国税職員の不祥事2026|1.5億円詐取・259件漏えいと納税者の自衛策

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カテゴリ:制度・ニュース

2026年8月7日、国税当局で不祥事が相次いでいることが報じられました。調査先の資産家から約1億5,000万円を受け取って競艇につぎ込み懲戒免職になった25歳の事務官、納税者259件分の情報を詐欺電話の相手にLINEで送ってしまった実査官、無届けの兼業で処分を受けた職員——当局幹部は「前例のない悪質な不祥事が次々と起きている」とコメントしています。ただ、この報道を読んで納税者が本当に受け取るべきなのは憤りではなく、「では自分はどう身を守るのか」という実務です。何が起きたのかを事実として整理したうえで、今日からできる3つの自衛策と、おかしいと思ったときの公式な相談窓口までまとめます。

何が起きたのか——報道された3つの事案

茨城・竜ケ崎税務署

調査先から1.5億円、競艇へ

25歳の男性事務官が調査対象の資産家女性から約1億5,000万円を受領。「実家に仕送りしている」などとうそをつき、修正申告書の誤りを口実に約85万円を詐取した疑いも。懲戒免職のうえ詐欺容疑で書類送検、所得税法違反で検察に告発。

埼玉県内の税務署

無届けの兼業

20代の女性職員が、届出のない兼業とSNSで知り合った相手からの金銭の受領で計約230万円を得ていた。減給処分を受け、その後退職。国家公務員には兼業の制限があります。

大阪国税局

納税者情報259件が流出

30代の男性課税実査官が、県警を装う詐欺電話に言われるまま、法人・個人名や申告額など259件をLINEで送信。停職処分後に辞職。漏えいした納税者のもとには実際に詐欺電話がかかってきた。

3件目がいちばん怖い理由

1件目と2件目は「職員個人の非行」ですが、3件目は無関係な納税者259件が被害者になっています。しかも漏えいの入口は職員自身が詐欺電話に引っかかったこと。つまりあなたの申告内容が、あなたに落ち度がなくても外に出る可能性があるということです。この記事の後半は、ここへの対処に紙幅を割きます。

数字で見る——国税庁の懲戒処分は年37人

人事院の「令和7年における懲戒処分の状況」によると、2025年中に懲戒処分を受けた一般職の国家公務員は249人(前年より36人減)。府省別では次のとおりです。

法務省60人
国税庁37人
海上保安庁31人
国土交通省26人
厚生労働省18人

出典:人事院「令和7年における懲戒処分の状況について」(令和8年3月公表)

国税庁は法務省に次ぐ2番目ですが、これは職員数が多い組織ほど件数も増えるためでもあります。国税組織の定員は約5万6,000人(令和7年3月の財務省定員規則改正時点)。37人という数字は、この規模に対して約0.07%です。前年比では6人減っています。

数字を「安心材料」にも「攻撃材料」にもしない

0.07%という割合は「ほとんどの職員は真面目に働いている」ことを示す一方、あなたを担当する1人がその1人でない保証にはなりません。確率が低いからと備えないのも、報道1本で税務行政全体を断罪するのも、どちらも実益がありません。大事なのは「起きたときにどうするか」を知っておくことです。

自衛策① 調査官に個人的にお金を渡す場面は、存在しない

竜ケ崎の事案では、調査対象だった納税者が職員に多額の現金を渡していました。ここで押さえておくべき原則はひとつです。

正しい納税の流れ

税金は納付書・口座振替・ダイレクト納付・クレジットカード・スマホアプリ・コンビニなどで、国庫(国)に納めます。金融機関や税務署の窓口、e-Taxを経由するのが原則で、領収証書や納付情報が必ず残ります

絶対にない流れ

調査官が現金を直接受け取る職員個人の口座を指定する「立て替えておく」と言う。これらは制度上あり得ません。求められた時点で、その相手が本物の職員かどうかにかかわらず応じてはいけません。

渡した側にもリスクがあります。公務員の職務に関して金品を渡せば刑法198条の贈賄罪(3年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金)に問われ得ますし、「便宜を図ってもらおうとした」と受け取られれば、その後の調査でも不利にしかなりません。納付方法の全体像は税金のキャッシュレス納付にまとめています。

身分証の提示を求めてよい

税務調査に来る職員は、質問検査の際に身分証明書を携帯し、提示する義務があります(国税通則法74条の13)。「見せてください」と言うのは失礼でも何でもなく、正当な確認です。所属署・氏名・連絡先を控え、不安なら一度その税務署の代表番号にかけ直して在籍を確かめてください。

自衛策② 「税務署」「警察」を名乗る連絡の見分け方

大阪の事案は、職員自身が詐欺電話に引っかかったのが発端でした。そして漏えいした納税者のところには、その情報を使った詐欺電話が実際にかかってきています。プロですら騙されるのですから、見分け方は「話の内容」ではなく「連絡手段」で判断するのが確実です。

連絡の形本物かどうか
SMS(ショートメッセージ)にURLが貼ってある偽物。国税庁はSMSにURLを記載した案内を送りません
SMS・メール・LINEで「未納の税金」「差押え予告」偽物。国税庁は納付の求めや差押えをこれらの手段で通知しません
電話で口座番号・暗証番号を聞かれる偽物。ATMの操作を指示されるのも同様
電話で「還付金があるのでATMへ」偽物。還付金の受取にATM操作は不要
書面(封書)が届く/署員が来訪する本物の可能性あり。ただし必ず署の代表番号にかけ直して確認
かけ直す番号は「相手が言った番号」ではなく、自分で調べた番号

詐欺の常套手段は、折り返し先として偽の番号を伝えることです。国税庁サイトの税務署所在地一覧から自分で番号を調べてかけ直してください。この一手間だけで、上の表のほとんどのパターンは防げます。

個人情報が漏れた形跡がある、身に覚えのない連絡が続く、という場合は、警察相談専用電話(#9110)と、次に説明する税務署側の窓口の両方に相談してください。

自衛策③ おかしいと思ったら「納税者支援調整官」——匿名でよく、無料

意外と知られていませんが、国税庁には納税者からの苦情や不満を専門に受ける職員が置かれています。2001年7月に設置された「納税者支援調整官」です。

  • 何を相談できるか:税務署・国税局・国税庁の事務に関する苦情、不満、心配ごと。調査官の言動、手続きの進め方、対応の是非など
  • どう相談するか:電話・面談・文書・メール。匿名でも受け付けられます
  • どこにいるか:各国税局(沖縄は国税事務所)と一部の税務署。自分の署にいない場合でも、内容によって国税局・国税庁に引き継がれます
  • 費用:かかりません
「苦情」と「不服申立て」は別のルート

納税者支援調整官に言えるのはやり方・態度・手続きへの苦情です。一方、更正処分や決定処分そのものに納得できない場合は、権利救済の手続きに乗せる必要があります。両者は目的が違うので、混同すると期限を逃します。

不満の中身行き先期限
調査官の態度、説明不足、手続きの進め方納税者支援調整官(苦情)期限なし
処分そのものに納得できない(第1段階)税務署長等への再調査の請求、または国税不服審判所への審査請求処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内
再調査の結果にも納得できない(第2段階)国税不服審判所への審査請求決定の通知を受けた日の翌日から1か月以内
裁決にも納得できない(第3段階)裁判所への訴訟裁決の通知を受けた日の翌日から6か月以内

税務調査そのものの流れと、調査官とのやり取りで押さえるべき点は税務調査のリアルで解説しています。

税務職員の守秘義務は、一般の公務員の2倍重い

大阪の情報漏えいで「処分は停職どまりか」と感じた方もいるかもしれません。ただ法律上は、税務職員には二重の守秘義務がかかっており、罰則は一般の国家公務員より重く設定されています。

根拠対象罰則
国家公務員法100条1項(違反は109条12号)すべての国家公務員1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
国税通則法127条国税の調査・徴収に従事している者、していた者2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金

※ 2025年6月1日施行の改正刑法により「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。条文の表記も改められています。

ポイントは「従事していた者」も対象という点です。退職しても守秘義務は消えません。また、税務職員の守秘義務は納税者の情報を守るための制度なので、反面調査(取引先への確認)で「あなたの申告内容そのもの」を先方に伝えることも本来できません。もし調査官が取引先に対して自分の申告内容を話していたと分かった場合は、納税者支援調整官への相談対象になります。

皮肉な論点——競艇の払戻金は、あなたにも課税される

竜ケ崎の事案でもうひとつ見落とせないのが、脱税の中身が「競艇の払戻金の申告漏れ」だったことです。報道によれば、2023年から2025年の3年間で競艇の払戻金など計約3億3,400万円を申告せず、約1億3,500万円を脱税した疑いがあるとされています。

ギャンブルの払戻金は「当たった分」に課税される

公営競技の払戻金は原則として一時所得です。ここでいちばん誤解が多いのが必要経費の範囲で、差し引けるのは「当たった舟券・馬券の購入代金」だけ。外れ券は原則として控除できません(営利目的の継続的行為と認められる例外的なケースを除く)。年間の払戻金が大きいと、手元に残っていなくても税金だけが残ります。詳しくはギャンブルの税金で解説しています。

税を執行する側の人間が同じルールで摘発されたということは、裏を返せばこのルールに例外はないということでもあります。無申告に心当たりがある方は、調査で指摘される前に自主的に申告するほうが加算税は軽く済みます(無申告からの復帰)。過去の脱税事例から見えるパターンは脱税のリスクにまとめています。

今日やること

今日やること

  1. スマホの連絡先に、自分の管轄税務署の代表番号を登録しておく(折り返し先を自分で持つのが最大の防御)
  2. 税務署・国税庁を名乗るSMSやメールが来ても、URLをタップしないと家族で決めておく
  3. 調査を受ける予定がある人は、身分証の提示を求めること、現金を直接渡す場面は存在しないことを頭に入れておく
  4. すでに対応に納得できないことがあるなら、納税者支援調整官に匿名で相談してみる(無料)

ほかのアクションは手取りアップ・アクションリストへ。

よくある質問

Q. 自分の申告内容が漏れていないか確認する方法はありますか?

A. 納税者側から能動的に確認する仕組みはありません。漏えいが判明した場合は当局から連絡が来るのが原則です。身に覚えのない業者から自分の売上や申告額を前提にした連絡が来た、といった具体的な兆候があるときは、納税者支援調整官と警察相談専用電話(#9110)の両方に相談してください。

Q. 調査官の態度に納得できません。どこに言えばいいですか?

A. 納税者支援調整官が窓口です。電話・面談・文書・メールで受け付けており、匿名でも相談できます。無料です。ただし、処分そのものに不服がある場合は別ルートで、再調査の請求または審査請求を処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内に行う必要があります。期限があるので混同しないでください。

Q. 税務署を名乗る電話が本物か見分けるには?

A. 内容で判断せず、連絡手段で判断してください。国税庁はSMSにURLを記載した案内を送らず、納付の求めや差押えについてSMS・メール・LINEで通知することもありません。電話で口座番号や暗証番号を聞く、ATMの操作を指示することもありません。確認は、相手が伝えた番号ではなく、自分で調べた税務署の代表番号にかけ直して行います。

Q. 調査官に現金や手土産を渡してもいいのですか?

A. 税金を職員に直接渡す場面は制度上ありません。納付は納付書・口座振替・ダイレクト納付・クレジットカード・スマホアプリ・コンビニなどで国に対して行い、記録が残ります。公務員の職務に関して金品を渡せば刑法198条の贈賄罪(3年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金)に問われ得るため、渡した側もリスクを負います。

Q. 税務職員が情報を漏らしたら、どんな罰則がありますか?

A. 国税の調査・徴収に従事している者、していた者が事務に関して知り得た秘密を漏らしたり盗用したりした場合、国税通則法127条により2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金です。一般の国家公務員の守秘義務違反(国家公務員法100条1項・109条12号/1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)より重く、退職後も対象になります。

Q. 国税庁の不祥事は増えているのですか?

A. 人事院の公表資料では、2025年中に懲戒処分を受けた国税庁職員は37人で、前年より6人減っています。一般職の国家公務員全体では249人(前年比36人減)で、府省別では法務省の60人に次ぐ2番目でした。ただし職員数が多い組織ほど件数も増えるため、国税組織の定員約5万6,000人に対しては約0.07%にあたります。件数の多寡とは別に、内容の悪質さを当局幹部が問題視している、というのが今回の報道の趣旨です。

参考リンク(出典)

本記事の事案概要は時事通信の報道に基づき、制度・統計・法令は公的機関の公表資料で確認しています。捜査・司法手続きが進行中の事案については、報道時点の内容であり、確定した事実ではありません。

※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の個人・組織を非難する意図はありません。報道された事案について、刑事責任は裁判で確定するまで推定無罪が原則です。個別の税務上の判断は税務署または税理士にご相談ください。

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「はい」が多い記事から、優先的に内容を更新・深掘りしていきます。

公開日:2026年08月08日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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