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- 公開。国税庁タックスアンサー(No.6501・No.5759・No.7191)と東京都主税局「均等割額の計算に関する明細書 記載の手引」(令和7年改正)をもとに作成
資本金は1円でも会社をつくれます。それでも金額で迷うのは、置いた額によって初年度から払う税金が変わるからです。1,000万円以上にすると設立1期目から消費税の課税事業者になり、法人住民税の均等割も東京23区で年7万円から18万円に上がります。1億円を超えると中小企業向けの優遇が外れます。どこに段差があるのか、国税庁と東京都の資料で整理します。
結論:多くの会社は「1,000万円未満」から考える
資本金の金額そのものに正解はありませんが、税金の面では1,000万円と1億円の2か所に段差があります。段差をまたぐと、赤字でも払う金額が増えます。
一方で、資本金の下限が「税金以外」から決まることもあります。許認可の財産的な要件、在留資格、融資や取引先の与信です。まず段差を押さえ、そのうえで下限の制約があるかを確認する順番で考えると決めやすくなります。
境目①:1,000万円——設立1期目から消費税がかかるかどうか
消費税は、2年前(基準期間)の課税売上高で納税義務を判定します。設立したばかりの会社には2年前がないため、1期目と2期目は原則として納税義務が免除されます。
ただし国税庁は、免除されない場合をはっきり示しています。その事業年度の開始の日における資本金の額が1,000万円以上である法人は、基準期間がなくても納税義務は免除されません[国税庁]。
「1,000万円未満」と「1,000万円以下」は違う
条文の書き方は「1,000万円以上なら免除されない」です。つまりちょうど1,000万円は免除されない側に入ります。免税を狙うなら999万円以下にする必要があります。1円の差で扱いが変わるので、端数の置き方には注意してください。
なお、2期目については資本金以外の判定(前期の上半期の売上や給与を見る特例など)もあるため、自動的に2年間免税になるとは限りません。条件は国税庁のページで確認してください。
インボイス登録をするなら、この段差は小さくなる
インボイス(適格請求書)を発行するには課税事業者になる必要があるため、登録した時点で免税のメリットは消えます。取引先が事業者中心なら登録を求められることが多く、その場合は資本金を1,000万円未満にしても消費税は納めます。免税事業者のままでいる選択肢も、発注側が引ける消費税が2026年10月から7割に下がるため、以前より交渉が難しくなっています。
境目②:1,000万円——赤字でも毎年かかる均等割が2.5倍に
法人住民税の均等割は、もうけが出ていなくても毎年かかる定額の税金です。金額は資本金等の額と従業者数で段階的に決まります。東京23区だけに事務所がある会社の場合は次のとおりです[東京都主税局]。
| 資本金等の額 | 従業者50人以下 | 従業者50人超 |
|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 年7万円 | 年14万円 |
| 1,000万円超〜1億円以下 | 年18万円 | 年20万円 |
| 1億円超〜10億円以下 | 年29万円 | 年53万円 |
1,000万円をまたぐと、従業員が少ない会社でも年7万円から18万円へ、差額11万円が毎年発生します。10年で110万円です。売上が立たない年も、休眠にしない限り払い続けます。
東京23区以外は、道府県民税分と市町村民税分をそれぞれの自治体に納めます。段階の区切り方は同じ考え方ですが、金額は自治体の条例で変わるため、設立予定地の役所のページで確認してください。
境目③:1億円——中小企業向けの優遇が外れる
税制上の「中小企業」は、多くの制度で資本金1億円以下を基準にしています。1億円を超えると、次のような扱いが変わります。
| 項目 | 資本金1億円以下 | 1億円超 |
|---|---|---|
| 法人税の税率(年800万円以下の所得) | 15% | 23.2% |
| 法人住民税の均等割(東京23区・50人以下) | 年7万円〜18万円 | 年29万円〜 |
| 法人事業税の外形標準課税 | 対象外 | 対象 |
法人税の軽減税率15%は、資本金1億円以下の普通法人の年800万円以下の所得に適用されます。ただし令和7年4月1日以後に開始する事業年度で、所得が年10億円を超える場合は17%になります[国税庁]。資本金が小さくても、もうけが大きい会社は優遇が縮む方向です。
外形標準課税は、もうけではなく給与や資本の規模に応じて課税する仕組みで、赤字でも発生します。対象法人の範囲は見直しが進んでおり、東京都は適用時期ごとに判定フローを公開しています。1億円前後の増資・減資を考えるときは、事前に確認してください。
下から決まることもある:許認可・在留資格・融資
ここまでは「上げすぎない理由」でした。逆に一定額以上にしないと事業そのものができないケースもあります。
下限が決まる代表例
許認可が必要な業種では、財産的な基礎が要件になることがあります。判定が資本金なのか純資産なのかは制度ごとに違うため、業種名と「許可 財産的基礎」で所管官庁のページを確認してください。
在留資格「経営・管理」
外国人が日本で会社を経営するための在留資格では、資本金の要件が3,000万円に引き上げられました。詳しくは経営・管理ビザの資本金要件で解説しています。
融資や取引でも資本金は見られます。資本金1円の会社は、初期費用を払った時点で債務超過からのスタートになりがちです。創業融資の審査や、法人口座の開設、取引先の与信でマイナスに働くことがあります。税金だけで決めず、会社設立の費用と当面の運転資金をまかなえる額かどうかも見てください。
登録免許税:資本金の0.7%。株式会社は約2,143万円まで15万円
設立登記のときに納める登録免許税は、資本金の額の1,000分の7です。ただし下限があり、株式会社は15万円、合同会社は6万円に満たないときはその金額になります[国税庁]。
| 登記の種類 | 計算 | 下限を超えるライン |
|---|---|---|
| 株式会社の設立 | 資本金×0.7%(15万円未満は15万円) | 約2,143万円 |
| 合同会社の設立 | 資本金×0.7%(6万円未満は6万円) | 約857万円 |
| 増資(資本金の増加) | 増加額×0.7%(3万円未満は3万円) | 約429万円 |
つまり株式会社なら、資本金が100万円でも2,000万円でも登録免許税は同じ15万円です。「登記費用を抑えるために資本金を小さくする」という発想は、この範囲では意味がありません。
実務的な決め方:運転資金の3〜6か月分を目安に
段差を避けたうえで、いくらにするか。資本金は設立時に会社へ入れる運転資金でもあります。考え方はシンプルです。
- 開業時にかかる費用を洗い出す(設備・保証金・在庫・登記費用など)
- 売上が入るまでの固定費を見積もる(家賃・役員報酬・社会保険料・通信費など)
- ①+②の3〜6か月分を資本金の下限にする
- その額が1,000万円に届くなら、999万円以下に収めるか、超える分を役員借入や増資で後から入れるかを検討する
不足分を社長個人が会社に貸す「役員借入金」は資本金に含まれないため、均等割や消費税の判定には影響しません。手元資金を厚くしつつ資本金を抑えたいときの実務的な手段です。
あとから変えられるか:増資は簡単、減資は重い
資本金は設立後も変えられますが、方向によって手間がまったく違います。
増資(増やす)
株主総会の決議と登記で済みます。登録免許税は増加額の0.7%(最低3万円)。事業が軌道に乗ってから厚くする方が、初年度の税負担を抑えられます。
減資(減らす)
株主総会の特別決議に加えて債権者保護手続き(官報公告など)が必要で、1か月以上かかります。「とりあえず多めに」は後から戻しにくいと考えてください。
迷ったら小さめに置いて増資する、が原則です。法人化のタイミングとあわせて、初年度の資金繰りから逆算してください。
今日やること
- 開業費用と、売上が入るまでの固定費を3〜6か月分ざっくり書き出す
- その合計が999万円を超えるかどうかを確認する(超えるなら役員借入との組み合わせを検討)
- 自分の業種に許認可があるか、財産的基礎の要件があるかを所管官庁のページで確認する
- 設立予定地の自治体のページで、均等割の税率表を確認する
よくある質問
Q. 資本金は1円でも問題ありませんか?
A. 法律上は設立できます。ただし初期費用を払った時点で債務超過になりやすく、創業融資の審査や法人口座の開設、取引先の与信で不利に働くことがあります。税金の面では有利不利はほとんどないので、実際に必要な運転資金から決めるのが現実的です。
Q. ちょうど1,000万円にするとどうなりますか?
A. 消費税は「資本金1,000万円以上」で免除されない扱いになるため、ちょうど1,000万円は設立1期目から課税事業者です。均等割も1,000万円超の区分ではなく1,000万円以下の区分(東京23区・従業者50人以下で年7万円)ですが、消費税の判定は超えた側に入ります。免税を狙うなら999万円以下にしてください。
Q. 資本金を大きくすると登記費用は増えますか?
A. 株式会社は資本金の0.7%ですが15万円の下限があるため、約2,143万円までは一律15万円です。合同会社は6万円の下限があり、約857万円までは一律6万円です。この範囲なら資本金を増やしても登録免許税は変わりません。
Q. インボイス登録をするなら資本金はいくらでも同じですか?
A. 消費税に関してはほぼ同じです。インボイス登録をすると課税事業者になるため、資本金1,000万円未満でも消費税を納めます。ただし法人住民税の均等割(東京23区で年7万円と18万円の差)は資本金で決まるので、1,000万円未満にする意味は残ります。
参考リンク(出典)
※ 税率・要件は改正されることがあります。金額は2026年9月20日時点で各公式資料を確認したものです。実際の手続きは税理士・司法書士、または所管の税務署・自治体にご確認ください。
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