電子帳簿保存法をわかりやすく|電子取引データ保存の義務化と対応方法

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  • 令和7年度改正の「デジタルシームレス保存」(重加算税10%加重の適用除外・令和9年1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から)と青色申告特別控除75万円(令和9年分以後/書面申告は10万円)を新セクションとして追加。3区分の表記を国税庁パンフレットの「希望者のみ/法人・個人事業者は対応が必要」に合わせ、電子取引の定義・真実性/可視性の要件表・帳簿書類の保存期間表(法人7年・10年/白色/青色)を追加。猶予措置に「所轄税務署長が相当の理由があると認める場合」「事前届出不要」を補記。出典=国税庁 令和8年6月パンフレット(0026006-122.pdf)、令和7年4月パンフレット(0025003-097_01.pdf)、国税庁告示第2号(0025003-096_01.pdf)、届出書ページ(0026001-065_01.htm)、制度の概要(jirei/02.htm)、令和6年11月パンフレット(0024011-003_01.pdf)、青色申告特別控除案内(0026007-003_02.pdf)、タックスアンサー No.5930/No.2080/No.2070

電子帳簿保存法(電帳法)は、帳簿や請求書などの国税関係の書類を電子データで保存するときのルールを定めた法律です。とくに「電子取引データ保存」は2024年1月から義務になり、すべての個人事業主・法人が対象です。とはいえ、小規模な事業者はやることはシンプル。この記事では「結局なにをすればいいのか」を、国税庁の出典つきでわかりやすく整理します。

なにをすればいいか

① 電帳法には3つの制度。「電子帳簿等保存」「スキャナ保存」は任意、「電子取引データ保存」だけが義務(2024年1月〜)[国税庁]。
② 義務なのは、メールやネットで受け取った/送った請求書・領収書・注文書などの「電子データ」。これをデータのまま保存する(紙に印刷して保存だけ、はNG)。
③ 必要なのは(A)改ざん防止と(B)検索できる状態。
④ 基準期間の売上5,000万円以下なら検索要件は不要。さらに「相当の理由」がある場合の猶予措置もある[国税庁]。
⑤ 2027年(令和9年)1月から、一定の要件を満たすシステムで送受信・保存した電子取引データは重加算税10%加重の対象外になり、個人事業者の青色申告特別控除は75万円に上がる(どちらもあらかじめ届出書が必要)[国税庁 令和8年6月]。

実務・電帳法

3区分の整理:義務か任意か

区分対象国税庁の表記
① 電子帳簿等保存会計ソフト等で作った帳簿・決算書をデータ保存希望者のみ(任意)
② スキャナ保存紙で受け取った領収書・請求書をスキャン保存希望者のみ(任意)
③ 電子取引データ保存データで授受した請求書・領収書・注文書等法人・個人事業者は対応が必要(2024年1月〜)

国税庁のパンフレットも、①②は「希望者のみ」、③だけを「法人・個人事業者は対応が必要」と書き分けています[国税庁 令和8年6月]。つまり、紙でもらった領収書はこれまでどおり紙のまま保存してOK(スキャンは任意)。義務化されたのは③だけです[国税庁 制度概要]。

③の根拠は電子帳簿保存法7条です。所得税(源泉徴収に係る所得税を除く)と法人税の保存義務者は、電子取引を行った場合、一定の要件の下でその取引情報に係る電磁的記録を保存しなければなりません[国税庁 制度概要]。

義務の「電子取引」とは?

請求書・領収書・注文書・契約書などを電子データでやりとりしたものが「電子取引」です。国税庁の定義は、注文書・契約書・送り状・領収書・見積書などに通常記載される取引情報の授受を電磁的方式により行う取引。企業間のデータ交換取引、インターネットによる取引、電子メール(添付ファイルを含む)での授受、ウェブサイトを通じた授受などが含まれます[国税庁 制度概要]。たとえば次のようなものです。

  • メールにPDFで届いた請求書・領収書
  • Amazon・楽天などネット通販の購入履歴・領収書(ダウンロードするもの)
  • クレジットカードや交通系ICの利用明細(Web)、各種クラウドサービスの請求書

これらは2024年1月から、データのまま保存することが必要です。2023年末までは「紙に印刷して保存」も認められていましたが、その経過措置(宥恕措置)は終了しました[国税庁]。

保存に必要な2つの要件

(A) 改ざん防止(真実性)

次のいずれか1つを満たせばOKです[国税庁]。

  • タイムスタンプを付与する
  • 訂正・削除の履歴が残る(または訂正削除できない)システムで保存する
  • 「事務処理規程」を定めて運用する(国税庁がWordのひな形を公開。コストゼロで対応できる最も手軽な方法)

(B) 検索できる状態(可視性)

原則、①取引年月日・金額・取引先で検索/②日付や金額の範囲指定/③2項目以上の組み合わせ、で検索できるようにします[国税庁]。ファイル名を「20260610_5万円_〇〇商事」のように統一し、表計算ソフトで索引を作る方法でも対応できます。

要件満たし方
真実性の確保
(いずれか1つ)
タイムスタンプが付与されたデータを受領する/受領後すみやかにタイムスタンプを付与する/訂正削除の履歴が残る(または訂正削除ができない)システムで授受・保存する/改ざん防止のための事務処理規程を策定・運用し備え付ける
可視性の確保ディスプレイ・プリンタ等を備え付ける+「日付・金額・取引先」で検索できるようにする(範囲指定・組合せ検索も必要。ただしダウンロードの求めに応じられるならこの2つは不要)

なお基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、ダウンロードの求めに応じられるようにしていれば、検索要件そのものを満たす必要がありません[国税庁 令和8年6月]。

小規模事業者の負担軽減(特例・猶予)

  • 検索要件の免除:基準期間(2年(期)前)の売上高が5,000万円以下の事業者は、税務職員のダウンロードの求めに応じられるなら、検索要件を満たさなくてよい[国税庁 令和8年6月]。
  • 猶予措置(恒久):保存要件に従えなかったことについて所轄税務署長が「相当の理由」があると認める場合で、かつ税務調査の際に①データのダウンロードの求めと②プリントアウトした書面の提示・提出の求めの両方に応じられるときは、改ざん防止・検索の要件を満たさなくてもデータを保存しておくだけでよいとされています[国税庁 令和6年11月]。事前の届出は不要で、「人手不足」「システム整備の資金不足」「システム整備が間に合わない」なども相当の理由として認められます[国税庁 令和6年11月]。

多くの個人事業主・小規模法人は、「データを決まったルールでフォルダ保存し、事務処理規程を備えておく」だけで実務上は足ります。

帳簿・書類はいつまで保存する?

保存期間は法人と個人、青色と白色で違います。電帳法の要件を満たしてデータで保存する場合も、期間はこの表のとおりです。

区分保存期間
法人帳簿とその事業年度の取引に関して作成・受領した書類を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間。青色欠損金が生じた事業年度、青色申告書を提出しなかった事業年度で災害損失金額が生じた事業年度は10年間[国税庁 No.5930]
個人・白色申告法定帳簿7年/任意帳簿5年/棚卸表などの決算関係書類5年/請求書・納品書・送り状・領収書などの書類5年[国税庁 No.2080]
個人・青色申告帳簿・書類は原則として7年間。ただし「書類によっては5年間でよいものもあります」とされ、請求書・見積書・納品書・送り状などが5年でよい書類にあたります[国税庁 No.2070]
期間とは別に、データ保存の義務がかかる

上の保存期間とは別に、電子取引データをデータのまま保存する義務は、法人・個人(青色・白色)や事業規模を問わずかかります。紙に印刷したものだけを保存期間のあいだ持っていても、要件は満たしません[国税庁 制度概要]。

対応しないとどうなる?

電子取引データを適切に保存していないと、青色申告の承認取消しの対象になり得るほか、仮装・隠ぺいがあった場合は重加算税が10%加重されるなどのリスクがあります。国税庁は加重の理由を、電子取引データは紙の書類を保存する場合に比べて「複製・改ざん行為が容易で、その痕跡が残りにくい」ためと説明しています[国税庁 令和8年6月]。とはいえ、保存要件を満たせない「相当の理由」がある場合は前述の猶予措置があるため、まずはデータを消さずに残し、ルールを決めて整理することが第一歩です[国税庁]。

2027年1月から:重加算税10%加重の除外と青色75万円(デジタルシームレス保存)

令和7年度税制改正で、請求書などのデータを自動で保存し帳簿に自動連携する仕組みに対応した制度が電子帳簿保存法に新設されました。通称「デジタルシームレス保存」です。一定の要件を満たして電子取引データを送受信・保存すれば、その電子取引データに関連する隠蔽・仮装行為は重加算税10%加重の適用対象から除外されます[国税庁 令和7年4月]。

いつから

重加算税10%加重の適用除外は令和9年(2027年)1月1日以後に法定申告期限が到来する国税について、青色申告特別控除の上乗せは令和9年分以後の所得税について適用されます[国税庁 令和7年4月]。

3つの要件

要件内容(国税庁の表記)
① 改ざん防止の確保データの送受信と保存を、訂正削除履歴が残るシステム又は訂正削除ができないシステムで行う
② 記帳の適正性確保電子取引データの金額の訂正削除を行った上で電子帳簿に記録することができないこと(又は訂正削除の事実を確認できるようにしておくこと)
③ 電子帳簿との相互関連性確保電子取引データと電子帳簿との関連性を相互に確認することができるようにしておくこと

国税庁は「デジタルシームレス保存は、電子取引データ保存の要件を満たしていることが前提です」としています[国税庁 令和8年6月]。いまの義務に対応していることが出発点です。

対象になるデータは2種類だけ

使うのは「国税庁長官が定める基準に適合するシステム」です。その基準は国税庁告示第2号(令和7年3月31日)で定められ、令和9年1月1日から適用されます[国税庁 告示第2号]。対象になる電子取引データは次の2つです。

  • デジタル庁が管理する仕様に従って送受信されたデジタルインボイス(仕様は「Invoice JP PINT」または「JP Self-Billing」。国際規格 Peppol で流通する請求データ)[国税庁 令和8年6月]
  • 預貯金口座における決済データ(金融機関等が預金者・貯金者の委託を受けて行う、その口座の資金を移動させる為替取引の取引情報)[国税庁 告示第2号]

あらかじめ届出書を出しておく

優遇を受けるには、あらかじめ届出書の提出が必要です[国税庁 令和7年4月]。正式名称は「電子取引の取引情報に係る電磁的記録に係る重加算税の加重措置の不適用の特例及び75万円の青色申告特別控除(個人事業者)の適用を受ける旨の届出書」です[国税庁 届出書]。

提出期限は、適用を受ける年分(事業年度)の法定申告期限まで。個人事業者が令和8年分からデジタルシームレス保存の優遇を受けたい場合は、令和9年3月15日までに届出書を提出します[国税庁 令和8年6月]。すでに優良な電子帳簿で青色申告特別控除65万円の適用を受けている場合は、改めて届出書を出さなくても75万円の適用が受けられます[国税庁 令和8年6月]。

青色申告特別控除は令和9年分から75万円

令和8年度改正で、青色申告特別控除の上限が65万円から75万円に引き上げられました。適用は令和9年分以後の所得税からです[国税庁 令和8年6月]。75万円の要件は、65万円の控除の要件に加えて、①優良な電子帳簿の保存 または ②デジタルシームレス保存を満たすことです[国税庁 青色申告特別控除]。

区分令和8年分まで令和9年分以後
65万円の要件+優良な電子帳簿またはデジタルシームレス保存65万円75万円
書面で申告する場合の上限55万円10万円

書面申告の上限が下がる点は見落としやすいところです。国税庁も「令和8年分の確定申告までは、書面申告でも55万円の青色申告特別控除が適用可能でしたが、令和9年分以降は、書面申告の場合の控除上限額は10万円となります」と明記しています[国税庁 青色申告特別控除]。なお現金主義による所得計算の特例を受けている場合は、65万円・75万円の控除は受けられません(10万円は可能)[国税庁 青色申告特別控除]。

よくある質問

紙でもらった領収書もスキャンが必要?

いいえ。紙で受け取った書類は、これまでどおり紙のまま保存して構いません(スキャナ保存は任意)。義務化されたのは「データで授受した電子取引」の保存だけです。

メールのPDF請求書を印刷して保存ではダメ?

2024年1月以降は、電子取引データは「データのまま」保存する必要があります。印刷した紙だけの保存は原則認められません(ただし相当の理由がある場合の猶予措置があります)。

個人事業主も対象ですか?

対象です。法人・個人事業主を問わず、電子取引を行うすべての事業者が対象です。ただし基準期間の売上5,000万円以下なら検索要件は不要など、小規模者の負担軽減措置があります。

お金をかけずに対応できますか?

できます。改ざん防止は国税庁がひな形を公開している「事務処理規程」を備えれば対応でき、保存はファイル名のルールを決めてフォルダ管理すればよいため、無料の方法でも要件を満たせます。

2027年1月から何が変わりますか?

令和9年(2027年)1月1日以後に法定申告期限が到来する国税から、「デジタルシームレス保存」の要件を満たして送受信・保存した電子取引データは、隠蔽・仮装があっても重加算税10%加重の対象から外れます。あわせて個人事業者の青色申告特別控除は令和9年分以後65万円から75万円になります。どちらもあらかじめ届出書の提出が必要で、対象データはデジタル庁の仕様に従うデジタルインボイスと預貯金口座の決済データに限られます。

データの出典

※本記事は一般的な情報提供であり、税務上の助言ではありません。要件の適用や個別の判断は事情により異なるため、対応の前に国税庁の特設サイトや税務署・税理士にご確認ください。

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最終更新:2026年09月22日 / 公開日:2026年06月10日 / 執筆:みんなの税金 編集部

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