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- 公開。国税庁タックスアンサー No.4103・No.4408・No.4409・No.4410・No.4161・No.4124・No.4304 をもとに作成
親から子への贈与には「暦年課税」と「相続時精算課税」の2つの方式があります。2024年の改正で両方に年110万円の基礎控除が付き、選び方が変わりました。暦年課税の110万円は亡くなる前7年分が相続財産に戻るのに対し、相続時精算課税の110万円は何年前の分でも戻りません。ただし精算課税は一度選ぶと取り消せず、贈与した土地に小規模宅地等の特例が使えなくなります。この記事では2つの制度を1枚の表で比べ、「親の年齢」「渡す金額」「財産の種類」の3つの軸で、どちらが得かを国税庁の資料と試算で整理します。
結論:3つの質問で決まる
| あなたの状況 | 向いている方式 | 理由 |
|---|---|---|
| 親が70代以上で、毎年110万円ずつ渡したい | 相続時精算課税 | 110万円以下の贈与が相続財産に戻らない。暦年課税だと亡くなる前7年分が戻る |
| 親が60代前半で、20年以上かけて渡せる | 暦年課税 | 7年より前の分は戻らない。相続人でない孫にも使える。取り消せない制度を選ぶ必要がない |
| 自宅や事業用の土地を渡したい | 暦年課税(または相続まで待つ) | 精算課税で贈与した土地には小規模宅地等の特例(最大80%減額)が使えない |
| 2,500万円級の資産を一度にまとめて渡したい | 相続時精算課税 | 累計2,500万円まで贈与税ゼロ、超えた分も一律20%。暦年課税だと最高55% |
| 値上がりが見込める株・不動産を渡したい | 相続時精算課税 | 相続時に加算されるのは贈与時の価額。値上がり分は課税されない(値下がりすると逆に損) |
2つの制度は贈与する人ごとに選べます。父からの贈与は精算課税、母からの贈与は暦年課税、という組み合わせも可能です[国税庁 No.4103]。
2つの制度を1枚の表で比べる(2024年1月以後の贈与)
| 項目 | 暦年課税 | 相続時精算課税 |
|---|---|---|
| 使える人 | 誰でも | 1月1日時点で60歳以上の父母・祖父母から、18歳以上の子・孫へ |
| 年110万円の基礎控除 | あり(もらう人1人につき110万円) | あり(2024年から新設。贈与者ごとに110万円を按分) |
| 110万円を超えた分の贈与税 | 10〜55%の累進税率(速算表) | 累計2,500万円まで0円、超えた分は一律20% |
| 110万円以下の贈与の相続加算 | 亡くなる前7年分が戻る(2026年中の相続は3年、2031年から7年) | 戻らない |
| 110万円を超えた贈与の相続加算 | 7年より前なら戻らない | 110万円を超えた分は何年前でも全額相続財産に加算 |
| 払った贈与税の扱い | 加算された分は相続税から控除 | 相続税から控除。引き切れなければ還付 |
| 申告 | 110万円以下なら不要 | 最初の年に選択届出書が必要(翌年2月1日〜3月15日)。以後は110万円以下なら申告不要 |
| 取り消し | いつでも精算課税に変更できる | 一度選ぶと暦年課税に戻れない |
| 小規模宅地等の特例 | 相続で取得すれば使える | 贈与した土地には使えない |
出典:国税庁 No.4103「相続時精算課税の選択」、No.4402「贈与税がかかる場合」、No.4408「贈与税の計算と税率」、No.4161「贈与財産の加算と税額控除」、No.4124「小規模宅地等の特例」
110万円の「戻る・戻らない」が最大の分かれ目
2024年の改正は、暦年課税を厳しくし、精算課税を使いやすくする方向でした。暦年課税では、亡くなる前の贈与が相続財産に戻る期間が3年から7年に延びました。110万円以下で贈与税がかからなかった年の分も戻ります[国税庁 No.4161]。一方、精算課税で贈与した財産のうち相続財産に加算されるのは「年ごとの贈与額から110万円を引いた残額」です[国税庁 No.4103]。毎年110万円以下なら加算額はゼロです。
- 暦年課税:7年分770万円のうち、直前3年分330万円は全額、4〜7年前の440万円は100万円を引いた340万円が加算 → 670万円が相続財産に戻る
- 相続時精算課税:毎年110万円以下なので加算額は0円。770万円がまるごと相続財産から外れる
- 相続税の税率が15%の家庭なら、差は 約100万円(670万円×15%)
年別に何年分が戻るかは生前贈与加算7年のカレンダーで確認できます。
まとまった額を渡すなら税率の差が大きい
110万円を超える贈与では、暦年課税の税率は累進です。18歳以上の子や孫が父母・祖父母から受ける「特例贈与」でも、基礎控除後の課税価格が4,500万円を超えると55%です[国税庁 No.4408]。精算課税なら累計2,500万円まで0円、超えた分は一律20%です。
| 1年で渡す額 | 暦年課税(特例税率)の贈与税 | 相続時精算課税の贈与税(初年度) |
|---|---|---|
| 110万円 | 0円 | 0円 |
| 500万円 | 48万5,000円 | 0円(2,500万円の枠を390万円使う) |
| 1,000万円 | 177万円 | 0円(枠を890万円使う) |
| 3,000万円 | 1,035万5,000円 | 78万円(3,000万円−110万円−2,500万円=390万円×20%) |
暦年課税は国税庁の特例贈与財産用の速算表で計算(500万円の例は国税庁掲載の計算例と同じ48.5万円)。精算課税は初めて選択した年の計算。
ただし精算課税は「贈与税が安い」だけで、110万円を超えた分は相続時に全額戻って相続税がかかります。贈与税を払わずに済んだ分が相続税に置き換わるだけで、税金が消えるわけではありません。得になるのは、相続税がかからない家庭(基礎控除内)と、贈与時より値上がりする財産を渡す場合です。
精算課税を選ぶ前に確認する3つの落とし穴
- 戻れない。届出書を出した贈与者からの贈与は、以後すべて精算課税です。その親からの暦年課税110万円は二度と使えません。国税庁も「その後の撤回はできません」と明記しています[国税庁 No.4409]。
- 土地の特例が消える。自宅の土地を精算課税で贈与すると、相続時に使えたはずの小規模宅地等の特例(330㎡まで80%減額)が使えません[国税庁 No.4124]。評価額5,000万円の土地なら4,000万円の減額を失う計算です。該当判定は小規模宅地等の特例の該当判定で。
- 値下がりすると損。相続時に加算されるのは贈与時の価額です。値下がりした株や不動産でも、高かったときの価額で相続税がかかります。
また、届出は贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日までに、受贈者の戸籍謄本などを添えて出します[国税庁 No.4304]。期限を過ぎると、その年の贈与は暦年課税で計算されます。2,500万円の特別控除は期限内申告をした場合だけ使えます。
よくある質問
父は精算課税、母は暦年課税と分けられますか。
できます。精算課税は贈与者ごとに選ぶ制度です。父からの贈与に精算課税を選んでも、母からの贈与は暦年課税のままです。
精算課税で父と母の両方から110万円ずつもらうと、基礎控除は220万円ですか。
いいえ。精算課税の110万円は、もらう人1人につき年110万円で、贈与者ごとの贈与額で按分します。父600万円・母400万円なら、父分66万円・母分44万円です。
精算課税を選ぶと毎年申告が必要ですか。
最初の年は選択届出書と申告が必要です。2年目以降は、その年の贈与が110万円以下なら申告は不要です。110万円を超えた年は申告します。
相続税がかからない家庭でも精算課税を選ぶ意味はありますか。
あります。相続財産と精算課税の贈与を合計しても基礎控除内なら、贈与税も相続税もゼロで2,500万円まで早く渡せます。暦年課税だと110万円を超えた年に贈与税が出ます。
参考リンク(出典)
- 国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択——対象者、110万円の基礎控除、2,500万円の特別控除、戻れないこと
- 国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)——速算表と計算例
- 国税庁 No.4410 複数の人から贈与を受けたとき——精算課税の110万円の按分
- 国税庁 No.4409 贈与税の計算(相続時精算課税の選択をした場合)——3年間の計算例
- 国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)——7年加算
- 国税庁 No.4304 相続時精算課税選択届出書に添付する書類
※試算は国税庁の速算表と加算ルールを本サイトが当てはめたものです。個別の判断は税理士・税務署にご確認ください。
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