法人のための税金ガイド
中小企業・一人法人オーナーが押さえておきたい節税・申告のポイントを解説します。
法人税の仕組みと税率
法人税・住民税・事業税の構造と実効税率の計算。
基礎役員報酬の最適化
法人と個人の税負担を合算して最も有利な報酬額を設定する。
節税法人で経費にできるもの
社宅・日当・交際費など、法人特有の経費活用術。
経費役員退職金の活用
退職所得の優遇で法人→個人への大きな節税を実現。
退職金消費税・インボイス制度
設立2年の免税期間と課税事業者選択の判断基準。
消費税決算対策・節税チェック
決算前にできる節税アクションを時期別に整理。
決算🏢 法人税の仕組みと税率
法人が支払う税金は「法人税」だけではありません。法人税・法人住民税・法人事業税の3種類が組み合わさり、実際の税負担(実効税率)は所得の約33〜34%になります。中小法人には軽減税率が適用されます。
中小法人の法人税率(資本金1億円以下)
| 課税所得の区分 | 法人税率 | 備考 |
|---|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 15% | 中小法人の軽減税率(特例) |
| 年800万円超の部分 | 23.2% | 通常税率 |
| 法人住民税(標準) | 法人税額 × 17.3% + 均等割 | 均等割は最低7万円/年 |
| 法人事業税(標準) | 3.5〜7%(所得割) | 400万円・800万円で税率が変わる |
| 実効税率の目安 | 約33〜34%(中小法人・東京都標準) | |
個人事業主は所得税(最高45%)+住民税(10%)+国民健康保険で高所得になると税負担が急増します。売上・所得が一定水準を超えたら、法人化(法人成り)による節税効果が出やすくなります。目安は年収・所得が600〜800万円超のケースです。
※ 課税所得 = 益金(収益)- 損金(費用・損失)。役員報酬・経費は損金として課税所得を下げます。
💴 役員報酬の最適化
オーナー社長が役員報酬を受け取ることで、法人の課税所得を下げながら個人側の給与所得控除も活用できます。法人税と個人の所得税・住民税の合計を最小化する報酬額を設定することが重要です。
1,500万円
約495万円(実効33%)
約1,005万円
1,500万円
700万円 → 法人税約175万円
大幅に圧縮 💡
役員報酬を損金(経費)にするには、事業年度開始から3ヶ月以内に金額を決定し、毎月同額を支払う必要があります(定期同額給与)。年途中で理由なく変更すると変更分が損金不算入になります。
報酬額と税率の目安(独身・社会保険含む)
| 役員報酬(年収) | 給与所得控除 | 所得税+住民税の目安 | 社会保険料(本人分) |
|---|---|---|---|
| 400万円 | 134万円 | 約39万円 | 約60万円 |
| 600万円 | 164万円 | 約76万円 | 約80万円 |
| 800万円 | 190万円 | 約124万円 | 約93万円 |
| 1,000万円 | 195万円 | 約182万円 | 約105万円 |
| 1,200万円 | 195万円 | 約251万円 | 約105万円 |
※ 概算値。配偶者控除・扶養控除などの状況により異なります。
※ 一般的に年収800万〜1,000万円付近が、法人税と個人税の合計が最小になりやすい水準とされます(状況により異なる)。
🧾 法人で経費にできるもの
法人は個人事業主よりも損金(経費)として認められる範囲が広いのが特徴です。社宅・日当・生命保険など、法人ならではの経費活用で課税所得を効果的に下げられます。
- 役員報酬・給与・賞与
- 社会保険料(会社負担分)
- 事務所・店舗の家賃
- 社宅の家賃(法人名義で借り上げ)
- 出張日当(規程に基づく)
- 交際費(中小法人は年800万円まで全額)
- 生命保険料(損金算入できる種類)
- 車両費(社用車)
- 減価償却費・修繕費
- 税理士・弁護士費用
- 法人税・法人住民税(損金不算入)
- 役員への賞与(事前確定届出なし)
- 過大役員報酬(不相当に高額な部分)
- オーナーの個人的な生活費
- 寄附金(一定額を超える部分)
- 交際費(大企業は飲食費50%以上が不算入)
- 罰科金・交通反則金
法人ならではの3大経費活用
法人名義で物件を借り、役員・従業員に賃料相当額の一定割合で転貸。法人は家賃全額を経費計上でき、個人の給与課税を最小化できます。
旅費規程を作成し、役員・従業員に出張日当を支給。受け取った日当は非課税(所得税なし)で、法人側は全額損金にできます。
中小法人(資本金1億円以下)は年間800万円まで交際費を全額損金に算入できます(大企業は飲食費の50%のみ)。
※ 損金が増えるほど課税所得が下がり、法人税が減ります。ただし「事業に関係した支出」である必要があります。
🎁 役員退職金の活用
役員退職金は法人にとって全額損金(経費)になり、受け取った役員側は退職所得として優遇税率が適用されます。生涯で最大の節税機会のひとつです。
→ 法人側は全額損金算入
大きな控除額を差し引く
半分にして課税所得を計算
税率をかける
退職所得控除額の計算
| 勤続年数 | 退職所得控除額 |
|---|---|
| 20年以下 | 40万円 × 勤続年数(最低80万円) |
| 20年超 | 800万円 + 70万円 × (勤続年数 − 20年) |
※ この退職所得に対して通常の所得税・住民税の税率をかけます。他の所得と分離して計算(分離課税)。
※ 功績倍率方式:退職時の役員報酬月額 × 勤続年数 × 功績倍率(2〜3倍)が損金算入の目安。
🧾 消費税・インボイス制度
法人設立後2事業年度は原則として消費税が免税になります(資本金1,000万円未満の場合)。ただし設立時の資本金や特定期間の売上によっては、初年度から課税事業者になることがあります。
資本金は?
原則 免税事業者
課税事業者
3期目以降の課税・免税の判定
| 判定基準 | 内容 | 判定に使う期間 |
|---|---|---|
| 基準期間の売上高 | 1,000万円超 → 課税事業者 | 2年前の事業年度 |
| 特定期間の売上・給与 | 両方1,000万円超 → 課税事業者 | 前事業年度の前半6ヶ月 |
| インボイス登録 | 登録すれば免税でも課税事業者に | 登録日以降 |
- BtoB取引が多い場合:取引先がインボイス(適格請求書)を求めるケースが多いため、早期に登録を検討。
- BtoC取引中心の場合:一般消費者は仕入税額控除を気にしないため、免税期間を最大限に活用できる。
- 2割特例(〜2026年9月):免税事業者がインボイス登録を機に課税事業者になった場合、納税額を売上消費税の20%に軽減できる特例あり。
※ 簡易課税(前々事業年度の課税売上5,000万円以下):納税額 = 売上消費税 × (1 − みなし仕入率)
📊 決算対策・節税チェック
決算月が近づいたら、利益を圧縮できる手を打てるかどうか確認しましょう。決算の1〜3ヶ月前から動くことが重要です。決算日を過ぎると多くの対策は間に合いません。
- 利益の着地予測を試算し、節税余地を把握する
- 役員報酬変更の検討(次期の決算月から)
- 小規模企業共済の掛金増額申請
- 生命保険(損金算入タイプ)の加入検討
- 修繕費・消耗品の購入(使用する見込みがあるもの)
- 広告宣伝費・外注費の前払い計上
- 不良在庫・不良債権の評価損・貸倒処理
- 30万円未満の備品購入(少額減価償却の特例)
- 未払費用(給与・顧問料等)の計上漏れチェック
- 役員賞与(事前確定届出給与)の支払い
- 棚卸資産の実地棚卸・評価
- 固定資産の減価償却費の計算
- 貸付金・借入金の整理
- 税理士と最終税額の試算・確認
繰越欠損金の活用
法人の赤字(欠損金)は最大10年間、翌年以降の利益から差し引くことができます(繰越控除)。設立初期の赤字は必ず申告して記録しておきましょう。また、前事業年度の黒字に当期の赤字を繰り戻して還付を受ける「繰戻還付」制度(中小法人のみ)もあります。
※ 中小法人は所得の100%まで控除可能(大企業は50%まで)。