退職金、iDeCo、企業型DC、公的年金——定年前後は人生で最も多くのお金を「受け取る」時期です。そして受け取る順番と時期の設計だけで、手取りが数十万円〜百万円以上変わります。ところが判断は退職金の受け取り方・iDeCoの順番ルール・年金の繰上げ繰下げ・健康保険の選択・失業保険と、バラバラの制度にまたがっています。この記事は、それらを55歳から70歳までの時系列マップに並べ直した「定年前後のお金」のハブです。各論は当サイトの詳細記事につないでいます。
全体マップ:55歳から70歳まで、いつ・何を決めるか
| 時期 | 決めること・やること | 詳しい解説 |
|---|---|---|
| 55〜59歳 | 退職金の見込み額と支給規程を確認し、iDeCo・企業型DCと退職金の受け取り順番を設計する(ここが最重要。60歳直前では手遅れになる設計がある) | iDeCoと退職金の受け取り順番 |
| 60歳 | iDeCoの受給権が発生。「iDeCo一時金を先に受け取り、退職金は10年後」が使えるか判定。働き続けるならiDeCoの継続加入も選択肢に(2026年12月の改正で加入可能年齢が拡大) | iDeCoの2026年12月改正 |
| 退職時 | 退職金を一時金でもらうか年金形式か決める。「退職所得の受給に関する申告書」を必ず提出。住民税の後払いと最後の給与の手取り減に備える | 退職金の税金・手取り早見表・退職時の税金と手続き |
| 退職直後 | 健康保険を3択(任意継続・国保・家族の扶養)から選ぶ。ハローワークで失業給付(65歳未満は基本手当・65歳以上は高年齢求職者給付金)の手続き | 退職後の健康保険3択・失業保険の受け取り方 |
| 64〜65歳 | 年金請求書が届く。65歳で受け取るか、繰下げて増やすかを決める(繰下げは1か月+0.7%・最大75歳で+84%。繰上げは1か月−0.4%)。65歳前は失業給付と年金の併給調整にも注意 | 年金の繰上げ・繰下げ |
| 65〜70歳 | 働きながらなら在職老齢年金の支給停止ラインを確認。年金に確定申告が必要か毎年チェック。iDeCoの受け取りは75歳が期限 | 年金の税金と確定申告 |
順番の設計が効く理由:「退職所得控除の重複排除」
退職金とiDeCo一時金は、どちらも税負担が非常に軽い「退職所得」として受け取れます。ただし短い間隔で両方受け取ると、控除の勤続期間が重複分だけ削られるルールがあります。間隔の要点は3つです。
- iDeCoを先に受け取り→退職金:10年あける(2026年の改正で5年から延長されました)
- 退職金を先に受け取り→iDeCo一時金:20年あける必要があり、現実には控除の重複を避けにくい
- 間隔が足りないと退職所得控除が削られ、受け取り方だけで約70万円の差が出る試算例もあります
基本戦略:60歳前後でiDeCo(企業型DC)を一時金で先に受け取り、退職金は10年後——が理想形。ただし退職金の支給時期は会社都合で動かせないことが多いため、動かせるのはiDeCo側という前提で、年金形式との併用も含めて設計します。ルールの詳細と試算は受け取り順番の記事へ。
見落としがちな「横断」視点:税金だけでなく保険料が動く
- 一時金(退職所得)は分離課税:他の所得と合算されず、国民健康保険料・介護保険料の算定にも入りません
- 年金形式(雑所得)は総合課税:毎年の所得を押し上げるため、所得税・住民税に加えて国保・介護保険料、医療費の自己負担割合まで連鎖して上がることがあります。「一時金優先が基本、年金形式は控除枠との相談」が定石です
- 年金の繰下げにも同じ罠:増額された年金は毎年の所得を増やすため、税・保険料・窓口負担の区分に響きます。増額率だけで決めず、手取りベースで比較を
- 退職翌年の住民税:住民税は前年所得に課税されるため、収入が減った退職翌年に高い請求が来ます。納税資金を退職金から取り分けておくと安全です
今日やること
今日やること
- 退職金の見込み額(会社の規程・退職金試算)とiDeCo・企業型DCの残高、受け取り可能時期を1枚に書き出す
- 「iDeCoを先に・退職金は10年後」が自分の退職予定と両立するか、時系列に並べて確認する
- ねんきん定期便(またはねんきんネット)で65歳受給の見込み額を確認し、繰下げた場合の増額と生活費のつなぎ方を検討する
よくある質問
Q. 何歳から準備を始めるべきですか?
A. 55歳前後がひとつの目安です。「iDeCoを先に受け取り退職金は10年後」という設計は、退職時期とiDeCoの受給開始時期の両方を動かせる余地があるうちにしか組めません。60歳直前だと選択肢が大きく減ります。
Q. 企業型DCとiDeCoの両方があります。考え方は同じですか?
A. 基本は同じで、どちらも一時金で受け取れば退職所得、年金形式なら雑所得です。退職所得控除の重複排除ルールも同様に適用されるため、退職金・企業型DC・iDeCoの3つの受け取り時期をまとめて時系列に並べて設計してください。
Q. 年金は繰下げた方が得ですか?
A. 一概には言えません。繰下げは1か月あたり0.7%増(75歳まで最大84%増)ですが、増えた年金は毎年の税金・国保介護保険料・医療費の窓口負担区分にも影響します。長生きリスクへの保険と割り切れるか、つなぎの生活費があるかで判断が変わります。
Q. 退職金を年金形式で受け取るのは損ですか?
A. 損とは限りません。一時金は退職所得控除の範囲内なら非課税で有利ですが、控除を大きく超える金額なら、超過分を年金形式に回して公的年金等控除の枠を使う組み合わせが有利になることがあります。手取り比較は退職金の手取り早見表で確認してください。
参考リンク(出典)
※ 本記事は一般的な情報提供です。受け取り方の有利不利は退職金額・勤続年数・他の所得で大きく変わります。実行前に税務署・社会保険労務士・税理士等の専門家にご確認ください。







