この記事の更新情報
- 公開。日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」・国税庁 No.1605・国民年金法25条・厚生年金保険法41条をもとに作成
遺族厚生年金は、亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3です。平均標準報酬額40万円・300月みなしなら、令和8年度は年49万3,290円=月4万1,108円。子が1人いる妻は遺族基礎年金と子の加算が乗り、同じ夫でも年158万4,390円になります。子のいない妻は40歳から年63万5,500円の中高齢寡婦加算が付き、65歳で消えます。まずは「ねんきん定期便」で亡くなった人の平均標準報酬額を確かめてください。
結論:平均報酬40万円なら、子1人の妻は年158万円・子なし40代は年113万円
金額を決めるのは、亡くなった人の平均標準報酬額と家族構成の2つです。下の表は令和8年度の年額で、加入期間はすべて平成15年4月以降・300月みなしとして計算しました。
| 平均標準報酬額 | 子1人の妻 +遺族基礎・子の加算 | 子なし・40歳未満 遺族厚生のみ | 子なし・40〜64歳 +中高齢寡婦加算 |
|---|---|---|---|
| 30万円 年収約360万円 | 1,461,068円 月121,756円 | 369,968円 月30,831円 | 1,005,468円 月83,789円 |
| 40万円 年収約480万円 | 1,584,390円 月132,033円 | 493,290円 月41,108円 | 1,128,790円 月94,066円 |
| 50万円 年収約600万円 | 1,707,713円 月142,309円 | 616,613円 月51,384円 | 1,252,113円 月104,343円 |
遺族基礎年金847,300円・子の加算243,800円・中高齢寡婦加算635,500円は令和8年度の額[日本年金機構 遺族年金ガイド 令和8年度版]。遺族厚生年金の額は本サイトの試算です。
子がいるかどうかで倍以上違います。差は遺族基礎年金847,300円と子の加算243,800円、合わせて年109万1,100円です。平均標準報酬額は賞与込みの月平均で、月給30万円に年4か月分の賞与があれば約40万円になります。
早見表の前提:300月みなしが効くのは在職中に亡くなったときだけ
平成15年4月以降の期間は「平均標準報酬額×5.481/1000×月数」で報酬比例部分を計算します[日本年金機構 遺族年金ガイド]。加入期間が300月(25年)に足りなくても、300月あったものとみなします。
- 報酬比例部分 40万円 × 5.481/1000 × 300月 = 657,720円
- 遺族厚生年金 657,720円 × 3/4 = 493,290円(月41,108円)
- 子1人の妻はここに 847,300円+243,800円 が加わり 1,584,390円
日本年金機構の計算式に本サイトが数値を当てはめたものです。
ただし300月みなしが使えるのは短期要件だけです。在職中の死亡、初診日から5年以内の死亡、1級・2級の障害厚生年金を受けていた人の死亡の3つが該当します[日本年金機構 遺族厚生年金]。
退職後に亡くなった場合は長期要件です。底上げが無く、実際の加入月数で計算します。加入が200月なら早見表の3分の2ほどに下がるので、表をそのまま当てにしないでください。
子が18歳の年度末を過ぎると、年84万7,300円が止まる
遺族基礎年金は、子が18歳になった年度の3月31日を過ぎると止まります[日本年金機構 遺族基礎年金]。子の加算も同時に終わります。平均標準報酬額40万円の例なら、世帯の年金は年158万円から年49万円へ落ちます。
落差を一部埋めるのが中高齢寡婦加算です。夫の死亡時に妻が40歳以上65歳未満で子がいない場合に付きます。子の遺族基礎年金が終わったとき妻が40歳以上なら、そこから切り替わります。額は65歳になるまで年635,500円です[日本年金機構 遺族年金ガイド]。
- 遺族基礎年金を受け取れる間は付きません(どちらか一方)。
- 長期要件では、夫の厚生年金の加入期間が20年以上必要です。
- 対象は妻だけで、子のない夫に同じ仕組みはありません。
65歳で経過的寡婦加算に切り替わる仕組みもありますが、対象は昭和31年4月1日以前に生まれた妻だけです[日本年金機構 年金給付の経過措置一覧]。令和8年度なら満70歳以上に限られるので、現役世代は考えなくて構いません。
65歳からは、自分の老齢厚生年金の分だけ遺族厚生年金が止まる
65歳になると自分の老齢年金が始まり、遺族厚生年金との調整が入ります。日本年金機構は①と②を比べて高いほうを遺族厚生年金の額とします。そのうえで本人の老齢厚生年金に相当する額が支給停止になります[日本年金機構 遺族年金ガイド]。
- ① 亡くなった人の報酬比例部分の4分の3の額
- ② ①の額の3分の2 + 自分の老齢厚生年金の2分の1
- 高いほうに決めたあと、自分の老齢厚生年金と同じ額を差し引く
自分の老齢厚生年金が多い人ほど、振り込まれる遺族厚生年金は少なくなります。年60万円の妻で見ると次のとおりです。
| 夫の平均標準報酬額 | ①報酬比例×3/4 | ②①×2/3+老厚×1/2 | 決定額 | 振込額 |
|---|---|---|---|---|
| 30万円 | 369,968円 | 546,645円 | 546,645円 | 0円 |
| 40万円 | 493,290円 | 628,860円 | 628,860円 | 28,860円 |
| 50万円 | 616,613円 | 711,075円 | 711,075円 | 111,075円 |
本サイトの試算。自分の老齢厚生年金は全額受け取れます。年金の合計は順に1,447,300円・1,476,160円・1,558,375円(老齢基礎年金は満額847,300円として計算)。
自分の老齢厚生年金が年100万円あると、夫の平均標準報酬額が50万円でも遺族厚生年金は0円です。決定額911,075円が100万円の支給停止に飲み込まれるためです。長く働いた人ほど「遺族年金が消えた」と感じるのは、この仕組みによります。
遺族年金は非課税。住民税も国保料も介護保険料も1円も増えない
遺族年金には所得税も相続税もかかりません[国税庁 No.1605]。根拠は国民年金法25条と厚生年金保険法41条2項の公課の禁止です[法令検索 国民年金法][法令検索 厚生年金保険法]。どちらも課税できるのは老齢年金だけと定めています。所得税法9条の非課税規定は「死亡した者の勤務に基づくもの」に限られるため、遺族基礎年金の根拠は国民年金法です。
所得にならないので、次のどれにも影響しません。
- 住民税——非課税判定にも所得割にも入りません[練馬区 住民税がかからない場合]。
- 国民健康保険料——旧ただし書き所得にも軽減判定にも入りません。
- 介護保険料——段階判定の年金収入は非課税年金を除いた額です[練馬区 65歳以上の介護保険料]。
- 確定申告——遺族年金だけなら申告そのものが不要です。
例外は2つです。ひとつは児童扶養手当で、支給停止または一部停止になることがあります[日本年金機構 遺族年金ガイド]。もうひとつは未支給年金です。遺族が受け取る未支給の老齢年金は、受け取った人の一時所得になります[国税庁 No.1605]。
特別控除50万円があるので税額が出ることは多くありません。年金以外のお金は死亡退職金と死亡保険金の500万円非課税、年金生活の税と保険料の全体像は年金だけで暮らす人の税金と保険料で整理しています。
受け取れる人の条件と、権利がなくなる場面
受け取れるのは、生計を維持されていた遺族のうち順位が最も高い人だけです。順位は子のある配偶者、子、子のない配偶者、父母、孫、祖父母の順です[日本年金機構 遺族年金ガイド]。
受け取れる(見落としやすい例)
- 前年の収入850万円未満、または所得655万5,000円未満の遺族
- 850万円以上でも、5年以内に退職・廃業で下がる事由がある人
- 別居でも仕送りを受けていた、健康保険の被扶養者だった配偶者
- 夫は死亡当時55歳以上(受給は60歳から)。遺族基礎年金を受けている夫は60歳前でも受け取れる
権利がなくなる(失権)
- 再婚したとき。届出のない内縁関係も含みます
- 直系血族・直系姻族以外の養子になったとき
- 子が18歳になった年度の3月31日に到達したとき
- 夫の死亡時に30歳未満で子のない妻は、権利を得てから5年で終了
失権したら10日以内(遺族基礎年金は14日以内)に年金事務所へ届け出ます。子が18歳の年度末に到達した場合だけは失権届が要りません。再婚を黙っていると、あとでさかのぼって返すことになります。
請求先は年金事務所、時効は5年。死亡一時金だけ2年
請求しなければ1円も振り込まれません。遺族年金は亡くなった月の翌月分から受け取れます[日本年金機構 遺族年金ガイド]。
- 請求先を決める。年金事務所か街角の年金相談センターへ。遺族基礎年金だけなら市区町村の窓口です。
- 添付書類を先に確かめる。戸籍謄本や死亡診断書などが要りますが、個人番号の登録状況や子の有無で変わります。請求書の記入案内を見て年金事務所に確認してください。
- 年金証書を待つ。提出から1か月程度、加入状況の確認が要る場合は2か月程度です。
- 振り込みは偶数月。証書が届いてから約1〜2か月後に、指定口座へ2か月分ずつ入ります。
時効は権利が発生してから5年です[日本年金機構 年金の時効]。やむを得ない事情があった場合は、書面で申し立てると時効にしない取扱いがあります。未支給年金も5年ですが、死亡一時金だけは2年と短いので混ぜないでください。
自営業の世帯には、いま死亡一時金の落とし穴があります[日本年金機構 遺族年金ガイド]。令和8年4月1日から令和10年3月31日までに権利が発生した死亡一時金を父母が受け取ると、子の遺族基礎年金は支給停止のままです。12万〜32万円の一時金と、2028年4月以降に子が受けられる年金との比較です。時効は2年あるので、急ぐ前に年金事務所で確認してください。
亡くなったあとの手続き全体の順番は親が亡くなった後のお金ロードマップにまとめています。
2028年4月から、子のない配偶者の遺族厚生年金は原則5年に
2025年6月に成立した年金制度改正法で、子のない配偶者の遺族厚生年金は2028年4月から原則5年の有期給付になる予定です。5年間の額は有期給付加算で約1.3倍になり、55歳未満で対象外だった夫も対象に入ります。施行日前に受給権が発生した年金は現行制度のままなので、いま受け取っている人の額は減りません。
| 項目 | 現行(2028年3月まで) | 2028年4月以後の予定 |
|---|---|---|
| 子のない妻・30歳以上60歳未満 | 無期給付 | 原則5年の有期(対象年齢を段階的に拡大) |
| 子のない夫・60歳未満 | 給付なし(55歳未満) | 5年の有期給付の対象に |
| 受け取る側の収入要件 | 850万円未満または所得655万5,000円未満 | 撤廃 |
| 中高齢寡婦加算(年635,500円) | あり | 段階的に逓減し最終的に廃止 |
出典:厚生労働省「年金制度改正法に関する広報について」(令和7年7月30日)。有期給付加算の率や対象年齢の区切りは政令待ちで確定していません。
拡大スケジュールや継続給付の所得基準は遺族厚生年金が2028年4月から5年有期にで扱っています。まずは現行制度で自分の世帯がいくらになるかを押さえ、そのうえで改正の影響を確かめてください。
よくある質問:遺族年金の金額と手続き
パートで働き始めたら遺族年金は減りますか。
減りません。収入要件を見るのは受給権が決まるときだけです。ただし児童扶養手当を受けている場合は、手当の側で調整が入ることがあります。
まとめ
- 遺族厚生年金は報酬比例部分の4分の3。平均標準報酬額40万円なら令和8年度は年49万3,290円
- 子1人の妻は遺族基礎年金と子の加算が乗り年158万4,390円。子が18歳の年度末で止まる
- 子のない妻は40歳から年63万5,500円の中高齢寡婦加算。65歳で消える
- 300月みなしは在職中の死亡などに限る。65歳からは自分の老齢厚生年金の分だけ遺族厚生年金が止まる
- 非課税で住民税・国保料にも影響しない。請求は年金事務所、時効は5年(死亡一時金は2年)
コメントみんなの意見
コメントの閲覧・投稿は会員限定です(無料・Googleアカウントでログイン)。
コメントは会員限定です。ログインすると読む・書くができます。
無料・Googleアカウントだけで登録できます
コメントを読み込んでいます…
この記事は役に立ちましたか?
「はい」が多い記事から、優先的に内容を更新・深掘りしていきます。
フィードバックありがとうございます
今後の改善の参考にさせていただきます。分かりにくかった点があれば、お問い合わせから教えていただけると嬉しいです。
参考リンク(出典)
- 日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」——金額・計算式・300月みなし・中高齢寡婦加算・併給調整・失権・手続き
- 日本年金機構「遺族厚生年金」——短期要件と長期要件
- 日本年金機構「遺族基礎年金」——子の年齢要件
- 日本年金機構「年金給付の経過措置一覧(令和8年度)」——経過的寡婦加算の額
- 日本年金機構「年金の時効」——基本権・未支給年金とも5年
- 国税庁 No.1605 遺族の方に支給される公的年金等——非課税の範囲と未支給年金
- 国民年金法 第25条/厚生年金保険法 第41条——公課の禁止
※早見表は、日本年金機構の計算式に本サイトが数値を当てはめた試算です。従前額保障との比較や共済加入期間の按分は含みません。実際の額は年金事務所にご確認ください。









