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- 公開。国税庁タックスアンサー No.4124・No.4208・No.4152 をもとに作成
親が住んでいた家の土地を相続すると、評価額を最大80%減らせるのが「小規模宅地等の特例」です。評価額5,000万円の土地なら1,000万円として計算でき、相続税がゼロになる家庭も少なくありません。ただし使えるのは誰が相続したかで決まります。配偶者は無条件、同居の子は申告期限まで住み続けることが条件、別居の子は「家なき子」と呼ばれる6つの要件をすべて満たす必要があります。この記事では、居住用・事業用・貸付用の3区分の減額率、取得者ごとの判定、老人ホームに入っていた場合や二世帯住宅の扱い、申告の要件を国税庁の資料で整理します。
結論:3区分の減額率と、誰が相続すれば使えるか
| 土地の使われ方 | 区分 | 上限面積 | 減額率 |
|---|---|---|---|
| 亡くなった人(または生計を一にする親族)が住んでいた | 特定居住用宅地等 | 330㎡ | 80% |
| 亡くなった人が事業(貸付以外)に使っていた | 特定事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| 同族会社に貸して、その会社が事業に使っていた | 特定同族会社事業用宅地等 | 400㎡ | 80% |
| アパート・駐車場など貸付事業に使っていた | 貸付事業用宅地等 | 200㎡ | 50% |
出典:国税庁 タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」[国税庁]
いちばん多いのは自宅の土地です。自宅の土地について、誰が相続すると使えるかは次のとおりです。
| 相続した人 | 条件 | 判定 |
|---|---|---|
| 配偶者 | なし(同居・別居を問わない) | 使える |
| 同居していた親族 | 相続開始の直前から申告期限(10か月)まで住み続け、土地を持ち続ける | 使える |
| 別居の親族(家なき子) | 下の6要件をすべて満たす | 要件しだい |
| 生計を一にする親族が住んでいた土地を、その親族が相続 | 申告期限まで住み続け、土地を持ち続ける | 使える |
別居の子が使える「家なき子」の6要件
親と別居していた子が自宅の土地を相続する場合、次の6つをすべて満たす必要があります[国税庁 No.4124]。
- 居住制限納税義務者・非居住制限納税義務者のうち日本国籍を持たない人ではないこと(国内に住む日本人なら該当しない)
- 亡くなった人に配偶者がいないこと
- 亡くなった人と同居していた相続人がいないこと
- 相続開始前3年以内に、自分・自分の配偶者・3親等内の親族・自分と関係の深い法人が持つ家に住んだことがないこと
- 相続開始時に住んでいる家を、過去に一度も所有したことがないこと
- その土地を申告期限まで持ち続けること
使える例
- 父は既に他界、母が一人暮らし。子は3年以上、他人から借りた賃貸に住んでいた
- 子は社宅(会社名義・自分と関係のない法人)に5年住んでいた
使えない例
- 子が持ち家に住んでいる(3年以内に住んでいた)
- 子が自分の配偶者名義や兄弟名義の家に住んでいる(3親等内の親族)
- 自分の持ち家を子や親族に売って賃借し、形だけ「借家住まい」にした(要件5で除外)
- 亡くなった親に配偶者がいる、または同居していた兄弟がいる
2018年の改正で、持ち家を親族に売って借家扱いにする方法や、自分の家を子に贈与して借りる方法は封じられました。要件4と5がそれです。
親が老人ホームに入っていた場合:3つの条件で使える
亡くなる直前に親が老人ホームで暮らしていても、次の3つを満たせば自宅の土地は「居住用」として特例の対象になります[国税庁 No.4124]。
- 親が要介護認定または要支援認定を受けていた(障害支援区分の認定も可)
- 入っていたのが特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・介護老人保健施設・サービス付き高齢者向け住宅などの対象施設
- 空いた自宅を他人に貸したり、事業に使ったりしていない
3つ目は見落としがちです。空き家になった実家を人に貸すと、居住用ではなく貸付用になり、減額率は80%から50%に下がります。認定を受けていなかった場合も対象外です。
二世帯住宅:登記の仕方で結果が変わる
親世帯と子世帯が同じ建物に住む二世帯住宅は、区分所有登記があるかどうかで扱いが分かれます[国税庁 No.4124]。
| 建物の登記 | 特例の対象になる土地 | 子は「同居親族」か |
|---|---|---|
| 区分所有登記なし(親の単独名義や共有) | 親の居住部分+子の居住部分の両方に対応する土地 | 同居として扱う |
| 区分所有登記あり(1階と2階を別々に登記) | 親の居住部分に対応する土地だけ | 子は親の区画に住んでいないと同居にならない |
玄関が別で内部で行き来できない完全分離型でも、区分所有登記をしていなければ問題ありません。これから二世帯住宅を建てる人は、登記の形を決める前に確認しておくべき点です。
計算例と、複数の土地を持っている場合の上限
- 330㎡以内なので全体が対象 → 5,000万円 × 80% = 4,000万円を減額
- 相続税の計算に使う土地の価額 1,000万円
- 相続人が子2人なら基礎控除は4,200万円。土地1,000万円+預金3,000万円=4,000万円なら相続税はゼロ(特例なしなら8,000万円で課税)
自宅と貸しアパートの両方の土地があるときは、面積の上限を按分します。国税庁の式は次のとおりです[国税庁 No.4124]。
事業用の面積 × 200/400 + 居住用の面積 × 200/330 + 貸付用の面積 ≦ 200㎡
貸付用がなければ按分は不要で、居住用330㎡と事業用400㎡は合計730㎡まで両方使えます。
減額率80%の自宅を優先し、余った枠を50%の貸付用に回すのが基本です。ただし単価が高い土地を優先したほうが減額の金額は大きくなるので、複数ある場合は税理士に計算してもらう価値があります。
申告しないと使えない:税額ゼロでも申告書を出す
この特例は、相続税の申告書に特例を受ける旨を記載し、計算明細書と遺産分割協議書の写しなどを添付することが要件です[国税庁 No.4124]。したがって、特例を使えば税額がゼロになる家庭でも、申告書を出さなければ特例は受けられず、特例なしの評価で相続税が発生します。
もう1つの条件は、申告期限(亡くなった日の翌日から10か月)までに遺産分割が済んでいることです。分割がまとまらない場合は「申告期限後3年以内の分割見込書」を添えて申告し、3年以内に分割できれば更正の請求で特例を受けられます[国税庁 No.4208]。
なお、相続時精算課税で生前に贈与した土地には、この特例は使えません。自宅の土地は相続まで待つのが基本です。贈与方式の選び方は暦年贈与と相続時精算課税の選び方を参照してください。相続税の全体の計算は相続税の税率と3ステップ計算で確認できます。
よくある質問
母が自宅を相続します。母は特例を使えますか。
使えます。配偶者には取得者としての要件がありません。ただし配偶者には別に「1億6,000万円まで非課税」の税額軽減があるので、自宅は子が相続して特例を使い、預金を母が相続するほうが二次相続まで含めて有利な場合があります。
相続してすぐ売りたいのですが、特例は使えますか。
同居親族と家なき子は、申告期限(10か月)まで土地を持ち続けることが要件です。期限前に売ると特例は使えません。配偶者にはこの要件がありません。
土地が400㎡あります。330㎡を超えた分はどうなりますか。
330㎡までの部分が80%減額され、超えた70㎡分は通常の評価です。面積で按分して計算します。
申告期限を過ぎてしまいました。もう使えませんか。
期限後申告でも、要件を満たしていれば特例は受けられます。ただし無申告加算税や延滞税がかかるので、早く出すほど負担は小さくなります。
参考リンク(出典)
- 国税庁 No.4124 小規模宅地等の特例——減額率・上限面積・取得者の要件・老人ホーム・区分所有登記・申告要件
- 国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告
- 国税庁 No.4152 相続税の計算——特例適用後の価額で課税価格を計算すること
※計算例は国税庁の減額率を本サイトが当てはめた試算です。土地の評価や要件の判定は個別性が高いため、申告前に税理士・税務署にご確認ください。
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