税制改正要望2026|令和9年度は8月末に出そろう・要望と決定の見分け方

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カテゴリ:制度・ニュース

毎年8月末、日本の税金の来年度が動き出します。各府省庁が「この税をこう変えてほしい」という税制改正要望を財務省と総務省に提出する時期だからです。9月に入ると「◯◯が減税へ」「××が拡充される見通し」という記事が一斉に流れます。ただ、ここで押さえておくべきことが一つあります。要望は、決定ではありません。令和8年度は各府省庁から215項目の要望が出ましたが、そのうち「3年延長」を求められた教育資金の一括贈与の非課税措置は、12月の大綱であっさり延長されずに終了が決まりました。逆に、要望リストのどこにも書かれていなかった国際観光旅客税の3倍への引き上げが、12月に突然姿を現しています。この記事では、令和9年度税制改正がこれからの4か月でどう決まるのかを整理したうえで、9月からのニュースを正しく読むための見分け方をまとめます。

税制改正はこの4か月で決まる

来年度の税制がどう決まるのか、順を追うと次のようになります。私たちが「決まった」と実感するのは12月ですが、実際の勝負はその前から始まっています。

  • 6月

    民間団体の建議・意見書

    日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、業界団体などが翌年度の要望をまとめて公表します。令和9年度分については、日本税理士会連合会が2026年6月25日の理事会で「令和9年度税制改正に関する建議書」を決定済みです。

  • 8月末

    各府省庁の税制改正要望が出そろう

    各府省庁が所管分野の要望を財務省(国税)と総務省(地方税)に提出します。令和8年度は8月29日付で17府省庁から提出されました。この時点の内容が「◯◯省が△△を要望」として報道されます。

  • 9〜11月

    政府税制調査会・与党税制調査会での審議

    要望を突き合わせ、優先順位と財源を詰めていく期間です。ここで多くの要望が落ちます。報道は「調整」「浮上」「見送りへ」といった表現になり、まだ確定ではありません。

  • 12月中旬

    与党税制改正大綱 → 閣議決定

    実質的にここで決まります。令和8年度は与党大綱が2025年12月19日、政府の大綱の閣議決定が12月26日でした。増税項目が初めて公になるのもこのタイミングです。

  • 翌2〜3月

    法案の国会提出・成立

    大綱の内容を条文にした所得税法等の一部改正法案が国会に提出され、年度内に成立します。令和8年度は2026年2月20日に法案が提出されました。

  • 4月/翌1月

    施行

    法人税・地方税・消費税は4月から、所得税は暦年課税なので翌年1月からの適用になるものが多くなります。「決まってから実際に効くまで」に1年以上かかる項目も珍しくありません。

今年は例外的な流れも同時に走っている

2026年は通常のサイクルとは別に、給付付き税額控除食料品の消費税率引き下げという大型テーマが先行して動いています。政府は2026年8月5日の臨時閣議で制度導入の基本方針を決定しており、これらは12月の大綱を待たずに方向性が示されました。詳しくは給付付き税額控除シミュレーション食料品の消費税減税にまとめています。

要望は「減税のお願い」がほとんど——数字で見る非対称

財務省が公表した令和8年度税制改正要望の単純集計を見ると、要望というものの性格がはっきりわかります。

府省庁要望項目数廃止・縮減項目数
国土交通省415
経済産業省382
金融庁230
厚生労働省220
農林水産省225
内閣府140
文部科学省120
財務省70
総務省・環境省各60
こども家庭庁・復興庁・法務省各5復興庁のみ11
防衛省40
内閣官房・警察庁各20
外務省10
合計21523
新設・拡充・延長215項目
廃止・縮減23項目

出典:財務省「令和8年度税制改正要望の状況について(各府省庁から提出された要望・8月29日付の単純集計)」。府省庁間で重複する項目を除くと、要望項目数146、廃止・縮減項目数13。

要望に「増税」はほぼ書かれない

各府省庁は所管する産業や政策の後押しを求める立場なので、要望の中身はほぼすべてが減税・非課税枠の拡大・期限の延長です。廃止・縮減はわずか23項目で、しかもその多くは復興庁の期限到来分。つまり、8月末の要望リストを全部読んでも、来年どんな増税が来るかはわかりません。増税は財源を確保する側の論理で決まり、12月の大綱で初めて表に出てきます。9月からの報道が明るい話ばかりに見えるのは、報道が偏っているのではなく、材料自体が減税要望しかないからです。

要望は通るとは限らない——令和8年度の実例

去年の要望が12月にどうなったかを追うと、「要望=決定ではない」ことがよくわかります。

通らなかった例:教育資金の一括贈与

祖父母などから教育資金を一括で贈与された場合に、最大1,500万円まで贈与税が非課税になる制度です。適用期限は2026年3月31日でした。文部科学省は金融庁との共同要望として、この期限を2029年3月31日まで3年延長することを令和8年度税制改正要望に盛り込んでいます。

結果は、令和8年度税制改正の大綱で次のとおりでした。

令和8年度税制改正の大綱(2025年12月26日 閣議決定)より

「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置について、適用期限(令和8年3月31日)を延長しない。」

要望どおりなら3年延びるはずだった制度が、その年度末で終わったわけです。この制度を使うつもりで動いていた家庭は、大綱が出た12月から3月末までの3か月で判断を迫られました。制度の中身と、終了後の代わりの手は教育資金の一括贈与にまとめています。

部分的に通った例:NISA

金融庁は令和8年度要望で、NISAについて3つの柱を掲げました。①こども支援としてつみたて投資枠の対象年齢等の見直し、②資産運用ニーズに応えるための対象商品の拡充、③非課税保有限度額の当年中の復活です。大綱に明記されたのは、つみたて投資枠の口座開設可能年齢を0〜17歳に拡充する部分でした(0〜17歳の間は年間投資枠60万円、非課税保有限度額600万円)。要望が丸ごと通ったのではなく、優先順位の高いところから形になった、という読み方が正確です。制度の使い方はこども支援NISA新NISA活用ガイドへ。

要望になかったのに決まった例:増税3件

逆に、8月末の要望リストにはなかったのに大綱で登場したものがあります。

項目令和8年度大綱で決まった内容
国際観光旅客税税率を出国1回につき3,000円(現行1,000円)へ引き上げ
防衛特別所得税(仮称)所得税額に対し税率1%の付加税を創設。課税期間は令和9年1月から。復興特別所得税の税率を1%引き下げたうえで課税期間を令和29年まで10年延長
極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置特別控除額を3億3,000万円から1億6,500万円へ引き下げ、税率を22.5%から30%へ引き上げ

出国税の3倍化は旅行者に、防衛特別所得税は所得税を納めているすべての人に効きます。防衛特別所得税は復興特別所得税を1%下げて差し引きゼロにする設計ですが、復興特別所得税の課税期間は令和29年まで10年延びました。詳しくは出国税3,000円への引き上げ超富裕層の相続税対策で扱っています。

令和9年度の焦点——「もう決まったこと」と「これから決まること」

9月からのニュースを読むときにいちばん混乱するのが、この仕分けです。すでに法律や閣議決定で確定しているものと、これから議論するものが同じトーンで報じられるためです。2026年8月時点の整理は次のとおりです。

もう決まっている(法律成立済み・閣議決定済み)

  • 所得税の課税最低限を178万円まで特例的に引き上げ。基礎控除を4万円引き上げ、給与所得控除の最低保障額を65万円→69万円へ
  • 物価上昇に連動して基礎控除等を引き上げる仕組みそのものを創設
  • ひとり親控除を所得税38万円・住民税33万円へ拡充
  • 住宅ローン控除を見直しのうえ5年延長
  • NISAのつみたて投資枠を0〜17歳に拡充
  • 教育資金の一括贈与の非課税措置は2026年3月31日で終了
  • インボイスの2割特例終了後、個人事業者に限り納税額を売上税額の3割とする措置を令和9年・10年分の2年間
  • 自動車税等の環境性能割を2026年3月31日で廃止、軽油引取税の当分の間税率を2026年4月1日に廃止
  • 国際観光旅客税を3,000円へ。防衛特別所得税1%を令和9年1月から
  • 給付付き税額控除の基本方針(2026年8月5日 臨時閣議決定)。本格導入は2029年度

これから決まる(令和9年度の論点)

  • 食料品の消費税率1%(2027年4月から2年間)の対象品目の細目・経過措置。法案の審議はこれから
  • 給付付き税額控除の給付額・所得要件・執行体制の具体設計
  • 消費税の複数税率をどうするか(日本税理士会連合会は廃止と直接給付への転換を建議)
  • 基礎控除の上乗せ特例が令和10年分以後どうなるか
  • 自動車関係諸税の抜本的な見直し
  • 中小企業者等の法人税率の特例(15%)の適用期限
  • 各府省庁の要望内容(2026年8月末に判明

左側の「もう決まっている」項目を、施行日つきで一覧にしたのが税制改正2026まとめです。9月以降のニュースを読むときは、この一覧に載っているかどうかを最初に確認すると、要望と決定を取り違えずに済みます。

「決まった」の3段階を混同しない

報道の見出しでは同じように見えても、確度はまったく違います。①要望が出た(8月末・ほぼ確度なし)→ ②大綱に載った(12月・ほぼ確定だが条文はこれから)→ ③法律が成立した(3月・確定)。家計や事業の判断を動かしていいのは、原則として②以降です。①の段階で商品を買い替えたり、契約を前倒ししたりするのは避けてください。

民間の要望はすでに出ている——日税連の建議書

府省庁の要望より一足早く、専門家団体の要望は公表されています。日本税理士会連合会は2026年6月25日、「令和9年度税制改正に関する建議書」を決定しました。全38項目のうち、重要建議項目は9つです。

重要建議項目(令和9年度・日本税理士会連合会)
1. 取引相場のない株式の評価の適正化を図るため、所要の見直しを行うこと
2. 法人版事業承継税制(一般措置)に代えて、新たな贈与税および相続税の猶予制度を創設すること
3. 相続等により取得した非上場株式をその発行会社に譲渡した場合、当該譲渡に係る所得税を非課税とする措置を創設すること
4. 消費税の複数税率制度を廃止し、直接給付による方法とすること
5. 給付付き税額控除制度について、所得に応じたきめ細やかな給付に一本化する方法を検討すること
6. 給与支払報告書や所得税確定申告書の書式を見直し、個人住民税の賦課計算時の資料合算事務の生産性向上を実現すること
7. 中小企業者等の法人税率の特例の適用期限について延長すること
8. 雑損控除の適用につき「特定非常災害により生じた損失」については控除の順番を見直すとともに、繰戻還付制度を創設すること
9. 少子化対策について、税制面での検討を行うこと

4番と5番は、いま政府が進めている方向とぶつかる建議です。政府は2027年4月から食料品の消費税率を1%に下げる方針を決めていますが、税理士会は複数税率そのものを廃止して直接給付に一本化すべきだとしています。実務で軽減税率の区分に苦しんでいる立場からの主張で、消費税の申告実務を知っている人ほど頷く内容です。8番の雑損控除の見直しは、災害が続いた年の要望らしい項目で、現行制度の考え方は給付付き税額控除や災害関連の記事で扱っています。

個別の38項目にも、生活に近いものが並んでいます。所得税の確定申告期限の延長、準確定申告の提出期限を相続税の申告期限に合わせること、貸与型奨学金の利用者への新たな支援措置、少額減価償却資産の取得価額基準の引き上げ、医療費控除の見直しなどです。これらが12月の大綱にどれだけ残るかは、例年の実績からすると多くありません。ただし、建議書は毎年ほぼ同じ項目を繰り返し出し続けることで通ることがある種類の文書で、数年越しで実現する項目もあります。

9月からのニュースを読む3つのチェック

1. 誰の要望か

府省庁の要望なのか、業界団体・専門家団体の要望なのかで確度が違います。府省庁の要望は財務省の「税制改正要望」ページにすべて載るので、記事に出てこない細部はそこで確認できます。団体の要望は、政府内の議論に乗らないまま終わることもあります。

2. 新設か、延長か

期限が来る制度の延長要望は比較的通りやすく、まったく新しい非課税枠や税額控除の新設は通りにくいのが実際です。ただし教育資金の一括贈与のように、延長要望が却下されて終了する例もあります。「延長だから大丈夫」と決め打ちしないでください。

3. 財源が書いてあるか

減税や給付の話に財源の説明が付いているかを見ます。付いていない話は、12月に向けて縮小されるか、別の増税とセットになる可能性が高くなります。令和8年度の防衛特別所得税がまさにその形でした。

やってはいけないこと

8月末の要望や9月の観測記事を見て、契約・購入・贈与を前倒しすること。要望段階で動くと、大綱で内容が変わったときに取り返しがつきません。動くべきタイミングは、大綱が出た12月中旬以降です。

家計が年内にやること・やらなくていいこと

すでに確定している改正のうち、2026年内に手を動かす必要があるものと、12月の大綱を待っていいものを分けます。

やること期限の考え方
2026年の年末調整の書類を確認する基礎控除の引き上げは2026年分から適用される一方、毎月の源泉徴収税額表の改定は令和9年1月支払分からです。つまり2026年中の毎月の天引きは従来どおりで、12月の年末調整でまとめて精算されます。還付が例年より大きくなりやすい年です
免税事業者・2割特例を使ってきた個人事業主は、2027年分の消費税の計算方法を決める2割特例は2026年9月30日を含む課税期間で終了。個人事業者は令和9年・10年分に限り3割特例を使えますが、法人にこの措置はありません。簡易課税を選ぶなら届出の期限にも注意です(詳細
相続対策で賃貸不動産の購入を検討している人は施行日を確認する貸付用不動産の評価方法の見直しは令和9年1月1日以後に相続等により取得する財産から適用される予定です。判断は12月の大綱と法案で確定します
ふるさと納税の駆け込み返礼品と経費のルールは2026年10月から変わりますが、控除の仕組み自体は年内の寄附で完結します。要望の行方を待つ必要はありません
食料品の消費税1%を待って買い控える実施は2027年4月からの2年間で、法案の審議もこれからです。日用の食料品を買い控える意味はありません

今日やること

  1. 財務省の「税制改正要望」ページをブックマークする。8月末に令和9年度分が公開されます。報道の要約ではなく、自分に関係する府省庁の要望原文を1本だけ読んでみてください。1項目1ページの様式で、財源や適用期間まで書いてあります。
  2. 2026年の年末調整で使う控除を書き出す。基礎控除・給与所得控除の引き上げが2026年分から効き、月々の天引きは据え置きのまま12月に精算されます。生命保険料控除や住宅ローン控除の証明書を今のうちに集めておくと、還付を取りこぼしません。
  3. 期限が来る制度を使っているか棚卸しする。教育資金の一括贈与のように、要望が出ていても終わる制度があります。「◯年◯月末まで」と書かれた特例を使っているなら、12月の大綱で延長されるかを必ず確認するリストに入れてください。

ほかのアクションは手取りアップ・アクションリストへ。

よくある質問

Q. 令和9年度の税制改正要望はいつ見られますか。

A. 例年8月末に各府省庁から財務省(国税)と総務省(地方税)へ提出され、同じタイミングで財務省のウェブサイトに全項目が公開されます。令和8年度は2025年8月29日付で17府省庁から215項目が提出されました。1項目ごとに要望の内容・理由・適用期間・減収見込額が様式に沿って書かれており、報道より詳しい情報が手に入ります。

Q. 要望に出た改正は、どのくらいの確率で実現しますか。

A. 一律の数字はありませんが、期限が到来する制度の延長要望は比較的通りやすく、新設要望は通りにくい傾向があります。ただし令和8年度は、文部科学省と金融庁が3年延長を求めた教育資金の一括贈与の非課税措置が延長されずに終了しました。延長要望でも却下されることがあるため、「要望が出た=実現する」とは考えないでください。

Q. 増税の話は要望に載らないのですか。

A. ほとんど載りません。令和8年度は要望215項目に対し、廃止・縮減はわずか23項目でした。各府省庁は所管分野の後押しを求める立場なので、要望の中身は減税・拡充・延長が中心になります。増税は財源確保の観点から12月の大綱で示されるのが通例で、令和8年度も国際観光旅客税の3倍化、防衛特別所得税の創設、高所得者向け負担適正化措置の強化はいずれも大綱で初めて公になりました。

Q. 「大綱に載った」と「法律が成立した」は何が違いますか。

A. 大綱は与党と政府が決めた方針で、12月中旬に公表・閣議決定されます。これを条文にした改正法案が翌年2月に国会へ提出され、3月に成立して初めて法律になります。大綱の段階で内容が変わることは多くありませんが、条文化の過程で細部が固まるため、適用要件の細かい部分は法案・政省令まで待つ必要があります。家計の判断は大綱以降に動かすのが現実的です。

Q. 食料品の消費税1%と給付付き税額控除は、もう決まったのですか。

A. 政府は2026年8月5日の臨時閣議で制度導入の基本方針を決定しました。食料品の消費税率を2027年4月から2年間1%に引き下げ、給付付き税額控除の本格導入は2029年度とする内容です。ただし、これは方針の決定であって法律ではありません。対象品目の細目や経過措置、給付の具体的な設計はこれからの法案審議で確定します。

Q. 日本税理士会連合会の建議書は、政府の要望と何が違うのですか。

A. 建議書は税理士の専門家団体が実務の立場からまとめる要望で、政府内の意思決定プロセスには直接乗りません。令和9年度分は2026年6月25日に決定され、全38項目のうち9項目が重要建議項目です。消費税の複数税率の廃止など、政府が進めている方向と異なる主張も含まれます。ただし同じ項目を継続して出し続けることで数年越しに実現するものもあり、実務の問題点がどこにあるかを知る資料としては有用です。

参考リンク(出典)

項目数・スケジュール・改正内容は財務省および各府省庁の公表資料、日本税理士会連合会の建議書で確認しています。令和9年度の各府省庁の要望は2026年8月末に公表される予定で、内容が判明しだい本記事を更新します。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としています。税制改正は大綱・法案・政省令の各段階で内容が変わることがあり、施行日や適用要件は最終的に成立した法律で確認してください。個別の判断は税務署または税理士にご相談ください。

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公開日:2026年08月17日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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