法人と社会保険料と法人化のタイミングで詳しく扱っています。

2026年に前提が動いた——防衛特別法人税

損益分岐点を計算するうえで、2026年4月1日以後に開始する事業年度から法人側の負担がわずかに増えました。防衛特別法人税(令和7年度税制改正で創設)です。

計算式は(基準法人税額 − 年500万円)× 4%。基準法人税額とは、おおむね法人税の額そのものです。年500万円の控除があるため、法人税額が500万円以下——所得でいうとおおむね2,400万円以下の会社には実質的な影響がありません。資産管理会社の多くはこの範囲に収まるので、当面は気にしなくてよい増税です。ただし所得が2,400万円を超える規模になると、実効税率が上がる方向に働きます。

もうひとつ、令和7年度税制改正では中小法人の軽減税率(年800万円以下の部分15%)について、所得が年10億円を超える事業年度は17%とする見直しが入っています(令和7年4月1日以後に開始する事業年度)。資産管理会社の規模ではまず該当しませんが、「中小法人=常に15%」ではなくなったことは押さえておく価値があります。令和9年度の税制改正要望でも法人課税は論点になっており、前提は毎年動きます。

つまずくポイント——「作ってから気づく」6つ

向いている

  • 賃貸不動産の所得が年900万円を超えている
  • 本業の給与ですでに高い税率帯にいる
  • 実際に手伝える家族がいる
  • 相続対策として資産1億円以上を移したい
  • 10年単位で続ける前提がある

向いていない

  • 所得が700万円以下
  • 目的が上場株の運用だけ
  • 数年以内に売却して現金化したい
  • 家族に業務実態を作れない
  • 帳簿・議事録の管理を続けられない

1. 法人のお金は自分のお金ではない。いちばん多い誤解です。法人に貯まった利益を個人が使うには、役員報酬(所得税・社会保険料)か配当(法人税を払ったあとにさらに配当課税)を通すしかありません。法人税を安くしても、引き出す段階で二重に課税されます。だから資産管理会社は「引き出さずに再投資する」「退職金という出口で受け取る」「相続で持分ごと渡す」——このいずれかの設計とセットでなければ意味が薄くなります。

2. 社会保険は「入らない」も「入る」も設計次第。法人は原則として社会保険の強制適用事業所ですが、役員報酬がゼロなら被保険者となれないのが一般的な取扱いです(最終判断は年金事務所)。報酬を取れば保険料が発生し、報酬を取らなければ健康保険の扶養に家族を入れられません。どちらが有利かは本業の有無で変わります。国民健康保険料の計算と比べて判断してください。

3. 不動産を移す初期コストは戻ってこない。登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬に加え、個人側で譲渡所得が出れば所得税・住民税がかかります。この初期投資を何年で回収できるかが、実質的な判断基準です。年100万円の効果に対して初期コストが300万円なら、3年続けてようやくトントンです。

4. 小規模宅地等の特例が使えなくなることがある。相続対策のつもりが、逆に相続税を増やすパターンです。同族会社に貸している宅地には「特定同族会社事業用宅地等」(400㎡まで80%減額)がありますが、その法人の事業が不動産貸付業・駐車場業の場合は対象から除かれます。資産管理会社はまさに不動産貸付業なので、判定は「貸付事業用宅地等」(200㎡まで50%減額)になります。個人で貸していたときと比べて減額枠が縮む場合があり、設立前に必ずシミュレーションが必要です。

5. 評価圧縮が効かない会社になることがある。相続税評価には「特定の評価会社」という枠があります。総資産に占める株式等の割合が50%以上になると株式等保有特定会社とされ、有利な類似業種比準方式が使えず純資産価額方式で評価されます(財産評価基本通達189・189-3)。土地の割合が高すぎる場合も同様に土地保有特定会社の判定を受けます。「評価を下げるために作った会社が、評価を下げられない会社になる」という本末転倒が実際に起こります。

6. 直前に買った不動産は時価で評価される。会社が課税時期前3年以内に取得・新築した土地や家屋は、純資産価額の計算上「通常の取引価額」で評価すると定められています(財産評価基本通達185ただし書)。路線価と時価の差を使った評価圧縮は、少なくとも3年寝かせないと効きません。「相続が近いから急いで法人で不動産を買う」は、この規定で止まります。

そして最後に、否認のリスク。同族会社が「不自然に税を減らす行為・計算」をした場合、税務署はそれを否認して計算し直すことができます(法人税法132条、所得税法157条、相続税法64条)。形式が整っていても、経済的な合理性がなければ通りません。実態のない役員報酬、相場を離れた管理料、実質的な業務がない委託契約——このあたりが典型的な争点です。資産管理会社は「作れば安くなる箱」ではなく、実態を伴って運用し続ける前提の仕組みだと理解してください。

今日やること

  1. 直近の確定申告書を出し、課税所得の金額を確認する。900万円に届いていないなら、まだ検討のタイミングではありません。ここが出発点です。
  2. 法人に移せる所得と、移せない所得を書き分ける。不動産所得・事業所得は移せますが、上場株の運用益は移すと不利になりがちです。財産のタイプで結論が変わります。
  3. 家族のうち誰に、どんな業務を任せられるかを具体的に書き出す。「入居者対応」「帳簿の記帳」「物件の見回り」など、説明できる業務がなければ所得分散は成立しません。

よくある質問

資産管理会社は、いくらの資産があれば作る意味がありますか。

目的によって基準が違います。毎年の税負担を下げたいなら、法人に移せる課税所得が年900万円を超えているかどうかが最初の関門です。個人の限界税率が43%になり、法人の実効税率(約34%)を明確に上回るのがこのラインだからです。ただし年30万〜60万円の維持コストがかかるため、実際にプラスへ転じるのは1,000万〜1,200万円あたりからです。相続対策が目的なら、所得ではなく資産総額1億円前後がひとつの目安とされます。相続税の基礎控除に届かない規模であれば、評価を下げる意味そのものがありません。

株式や投資信託の運用を資産管理会社に移せば節税になりますか。

多くの場合、逆効果です。個人が上場株式の譲渡益・配当に払う税率は申告分離課税の20.315%で固定されていますが、法人が受け取ると他の所得と合算され、所得800万円超の部分では実効税率がおおむね34%になります。法人の受取配当等の益金不算入も、持株割合5%以下の上場株式では20%しか適用されません。NISAのような非課税制度も法人にはありません。それでも法人を使うのは、不動産所得などと株式の損失を通算したい、繰越期間10年を使いたい、相続税評価の圧縮が主目的、といったケースに限られます。

株式会社と合同会社では、税金に違いがありますか。

ありません。法人税率・経費の範囲・役員報酬の扱い・相続税評価はどちらも同じです。合同会社の出資持分も、財産評価基本通達194により取引相場のない株式に準じて評価されます。違うのは設立費用(株式会社は約20万〜25万円、合同会社は約6万〜10万円)、役員の任期(合同会社は任期なしで更新登記が不要)、決算公告の義務(合同会社は不要)といった会社法上の扱いです。外部から出資を受ける予定がない資産管理会社では、合同会社が選ばれることが多くなっています。

不動産を法人名義に移すのと、管理だけ委託するのは、どちらがよいですか。

移せる利益の量とコストのトレードオフです。管理委託方式は初期コストがほぼゼロで始められますが、法人に移るのは家賃の5〜8%程度にとどまります。所有方式は家賃がほぼ全額法人の売上になるので効果は大きい一方、登録免許税・不動産取得税・個人側の譲渡所得税といった初期コストが発生します。所得の規模が大きく長く続ける前提なら所有方式、まず試したい・規模が小さいなら管理委託というのが一般的な整理です。なお管理料が相場を離れて高いと、同族会社の行為計算否認の対象になり得ます。

法人に貯めたお金は、あとで自由に使えますか。

自由には使えません。法人のお金を個人が使うには、役員報酬として受け取る(所得税・住民税・社会保険料がかかる)か、配当として受け取る(法人税を払ったあとの利益にさらに配当課税がかかる)必要があります。法人税を抑えても、引き出す段階で課税されるという構造です。そのため資産管理会社は、利益を引き出さずに再投資する、役員退職金という出口で受け取る、あるいは相続で持分ごと承継する——といった長期の設計とセットで考える必要があります。数年で解散すると、設立・移転・解散のコストだけが残ります。

相続の直前に資産管理会社を作って不動産を買えば、評価を下げられますか。

下げられません。会社が課税時期前3年以内に取得または新築した土地・家屋は、純資産価額の計算上「通常の取引価額」で評価すると定められています(財産評価基本通達185ただし書)。路線価や固定資産税評価額と時価の差を使った圧縮は、少なくとも3年経過してからでないと機能しません。さらに、総資産に占める株式等の割合が50%以上になると株式等保有特定会社として純資産価額方式での評価となり、圧縮効果が失われます。行き過ぎた評価圧縮については、財産評価基本通達6項(総則6項)により通達によらない評価が行われた最高裁判例もあります。

参考リンク(出典)

本記事は税金に関する一般的な情報提供を目的としたもので、個別の設立可否を判断するものではありません。資産管理会社の適否は、財産の種類・所得の規模・家族構成・相続の見通しによって大きく変わり、設計を誤ると税負担がかえって増えることがあります。数値はいずれも概算であり、自治体や適用年度によって変動します。実行の前に必ず税理士等の専門家にご相談ください。

コメントみんなの意見

コメントの閲覧・投稿は会員限定です(無料・Googleアカウントでログイン)。

コメントを読み込んでいます…

この記事にコメントする

0 / 200

投稿された内容はこのページで公開されます。URL・メールアドレス・電話番号を含む投稿、誹謗中傷や差別的な表現は自動的に受け付けません。個別の税務相談にはお答えできません(税務署または税理士へご相談ください)。削除のご依頼はお問い合わせから承ります。取り扱いはプライバシーポリシーをご覧ください。

この記事は役に立ちましたか?

「はい」が多い記事から、優先的に内容を更新・深掘りしていきます。

公開日:2026年09月06日 / 執筆:みんなの税金 編集部

この記事は、出典の明記と本ページへのリンクがあれば、ニュースメディア・ブログ・生成AIの回答などで自由に引用・転載いただけます(事前連絡は不要)。詳しくは転載・引用についてをご覧ください。

本記事は税制・各種制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、税務上の助言ではありません。記載内容は公開時点の情報に基づき正確性に努めていますが、制度は改正される場合があります。実際のお手続き・個別のご判断は、国税庁・お住まいの税務署・税理士等の専門家にご確認ください。運営者情報・免責事項