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- 職員の非行に加えて、国税の組織としての不祥事を追記(9月のシステム更改後にe-Taxで他人の贈与税申告書79人分が閲覧可能になった件、会計検査院が指摘した税務署の徴収不足3億7,972万円、2023年の延滞税の過大徴収など)。自衛策に「税務署の処理も確かめる」を追加
2026年は、国税の不祥事が職員個人の非行と組織の失敗の両方で続いています。職員では、調査先の資産家から約1億5,000万円を受け取って競艇につぎ込み懲戒免職になった25歳の事務官や、納税者259件分の情報を詐欺電話の相手にLINEで送ってしまった実査官が報じられました。組織の側では、9月24日の国税システムの更改直後に、e-Taxで他人の贈与税申告書が見られる状態になり(79人分)、会計検査院からは税務署の徴収漏れ3億7,972万円を指摘されています。何が起きたのかを一次情報で整理し、納税者が取れる4つの自衛策と公式の相談窓口をまとめます。
職員の不祥事——報道された3つの事案
調査先から1.5億円、競艇へ
25歳の男性事務官が調査対象の資産家女性から約1億5,000万円を受領。「実家に仕送りしている」などとうそをつき、修正申告書の誤りを口実に約85万円を詐取した疑いも。懲戒免職のうえ詐欺容疑で書類送検、所得税法違反で検察に告発。
無届けの兼業
20代の女性職員が、届出のない兼業とSNSで知り合った相手からの金銭の受領で計約230万円を得ていた。減給処分を受け、その後退職。国家公務員には兼業の制限があります。
納税者情報259件が流出
30代の男性課税実査官が、県警を装う詐欺電話に言われるまま、法人・個人名や申告額など259件をLINEで送信。停職処分後に辞職。漏えいした納税者のもとには実際に詐欺電話がかかってきた。
1件目と2件目は「職員個人の非行」ですが、3件目は無関係な納税者259件が被害者になっています。しかも漏えいの入口は職員自身が詐欺電話に引っかかったこと。つまりあなたの申告内容が、あなたに落ち度がなくても外に出る可能性があるということです。この記事の後半は、ここへの対処に紙幅を割きます。
組織の不祥事——システム障害・徴収漏れ・取り過ぎ
職員個人の非行とは別に、国税庁・国税局・税務署という組織の側の失敗も続いています。国税庁と会計検査院が公表したもの、業界紙が国税庁の発表として報じたものを並べます。
| 時期 | 何が起きたか | 規模 |
|---|---|---|
| 2026年9月24〜25日 | e-Taxのシステム改修の不具合で、マイページから他人の贈与税申告書が見られる状態に | 79人分の申告書(贈与者・税理士を含め203人分の個人情報)。実際に見た可能性があるのは19人 |
| 2026年9月24日〜 | 国税システムの更改後、税務署窓口の手続(現金の受け取り・納税証明書の交付など)に遅れ。ネットバンキングでの手数料納付も約5日間できなかった | 窓口の遅れは10月19日の更新時点でも続いている |
| 2026年10月6〜13日 | e-Taxの「振替納税結果表示」に、口座から引き落とし済みなのに「振替不能」と表示 | 表示の誤りで、納付は完了していた。13日に解消 |
| 2025年11月(会計検査院) | 60税務署が、申告書の誤りの見過ごしなどで税金を取り漏らしていた | 納税者106人・113事項で3億7,972万円の徴収不足。取り過ぎも1件63万円 |
| 2025年11月(会計検査院) | ストック・オプションで、申告漏れの可能性が高い人のデータを持ちながら確認していなかった | 適格分73人(譲渡の対価13億965万円)、非適格分34人(経済的利益41億5,321万円) |
| 2023年1月 | 新型コロナで延ばした贈与税の期限を、延長前の日付で計算して延滞税を取り過ぎた | 354税務署・延べ約2,100人から約516万円 |
職員の非行と違い、組織の失敗はあなたに落ち度がなくても起きます。誤りは「取り漏れ」と「取り過ぎ」の両方向にあります。会計検査院に指摘された徴収不足は、全額が後から徴収決定されました。申告が受理されたことは、内容が正しいと認められたことを意味しません。
ストック・オプションの件は、負担の公平という点でも引っかかります。会社員の給与は源泉徴収で毎月差し引かれ、漏れる余地がほとんどありません。一方で国税庁は、ストック・オプションの調書を受け取っていながら、申告漏れの可能性が高い人の確認をしていませんでした。指摘を受けて、国税庁は2025年8月にデータの使い方を各税務署へ指示し直しています。
数字で見る——職員の懲戒処分は年37人
人事院の「令和7年における懲戒処分の状況」によると、2025年中に懲戒処分を受けた一般職の国家公務員は249人(前年より36人減)。府省別では次のとおりです。
出典:人事院「令和7年における懲戒処分の状況について」(令和8年3月公表)
国税庁は法務省に次ぐ2番目ですが、これは職員数が多い組織ほど件数も増えるためでもあります。国税組織の定員は約5万6,000人(令和7年3月の財務省定員規則改正時点)。37人という数字は、この規模に対して約0.07%です。前年比では6人減っています。なお、この数字は職員個人の処分だけで、上のシステム障害や徴収漏れのような組織の誤りは含みません。
0.07%という割合は「ほとんどの職員は真面目に働いている」ことを示す一方、あなたを担当する1人がその1人でない保証にはなりません。確率が低いからと備えないのも、報道1本で税務行政全体を断罪するのも、どちらも実益がありません。大事なのは「起きたときにどうするか」を知っておくことです。
自衛策① 調査官に個人的にお金を渡す場面は、存在しない
竜ケ崎の事案では、調査対象だった納税者が職員に多額の現金を渡していました。ここで押さえておくべき原則はひとつです。
正しい納税の流れ
税金は納付書・口座振替・ダイレクト納付・クレジットカード・スマホアプリ・コンビニなどで、国庫(国)に納めます。金融機関や税務署の窓口、e-Taxを経由するのが原則で、領収証書や納付情報が必ず残ります。
絶対にない流れ
調査官が現金を直接受け取る、職員個人の口座を指定する、「立て替えておく」と言う。これらは制度上あり得ません。求められた時点で、その相手が本物の職員かどうかにかかわらず応じてはいけません。
渡した側にもリスクがあります。公務員の職務に関して金品を渡せば刑法198条の贈賄罪(3年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金)に問われ得ますし、「便宜を図ってもらおうとした」と受け取られれば、その後の調査でも不利にしかなりません。納付方法の全体像は税金のキャッシュレス納付にまとめています。
税務調査に来る職員は、質問検査の際に身分証明書を携帯し、提示する義務があります(国税通則法74条の13)。「見せてください」と言うのは失礼でも何でもなく、正当な確認です。所属署・氏名・連絡先を控え、不安なら一度その税務署の代表番号にかけ直して在籍を確かめてください。
自衛策② 「税務署」「警察」を名乗る連絡の見分け方
大阪の事案は、職員自身が詐欺電話に引っかかったのが発端でした。そして漏えいした納税者のところには、その情報を使った詐欺電話が実際にかかってきています。プロですら騙されるのですから、見分け方は「話の内容」ではなく「連絡手段」で判断するのが確実です。
| 連絡の形 | 本物かどうか |
|---|---|
| SMS(ショートメッセージ)にURLが貼ってある | 偽物。国税庁はSMSにURLを記載した案内を送りません |
| SMS・メール・LINEで「未納の税金」「差押え予告」 | 偽物。国税庁は納付の求めや差押えをこれらの手段で通知しません |
| 電話で口座番号・暗証番号を聞かれる | 偽物。ATMの操作を指示されるのも同様 |
| 電話で「還付金があるのでATMへ」 | 偽物。還付金の受取にATM操作は不要 |
| 書面(封書)が届く/署員が来訪する | 本物の可能性あり。ただし必ず署の代表番号にかけ直して確認 |
詐欺の常套手段は、折り返し先として偽の番号を伝えることです。国税庁サイトの税務署所在地一覧から自分で番号を調べてかけ直してください。この一手間だけで、上の表のほとんどのパターンは防げます。
個人情報が漏れた形跡がある、身に覚えのない連絡が続く、という場合は、警察相談専用電話(#9110)と、後で説明する税務署側の窓口の両方に相談してください。
自衛策③ 税務署の処理も確かめる——取り漏れも取り過ぎも起きる
組織の誤りへの備えは、税務署やe-Taxから届いた結果を自分でも確かめることです。
- e-Taxの表示は通帳で裏を取る:振替納税の誤表示のように、画面が間違うことがあります。引き落としの有無は預貯金の通帳や明細で確かめます
- 通知の金額が合わないときは「お問い合わせ番号」を伝える:9月24日以降、税務署からの通知には13桁の番号が印字されています。電話でこの番号を伝えると、どの通知の話かがすぐ伝わります
- 取り過ぎに気づいたら更正の請求:納めすぎた税金は、法定申告期限から5年以内なら更正の請求で取り戻せます。延滞税の過大徴収のような税務署側の計算の誤りなら、所轄の税務署に問い合わせます
- 自分の誤りに気づいたら、指摘を待たずに修正申告:税務署が見過ごしても、後から会計検査院の検査や税務調査で見つかれば、不足分に延滞税を加えて納めることになります。税務調査の事前通知の前に自分から修正申告すれば、過少申告加算税はかかりません
修正申告と更正の請求の違いは修正申告と更正の請求、振替納税の引き落とし日は振替納税の振替日にまとめています。
自衛策④ おかしいと思ったら「納税者支援調整官」——匿名でよく、無料
意外と知られていませんが、国税庁には納税者からの苦情や不満を専門に受ける職員が置かれています。2001年7月に設置された「納税者支援調整官」です。
- 何を相談できるか:税務署・国税局・国税庁の事務に関する苦情、不満、心配ごと。調査官の言動、手続きの進め方、対応の是非など
- どう相談するか:電話・面談・文書・メール。匿名でも受け付けられます
- どこにいるか:各国税局(沖縄は国税事務所)と一部の税務署。自分の署にいない場合でも、内容によって国税局・国税庁に引き継がれます
- 費用:かかりません
納税者支援調整官に言えるのはやり方・態度・手続きへの苦情です。一方、更正処分や決定処分そのものに納得できない場合は、権利救済の手続きに乗せる必要があります。両者は目的が違うので、混同すると期限を逃します。
| 不満の中身 | 行き先 | 期限 |
|---|---|---|
| 調査官の態度、説明不足、手続きの進め方 | 納税者支援調整官(苦情) | 期限なし |
| 処分そのものに納得できない(第1段階) | 税務署長等への再調査の請求、または国税不服審判所への審査請求 | 処分の通知を受けた日の翌日から3か月以内 |
| 再調査の結果にも納得できない(第2段階) | 国税不服審判所への審査請求 | 決定の通知を受けた日の翌日から1か月以内 |
| 裁決にも納得できない(第3段階) | 裁判所への訴訟 | 裁決の通知を受けた日の翌日から6か月以内 |
税務調査そのものの流れと、調査官とのやり取りで押さえるべき点は税務調査のリアルで解説しています。
税務職員の守秘義務は、一般の公務員の2倍重い
大阪の情報漏えいで「処分は停職どまりか」と感じた方もいるかもしれません。ただ法律上は、税務職員には二重の守秘義務がかかっており、罰則は一般の国家公務員より重く設定されています。
| 根拠 | 対象 | 罰則 |
|---|---|---|
| 国家公務員法100条1項(違反は109条12号) | すべての国家公務員 | 1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
| 国税通則法127条 | 国税の調査・徴収に従事している者、していた者 | 2年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
※ 2025年6月1日施行の改正刑法により「懲役」「禁錮」は「拘禁刑」に一本化されました。条文の表記も改められています。
ポイントは「従事していた者」も対象という点です。退職しても守秘義務は消えません。また、税務職員の守秘義務は納税者の情報を守るための制度なので、反面調査(取引先への確認)で「あなたの申告内容そのもの」を先方に伝えることも本来できません。もし調査官が取引先に対して自分の申告内容を話していたと分かった場合は、納税者支援調整官への相談対象になります。
皮肉な論点——競艇の払戻金は、あなたにも課税される
竜ケ崎の事案でもうひとつ見落とせないのが、脱税の中身が「競艇の払戻金の申告漏れ」だったことです。報道によれば、2023年から2025年の3年間で競艇の払戻金など計約3億3,400万円を申告せず、約1億3,500万円を脱税した疑いがあるとされています。
公営競技の払戻金は原則として一時所得です。ここでいちばん誤解が多いのが必要経費の範囲で、差し引けるのは「当たった舟券・馬券の購入代金」だけ。外れ券は原則として控除できません(営利目的の継続的行為と認められる例外的なケースを除く)。年間の払戻金が大きいと、手元に残っていなくても税金だけが残ります。詳しくはギャンブルの税金で解説しています。
税を執行する側の人間が同じルールで摘発されたということは、裏を返せばこのルールに例外はないということでもあります。無申告に心当たりがある方は、調査で指摘される前に自主的に申告するほうが加算税は軽く済みます(無申告からの復帰)。過去の脱税事例から見えるパターンは脱税のリスクにまとめています。
よくある質問
Q. 自分の申告内容が漏れていないか確認する方法はありますか?
A. 納税者側から能動的に確認する仕組みはありません。漏えいが判明した場合は当局から連絡が来るのが原則です。身に覚えのない業者から自分の売上や申告額を前提にした連絡が来た、といった具体的な兆候があるときは、納税者支援調整官と警察相談専用電話(#9110)の両方に相談してください。
Q. e-Taxで贈与税申告書が見られる状態になった79人に、自分が入っているかはどう分かりますか?
A. 個人情報が見られた可能性がある人には、国税局または税務署の職員が個別に連絡し、経緯の説明と謝罪をしていると報じられています。連絡を装った詐欺もあり得るので、電話を受けたら、国税庁サイトで自分で調べた所轄の税務署の代表番号にかけ直して確かめてください。
まとめ
- 2026年に報じられた職員の不祥事は、調査先からの約1億5,000万円の受領、無届けの兼業、納税者情報259件の流出
- 組織の側でも、9月のシステム更改後にe-Taxで他人の贈与税申告書79人分が見られる状態になり、会計検査院は税務署の徴収漏れ3億7,972万円を指摘した
- 2025年の国税庁の懲戒処分は37人で、定員約5万6,000人の約0.07%。組織の誤りはこの数字に含まれない
- 調査官に直接お金を渡す場面は制度上ない。税務署や警察を名乗る連絡は、内容でなく連絡の手段で判断する
- 税務署の処理も確かめる。取り過ぎは5年以内なら更正の請求で戻り、苦情は納税者支援調整官に匿名・無料で相談できる
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参考リンク(出典)
本記事の事案概要は時事通信・税のしるべの報道に基づき、制度・統計・法令は公的機関の公表資料で確認しています。捜査・司法手続きが進行中の事案については、報道時点の内容であり、確定した事実ではありません。
※ 本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の個人を非難する意図はありません。報道された事案について、刑事責任は裁判で確定するまで推定無罪が原則です。個別の税務上の判断は税務署または税理士にご相談ください。













