タンス預金・名義預金はなぜバレる?相続税調査の実態と正しい生前対策

タンス預金・名義預金はなぜバレるのか
カテゴリ:相続・贈与

「現金で持っていれば相続税はバレない」「子ども名義の口座に移しておけば大丈夫」。相続の現場で最も多い誤解です。統計は逆を示しています。相続税の実地調査では約85%で申告漏れが見つかり、漏れた財産の第1位は現金・預貯金。その典型がタンス預金と名義預金です。なぜ見つかるのか、どこからが「故人の財産」と判定されるのか、そして隠すのではなく合法的に減らす方法を解説します。

統計が示す現実

① 相続税の実地調査(令和5事務年度 8,556件)では84.2%で非違(申告漏れ等)が発見され、追徴は857億円と過去最高[国税庁]
② 申告漏れ財産の最多は現金・預貯金(構成比約3割)で、タンス預金・名義預金がその中心。
③ 税務署はKSKシステムで生前の所得・財産情報を蓄積し、調査では金融機関に過去約10年分の取引を照会できる。「生前の収入に対して遺産が少なすぎる」は即座に分析される。
④ 名義預金の判定は「名義」ではなく「誰が原資を出し、誰が管理していたか」
⑤ 正解は隠すことではなく、生前贈与(年110万円)・相続時精算課税などの正規の対策。バレた場合は重加算税35%で、節税どころか大損になる。

グレーゾーン研究

なぜバレるのか(税務署の見える範囲)

  • 生前の蓄積データ:KSKシステムには故人の過去の確定申告・源泉徴収・不動産・株式・金の売買(支払調書)・保険金などの情報が蓄積されています。「生涯収入から推計した財産」と「申告された遺産」のギャップが大きいと、調査対象に選ばれます。
  • 口座の遡及照会:調査官は金融機関へ故人と「家族」の口座の過去取引(実務上約10年分)を照会できます。死亡直前の大口出金(→タンス預金化)、家族口座への定期的な振込はここで浮かびます。
  • タンス預金の末路:現金は保管中の盗難・災害リスクに加え、使う時・預け入れる時に記録が生まれます。相続人が遺産分割でもめた際に他の相続人から申告されるケースも実務では珍しくありません。

名義預金の判定基準(名義では決まらない)

「子や孫の名義の口座」でも、次の実質で判定されます。相続税調査で最も指摘が多い論点です。

判定要素故人の財産(名義預金)とされやすい本人の財産とされやすい
原資故人が入金(収入のない専業主婦・子の高額口座)本人の収入・贈与契約済みの資金
管理通帳・印鑑・キャッシュカードを故人が保管名義人自身が保管・利用
認識名義人が口座の存在を知らない贈与を受けた認識があり自由に使える
記録贈与契約書も申告もない贈与契約書・110万円超の年の贈与税申告がある

つまり「あげたつもり」では贈与は成立していません。専業主婦の「へそくり」口座も、原資が夫の収入なら夫の相続財産と判定されるのが原則です(家計の余りの帰属は調査で頻出の争点)。

バレた場合のコスト(隠すのは割に合わない)

  • 申告漏れには過少申告加算税(10〜15%)、意図的な隠蔽と認定されれば重加算税35%(無申告なら40%)+延滞税。
  • 相続税は税率10〜55%。たとえば3,000万円のタンス預金の隠蔽が発覚すると、本税+重加算税+延滞税で隠した額の半分前後が消えることもあります。
  • 令和5事務年度は無申告事案への追徴も123億円と過去最高。「基礎控除以下のはず」という思い込みも、名義預金を足すと超えることがよくあります(基礎控除の計算)。

正しい対策(隠さず減らす)

  • 生前贈与をきちんと成立させる:贈与契約書を作り、受け取る側が管理する口座へ振込み、受贈者が自由に使える状態にする。年110万円の基礎控除内なら申告不要です(非課税枠の正しい使い方。相続前7年の持ち戻しに注意)。
  • 相続時精算課税の110万円控除(2024年〜)や、教育費の都度援助(もともと非課税)も有効。
  • すでに名義預金がある場合:相続の際に故人の財産として正しく申告するのが原則。生前に整理するなら、改めて贈与契約を結び直す方法を税理士に相談を。
  • 現金は使途と出所の記録を残す。記録こそが家族を守ります。

よくある質問

タンス預金は本当にバレるのですか?

高確率で把握されます。税務署は故人の生前の収入・資産情報を蓄積しており、死亡前の大口出金は金融機関への照会(実務上約10年分)で判明します。相続税の実地調査の84.2%で申告漏れが見つかり、その最多が現金・預貯金という統計が実態を物語っています。

子ども名義の口座に毎年振り込んできました。これは贈与になっていますか?

通帳と印鑑を親が管理し、子が口座の存在や金額を知らない場合は、贈与が成立しておらず「名義預金」として親の相続財産と判定されるのが原則です。贈与契約書を作り、子自身が管理・使用できる状態にすることが必要です。

専業主婦のへそくりも相続税の対象ですか?

原資が夫の収入であれば、原則として夫の相続財産に含めて申告する必要があります。長年の家計のやりくりで貯めた場合でも、調査では原資ベースで判定されるのが実務です。

すでにある名義預金はどうすればいいですか?

相続が発生したら、故人の財産として正しく申告に含めるのが原則です(隠すと重加算税35%)。生前であれば、改めて正式な贈与として成立させ直す・110万円の範囲で計画的に移すなどの方法があり、金額が大きい場合は税理士への相談をおすすめします。

データの出典

※本記事は制度の解説と正規の対策の紹介であり、財産の隠匿を助長するものではありません。個別の判断は税理士・税務署にご相談ください。