最低賃金と生活保護はどちらが高い|47都道府県の乖離額【2026年度】

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最終更新:2026年8月31日/本記事は厚生労働省「令和8年度地域別最低賃金額改定の目安について」、中央最低賃金審議会目安に関する小委員会の資料「生活保護と最低賃金」、厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和8年4月)」など公的資料をもとに作成しています。都道府県別の最低賃金額は答申段階のものを含み、正式な発効額・発効日は各都道府県労働局の公表でご確認ください。

先に結論から。「働くより生活保護のほうが多くもらえる」といういわゆる逆転現象は、現在すべての都道府県で起きていません。厚生労働省が中央最低賃金審議会に出している公式の比較資料では、最低賃金(税・社会保険料を引いた手取りベース)が生活保護の水準を時間額で325円〜420円上回っています。ただしこの数字は「生活扶助+住宅扶助」だけを比べたもので、医療費が自己負担ゼロになる医療扶助などは計算に入っていません。この記事では、厚労省が実際にどう比較しているのか、47都道府県それぞれの数字はいくらなのか、そして単純比較してはいけない理由までを、一次資料だけで整理します。

2026年10月、最低賃金は全国平均1,176円になる

1,176円2026年度の全国加重平均(目安)
+55円前年度からの引き上げ額(4.9%)
1,280円最高額(東京都・答申)
325円最低賃金が生活保護を上回る幅の最小(宮城・時間額)

2026年7月28日の第75回中央最低賃金審議会で、2026年度(令和8年度)の地域別最低賃金の引き上げ額の目安が答申されました。ランク別の目安はAランク54円、Bランク56円、Cランク56円で、全国加重平均では55円(4.9%)の引き上げ、金額にして1,121円から1,176円になります。

前年度の目安は66円・6.3%でしたから、額・率ともに前年を下回りました。とはいえ55円は歴史的に見れば大きな引き上げ幅で、2桁の引き上げが続く局面に変わりはありません。

この目安をもとに各都道府県の地方最低賃金審議会が審議し、都道府県労働局長が実際の金額を決めます。2026年8月末の時点で東京都は1,280円、大阪府は1,231円、北海道は1,131円と答申が出ており、多くの県で発効日は10月1日から10月下旬。徳島県と愛媛県は11月1日、京都府は11月16日と、発効日は都道府県によってばらつきがあります。8月30日時点では岩手・佐賀・熊本・沖縄の4県がまだ答申前です。

都道府県別の一覧と、同じ2026年10月に実施される社会保険の適用拡大(いわゆる106万円の壁の撤廃)との関係は、2026年10月パートの働き方が激変|最低賃金引き上げ×106万円の壁撤廃で詳しく扱っています。

そもそも、なぜ最低賃金と生活保護を比べるのか

この比較は世間話ではなく、法律が求めているものです。最低賃金法第9条第3項は、地域別最低賃金を定めるにあたって、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう、「生活保護に係る施策との整合性に配慮するものとする」と定めています。

この条文は2007年の最低賃金法改正で入りました。当時、一部の都道府県では最低賃金でフルタイムに近く働いても、手取りが生活保護の水準を下回るという状態が実際に生じていたためです。これが逆転現象と呼ばれるものです。

逆転現象は「働く意欲」の問題として語られがちですが、法律の立て付けはむしろ逆です。最低賃金法は、生活保護を基準として引き下げるためではなく、最低賃金が最低限度の生活を下回らないようにするための下限として生活保護水準を参照しています。比較の目的は「保護を減らすこと」ではなく「賃金の底を上げること」です。

この整合性を確認するため、厚生労働省は毎年、中央最低賃金審議会の目安に関する小委員会に「生活保護と最低賃金」という資料を提出し、都道府県ごとの比較結果を公表しています。以下で扱うのは、その最新版の数字です。

厚労省はどうやって比べているのか

「生活保護のほうが得か」を論じる記事は多いのですが、比較の前提を書いていないものがほとんどです。厚労省の計算方法は資料に明記されているので、まずそこを押さえます。

生活保護側(月額)

生活扶助基準(第1類費+第2類費+期末一時扶助費)の人口加重平均 + 住宅扶助の実績値

※ 生活扶助基準は18〜19歳の単身世帯のもの。冬季加算を含めて算出

最低賃金側(月額)

最低賃金額 × 173.8時間 × 0.824

※ 173.8時間は月の労働時間。0.824は、時間額951円で月173.8時間働いた場合の税・社会保険料を考慮した「可処分所得の総所得に対する比率」

ポイントは3つあります。

1つめは、最低賃金側が手取りベースだということ。0.824という係数を掛けて、所得税・住民税・社会保険料を引いた後の金額で比べています。額面のまま比べているわけではありません。この比率は前年の0.807から0.824に上がりました。2024年分の所得税・住民税の定額減税(所得税3万円、個人住民税所得割額1万円)が反映されたためです。

2つめは、生活保護側が「生活扶助+住宅扶助」に限られていること。生活保護には8種類の扶助(生活・教育・住宅・医療・介護・出産・生業・葬祭)がありますが、比較に使われているのは生活扶助と住宅扶助の2つだけです。

3つめは、比較に使うデータの年度がずれていること。最新の資料では、生活保護のデータは2024年度、最低賃金のデータは2025年度のものが使われています。生活保護基準の確定に時間がかかるためで、最低賃金の引き上げのほうが先に反映される形になります。

47都道府県すべてで、最低賃金が生活保護を上回っている

結果から言うと、乖離額はすべての都道府県でマイナスでした。ここでいう乖離額は「生活保護水準 − 最低賃金(手取りベース)」を時間額に換算したもので、マイナスは最低賃金が生活保護を上回っていることを意味します。逆転現象が起きていれば、プラスの県が出てきます。

たとえば東京都の乖離額はマイナス365円です。これは「最低賃金で働いたときの手取りが、生活保護の水準を1時間あたり365円上回っている」と読みます。月173.8時間に換算すると、およそ6万3千円ぶんの差です。

下の表は、厚労省資料の「都道府県ごとの最低賃金と生活保護水準との乖離額変動の要因分析」から、最新の乖離額(2024年度の生活保護データに2025年度の最低賃金を反映したもの)を、差が小さい順に並べたものです。上にあるほど、最低賃金と生活保護の水準が近いことになります。

都道府県乖離額都道府県乖離額
宮城−325円北海道−330円
青森−341円岡山−342円
山形−349円愛媛−352円
埼玉−354円沖縄−354円
新潟−355円京都−355円
秋田−356円兵庫−357円
岩手−358円広島−359円
福島−361円奈良−361円
香川−362円福岡−362円
東京−365円鳥取−367円
石川−368円長崎−371円
高知−372円宮崎−374円
千葉−375円和歌山−375円
栃木−376円静岡−377円
熊本−379円鹿児島−379円
群馬−380円岐阜−382円
滋賀−382円福井−384円
島根−384円佐賀−387円
長野−388円大分−388円
富山−392円神奈川−394円
大阪−395円山口−399円
山梨−403円茨城−410円
愛知−411円三重−416円
徳島−420円

出典:厚生労働省「生活保護と最低賃金(中央最低賃金審議会目安に関する小委員会 資料No.3)」。生活保護は2024年度、最低賃金は2025年度のデータ。マイナスは最低賃金が生活保護水準を上回る幅(時間額)。色を付けた行は差が小さい上位6県。

差がもっとも小さいのは宮城県の325円、もっとも大きいのは徳島県の420円でした。かつて逆転が生じていた東京・神奈川・大阪といった大都市部も、いまはそれぞれ365円・394円・395円の余裕があります。

注意したいのは、この余裕は最低賃金が上がったから生まれたものだという点です。厚労省は乖離額の変動要因も分解して示していて、たとえば宮城県の場合、前年から79円ぶん差が広がったうち65円は最低賃金の引き上げ、15円は可処分所得比率が0.807から0.824に上がったこと(=定額減税)によるものでした。定額減税は2024年分限りの措置なので、この15円ぶんは来年以降の資料では逆方向に動く可能性があります。

生活保護の「最低生活費」は実際いくらか

乖離額だけだと実感が湧かないので、生活保護の側の金額も見ておきます。厚生労働省「生活保護制度における生活扶助基準額の算出方法(令和8年4月)」の基準額から、20〜40歳の単身世帯で計算するとこうなります。

内訳1級地-1
(東京都区部など)
3級地-2
(地方の町村など)
生活扶助基準(第1類)46,930円38,950円
生活扶助基準(第2類)27,790円27,790円
特例加算(1人あたり)1,500円1,500円
経過的加算200円0円
生活扶助の小計76,420円68,240円
住宅扶助(上限・実費)53,700円40,900円
最低生活費の目安130,120円109,140円

厚生労働省の基準額表から編集部が算出した概算。単身・障害や母子の加算なし・冬季加算を除いた場合。住宅扶助は上限額で、実際は支払った家賃の実費が上限の範囲内で支給される。

これを最低賃金と並べるとこうなります。東京都の2026年度の答申額1,280円で月173.8時間働き、手取り率0.824を掛けた場合です。

最低賃金(東京・手取り)約183,300円
生活保護(1級地-1・単身)約130,100円

差は月およそ5万3千円です。ただし、ここで話を終わらせると読み違えます。

生活保護は「収入がゼロの人にこの金額を配る制度」ではありません。収入がある場合は、最低生活費から収入を差し引いた差額だけが支給されます。月13万円の最低生活費の地域で10万円の収入があれば、支給されるのは残りの3万円です。上の比較は「最低生活費という基準線の高さ」を並べたものであって、受給者が働く人より多く受け取っているという意味ではありません。

それでも単純比較できない、3つの理由

冒頭で触れたとおり、厚労省の比較は生活扶助と住宅扶助だけを見ています。実際の生活水準を比べるなら、次の3点を差し引いて考える必要があります。

理由1:医療費と介護費が計算に入っていない

生活保護には医療扶助があり、指定医療機関での診療は原則として自己負担がありません。介護が必要な場合の介護扶助も同様です。持病があって毎月通院している人にとって、この差は数千円から数万円になります。一方、最低賃金で働く人は健康保険料を払ったうえで3割の窓口負担を負い、高額になったときに高額療養費制度で戻してもらう形になります。比較表の「差5万3千円」には、この医療の差がまったく含まれていません。

理由2:住宅扶助は「上限」であって「もらえる額」ではない

住宅扶助は実際に支払っている家賃・地代が上限の範囲内で支給されるものです。家賃3万円の部屋に住んでいれば支給は3万円で、東京の上限53,700円との差額が現金で手に入るわけではありません。最低生活費の表は上限で計算しているので、実際の受給額はこれより低くなる世帯が多いことになります。

理由3:比較の対象が18〜19歳の単身世帯である

厚労省の乖離額の計算に使われている生活扶助基準は18〜19歳の単身世帯のものです。世帯人数が増えれば最低生活費は上がりますし、障害者加算・母子加算・児童養育加算がつく世帯ではさらに変わります。逆に働く側も、扶養する家族がいれば必要な生活費は増えます。単身のモデルケースで出た差が、そのまま子育て世帯に当てはまるわけではありません。

「働いたほうが得か、生活保護のほうが得か」という問いの立て方自体に無理があります。生活保護は日本国憲法第25条の生存権にもとづく制度で、資産・能力・扶養・他制度の活用をすべて試したうえでなお最低生活費に届かない場合に、足りない分だけを補うものです。所得を比べて有利・不利を判断する性質の制度ではありません。

2026年、生活保護には2つの大きな動きがある

動き1:最高裁判決を受けた追加給付(申し出は2027年7月末まで)

2025年(令和7年)6月27日、最高裁判所は、2013年から段階的に行われた生活扶助基準の引き下げのうちデフレ調整について「厚生労働大臣の判断の過程及び手続に過誤、欠落があった」として違法と判断しました。これを受けて、国と自治体は過去にさかのぼった追加給付を行っています。

項目内容
対象2013年8月〜2018年9月に生活保護を受給していた全世帯。2018年10月〜2026年3月の受給世帯のうち一定期間の入院・入所者、障害加算対象者、期末一時扶助の受給者も対象
金額生活扶助基準の「新たな水準」と「従来の水準」の差額にもとづく。加算率は2013年8月〜2014年3月が0.8%、2014年4月〜2015年3月が1.6%、2015年4月以降が2.4%
いま受給中の世帯申し出は不要。自治体が順次支給する
いま受給していない世帯当時受給していた自治体への申し出が必要
申し出の期間2026年8月1日〜2027年7月31日

見落としやすいのは「現在は生活保護を受けていない人も対象になる」点です。過去に受給していて今は自立しているという場合、自分から申し出ないと支給されません。期限は2027年7月31日で、厚生労働省が専用の相談センターを設けています。

動き2:2026年10月から特例加算が2,500円に

物価高への対応として2023年度から続いている生活扶助の特例加算は、2025年10月に1人あたり月1,000円から1,500円へ引き上げられました。さらに2026年10月からは1,000円上乗せして月2,500円とする方針が示されています。単身世帯なら、上の表の生活扶助の小計が1,000円増える計算です。実施時期と金額の確定は厚生労働省の告示によるため、最新は公式の発表でご確認ください。

生活保護を受けながら働くと、収入はどうなるか

「働くと保護費が同額減るので働き損になる」と言われることがありますが、正確ではありません。就労収入には勤労控除があり、収入のうち一定額は収入として認定されずに手元に残ります。

勤労控除には基礎控除・新規就労控除・未成年者控除の3つがあります。中心になる基礎控除は収入額に比例して増える仕組みで、就労収入が増えれば控除額も増えます。したがって働いた分だけ世帯の手取り総額は増える設計になっています。ただし控除額は収入額・世帯構成・地域によって変わるため、具体的な金額は福祉事務所のケースワーカーに確認する必要があります。

比較すべきなのは「保護か労働か」ではなく、制度の組み合わせです。最低賃金で働く世帯でも、収入が基準以下なら住民税非課税世帯として各種の給付・減免の対象になります。国民健康保険料の軽減、高額療養費の自己負担限度額の引き下げ、自治体独自の給付金などが該当します。手取りを上げる打ち手は手取りアップ・アクションリストにまとめています。

今日やること

  1. 自分の都道府県の2026年度の最低賃金額と発効日を確認する。10月1日の県もあれば11月16日の京都のような県もあります。発効日をまたぐ月の給与は、日割りで新旧の単価が混ざるため、明細の確認が必要です。
  2. 過去に生活保護を受給していた人は、追加給付の対象か確認する。2013年8月〜2018年9月に受給していれば対象です。現在受給していない場合は自分から申し出る必要があり、期限は2027年7月31日です。
  3. 収入が最低生活費に近い世帯は、住民税非課税世帯の判定ラインを確認する。保険料の軽減や給付の対象になる可能性があります。

よくある質問

最低賃金が生活保護を下回っている県は本当に1つもないのですか。

厚生労働省が中央最低賃金審議会に提出した最新の資料では、47都道府県すべてで乖離額がマイナス、つまり最低賃金(税・社会保険料を引いた手取りベース)が生活保護の水準を上回っています。幅は宮城県の325円から徳島県の420円までです。ただしこれは生活扶助と住宅扶助だけを比べた数字で、医療扶助や介護扶助は含まれていません。

乖離額の「325円」や「420円」は月額ですか、時間額ですか。

時間額です。厚労省の資料では、生活保護の月額を月173.8時間で割って時間額に換算し、最低賃金額に可処分所得比率0.824を掛けた金額と比較しています。宮城県の325円を月額に直すと、およそ5万6千円の差ということになります。

なぜ生活保護のデータが2024年度で、最低賃金が2025年度なのですか。

生活保護の実績値(特に住宅扶助の実績)は確定までに時間がかかるため、比較時点で使える最新のデータが1年前のものになるからです。最低賃金は毎年10月に改定されるため、より新しい数字が反映されます。結果として、最低賃金の引き上げが先に反映され、乖離額はやや大きめに出る傾向があります。

生活保護を受けながらアルバイトをすると、その分だけ保護費が減りますか。

全額が減るわけではありません。就労収入には勤労控除(基礎控除・新規就労控除・未成年者控除)があり、一定額は収入として認定されずに手元に残ります。基礎控除は収入額に比例して増えるため、働いた分だけ世帯全体の手取りは増える仕組みです。具体的な控除額は世帯構成や地域で異なるので、担当のケースワーカーにご確認ください。

過去に生活保護を受けていましたが、今は受けていません。追加給付はもらえますか。

条件を満たせば対象になります。2013年8月から2018年9月までに受給していた世帯は、現在受給していなくても対象です。ただし現在受給していない場合は自分から申し出る必要があり、当時受給していた自治体に連絡します。申し出の期間は2026年8月1日から2027年7月31日までです。

参考リンク(出典)

本記事は税金・社会保障制度に関する一般的な情報提供を目的としたもので、個別の受給可否や金額を判断するものではありません。生活保護の申請・受給に関する個別のご相談はお住まいの自治体の福祉事務所へ、給与や最低賃金に関するご相談は各都道府県労働局・労働基準監督署へお問い合わせください。

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公開日:2026年08月31日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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