マイクロ法人シミュレーター|国保と社会保険はどちらが安いか
個人事業主がマイクロ法人を作って役員報酬を低く設定すると、国民健康保険・国民年金から抜けて法人の社会保険に移れます。保険料は役員報酬だけで決まり、個人事業の所得は反映されません。ただし法人には維持コストがかかるので、下がった保険料がそれを上回るかどうかが判断の分かれ目です。所得・お住まいの自治体・役員報酬を入れて、年間でいくら変わるかを確かめてください。
入力した内容はブラウザの中だけで計算され、どこにも送信されません。役員報酬は期中に自由に変えられない「定期同額給与」が原則です。
何と何を比べているのか
この試算が比べているのは、社会保険料と法人の維持コストの合計です。所得税・住民税は個人事業の所得にかかったままなので、原則として変わりません(役員報酬の分は法人の経費になり、個人側では給与所得控除が使えるため、税額はわずかに動きます)。
| 今のまま(個人事業だけ) | マイクロ法人を作る | |
|---|---|---|
| 加入する制度 | 国民健康保険+国民年金 | 健康保険(協会けんぽ)+厚生年金 |
| 保険料の基礎 | 前年の所得(所得が増えると上がる) | 役員報酬だけ(個人事業の所得は無関係) |
| 家族の分 | 1人ずつ均等割がかかる | 扶養に入れれば追加負担なし |
| 上限 | 賦課限度額(医療分・支援金分・介護分・子ども分ごと) | 役員報酬を低くすれば最低等級で頭打ち |
| もらえるもの | 老齢基礎年金 | 老齢基礎年金+老齢厚生年金、傷病手当金、出産手当金 |
| かかる手間・費用 | 確定申告だけ | 設立費用、法人住民税の均等割、決算・申告、社会保険の事務 |
国民健康保険の計算式
(前年の総所得金額等 − 基礎控除43万円)× 料率 + 均等割 × 人数 + 平等割
医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40〜64歳)・子ども・子育て支援金分の区分ごとに計算し、それぞれに賦課限度額があります。料率は自治体ごとに毎年改定され、同じ所得でも住む場所で年に10万円以上変わります。
法人の社会保険料の計算式
健康保険の標準報酬月額 ×(都道府県の料率 + 子ども・子育て支援金率0.23% + 介護保険料率1.62%※)+ 厚生年金の標準報酬月額 × 18.3% + 同 × 子ども・子育て拠出金率0.36%
※介護保険料率は40〜64歳のみ加算。標準報酬月額には下限があり、健康保険は58,000円(報酬月額63,000円未満)、厚生年金は88,000円(報酬月額93,000円未満)です。役員報酬を月4万円台に下げても、厚生年金はこの88,000円を基準に計算されるため、それ以上は下がりません。この試算は会社負担分を含む全額で出しています(一人法人では会社のお金も自分のお金なので、全額で比べるのが実態に合います)。
役員報酬をゼロにすると、そもそも加入できない
「法人は作るが社会保険には入らない」という運用は可能で、違法でもありません。ただしそれは選べるものではなく、役員報酬の有無で自動的に決まります。
- 役員報酬を払う——法人は原則として社会保険の強制適用事業所なので、代表者にも加入義務が生じます。「報酬を払っているのに加入していない」は未加入の状態で、年金事務所からさかのぼって加入・徴収される可能性があります。
- 役員報酬をゼロにする——報酬が無ければ被保険者になれないため加入できず、国民健康保険・国民年金がそのまま続きます。
つまり報酬ゼロで法人を作ると、社会保険料は1円も変わらないまま、法人住民税の均等割(年7万円程度)と決算の手間だけが増えます。社会保険料の軽減を目的にするなら、報酬ゼロでは目的を達しません。取引先の要望や事業拡大など、法人化する理由がほかにある場合の選択肢です。
2026年の通知で、線はどこに引かれたか
厚生労働省は2026年3月18日と9月14日の通知で、法人の役員である個人事業主の被保険者資格の判断基準を明確にしました[厚生労働省]。見られるのは次の2点です。
- 業務が経営への参画を内容とする経常的な労務の提供にあたるか
- 報酬が業務の対価として法人から経常的に支払われているか
直接の対象になったのは、会費を払って他人の法人の名ばかり役員になる「国保逃れ」ビジネスで、38社・1万1,610人が資格を失いました。自分で設立して実際に事業を回している法人は、この射程には入りません。ただし1点目の基準は法人の役員全般に及ぶため、売上がほとんど立っていない・取引も帳簿も実質的に動いていない法人は、「法人に使用されている実態がない」と判断される余地があります。通知は、実態がないと確認された場合に資格喪失の届出を提出させることまで書いています。どこに線が引かれたのかは国保逃れ規制で自分のマイクロ法人はどうなるかで通知の原文から整理しました。
- 個人事業とは別の内容の事業を法人で営む(同じ仕事を付け替えただけの形は否認されやすい)
- 法人名義で契約・請求・入金し、帳簿を動かす
- 役員報酬は定期同額で、実際に振り込む
- 報酬に見合う労務を実際に提供する
法人を作らずに国保を下げる道もある
業種によっては、所得に関係なくほぼ定額の国民健康保険組合に移れます。文芸美術国民健康保険組合(デザイナー・文筆業など、加盟団体の会員であることが条件)、東京都芸能人国民健康保険組合、各業種の職別の組合などです。所得が大きい人ほど、所得連動の市区町村の国保より軽くなる可能性があります。
法人を作らずに済むため、設立費用・均等割・決算の手間はかかりません。加入できる組合があるかは業種と加盟団体で決まるので、まず自分の業種に組合があるかを確認する価値があります。市区町村の国保のしくみは国民健康保険料の計算にまとめています。
よくある質問
個人事業の所得が大きいと、法人の社会保険料も上がりますか?
上がりません。健康保険料と厚生年金保険料は法人から受ける役員報酬の額だけで決まり、個人事業の所得は計算に入りません。これがマイクロ法人で保険料が下がる理由そのものです。
役員報酬はいくらに設定するのが一般的ですか?
月4万〜5万円台に置く例が多く見られます。厚生年金の標準報酬月額の下限が88,000円(報酬月額93,000円未満)なので、報酬をそれ以下に下げても厚生年金保険料は下がりません。一方で報酬が低すぎると「報酬に見合う労務の提供があるか」を問われやすくなるため、実際の業務量との釣り合いが必要です。設定の考え方は役員報酬はいくらに設定するのが最適かをご覧ください。
役員報酬をゼロにして社会保険に入らないことはできますか?
できますが、報酬がゼロだと被保険者になれないため、国民健康保険・国民年金がそのまま続きます。社会保険料は変わらないまま法人住民税の均等割と決算の手間だけが増えるので、社会保険料の軽減を目的とするなら意味がありません。
配偶者や子どもも保険料が下がりますか?
健康保険の被扶養者に入れられれば、その人の分の保険料はかかりません。国民健康保険は加入人数ぶんの均等割がかかるため、家族が多いほど差が大きく出ます。ただし配偶者を被扶養者・第3号被保険者にするには収入の要件があります。
厚生年金の最低等級では、将来の年金はどれくらい増えますか?
報酬比例部分は「標準報酬月額 × 12 × 5.481/1000」で1年あたりの上乗せが計算でき、標準報酬月額88,000円なら年間およそ5,800円です。加入年数に比例するので大きな額にはなりませんが、国民年金だけの場合と違い、老齢基礎年金に上乗せされるうえ、傷病手当金・出産手当金も使えるようになります。
この試算に税金は含まれていますか?
含まれていません。比べているのは社会保険料と法人の維持コストです。個人事業の所得にかかる所得税・住民税は原則そのまま残ります。役員報酬の分は法人の経費になり、個人側では給与所得控除が使えるため税額はわずかに動きますが、この試算では考慮していません。
参考リンク(出典)
- 全国健康保険協会「令和8年度保険料額表(都道府県毎)」——健康保険料率・介護保険料率1.62%・子ども・子育て支援金率0.23%・標準報酬月額の等級
- 日本年金機構「厚生年金保険料額表」——保険料率18.3%、標準報酬月額の下限88,000円・上限650,000円
- 日本年金機構「国民年金保険料」
- 厚生労働省「法人の役員である個人事業主等に係る被保険者資格の取扱いについて」(令和8年3月18日・9月14日一部改正)
- 国税庁「No.5200 役員の給与に関するQ&A(定期同額給与)」
本ページは一般的な情報提供です。国民健康保険の料率は自治体ごとに毎年改定され、自治体独自の減免・月割・端数処理・資産割は反映していません。実際の保険料は市区町村と年金事務所の決定によります。法人設立と社会保険の加入は、実態の要件が個別に判断されます。判断の前に税理士・社会保険労務士にご確認ください。



