防衛増税とは?2027年から手取りは減る?所得税・法人税への影響を解説

会社員・個人事業主・法人経営者

防衛増税のしくみと手取りへの影響|所得税・法人税・投資への影響を全解説

2026年4月から法人税、2027年1月から所得税に「防衛特別税」が上乗せされます。「手取りが減るのか」「法人税はいくら増えるのか」という疑問が増えていますが、制度の仕組みは少し複雑です。「短期的には変わらないが長期的には実質増税」という構造を、会社員・個人事業主・法人経営者・投資家それぞれの立場から解説します。

「合計税率は変わらない」は半分だけ正しい

2027年以降、所得税の付加税率(復興税)が2.1%から「防衛税1.0%+復興税1.1%」に内訳変更されます。数字の合計は2.1%のままなので月々の手取りは変わりません。しかし、2037年に終わる予定だった復興特別所得税の課税期間が2047年まで10年延長されるため、長期的には実質的な増税になります。

防衛増税の全体像

  • 2026年4月〜(施行済み) 防衛特別法人税が開始。法人税額から500万円を差し引いた残りに4%を上乗せ。中小企業の大半は影響なし。
  • 2027年1月〜 防衛特別所得税が開始。所得税額の1%を上乗せ。同時に復興特別所得税を2.1%→1.1%に引き下げ。月々の源泉徴収額は変わらない。
  • 2037年(当初の復興税終了予定年) 本来はここで復興特別所得税が終了するはずだったが、課税期間が2047年まで延長。2037年以降も1.1%の復興税が続く。
  • 2047年 防衛特別所得税・復興特別所得税ともに終了(予定)。
財源の内訳(3本柱)

防衛費増額(GDPの2%目標)の財源は①防衛特別所得税②防衛特別法人税③たばこ税引き上げの3本立てで賄われます。たばこ税は2027年4月以降に段階的に引き上げられる予定です。

所得税の変化|会社員・個人事業主・フリーランス

2027年1月から、源泉徴収税・確定申告における所得税の計算に「防衛特別所得税」が加わります。ただし同時に復興特別所得税が引き下げられるため、2027年から2036年の間は手取り額に変化はありません。

現行(〜2026年12月)

所得税額 × 2.1%
復興特別所得税:2.1%
防衛特別所得税:なし
課税期間〜2037年

2027年1月以降

所得税額 × 2.1%
復興特別所得税:1.1%
防衛特別所得税:1.0%
合計は同じ 2.1%
課税期間〜2047年(10年延長)
計算例:年収500万円の会社員(所得税額が約14万円の場合)

現行:140,000円 × 2.1% = 2,940円(年間の付加税額)

2027〜2036年:140,000円 × 2.1% = 2,940円(変化なし)

2037〜2046年(課税期間延長分):140,000円 × 1.1% = 1,540円/年(本来ゼロのはずが継続)

延長された10年間の累計負担増:約15,400円(年収500万円の場合)

給与明細の「源泉徴収税額」欄の数字は2027年も変わらない

源泉徴収税額表の数字自体は2026年と2027年で変わりません。内訳の名称が変わるだけです。給与計算ソフトはシステム改修が入りますが、従業員が意識する必要はほぼありません。

確定申告への影響

個人事業主・フリーランスが年次で行う確定申告の計算式も同様です。2027年分(2028年3月申告)から「所得税額 × 1.1% + 所得税額 × 1.0%」の二段組になりますが、国税庁の確定申告ソフト(e-Tax)が自動で計算するため実務負担の増加はありません。

法人税の変化|法人経営者向け

法人については2026年4月1日以降に開始する事業年度から「防衛特別法人税」がかかります。個人の所得税と異なり、こちらは500万円の基礎控除があるため中小企業の大半は影響がありません。

防衛特別法人税の計算式

防衛特別法人税 =(基準法人税額 − 500万円)× 4%

基準法人税額が500万円以下 → 防衛特別法人税は ゼロ

※基準法人税額=通常の法人税額(地方法人税・住民税は含まない)

中小企業への実際の影響

課税所得法人税額(軽減税率適用)500万円控除後防衛特別法人税
〜800万円〜120万円(税率15%)ゼロ以下0円
1,000万円約163万円ゼロ以下0円
2,000万円約363万円ゼロ以下0円
3,000万円約563万円63万円約2.5万円
5,000万円約963万円463万円約18.5万円
1億円約1,963万円1,463万円約58.5万円
課税所得が約3,000万円未満の法人は実質ゼロ負担

法人税の軽減税率(800万円以下は15%、超過部分は23.2%)を前提にすると、課税所得が約2,500〜3,000万円未満の法人では基準法人税額が500万円に届かず、防衛特別法人税はかかりません。日本の中小企業の大多数がこの範囲に収まります。

申告書の様式が変わる(2027年3月期以降)

決算期が2026年4月以降に始まる法人は、次の確定申告書から防衛特別法人税の申告書を別表として添付する必要があります。税額がゼロでも申告が必要か否かは今後の国税庁通達で明確化される予定です。顧問税理士に確認しておきましょう。

投資家への影響|株・配当・NISA

上場株式の配当・譲渡益には現在20.315%の税金がかかります(所得税15.315%+住民税5%)。2027年以降、所得税15.315%の内訳が変わりますが、合計税率20.315%は変わりません。

現行の内訳

所得税:15.000%
復興特別所得税:0.315%
住民税:5.000%
合計:20.315%

2027年以降の内訳

所得税:15.000%
復興特別所得税:0.165%
防衛特別所得税:0.150%
住民税:5.000%
合計:20.315%(変わらず)
NISAへの影響

新NISA(成長投資枠・つみたて投資枠)内の利益・配当は引き続き非課税です。防衛増税は課税口座(特定口座・一般口座)にのみ影響し、NISAには関係ありません。

ただし、2037年以降も継続する課税期間延長の影響は投資家にも及びます。2037年以降も配当所得・譲渡益に対して0.165%の復興特別所得税が課され続けます(通常なら2037年に課税終了)。

対象者別の影響まとめ

👔 会社員

短期:影響なし
  • 2027年の月次手取りは変わらない
  • 2037年以降10年間、付加税が継続
  • 年収500万円で累計1.5万円程度の負担増
  • 給与明細の数字は変わらない

💼 個人事業主・フリーランス

短期:影響なし
  • 確定申告の計算は自動化(e-Tax)
  • 予定納税額の計算式が若干変わる
  • 2037〜2046年の課税継続が実質的な増税
  • 所得が多いほど課税期間延長の影響が大きい

🏢 法人経営者

規模により異なる
  • 課税所得〜約2,500万円:影響なし
  • 〜5,000万円:年間20万円程度の増税
  • 1億円超:年間60万円以上の増税
  • 申告書の様式変更に注意

📈 投資家(課税口座)

短期:影響なし
  • 2027〜2036年:税率20.315%は変わらない
  • 2037年以降:課税期間延長で0.165%が継続
  • NISA口座は影響を受けない
  • 配当所得の確定申告計算は変わらない

まとめ

所得税(2027年〜)月々の手取りは変わらない。ただし課税期間が10年延長されるため2037年以降も課税が続く
法人税(2026年〜)課税所得〜2,500万円の中小企業は実質ゼロ。大企業・高収益法人は4%上乗せの影響あり
株・配当(2027年〜)特定口座の20.315%は変わらない。NISAは影響なし。2037年以降の課税継続は投資家にも影響
実質的な増税の正体2037年に終わるはずだった復興特別所得税が2047年まで10年延長される点。毎年所得税額の1.1%が追加で徴収される
今やるべきこと法人は申告書様式の変更を税理士と確認。個人は2037〜2047年の課税継続を踏まえた長期資産計画を立てる