法人の方

法人のための税金ガイド

中小企業・一人法人オーナーが押さえておきたい節税・申告のポイントを解説します。

法人税の仕組み・役員報酬の設定・経費活用・役員退職金・消費税決算対策まで、法人ならではの節税戦略を網羅しています。

🏢 法人税の仕組みと税率

法人が支払う税金は「法人税」だけではありません。法人税・法人住民税・法人事業税の3種類が組み合わさり、実際の税負担(実効税率)は所得の約33〜34%になります。中小法人には軽減税率が適用されます。

利益1,000万円に対する税金の内訳(中小法人・標準的なケース)
法人税 15%(800万円以下の部分)
法人住民税 法人税額 × 約17%+均等割
法人事業税 所得 × 3.5〜7%
手取り 約67〜68%

中小法人の法人税率(資本金1億円以下)

課税所得の区分法人税率備考
年800万円以下の部分15%中小法人の軽減税率(特例)
年800万円超の部分23.2%通常税率
法人住民税(標準)法人税額 × 17.3% + 均等割均等割は最低7万円/年
法人事業税(標準)3.5〜7%(所得割)400万円・800万円で税率が変わる
実効税率の目安33〜34%(中小法人・東京都標準)
📌 個人事業主との実効税率の比較

個人事業主は所得税(最高45%)+住民税(10%)+国民健康保険で高所得になると税負担が急増します。売上・所得が一定水準を超えたら、法人化(法人成り)による節税効果が出やすくなります。目安は年収・所得が600〜800万円超のケースです。

📐 計算式(法人税の概算)
法人税 = 課税所得 × 税率(15% or 23.2%)

※ 課税所得 = 益金(収益)- 損金(費用・損失)。役員報酬・経費は損金として課税所得を下げます。

📊 計算例:課税所得1,000万円の中小法人(東京都、標準税率)の税額
法人税(800万円 × 15%)1,200,000円
法人税(200万円 × 23.2%)464,000円
法人住民税(法人税額 × 17.3% + 均等割)約295,000円
法人事業税(概算)約380,000円
合計税負担約2,339,000円
実効税率約23.4%(800万円以下の部分は有利)🏢
💡 課税所得を800万円以下に抑えると軽減税率(15%)が最大限に適用され、税負担を抑えられます。

💴 役員報酬の最適化

オーナー社長が役員報酬を受け取ることで、法人の課税所得を下げながら個人側の給与所得控除も活用できます。法人税と個人の所得税・住民税の合計を最小化する報酬額を設定することが重要です。

❌ 全額法人留保のケース
会社の利益
1,500万円
法人税・住民税・事業税
495万円(実効33%)
内部留保
約1,005万円
VS
✅ 役員報酬を活用するケース
会社の利益
1,500万円
↓ 役員報酬800万円を損金に
法人課税所得
700万円 → 法人税約175万円
↓ 個人は給与所得控除が使える
法人税+個人税の合計
大幅に圧縮 💡
⚠️ 役員報酬の「定期同額給与」ルール

役員報酬を損金(経費)にするには、事業年度開始から3ヶ月以内に金額を決定し、毎月同額を支払う必要があります(定期同額給与)。年途中で理由なく変更すると変更分が損金不算入になります。

報酬額と税率の目安(独身・社会保険含む)

役員報酬(年収)給与所得控除所得税+住民税の目安社会保険料(本人分)
400万円134万円約39万円約60万円
600万円164万円約76万円約80万円
800万円190万円約124万円約93万円
1,000万円195万円約182万円約105万円
1,200万円195万円約251万円約105万円

※ 概算値。配偶者控除・扶養控除などの状況により異なります。

📐 最適化のポイント
最適報酬 = 法人税の節税額個人の追加税負担+社会保険料 となる水準

※ 一般的に年収800万〜1,000万円付近が、法人税と個人税の合計が最小になりやすい水準とされます(状況により異なる)。

📊 計算例:利益1,500万円の会社・役員報酬800万円に設定した場合
役員報酬前の利益15,000,000円
役員報酬(損金)− 8,000,000円
法人の課税所得7,000,000円
法人税等(実効約30%)約2,100,000円
個人の所得税+住民税約1,240,000円
法人+個人の合計税負担約3,340,000円(vs 全額留保:約4,950,000円)💴
💡 役員報酬を適切に設定することで、全額留保より 約160万円 節税できる計算になります。

🧾 法人で経費にできるもの

法人は個人事業主よりも損金(経費)として認められる範囲が広いのが特徴です。社宅・日当・生命保険など、法人ならではの経費活用で課税所得を効果的に下げられます。

✅ 法人の主な損金(経費)
  • 役員報酬・給与・賞与
  • 社会保険料(会社負担分)
  • 事務所・店舗の家賃
  • 社宅の家賃(法人名義で借り上げ)
  • 出張日当(規程に基づく)
  • 交際費(中小法人は年800万円まで全額)
  • 生命保険料(損金算入できる種類)
  • 車両費(社用車)
  • 減価償却費・修繕費
  • 税理士・弁護士費用
❌ 損金にならないもの(主な例)
  • 法人税・法人住民税(損金不算入)
  • 役員への賞与(事前確定届出なし)
  • 過大役員報酬(不相当に高額な部分)
  • オーナーの個人的な生活費
  • 寄附金(一定額を超える部分)
  • 交際費(大企業は飲食費50%以上が不算入)
  • 罰科金・交通反則金

法人ならではの3大経費活用

🏠
社宅の活用

法人名義で物件を借り、役員・従業員に賃料相当額の一定割合で転貸。法人は家賃全額を経費計上でき、個人の給与課税を最小化できます。

家賃20万円の物件 → 本人負担3〜5万円 → 法人が差額15〜17万円を経費に
✈️
出張日当

旅費規程を作成し、役員・従業員に出張日当を支給。受け取った日当は非課税(所得税なし)で、法人側は全額損金にできます。

役員日当5,000円 × 出張100日 = 50万円が非課税かつ全額損金
🍽️
交際費の800万円枠

中小法人(資本金1億円以下)は年間800万円まで交際費を全額損金に算入できます(大企業は飲食費の50%のみ)。

年800万円の交際費 × 実効税率33% = 最大264万円の節税効果
📐 損金算入の基本原則
課税所得 = 益金(収益)損金(費用・損失)

※ 損金が増えるほど課税所得が下がり、法人税が減ります。ただし「事業に関係した支出」である必要があります。

📊 計算例:社宅+日当の組み合わせで節税した場合
社宅(月16万円を法人経費に)× 12ヶ月1,920,000円
出張日当(5,000円×100日)500,000円
追加損金合計2,420,000円
節税効果(実効税率33%)約798,600円 🧾
💡 社宅は役員個人の手取りを増やす効果もあります(家賃を法人負担にする分、役員報酬を下げられる)。

🎁 役員退職金の活用

役員退職金は法人にとって全額損金(経費)になり、受け取った役員側は退職所得として優遇税率が適用されます。生涯で最大の節税機会のひとつです。

💰
退職金を受け取る
法人が役員退職金を支払う
→ 法人側は全額損金算入
📉
退職所得控除を差し引く
勤続年数に応じた
大きな控除額を差し引く
÷2
2分の1課税
残った金額をさらに
半分にして課税所得を計算
📊
所得税・住民税
大幅に圧縮された課税所得に
税率をかける

退職所得控除額の計算

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数(最低80万円)
20年超800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年)
勤続10年
400万円
勤続20年
800万円
勤続25年
1,150万円
勤続30年
1,500万円
勤続35年
1,850万円
📐 計算式
退職所得 = (退職金退職所得控除額) × 1/2

※ この退職所得に対して通常の所得税・住民税の税率をかけます。他の所得と分離して計算(分離課税)。

※ 功績倍率方式:退職時の役員報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率(2〜3倍)が損金算入の目安。

📊 計算例:勤続25年・退職金3,000万円を受け取った場合
退職金30,000,000円
退職所得控除(800万+70万×5年)− 11,500,000円
2分の1課税× 1/2
課税退職所得9,250,000円
所得税+住民税(概算)約2,700,000円
実質税負担率約9%(通常の給与なら30〜40%相当)🎁
💡 同じ3,000万円を給与として受け取ると税負担は約1,000万円超。退職金にすることで 700〜800万円の節税 になります。

🧾 消費税・インボイス制度

法人設立後2事業年度は原則として消費税が免税になります(資本金1,000万円未満の場合)。ただし設立時の資本金や特定期間の売上によっては、初年度から課税事業者になることがあります。

🏢
法人設立時の
資本金は?
1,000万円未満
設立1期目・2期目は
原則 免税事業者
※ 特定期間(前事業年度の前半6ヶ月)の売上・給与が1,000万円超の場合は課税
1,000万円以上
設立1期目から
課税事業者
消費税の申告・納付が必要

3期目以降の課税・免税の判定

判定基準内容判定に使う期間
基準期間の売上高1,000万円超 → 課税事業者2年前の事業年度
特定期間の売上・給与両方1,000万円超 → 課税事業者前事業年度の前半6ヶ月
インボイス登録登録すれば免税でも課税事業者に登録日以降
📌 法人設立時のインボイス・消費税の判断ポイント
  • BtoB取引が多い場合:取引先がインボイス(適格請求書)を求めるケースが多いため、早期に登録を検討。
  • BtoC取引中心の場合:一般消費者は仕入税額控除を気にしないため、免税期間を最大限に活用できる。
  • 2割特例(〜2026年9月):免税事業者がインボイス登録を機に課税事業者になった場合、納税額を売上消費税の20%に軽減できる特例あり。
📐 消費税の計算式(本則課税)
納税額 = 売上にかかる消費税仕入・経費にかかる消費税

※ 簡易課税(前々事業年度の課税売上5,000万円以下):納税額 = 売上消費税 × (1 − みなし仕入率)

📊 計算例:設立2年目(免税)→ 3年目(課税)で売上2,200万円(税込)の場合
1・2期目(免税)の消費税負担0円
3期目以降・売上消費税(2,200万円 × 10/110)2,000,000円
仕入消費税(経費880万円 × 10/110)− 800,000円
納付消費税1,200,000円 🧾
💡 免税期間中に設備投資や資金繰り準備をしておくと、3期目以降の消費税納付に備えられます。

📊 決算対策・節税チェック

決算月が近づいたら、利益を圧縮できる手を打てるかどうか確認しましょう。決算の1〜3ヶ月前から動くことが重要です。決算日を過ぎると多くの対策は間に合いません。

決算3ヶ月前〜
📋
利益・損金の確認と計画
  • 利益の着地予測を試算し、節税余地を把握する
  • 役員報酬変更の検討(次期の決算月から)
  • 小規模企業共済の掛金増額申請
  • 生命保険(損金算入タイプ)の加入検討
決算1ヶ月前〜
⚙️
費用の前倒し・資産の確認
  • 修繕費・消耗品の購入(使用する見込みがあるもの)
  • 広告宣伝費・外注費の前払い計上
  • 不良在庫・不良債権の評価損・貸倒処理
  • 30万円未満の備品購入(少額減価償却の特例)
  • 未払費用(給与・顧問料等)の計上漏れチェック
決算月中
📝
最終確認と経理処理
  • 役員賞与(事前確定届出給与)の支払い
  • 棚卸資産の実地棚卸・評価
  • 固定資産の減価償却費の計算
  • 貸付金・借入金の整理
  • 税理士と最終税額の試算・確認

繰越欠損金の活用

💡 赤字は10年間繰り越せる

法人の赤字(欠損金)は最大10年間、翌年以降の利益から差し引くことができます(繰越控除)。設立初期の赤字は必ず申告して記録しておきましょう。また、前事業年度の黒字に当期の赤字を繰り戻して還付を受ける「繰戻還付」制度(中小法人のみ)もあります。

📐 繰越欠損金の控除計算
当期の課税所得 = 当期の所得繰越欠損金(最大10年分)

※ 中小法人は所得の100%まで控除可能(大企業は50%まで)。

📊 計算例:前期赤字300万円・当期黒字800万円の場合
当期の所得8,000,000円
前期からの繰越欠損金− 3,000,000円
当期の課税所得5,000,000円
繰越控除なしの法人税(800万×15%)1,200,000円
繰越控除ありの法人税(500万×15%)750,000円
繰越欠損金による節税効果450,000円 📊
💡 赤字でも必ず法人税の申告をすること。申告しないと繰越欠損金が使えなくなります。